その夜、俺は雨の降るなか、歩いて帰路に着いていた。
「木場の奴、大丈夫かなぁ…」
『何、彼なら自分の問題をキチンと解決するさ。それより気になるのは君だ、走介』
「俺?」
『君は明らかに木場の言った復讐と言う単語に反応していただろう?』
「……」
『孤児院の事か…』
「…… ああ」
押さえ込んだと思ったのになぁ~…
まさか、こんな近くに地雷があったとは…
「まだまだ未熟だな…… ん?」
家の前に誰かいた。
雨のせいでよくわからないが… あれは木場か?
傘もささずに何やってんだ彼奴…?
とりあえず声を掛けるか。
「おい、木場!!」
◇◆◇◆◇
僕は聖剣が憎い。
さっき遭遇したフリード・セルゼン……
僕の見間違いじゃなければ奴は聖剣をもっていた。
あれを破壊する為なら、僕はどんな事だって…!
「おい、木場!!」
不意に僕は声を掛けられた。
雨でよくわからないけれど、あれは走介君かな?
大方、部長に何か言われて来たんだろう。
「何か用かい」
「何か用かいって… お前自分の姿見てみろよ」
言われて見ると、僕はびしょ濡れだった。
「君に何の関係があるのさ」
「ああ有るな、だってそこ俺の家だし」
よく周りを確認するとそこは前に来た走介君の家だった。
いつの間にか走介君の家の前まで来ていたらしい。
「風邪引くぞ、家に上がれよ」
「いや… 僕の事は放っておいて「答えは聞いてない」ってええ!?」
僕は断ろうとしたが、一瞬でかつぎ上げられ家に連行された。
「ただいま、母さん、父さん」
いつも通り、走介君は仏壇に挨拶していた。
「木場、まず風呂入れ。服は俺のだけどいいよな」
「え? ああうん…」
「風呂は右だ」
そして走介君はリビングに行った。
それから、お風呂から出てきた僕を待っていたのは、走介君が作ったと思われるシチューだった。
「ほら、突っ立ってないで座れよ。冷めちまうぞ」
「どうして僕に…」
「今日は此処に泊まらせるんだから当たり前だろ?」
「いや泊まりなんて…!?」
「いいから座って食え」
「うん…」
どうして彼は僕にこんな事をしてくれるのだろう。
食べたシチューは今までの何よりも美味しく感じた。
食べ終わった僕達だけど、特に何かするわけでもなく、走介君はただお茶を啜っているだけだった。
空気が気まずい…
「聞かないのかい?」
「何を」
「何で部長にあんな態度取ったのか」
「聞いて欲しいのか?」
意外な切り返しだった。
そう言われると僕も黙るしかない。
するとそれを見かねたのか、走介君が切っ掛けを作ってくれた。
「聞いて欲しいなら、好きなだけぶちまけな。少しは楽になるかもだぜ?」
彼のこう言う性格は本当にありがたい。
「わかった、まず僕の過去を話すね」
「ああ」
思えば自分から過去を話すのは初めてかもしれない。
「僕はね、元々教会に居たんだ」
「教会に?」
「うん、聖剣エクスカリバーを扱う為に人工的に聖剣使いを造り出す聖剣計画…… 僕はその被験体だったんだ」
「来る日も来る日も実験、実験…… それでも同士達も僕も神に選ばれた神徒だと言い聞かせて耐え続けた… けど… 実験に耐えきれず日に日に同士達は減っていった… 計画は失敗だったんだ」
「今でも忘れはしない…… 同士達が毒ガスで死んでいく姿を…… 同士達は最期の力を振り絞って僕を逃がしてくれた」
「僕は必死に逃げた、そうじゃなきゃ同士達の死が無駄になると、でも…… 毒は僕の体を蝕んでいてね…… 僕は逃げられずに力尽きてしまったんだ…… そこで僕を悪魔にして生き永らえさせてくれたのが部長なんだ」
そう…… ここまでが僕の過去……
忘れる事の出来ない僕の宿命。
「成程な… それでこの前イッセーのアルバムを見た時にあんな目付きになっていたのか」
「そう、あの写真のお陰で僕は自分の本当の目的を思い出したんだ」
「似ているな」
「え?」
似ているだって?
そう言えば… 今日部室を出るときの走介君のあの目… 確かに僕の目に似ていた気がする。
「どういう意味だい」
「俺も…… 昔教会に居たんだ」
「なんだって!?」
走介君も教会に!?
でも… だったらどうして駒王に…
「ほら、前に言ったろ? 昔は孤児院に住んでいたって」
「うん」
「元々、俺の父さんと母さんは教会の人だったらしくてさ、だから必然的に教会の孤児院に行ったって訳なんだ」
「でも、寂しくはなかった、孤児院の仲間もいたし、遊びに来てくれた奴もいたし…… 何よりもマザーがいた、マザーはなんでも知っててよく話を聞いていた… まあ俺は神様なんて信じて無かったから、よくどやされたけど…」
「教会に居たのに神を信じて無かったの?」
「だってそうだろ? 信じれば神は救いをくれるっていうなら父さんと母さんを助けてくれた筈だ。けど… そうじゃなかったからな……」
僕でさえも教会にいた頃は神を信じていたのに…
走介君の性格は昔っからなんだね…
「話を戻すぜ? 結果的に言えば俺は幸せだった… そう、八年前のあの日までは…」
◇◆◇◆◇
その日は俺の幼馴染みの誕生日だったんだ。
「へへへ…… ■■■■喜んでくれるかなぁ……」
俺は山の中にある、花が沢山咲いている所で花飾りを作っていたんだ。
「早く持っていかなきゃ!!」
幼馴染みと皆が待っている孤児院に戻る為に急いで山を下りたんだ。
山を下りている途中、俺はある花を見つけたんだ。
「うわぁ…… 蒼い薔薇だ…」
何故か蒼い薔薇が咲いていてな、当時の俺は蒼い薔薇が自生しないのを知らなかったけど、その幼馴染みが青色が好きな奴でさ、俺は迷わずその薔薇を摘んだんだ。
「珍しいってマザーがいっていたからきっと■■■■喜ぶなぁ~」
それが別れ道だった。
ドカァァァァァァァァン!!!!
近くで巨大な爆発があったんだ。
「うわぁ!? な、何!?」
爆発のあった場所は孤児院だった。
「孤児院が!」
俺は急いで孤児院に戻った。
そして孤児院に着いた時には……
「あ…… あ、ああ!?」
孤児院は燃えていた。
「うわぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!」
俺は絶叫しながら燃える孤児院の中に入った。
まだ生きている奴がいるんじゃないかって。
「マザー! 皆! ゲホッ!! 何処なのー!」
もう諦めかけた時だった。
「う、うう…」
マザーのうめき声が聞こえたんだ。
「マザー!」
マザーは瓦礫の下敷きになっていた。
「マザー! ゲホッ!! ゲホッ!! 確りして!」
「その声…… 走介…なの……?」
「そうだよマザー! 僕だよ!!」
「よかった…… 私の…… かわいい…… 孫…」
そう言ってマザーは俺を抱き締めてくれた。
「え……? マザーが… 僕のおばあちゃん?」
「今までごめんね走介、でも他の子と違う扱いをするわけにはいかなかったから……」
「そんなこといいよ! 早く逃げよう!!」
「私はもう助からないわ…… あなただけで… いきなさい」
「嫌だ! マザーも一緒じゃなきゃ…」
「走介危ない!!」
俺はマザーに突き飛ばされた瞬間、瓦礫が落ちてきてマザーへの道を塞いだ。
「マザー!」
「走介! あなただけでも逃げるのよ!」
「でも…」
「甘えるな!!」
「!?」
「あなたの命はあなた一人だけのものじゃない!! 私達は何時でもあなたを見守ってる!! だから生きるのよ走介! 行ってぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
「おばあちゃぁぁぁぁぁん!!!!」
そして俺は生き残った。
けれど… それからの方が俺にとっては地獄だった。
何処に行っても疫病神扱い。
教会の奴等が暴行を加えてくることなんてざらにあった。
そして俺は… 教会を出た……
暴行を受ける中で放火の犯人が別にいるって言うのを聞いたから、最初の内は復讐が俺の生き甲斐だったが、九歳の子供のすることだ、すぐに力尽きて行き倒れちまった。
◇◆◇◆◇
「それで俺はサーゼクスさんに拾われて、今に至るって訳だ」
走介君にそんな過去があったなんて…
普段は全くそんな素振りを見せないのに…
「君は教会が憎いのかい?」
「ああ、憎い… 教会の奴等だけじゃねえ…… 孤児院を燃やした犯人も、両親を殺した奴も、全て憎い」
確かに僕に似ているかもしれない。
教会に人生を狂わされたと言う意味では。
「さて、暗い話はここまでにして、明日もあるんだ、早く寝よう」
「え?」
「お前荷物持ってきてないだろ? ドライドロンで送ってやるからさっさと寝ようぜ」
「…… ああうん、わかった」
それから僕達は普通に寝た。
今日は走介君の貴重な過去が聞けて良かったかもしれない…
僕も走介君に話してなんだかすっきりした気がする。
ありがとう、走介君。