ダンジョンで現代兵器をふるうのは間違っているだろうか 作:大神
「ようこそ迷宮都市オラリオへ。私たちギルドは貴方を歓迎いたします」
微笑みとともに歓迎の言葉を発したのはギルドの受付嬢、ミィシャ・フロットと名乗るヒューマンの女性だ。可愛らしい童顔に桃色の髪が映えていた。今後エリクトの
「冒険者登録とともに武器も支給の物を使いたいのだが、選ばせてもらえぬだろうか」
「えっと、それは全然構わないのですが、よろしいのですか?その、恥ずかしながら
「構わぬよ、初心者に最初から強い武器を渡してもそれは武器の性能であってその者の強さではない。初心者には身の丈に合ったものを握らせなければな。そうだろう、エリクト?」
「ああ、それで構わない。むしろアンタ等の作った武器を渡されてもその場で突っ返してやるつもりだったさ」
「うむ、男はそれくらいの気概でないとな!ということで受付嬢殿、よろしく頼む」
「あ、はいっ。ではこちらにどうぞ!」
ミィシャはカウンターを出て武器庫にエリクトを案内する。椿とはここで一旦お別れのようだ。
◆◇◆◇
戻って来たエリクトはボウガンとナイフ、そして身軽な装備と奇妙な鉄筒を手にして椿の元へと戻ってきた。
「うむ、やはり後衛にしたか。良い判断だと思うぞ」
「一番妥当だと思ってな。それに、こんなのもあった」
「エリクト、それは・・・・・・」
エリクトが手にしているそれを見て椿は眉を顰める。
「知っているのか?」
「うむ。うちのファミリアにも持ち込まれた珍品でな、鍛冶を司る主神様ですらその正体を見抜けなかったいわく付の物じゃ」
「へぇ、ヘファイストスが・・・・・・」
「もう一度見せてもらえぬか?」
椿に鉄筒を手渡すと注意深く見渡し、叩いたり肌触りを確かめていた。
「うむ、仕事は荒いし使用方法も分からん。武器としては三流も良いところじゃな。・・・・・・しかし、見るからに『銃』に似ているな」
「『銃』・・・・・・?なんだそれ」
「うむ。『銃』とは斧を作る際、柄の木材をはめるために開ける穴のことを言うのだ。ほら、この部分がそう見えるであろう?」
椿が指さしたのは木に挟まれた筒の部分だった。たしかに斧の持ち手をはずしてしまえばこの様な形に見えなくもない。
「じゃあ、コイツはこれから銃だな。そう呼ぶことにしよう」
「これからとは、これからコイツを使うつもりか?」
「ん、ダメか?」
「ダメではないが・・・・・・。どう使うつもりだ?」
「火薬と鉄か鉛の玉が必要になるんだが、用意できるか」
「鉄の玉はともかく、火薬は難しいかもしれぬ」
「なんでだ?」
「火薬はその特性上、取り扱いが難しい。故にギルドに特別な資格を申請する必要があるのじゃ。しかも火薬自体の単価が高い。今のお主には手の届かぬ代物だな」
「いきなり計画が頓挫したか」
エリクトはガックリと肩を落とし明らかに落胆する。そんなエリクトの年相応の姿に椿は微笑みを浮かべる。
「まあ、今は大人しくダンジョンに向かうとしよう。準備はよいな」
「・・・・・・ああ。期待を裏切らないように頑張るよ」
◆◇◆◇
初めてのダンジョン探索だが、エリクトの頭に緊張の文字はなかった。むしろ積極的に前に出てモンスターを矢で貫く。
薄青色の色彩が彩る洞窟の中でエリクトが足下の小石を蹴散らす音とモンスターの悲鳴が響く。やっとその音が止んだと思えば、辺り一帯にはモンスター
「これは・・・・・・驚いたな」
正直これほどとは予測していなかったと椿の顔は驚愕に染まる。ほとんどの初心冒険者は始めてみるモンスターの凶悪な姿に怯え、本来の力の半分も出せないのが普通である。
なのに目の前で佇むエリクトはどうか。空間を裂くように素早く移動し、壁などを使った三次元的な立体機動を見せ、モンスターの弱点を的確に貫いて絶命させる。まるで戦い慣れた第一級冒険者のような戦い方にただただ驚くばかりだった。
「なぁ、椿」
「うん?」
「モンスターの死骸だが、これはどうすればいい?これじゃあ進めないだろう」
モンスター ――ゴブリンの頭を足で小突きながら椿に指示を仰ぐエリクトは地上での様子とは全く違う雰囲気をまとっており、まるで別人と話しているような気すらした。
「ああ。魔石を取り出すんじゃ、さすれば肉体は灰となって消える。ほれ、これが魔石じゃ」
椿は一番近くに倒れているゴブリンの胴体にナイフを突き刺し、中から鈍色の石を取り出す。するとゴブリンの死骸は灰のように崩れ去り、ダンジョンに呑まれていく。
「おお、すごいな」
「ちなみにこれをギルドに持って行くと換金することができる。今のお主は文無し何じゃから壊すなよ」
「了解した」
エリクトは見よう見まねでゴブリンの胴体にナイフを突き刺して魔石を取り出す。その感覚を忘れまいと今度はコボルトにナイフを突き刺す。
魔石を取り出すと死骸は灰のようになり、崩れて消えたが牙のみが残った。
「椿、これは何だ?」
「うむ、“コボルトの牙”じゃな。それはドロップアイテムといってギルドに持って行けば物によっては魔石より高く引き取ってもらえるし、武具の材料にもなる。拾っておくといい」
「分かった」
魔石とともに牙をポーチに放り込むと次の死骸に刃を突き立てる。だんだん慣れてきたのか取り出し作業にかける時間も短くなっていき、あっという間にすべての魔石を取り終えていた。
「だんだん慣れてきているが・・・・・・もしかして頭の中で反芻しているのか?」
「反芻、ってほど崇高じゃないが、どこに刃をたてたら入れやすいかとかどこに石が埋まってるか、どうすれば効率がいいかは確かめながらやってはいる。俺には知識も時間もないからな、速くお前に追いつくためにはこれくらいの努力は惜しまない」
「手前に、追いつく?」
「現段階で俺の知っている一番強い人間はお前だからな。ヘファイストスを守るならお前に並ぶくらいでないといけないだろう?まあ、いずれは抜かすが」
椿は目を丸くして驚き、そして大きな口を開けて笑った。
それはそうだろう、たった今冒険を始めたばかりの少年が第一級冒険者である椿に追いつくと、追い抜かすと口にしたのだ。彼女からしたら可笑しいことこの上ないだろう。いくらエリクトに知識か少ないといってもこれは耐えられなかった。
「そうかそうか、手前が目標か!」
「何だ、変か?」
「いや。しかし手前の他にも強い奴は多くいる。その者達はどうする?」
「関係ない、全員に勝つだけだ。レベル差?そんなモノどうとでも埋めてやる。なに、10も100も離れてるわけじゃないんだ、何年かけようと必ず追い抜くさ」
エリクトの慢心とも取れるその言葉に、椿は言葉を失った。
だがそれは呆れたからではなく、その堂々とした立ち振る舞いからもしかして、と一瞬だけ考えてしまったからだった。
そのコバルトブルーの瞳に呑まれ、近い将来、名だたる冒険者の集団の先頭で先陣を切ってこのダンジョンの未到達階層を突き進んでいくエリクトの姿を幻視した。
「そう、じゃな。お主ならやるかもしれん」
「ああ、やるさ。首を長くして待つ必要はない、すぐに追いつくからな。で、下に向かう階段が見えてきたんだが、進んで良いのか?」
いつの間にかこんなに奥まで進んでいたのか第二階層に降りる階段まで来てしまっていた。最初の予定ではここまでくることまで考えてなかったのだがエリクトの調子がよすぎたせいですんなり来てしまった。
「いや、ひとまずこれで地上に戻るとしよう。今回でどれだけ経験値があがったか興味がある」
「そうか、じゃあせめて遠回りしてもいいか?もう少しダンジョンに慣れたい」
椿は口端を吊り上げるだけで返答し、踵を返して出口へ向かう。もちろんエリクトの要望通り行きと違う道を通る。
かくしてダンジョンから帰還し、ギルドに寄ったエリクトは上機嫌だった。その表情はまさに新しい玩具を貰った子どものようだった。
「よかったのう」
「ああ、まさか火薬取り扱い資格を得る試験の参考書を貰えるとは思わなかった」
そう。ギルドに魔石を換金しに行くと、エリクトの担当官であるミィシャが火薬の取り扱いについて書かれた本を胸に抱えて待っていたのだ。
おそらく椿とのやり取りを聞いていたのだろう。優秀な同僚に聞いて一番詳しくてわかりやすいものを選んだのだという。あまりの嬉しさにミィシャの手を取って何度も感謝した。
「意外に優秀な人材なのかも知れぬな」
「ああ、意外にもな」
一か月以内に更新達成!これは快挙なのではないだろうか!
冒頭からハイテンションでごめんなさい。大神です。
恐らくですが二次創作を書き始めてから初めて一か月更新が出来たと思います!
だから何だという話なんですが。
次の更新はいつになるかは分かりません。その時の自分の気分次第という事になりそうです。
でわでわ