「凪沙を放せ、藤宮!」
ワタシは凪沙を抱え悠々と佇む藤宮に向かって叫んだ。その声を聞いた藤宮がせせら笑う。くそっ、なんだあいつふざけやがって。
「早かったのね、二人とも。でも残念。もう用は済んだの。この世界ともこれでお別れよ。」
「何!」
言うと、藤宮が光に包まれる。そのまま、凪沙を抱えたまま姿が消えてしまった。
「・・・!凪沙、凪沙ぁ!」
ワタシは藤宮の立っていた場所まで走り、辺りを見回した。だが、どこにも二人の姿はなかった。
「くそっ、凪沙が拐われちまった。どうしよう真夜!」
「落ち着いて、風華。行き先はわかってる。」
焦るワタシに対し、真夜は冷静さを見せる。
「藤宮の目的は精霊世界にある。なら向かう場所はそこ。私達もすぐに追いかけよう。」
「つっても、ワタシはデュエル神社に行かないと精霊世界には行けないんだ。」
「なら、私があの人を止めておく。風華は急いで神社に行って。」
「わかった。すぐ行くから、それまで凪沙を頼む!」
そう言ってワタシは一目散に駆け出した。待ってろ凪沙、絶対助けてやるからな!
風華が走り出すのを見て、真夜はエースモンスターのカードを取り出す。ミッドナイト・ステラー・ドラゴン。お願い、私を精霊世界へ導いて。
真夜の願いを聞き入れ、ステラー・ドラゴンのカードが光を放つ。先ほどの凛子同様、光に包まれた真夜の姿が消えていった。
目の前の光が弱まり、世界が輪郭をハッキリさせる。深き森の中。木々の影には妖精や動物たちが見え隠れする。だが視界に広がった見慣れた風景にも、今の真夜は落ち着けなかった。
早く藤宮を見つけて凪沙を助けなくては。
真夜はデュエルディスクにステラー・ドラゴンのカードを置き、輝く星の竜を実体化させた。
「お願いステラー。それに精霊たち。この世界に入り込んだ邪悪な者を探し出して!」
真夜は精霊たちに呼びかけると、竜の背に飛び乗る。少しして、精霊たちがざわつき始め、その言葉を聞いた僕が森から飛び出し上空へ舞い上がった。よかった、見つかったみたい。
風に乗り旋回すると、ステラー・ドラゴンは一直線に夜空を駆け抜ける。
精霊世界に入り早くも目的地に辿り着いた凛子。彼女は長かった自身の任務を思いだした。
始まりはアカデミアの長、プロフェッサーから特別任務を言い渡されたことだった。
デュエルモンスターズの精霊世界に眠る力を見つけ出し手に入れること。そう言われ、私は精霊世界へと足を踏み入れた。
初めての単独任務。プロフェッサーに実力を認められた証拠だ。嬉しかった。これでやっと、私もアカデミアの役に立つことができる。
調べていくうちに、その力を手に入れるためには生け贄が必要だということがわかった。
そのために、次元を越えスタンダードに存在する舞網という街に潜入した。そこで、少しずつ生け贄となり得るカードを集めていった。
任務の助けとするためLDSにも入り込み、記憶を操作する技術を盗みだした。
そして今ようやく全ての準備が整い、力の入手まで漕ぎ着けた。後はこの儀式を完遂するだけ。
それだけなのよ・・・。
「だから、邪魔しないでもらえないかしら、星美さん?」
月明かりの照らす森の奥の聖地で今まさに目的を果たそうとしていた凛子は、背後に降り立った竜の背に乗る真夜を憎しみを込めて睨み付けた。
「ふざけないで。あなたの思い通りになんて、何一つさせない。あなたはここで私が消し去る。」
真夜は竜の背から凛子を見下ろす。すると真夜の目に、凛子の向こうに俯いたまま反応を示さない凪沙の姿が見えた。
真夜は無事だった凪沙を見て胸を撫で下ろしたが、こちらを見ようともしない凪沙の様子に不安を感じ呼び掛けた。
「凪沙、どうしたの?早くこっちへ来て。」
真夜の言葉に凪沙は反応を示さない。それを見た凛子が馬鹿にしたように笑い声をあげた。
「ふふ、無駄よ。彼女には私の特別をあげたの。貴女のことなんて何も覚えていないわ。」
「!」
洗脳か。凛子の言葉で何があったか察した真夜は、改めて凛子に怒りをぶつけた。
「許さない。私の大切な友達に手を出して、生きて帰れると思わないで。」
真夜は竜の背から飛び降り、それをカードに戻すと、デュエルディスクに光を灯し戦闘態勢に入った。
「ここで消す、絶対に。」
「許さないのは私の方よ。貴女は目障りで仕方ないの。ここで葬りさってあげるわ。」
凛子もデュエルディスクを起動させる。その形は、今まで見たことのない、剣のような形状をしている。
「・・・!待ってて凪沙。すぐ元に戻してあげる。藤宮 凛子、私があなたを倒す!」
真夜は藤宮を睨み付けてデュエルを開始しようとする。ところが、そんな真夜に藤宮は小馬鹿にしたように言った。
「何言っているの?彼女も参加するに決まっているでしょう?さあこちらへ、波川さん。」
凛子に促され、それまで立ち尽くしていた凪沙が凛子の隣に並んだ。同時に、凪沙の腕にも光のプレートが出現する。
「ちょっと待って、凪沙を巻き込む必要はないでしょう?私と二人でデュエルして。」
「ダメよ。貴女は私達二人と戦ってもらうわ。それとも、二対一じゃ怖くて戦えないとでも言うの?」
「・・・なら構わない。あなたを消して、凪沙を助ける。やることは何も変わらない!」
デュエル!!!
MAYA LP4000
VS
NAGISA LP4000
VS
RINKO LP4000
「まずは私のターンからよ。見なさい、星美 真夜!」
デュエル開始と同時に、凛子は自身の裏手に見える祭壇を示した。すると、中央に見える石像の周囲に並べられた燭台に一斉に火が灯る。
「このデュエルは大いなる力の復活の為の儀式でもあるの。デュエルを通じて出たエネルギーは祭壇に吸収され、やがてこの地に眠る神を蘇らせる。敗者を生け贄にすることによってね!」
「!」
「私は魔法カード、融合徴兵を発動!デッキからホルスの黒炎竜LV6を手札に加える。そして沼地の魔神王の効果を発動、自身を捨てて融合を手札に加える!」
神・・・?生け贄・・・!?突然の言葉に驚く真夜を尻目に凛子は初手から畳み掛ける。
「融合を発動!素材とするのは、手札のホルスと沼地の魔神王!」
白銀の鳥が泥の化け物に取り込まれかき混ぜられていく。撒き散らされた汚泥を焼き尽くすように、地面から火柱が上がった。
「融合召喚!現れなさい、超炎竜フォビドゥン!」
強烈な熱波が辺りを吹き抜け、禍々しい竜が姿を現した。木々に火の粉が降りかかり、焦げ臭い臭いが立ち込める。
「・・・!」
まずい。先攻をとられた挙げ句フォビドゥンを場に出されてしまった。緊張かそれとも灼熱のせいか、真夜の頬を汗が伝う。
「カードを一枚伏せてターンエンド。さあ、次は貴女よ、波川さん。」
「・・・。」
言われるがまま凪沙がドローし、無言でカードを操り始める。
フィールドに現れたのは可愛いようで弱冠のキモさを漂わせピチピチと跳ね回るモンスター、鰤っ子姫。しかしせっかく出た魚はすぐにまた地中に飛び込んで姿を消してしまった。鰤っ子姫の効果が発動したのだ。
「・・・。」
真夜は手札を見つめしばし考えた。
今、手札には増殖するGがある。その効果を使えば、そのターン中相手が特殊召喚する度に一枚ドローできるようになる。凪沙のエース、アンカームド・メイカーは素材三体のエクシーズ。鰤っ子姫の持つモンスターを特殊召喚する効果からエクシーズ召喚までには計四回の特殊召喚を経る。四枚も手札が増えれば、藤宮を倒すのに十分なカードが揃うだろう。
実際には、増殖するGの本質はドローではなく相手への牽制だ。使えば相手は敵の手札を増やさぬよう特殊召喚を止めてくるし、普通なら自分もそれを狙う。アンカームド・メイカーの効果でフォビドゥンを護られたら、厄介なことこの上ない。それはなんとしても阻止したい。
でも、今回は違う。藤宮は敗者を生け贄にすると言った。それはなにも私だけではない、凪沙が負けてもダメなんだ。凪沙の手を止めてしまったら、次のターン無防備の凪沙が藤宮に狙われることになる。そうなれば凪沙が犠牲になってしまう。
でも・・・!
フォビドゥンがフィールドにいる限り魔法も罠も使えない。増Gを使わず手札が増えなければ、今の自分の手札ではほとんどのカードが無駄のままでエースモンスターを出すことが出来ない。それでは私が藤宮の餌食になってしまう!
焦りが真夜の思考をいつもより鈍らせる。
「くっ・・・、私は手札から増殖するGを捨てて効果発動。このターン、相手が特殊召喚する度に私はカードをドローする。」
迷いはしたがやることは決まっていた。次のターンに凪沙が無防備になるというのなら、その前にフォビドゥンを倒せばいいだけのことだ。
覚悟を決め増殖するGの効果を使うと、鰤っ子姫の効果で凪沙のフィールドにモンスターが現れる。フィールドをすいすいと泳ぎ回るのは、素早いマンボウ。破壊されても後続を呼び出せる壁モンスターだ。
マンボウの特殊召喚をうけ、真夜はカードをドローする。エクシーズは狙わず守りを固めてきたか。よかった、あのモンスターがいれば簡単にはやられない。
「・・・。」
無言のまま凪沙はフィールドにカードを伏せ、そのままターンを終了する。
「私のターン!」
このターンでなんとかする。自然と声に力が入るのを感じつつ、真夜はターンを開始する。震える手で引いたカードを確認して、ホッと息をついた。
「 手札のトイナイトを特殊召喚。このカードは、相手のフィールドの方がモンスターが多い場合に特殊召喚できる。続いてチューナーモンスター、サニー・ピクシーを召喚。」
真夜のフィールドでおもちゃの騎士とピンク髪の妖精がくるくると踊り出す。危なかった、増殖するGでカードを引いていなかったらどうなっていたか。
「レベル4のトイナイトにレベル1のサニー・ピクシーをチューニング。」
でもこれでなんとかなる。微かだが、光指す道は確かなものになった。
「シンクロ召喚、A・O・J カタストル!」
現れた決戦兵器が超炎竜の波動に当てられ赤く輝き、反射した光と炎よって辺り一帯が燃えるように赤く染まった。
「・・・。」
凛子は不敵な笑みを浮かべている。カタストルの効果を知っているかどうかは分からないが、余裕があるということなのだろうか。
凛子の見せる態度に怒りを覚えた真夜は敵を睨み付けると、透き通る肌を赫灼に色づかせ掌を突き出し叫びんだ。
「バトル!カタストルでフォビドゥンに攻撃。」
カタストルの頭部で光球が膨れ上がっていく。
「この瞬間、カタストルの効果が発動。闇属性以外のモンスターをダメージ計算を行わず破壊する!」
「・・・。」
発射された光弾が超炎竜に激突し、モンスター達は強烈な光に包まれた。
「やった、これでフォビドゥンは破壊・・・」
!!
光を裂き、火柱が吹き出す。歪んだ空間の向こう側に傷一つ負っていない竜の姿が見えてくる。
真夜の思惑とは裏腹に、フォビドゥンは破壊されてなどいなかった。
「なっ、何で?カタストルの効果が効いてない・・・。」
「貴女、なんて愚かなの?超炎竜 フォビドゥンの属性は闇よ。」
「!?」
「大方、見た目に騙されて炎属性だと思ったのだろうけれど、残念ね。」
唸り声をあげてフォビドゥンがカタストルに組み付く。
「バトルは継続され、カタストルにはフォビドゥンとダメージ計算を行ってもらうわ。」
「うそ・・・!」
カタストルの胴体が引きちぎられ金属片が飛び散る。直後爆発が起き真夜は吹き飛ばされてしまった。
「うあぁっ・・・!」
MAYA LP4000→3400
地面を転がった真夜は樹に打ち付けられる。痛みに耐えかね声を漏らしていると、立ち込めた煙の中から凛子の笑い声が聞こえてきた。
「ふふ、あはははは!なんて間抜けなの、貴女。意気揚々と出した自分のカードで自爆だなんて。」
笑いながら、凛子は自分のターンを開始する。
「私のターン、融合呪印生物―闇を召喚!」
グロテスクな脳ミソ型モンスターが現れる。これで、二体の攻撃力が真夜のライフを上回った。
「くっ・・・。」
でも、まだ大丈夫。手札には防御カードがある。このモンスターを壁にすればまだ・・・
「まだよ、私は呪印生物の効果を発動!このカードと融合素材をリリースして融合モンスターを特殊召喚する。」
「・・・!」
フォビドゥンをさらに融合素材に・・・!
脳ミソがフォビドゥンに取り憑き、闇の底に沈んでいく。渦巻いた闇から黒炎が沸き上がり、おぞましい風貌に成り果てた竜が姿を現した。
「現れ出でよ、超魔炎竜 ヒドゥン・フォース!!」
召喚と同時に、波動が迸る。フォビドゥンとは比べ物にならない程強力な衝撃波は、辺りを一瞬で粉微塵に消し飛ばした。
真夜は再び吹き飛ばされるが、今度は打ち付けられる樹もなくそのまま地面に背中を強打する。
「ぐっ、うっ・・・。」
倒れ伏す真夜にゆっくりと凛子が歩み寄る。巨竜が月を覆うように飛び、視界が赤く染まる。
「愚かな貴女に教えてあげるわ。ヒドゥン・フォースは攻撃する時、攻撃されるプレイヤーのカードの発動を封じる効果を持つの。」
「・・・っ!」
「これでもう、貴女を守るものはない。」
巨竜が全身を炎に包み襲いかかる。この攻撃を受ければ、ライフはおろか命そのものが尽きるだろう。真夜は身動きがとれず、迫り来る巨竜をじっと見続けた。
「死ね、星美 真夜。」
凛子の合図とともに、燃え盛る腕から炎の波動が放たれる。
「・・・!!」
終わりだ・・・。まさか、こんな早く致命的なミスをするなんて。その理由を推し量ることもできず、真夜は呆然と自らの最期を迎え入れる。
・・・だが、その豪炎が真夜の身体を包むことはなかった。
頭上から彗星の如く飛来した一筋の炎が、目前でヒドゥン・フォースの攻撃とぶつかり真夜の左右に衝撃を反らす。
激しい閃光の中で眼を凝らすと、その中に見覚えのある鎧が見えた。炎を反射し真っ赤に見えるがあれは・・・。
「ウインド・ブレイダー・・・?」
真夜が思わず呟く。よかった、風華が来てくれたんだ。これで凪沙を・・・。
そこまで過り、すぐにそれが誤りだと気付く。
ウインド・ブレイダーの純白の鎧が赤く輝いているのは炎に照らされているからだと思ったが、光が弱まり姿がはっきりしてくると、実際に真紅に彩られているのが分かる。よく見ると、細部の形状も所々異なっていた。
「何・・・?一体どこから・・・。」
驚いた凛子が辺りを見回す。ヒドゥン・フォースの波動により周囲は更地になっている。誰かが隠れる場所などあるはずもない。だとしたら・・・。
はっとして彼女は頭上を見上げる。眼に入ったのは、大鳥の足に掴まり下降してくる人影だった。
フードを被ったその人物は大鳥から手を離すと見事な回転を決めて地面に降り立った。
モンスターが光となりカードに収まり、着地した人物がその顔を真夜に向け優しく微笑む。真夜も窮地を救ってくれた人の顔をまじまじと見つめた。
女だった。背の低さから考えて、歳は自分と同じか下くらいだろう。フードを取った下にはゴーグルをつけていて表情は分からず、首もとにはスカーフも着けている。余程正体を隠さなければならない理由があるのだろうか。
「あなたアカデミア?」
凛子の方に向き直った少女が問いかけた。
「だとしたら、何か?」
平静を装いつつも、凛子の表情は明らかに険しくなっている。度重なる妨害に我慢の限界に達しているのだろう。
凛子の言葉を聞いて、彼女もまた少し語気に怒りが満ちた。
「ならわたしが相手よ。」
そう言いデュエルディスクを構える彼女に、痛みを堪えなんとか立ち上がった真夜が尋ねた。
「あなた一体・・・。」
彼女は声の方をちらっと見て、クスッと笑う。
「通りすがりのお姉ちゃんよ。」
「は?」
「わたしが発動したのはフレイム・ブレイダーの効果。その効果でダイレクトアタックを無効にして手札から特殊召喚させてもらったわ。」
フレイム・ブレイダー
効果モンスター
星7/炎属性/戦士族/ATK2400/DEF1700
真夜の驚きを意に介せず謎の少女はデュエルを続行する。
「さらに、この効果で攻撃を無効にした相手の攻撃力が自身より高い場合、そのモンスターを破壊出来る!」
!
やった、これでヒドゥン・フォースを破壊出来れば、一気に勝利が近づく。そう思うと少しだけ真夜に笑顔が戻った。だが凛子は涼しげに言う。
「無駄よ。ヒドゥン・フォースはモンスター効果では破壊されない。」
「!!」
なにそれ・・・。えげつない性能を見せる相手に、真夜もいい加減嫌気が差してくる。そんな真夜とは対照的に、少女は余裕を見せた。
「ふうん。まあいいわ。」
「・・・あなた、私に何の用かしら。今は忙しいの、出来れば今すぐ消えてほしいのだけれど。」
凛子が怒りを抑えて少女に言葉をかける。すると、少女も冷たく凛子に返した。
「そうはいかないわ。あなたがアカデミアなら、決して生かしておかないから。覚悟しなさい。」
「お前っ・・・!!」
凛子は我慢しきれず言葉遣いが荒くなってしまい、吐き捨てるようにターンの終了を宣言する。ここで、凪沙の前に乱入者のターンが割り込まれた。
「わたしのターン!」
UNKNOWN LP4000
「あなた、私の味方なの?」
真夜がカードをドローした少女に問いかける。その言葉に少女はおどけて答えた。
「まあ、敵ではなさそうね。」
「そう・・・。とにかくありがとう、お陰で助かった。気を付けて。ヒドゥン・フォースがいる限り、フィールドの魔法は無効になり罠は発動できないから。」
真夜は素性を知りたい気持ちを一先ず置き彼女に忠告する。
「問題ないわ。わたしはヴェルズ・オランタを召喚。そしてバトルフェイズ!フレイム・ブレイダーでヒドゥン・フォースに攻撃!」
話半分に、少女はすぐさまバトルフェイズに入った。
「わたしはバトルステップに速攻魔法発動、収縮!ヒドゥン・フォースの攻撃力を半分にするわ。」
「??」
その宣言に、真夜の脳内ではてなマークが踊った。思わず彼女にかける言葉が小馬鹿にした風になってしまう。
「あなた、話聞いてたの?魔法は無効になるって・・・」
「この瞬間、フレイム・ブレイダーのもう一つの効果を発動!このカードが攻撃するバトルステップ中に発動できる。」
少女が効果を発動させると、剣士が突き上げた剣から火柱が巻き起こり上空へと舞い上がる。
「このカードの前後左右に置かれているカード、及びそれらを通しこのカードと地続きになっている全てのカードの中から一枚選んで破壊し、相手に800ダメージを与える!」
「あっ・・・!!」
真夜が彼女の行動の真意を察した。凛子も同様の反応をする。
「わたしが破壊するのは収縮のカードよ。」
少女が手を向けると上空からさっきの炎塊が降り注ぎ、収縮のソリッドビジョンを焼き尽くし、火の粉は凛子にも及ぶ。
RINKO LP4000→3200
「そして収縮の効果が適用され、ヒドゥン・フォースの攻撃力は半分になる。」
そうか!
真夜は驚いて彼女の方を見た。フィールドの魔法を無効にするヒドゥン・フォースの効果では、効果解決時にフィールドに存在しない今の収縮の効果を無効にできない!
「ヒドゥン・フォースを撃破!」
「くそっ!!」
RINKO LP3200→2550
フレイム・ブレイダーの斬撃で、巨竜が真っ二つに引き裂かれ爆散し、今度は凛子自身が吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。
「くっ・・・!」
巨竜が消えフィールドががら空きになると、すぐさま凛子が体勢を立て直しカードを発動させた。
「罠発動、融合招集!融合モンスターが破壊された場合、そのカードに融合素材として名前の記されたモンスターを全て、手札・墓地から特殊召喚する!」
「・・・!」
「私が呼び出すのは、手札から冥界の魔王 ハ・デス、墓地から超炎竜 フォビドゥン!」
天地に現れた渦から二体のモンスターが同時に出現した。二体ともヴェルズ・オランタの攻撃力を上回っている。
「・・・、わたしはメインフェイズ2で、ヴェルズ・オランタをリリースして効果発動。相手の表側表示モンスターを一体破壊する。フォビドゥンを破壊!」
命をうけたモンスターが地中に潜り、足元から対象を闇の底へと引きずり込んだ。
「やった!」
少女の活躍に、真夜が歓喜の声をあげる。あの鬱陶しい化物を倒せた。これでようやく、まともにデュエルができる!
「わたしはカードを二枚伏せてターンエンド。」
少女のフィールドに一瞬伏せカードが表示される。それを見てから、彼女は凛子に言い放った。
「倒し損ねちゃった。運がいいのね。」
「運・・・?」
「運よ。あなたではわたしには勝てないもの。」
「はあ?お前みたいなガキがこの私に勝てる・・・?」
拳を握りしめ俯き肩を震わすと、凛子は遂にその本性を現し叫びだした。
「どいつもこいつも、いい加減にしろガキ共!何度も何度も何度も・・・!私の邪魔するな!邪魔するなぁ!!」
「あなたの行いが悪いのよ。」
「うぅ~!!」
少女の反応に凛子は、黙ったままターンを始めない凪沙に向き直って怒鳴り散らす。
「何してんだよこのノロマっ!早くやれ!そいつら全員ぶっ潰せ!」
「ちょっと、凪沙に酷いこと言わないで。」
「うるさい黙ってろばかが!」
真夜が釘を指すと怒りが飛び火してくる。余りの変貌ぶりに、真夜は開いた口が塞がらない。
「絶対・・・、絶対許さない。お前ら絶対許さないからな!」
怒り狂う凛子の傍らで、凪沙がカードを手にかけた。