ダンジョンで現代兵器をふるうのは間違っているだろうか   作:大神

1 / 5
取り敢えず言うことは色々ありますが、取り敢えずお楽しみ下さい。(楽しめるかどうかは別として)


第一話 出会いと魔法

迷宮都市オラリオ。その路地裏で一人の少年が先日の雨が乾ききらぬ汚泥に染められボロ雑巾のように倒れていた。

少年の眼前に広がる青く澄んだ空には薄く白い雲が漂う。

あたりは薄暗くホコリ臭い。

足下を薄汚いネズミが数匹通る。

ふと、少年がポツリとつぶやく。

 

「・・・・・・なにがどうしてこうなった」

 

 

◆◇◆◇

 

 

ーーなにがどうしてこうなったのだろう

 

私はへファイトストス・ファミリアの主神、ヘファイストス。

私のファミリアはこの迷宮都市オラリオでは唯一ダンジョンで収入による運営がなされていない、鍛冶師のファミリアだ。

今日は仲の良い神に注文を受けた武器を私自ら届けに行く途中で、近道をしようと路地裏を通ったのが運の尽き、だったのだろう。路地を奥まったところでみすぼらしい服装の男衆に囲まれてしまった。

 

『よう姉ちゃん。ずいぶん良い格好してるな、さぞ良いところのファミリアなんだろうなあ』

 

『少し俺らに恵んでくんねぇかなあ?』

 

『もしくは俺らの相手をしてくれても良いんだぜ?ヒヒッ』

 

男衆は下品な笑みを浮かべてヘファイストスを見下ろす。

ヘファイストスはその姿こそ男の装いをしているが、だからこそ、同性すら羨む流線美がくっきりと現れる。禁欲を強いられている男衆には堪らない誘惑だろう。

 

ーー()を分からないと言うことは『恩恵』すら受けられない最貧層の人間ね。『恩恵』を受けていたならまだやりようはあったのだけれど・・・・・・。やっぱり一人の時にこんな所を歩くものじゃないわね。

 

『恩恵』を受けた冒険者などは本能的に神と人間や他の種の区別がつく。

しかし、それを受けない最貧層の人間たちは人の形を模した神を区別することができない。『神の力(アルカナム)』を地上で行使できない神達が自分を神だと名乗る以外は神だと証明することができないのだ。

 

「・・・・・・悪いけど、私は用があるからアンタ達の要望に応えられることはできないわ。他を当たって」

 

『おっと、そうはいかねえなあ。悪いがその用はキャンセルだ。アンタには俺たちに付き合ってもらう』

 

「ちょ・・・・・・ッ!!」

 

ヘファイストスが男の一人の脇を通ろうとするが、手を捕まれて壁に押しつけられた。その衝撃で注文された武器も落としてしまう。

 

『へへへ・・・・・・。久しぶりの女だぜ』

 

『おい、この女結構な業物持ってやがるぜ』

 

『一石二鳥とはこのことだな!ガハハハッ!』

 

「くっ・・・・・・やめなさい!」

 

『クハハ!気の強ぇ女だ。そう言うのも好きだぜ?まぁ、今はおとなしくーー』

 

「なぁ」

 

男の一人がヘファイストスの服に手をかけようとしたその瞬間、路地の曲がり角から一人の少年が姿を現した。その少年はひどく、汚れていた。

 

 

◆◇◆◇

 

 

少年は目を覚ましたら倒れていた。それもほとんど行き倒れているような格好で。

腹もへり、ノドも渇いた。意識が朦朧とする。

記憶も曖昧だ。自分が誰だか分からない。いや、記憶はある。ここが何処だかも、どんな世界なのかも分かる。しかし、自分が誰だか分からない。ここが自分の世界だとは思えない(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

ーー~~~~~!~~~!

 

少年の離れたところから男女の声が聞こえる。言い争っている気もするが関係ない。少しでも今の状況を知りたい。あわよくば食い物や飲み物を恵んでもらいたい。

少年は覚束ない脚を前に前に動かしながら、声の下へと向かう。

声の発生源はやはり言い争っていた。

情勢は圧倒的に女性の方が不利だ。しかし少年は関係なしと声をかける。

 

「なぁ」

 

『ああ?』

 

『なんだテメェ!さっさと散れ!』

 

『薄汚ねぇ格好で声かけんじゃねぇよ!』

 

薄汚い格好。それもそうだ、先ほどまで泥に浸かっていたのだから。しかしそれは男衆が言えたことではない。彼らも同じく砂埃にまみれているのだから。

 

「アンタ等に言われたくねぇよ。そんなことより何か食い物でも持ってねぇか?水でも良いんだが」

 

『んなもんある訳ねぇだろ!もしあったとしてもテメェみたいなのにはやらねぇよ!』

 

「まぁそれもそうだ。・・・・・・あと、アンタ等がなにをしようが勝手だが、その女性(ヒト)はやめておけよ。アンタ等の手に負えるヒトじゃねぇから。じゃ、他当たるわ」

 

少年はそう言って踵を返すと、男の一人が待てと言い、少年の肩を掴む。

 

『見られたからには生かしちゃおけねぇ、とりあえず死ねェ!』

 

男は拳を握り、それを振り上げる。ヘファイストスはその次の光景を想像し、隠されていない左目を瞑った。

 

ーーこんなときにこそ『神の力』が使えない事が嫌になる!無関係の少年を巻き込んでしまった自分が嫌になる!

 

ヘファイストスは後悔した。こんな路地を通ってしまったことを、ファミリアの子どもを連れず一人で外出したことを、男達に囲まれる前に引き返さなかったことを、持っていた武器を使ってでも男達を退けなかったことを、このオラリオに降りてきてしまったことを。

 

ゴスッと重く叩きつける音が路地裏に響く。ヘファイストスの予想を裏切ることなく拳を握った男の手が、少年に押しつけられた。

少年はその威力に逆らうことなく地面に叩きつけられる。立とうとも、反撃する様子も見られず、ただただ少年は地面にひれ伏している。もう一人の男が少年を蹴り上げる。

 

「ガハ・・・・・・ッ!?」

 

見事なまでに急所に当たった男の蹴りは少年の身体を宙に浮かし、また地面に叩きつける。

この男たち、ヘファイストスを囲む早さと言い、少年への暴力と言い、かなり手慣れている。常習的犯行だというのは火を見るより明らかだろう。

 

『ハッ!弱ぇな!そんなんで俺たちに刃向かうなんて百万年はえぇんだよ!』

 

「グフッ・・・・・・!」

 

『俺たちに絡んだのが運の尽きってな!ガハハハッ!』

 

「ブッ・・・・・・!」

 

『クハハッ!いいぞ、殺っちまえ!』

 

ヘファイストスを掴む男の興味が少年に向いたその時、少し掴む力が緩んだ瞬間を狙い、ヘファイストスは男の腕を振り払った。

 

『!?テメッ!』

 

「止めなさい!」

 

ヘファイストスは地面に伏した少年の前へ出て男二人の攻撃を止める。

 

「この少年は関係ないでしょう!無関係の人間を巻き込むのは止めなさい!!」

 

『ヘッ、バカな女だ。今の隙に逃げればよかったものを。そいつの犠牲が無駄になったな?』

 

確かに、今なら逃げられるかもしれない。だが、そんなことをすれば今後ろにいる少年の命が危ない。そんな無関係の人間を囮にするようなことをすれば自分のファミリアの名前に傷が付く。それ以前に、ヘファイストスという神はそんなことをする自分を赦せるほど甘くはなかった。たとえそれが少年が命を投げ捨ててでも作ったシナリオだとしても。(・・・・・・・・・・・・)

 

ーーあーあ、バカだなこの人。自分にも他人にも厳しいタイプのバカだ。

  そのくせ強く懇願されると断れないタイプだなきっと。

  ・・・・・・あー、だめだ。強く頭を打ったかな?

  すげぇ幻聴聞こえてきた。なんだこれ・・・・・・

 

『逃げねぇって事は俺たちの相手をしてくれる気になったのかぁ?へへへ・・・待ってろよすぐにトばしてやるからさぁ』

 

「誰が・・・・・・!」

 

男たちは一歩ずつヘファイストス達に近づいてくる。一歩一歩、下品に口をつり上げ、近づいてくる。

ヘファイストスは少年を抱き上げ、その細身の身体で守るように抱きしめる。

 

「くっ・・・・・・地獄に堕ちろ・・・・・・!」

 

『ハッ、そうだなぁ。そんなものがあればな?』

 

「・・・・・・ット」

 

『あ?』

 

「!よかった、まだ意識が・・・・・・。ッ!?」

ーーこの少年から魔力の気配が・・・・・・!?まだ、『恩恵』をうけていないのに!?

 

魔力は神の眷属となり冒険者になるために交わす『恩恵』を主神から授かってから発現されるもの。普通、ただの人間が魔法の源たる魔力を持っていることは限りなく0に近い。

 

しかし、目の前の少年の、男たちの暴力によってむき出しになった背中には『恩恵』を受けた証拠となる『神文字(ヒエログリフ)』はない。つまり、この少年は自らの力により自らの身体に魔力を宿し、自らの魔法を放とうとしている。

幾年の間このオラリオに君臨し、幾百もの眷属を生み出してきたヘファイストスでも見たことも聞いたこともない現象だった。

 

「・・・・・・ァレット・・・!」

 

『コイツ、何言って・・・・・・』

 

少年の右手を男たちに向ける。

親指を天に突き立て、人差し指を男たちに突きつける。その他の指は折り畳んだまま。曰く銃のポーズである。

 

星の欠片(メテオ・バレット)ォォォォォォォォオオオ!!!」

 

少年の頭上の空間が歪み、そこから光の固まりがいくつも放射され、男たちに向かって飛んでいく。男たちの条件反射で避けられる速度ではない。

 

『『『う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』』』

 

だが、初めての魔法行使。しかも不安定な状態で狙いがうまく定まるはずもなく、光の塊は男たちの顔の横を通り過ぎていった。

 

「『『『・・・・・・・・・』』』」

 

男たちを始め、ヘファイストスもいきなりの展開に呆然とする。

つい先ほどまで、優勢だったのは男たちの方。それは誰が見ても間違えようのない事実だった。しかしそれを一瞬にして変えてしまったのは少年の魔法、少年の『力』だった。

それほどまでに強力な力を、この少年は有している。この場での絶対者はこのヒドく汚れた少年だった。

 

「・・・・・・次は、当て・・・ャる」

 

少年のかすれた、しかししっかり聞こえた声に、必ずやり遂げるという意志の炎を灯した瞳に、男たちは怯える。

 

『ヒッ、ヒイッ!!コ、コイツ、冒険者だったのかよ!?』

 

『い、今のは魔法!?ふざけんな!かなう訳ねぇって!』

 

『こ、殺されるゥゥゥアアアア!?』

 

三者三様の叫び、少年とヘファイストスから逃げ出す男たち。ご丁寧に、ヘファイストスの届け物を放り出して。

 

「・・・・・・逃げ、たァ?」

 

「ね、ねぇ!大丈夫なの!?」

 

「無事、かァ?」

 

「それはこっちの台詞よ!アンタの方が死にそうじゃない!」

 

「・・・・・・」

 

「ねぇちょっと!ねぇって!・・・・・・ッ!死なせないわよ、絶対に死なせなんてしないんだから!」

 

少年はヘファイストスの無事を確認すると、安らかに眠るように意識を手放した。精神疲弊(マインド・ダウン)。魔法の行使による魔力の枯渇、つまりはガス欠である。

魔力は精神で放つ。魔法の源たる魔力は精神によって形作られ、ギリギリまですり減らした精神を脳が危険だと判断し、自己防衛として意識を手放したのだ。

 

自らが瀕死の状態ながらも他人の心配をする少年をヘファイストスは頼もしく見える反面、危うくも見えた。

この少年は自己犠牲を是としている節がある。確かにそれで救えるものもあるだろう。だがしかし、それではあまりにも少年が報われない。

そう思ったヘファイストスは少年をその背に背負い、自らの拠点を目指す。すべては少年を助けるため。少年を否定するため。

 

背負い上げた少年の身体は、自らと変わらぬ背丈のはずなのに余りにも軽かった。




はい、ということで見切り発車で進行していきます。当然行き当たりばったりです。
久しぶりの方も初めましての方もこんにちわ。大神と申します。

まだ他の小説を一つとして完結させてもいないのにおめおめと新作を出してしまいましたお待たせしている皆さんはゴメンナサイ。
でも書けないんです……許してつかぁさい……

さて、今回は『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』の二次ですが、今回も今回で今後のことはまったく決まってません。出来次第更新する予定ですがそれもいつ出来るか……
まあこれもお待ちしていただくことになります。飽きっぽい自分を許して下さい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。