ダンジョンで現代兵器をふるうのは間違っているだろうか 作:大神
名前を与えられて数日、怪我と
「・・・・・・終わったわ」
「ん、もう良いのか?」
上半身を露わにし、背中に
「やっぱり、『恩恵』を与えても真名は現れないわね」
ヘファイストスの手にはステイタスを写し取った紙が握られている。名前の欄には『エリクト・アプリストス』と書かれていて彼の前の名前はない。
「元々無かったんじゃないか?初めてもらった名前がコレだとか」
エリクトは与えられた上着に袖を通し、冗談ぽく言ってヘファイストスの隣に座る。
「後はどこぞの神の遊びで死人から生き返ったとかな。・・・・・・ま、無いわな」
「そうね、そんな手間の掛かる事をするなら
「
「やっぱりというか何というか、想像通りね。良くも悪くも」
ピラッとステイタスの書かれた紙をエリクトの顔の前に下げる。エリクトはそれを受け取り、眺める。
『エリクト・アプリストス
LV.1
力 I 0
耐久 I 0
器用 I 0
敏捷 I 0
魔力 H 100
《魔法》
速攻魔法〈
《スキル》
』
「貴方って本当に規格外よね」
「その言い方だとこれが普通、と言うわけではなさそうだな」
「ええ、そうね。分かってたことだけど、最初から魔法が発現していることだって珍しいのに、『速攻魔法』ってなによ。聞いたことも無いわよこんなの!」
「口調の割に嬉しそうだな。でもやっぱり他の数値は伸びないか」
「そうなのよ。貴方って不思議なほどに真っ白なのよね。あのとき以前の
「お?これは生き返り説が有力になってきたか?」
「それが本当だとしたらかなり物好きな神ね」
ヘファイストスは肩をすくめて立ち上がり、机の上の呼び鈴を鳴らす。すぐさま扉が開き、椿がカップと紅茶の入ったポットを持って入ってくると慣れた手つきで淹れ始めた。
あらかじめ扉の前で待機していた椿が鈴の音を合図として入ってきたのだろう。
そして紅茶を淹れても居続けるようでカップは三人分用意されている。
「それでどうであった?」
「ほら、こんなもんだよ」
エリクトは自らの経験値が記された紙を紙飛行機にして椿に向けて飛ばす。
「・・・・・・なるほど、これは面妖な」
「そんなにおかしいか?」
「うむ。まぁ、分かっていたことではあるが、
「なるほどね。確かにそりゃ面妖だわ」
「その上に『速攻魔法』だものね、ギルドにどう報告すればいいのよ」
「ム、それもあったな。エリクト、何か覚えはないのか?」
「覚え――心当たりねぇ。・・・・・・つったらアレしかねぇよなあ」
思い返すのはヘファイストスと出会った、あの薄い雲の漂う晴天の空の下の出来事だ。
◆◇◆◇
ヘファイストスを逃がすことに失敗し、エリクト自身も男達に打ちのめされて動けない。
そんな状況の二人を嘲笑うように少しずつ死神の鎌が首にかかる。
(このまんま終わんのかよ・・・・・・。男として女一人守れずに終わるとか、笑われちまうな)
(・・・・・・笑われる?誰に?誰か『俺』を知ってるやつがいるのか?)
(誰なんだ、俺を知ってるやつってのは?・・・・・・『俺』ってのは誰なんだ)
(『俺』を知ってる奴を見つければわかる事か?)
(でも、この状況ではそれも叶わないだろうな)
(何故?)
(力がないから。この状況を脱する力が)
(『俺』にとって力とは?)
(俺の理解の追いつけない所にある不思議なもの。強く、激しく、何にも負けない、しかし目の前の男たち様に無慈悲な暴力ではなく誰かのために使うもの)
(『俺』にとって力とはどんなもの?)
(誰かを守り、誰かを助け、誰かを苦しめるもの。すべてのものに届き、すべての行動を止められるもの。強く、猛々しく、あの空に俺の名を轟き輝かせるもの)
(力に何を求める?)
(速さと威力。なにものより、音も、光をも超える速さ。情勢を一瞬にして逆転させるための強大な威力。今俺を抱えているこの女を一秒でも一コンマでも早く助けるために速さと威力)
(それだけか?)
(望めるなら未来。『俺』を探す未来、誰かを守れる未来)
(自分の事はいいのか?)
(所詮は何も持たない空箱のようなモノだ、これで死んでも何も無くすものはない)
(無欲だなあ。でも、『
(ああ、これが『
(・・・・・・さあ、叫べ。力ならもう持ってる。その
「
エリクトの魂の叫びによって流星が生み出される。すぐに消滅したそれはまさにエリクトの望んだ通り、一瞬で状況を逆転させ、彼を強者と錯覚させるものだった。
そしてその軌跡は彼の未来を祝福するように煌びやかに光り輝いていた。
◆◇◆◇
「有るといえば有るが、どうも要領を得ないな。望んだからとしか言えん」
「なによそれ」
「ま、魔法なんぞ元々要領を得ないものだしのう。仕方がないといえばそれまでだ」
経験があるのか若しくは冒険者ならではの見解か、まるで体験してきたかのような言い様に言葉が詰まる。
「それで、これからどうするつもりなんじゃ?」
「どうってのは?」
「動けるようになったからには働いて貰わなきゃならん。働かざるもの食うべからずだ。大きく分けて四つほど道があるが聞くか?」
椿の問いに頷いて返すと口の端に弧を描き、広げた指を一本ずつ折っていく。
「一つ、冒険者として働く。折角の魔法だからな、それを生かしてモンスターを狩って報酬と珍しいアイテムを持って帰ってきてもらいたい。何、慣れるまで手前も傍に控えるとしよう。
二つ、鍛冶屋として働く。むしろこちらが
三つ、ギルドの上階にある店舗で武器を売りさばく。これは簡単、他人の打った武器をなるべく高い値で売る、これが仕事だ。あまり安く売ると鍛冶師から恨まれるから注意が必要であろうな。
四つ、手前としてはこれがお勧めだ。主神様の御側役――つまりは助手や秘書のようなものだ」
「つ、椿!?」
いきなり表に立たされたヘファイストスは狼狽し、椿につかみかかろうとするが、慣れた手つきで無力化しベットへと放り投げた。とても主神様と崇めている者への所業ではない。
「もちろん、弱い者や知識のない者を主神様のそばに置くことはできない。だから手前が鍛え、鍛冶を教えよう。その他にも主神様の護衛や執務の手伝いなどもやってもらうがな。言ってしまえば一つ目と二つ目に雑用が付いただけだ」
「じゃあそれで」
「エリクト!?」
「よし、決まりじゃ。お主ならそう言ってくれると思っていたぞ。実のところ、手前一人ではこの女神を持て余していたところでな。これで気兼ねなく『工房』にこもれる」
ワハハと大口を開けて笑う椿を横目にヘファイストスはエリクトに掴み掛る。
「な、ななな・・・・・・///」
「ん?何でかってか?」
掴み掛ったままの格好で真っ赤な顔を縦に何度も振る。そんな生娘のような仕草にエリクトは頬を緩ませた。
「そりゃあ、四六時中美麗な女と共にいられるならコレを逃す訳にはいかないだろう?それに加え鍛えてもらえるってんならこれはもう男として断る理由はないよな?」
「・・・・・・」
エリクトの言い分にヘファイストスは美麗だとほめられたことに喜んでいいのかその理由の下らなさに呆れていいのか分からず何も言えなくなってしまう。
その反応に不信感を抱いたのかエリクトはヘファイストスの顔を仰ぎ見た。
「・・・・・・?何かおかしなことを言ったか、俺?俺なりに
その言葉にハッとする。エリクトは前の自分を覚えていない、つまり『自分』が不安定なのだ。だから『自分』が安定するまでせめてもと新しい
そう思ってしまったらもう止まらない。彼の少し困ったような顔が捨てられるのを怖がる犬猫の類に見えてしまう。
「・・・・・・降参よ。好きにしなさい///」
パアァと顔を明るくするエリクトの背後に獣の尻尾が見えたのはヘファイストスだけだった。
「主神様の許可も出たことだし早速ギルドに向かうとしよう」
「ギルド・・・・・・そこを通さなければダンジョンには入れないんだったか?」
「うむ、ダンジョンに入るには冒険者登録が必要なんじゃ。もし登録せずに入った場合、対象ファミリアに対して厳重な注意が課せられる事になる。まあ、それ以前に無断で入るような
主神そっちのけで今後の予定を話し合う二人に待ったを掛けたのは当の主神だった。
「待ちなさい!まさかこのまま行くつもり!?殆どのステイタスが0のこの状態で?」
「まあ、そう角を立てるでない主神様。まずはダンジョンがどのような所か分からなければやりようがないであろう?よく言うではないか、『実践に勝る経験はない』と。もちろん手前も同行する。それに・・・・・・心配するまでもないかもしれんぞ?」
おはこんばんちは、お久しぶりです、鈍亀更新でお馴染みの大神です。
また投稿に半年もかかるという暴挙wゾウガメでもここまで遅かねぇぞw
亀ってかナマケモノなんじゃ・・・
遅れた理由としては書いては消しの繰り返しだっとのと、ただ単に投稿忘れてましたスミマセン
ストックは三つ程あるので適宜更新したいと思っています。
それではその時まで~