マリアを埋める為の穴を掘った。
掘っている間、マリアとの思い出が、俺の頭の中をグルグルと回り続けた。
『人間さんが喋ったぁ~!?』
『嬉しい…… ありがとソウスケ!』
『大好き、ソウスケ』
『ソ~ウ~ス~ケ~!』
「っ…!」
明るく元気な彼女の声を…… もう、二度と聞くことは出来ない。
そう思うと…… 爺さんに教わった通りに穴を掘っても…… 中々穴を掘る事が出来なかった。
数時間後、漸く人一人入る穴を掘り終え、マリアの亡骸を抱えた。
唇にキスをし、穴の中に横たわらせる。
その顔は、幸せそうな顔だった。
「…… ここなら、お前が見たがっていた薔薇畑も見えるだろ? マリア」
マリアを埋める場所は、マリアが好きだった薔薇畑を見下ろす事の出来る丘にした。
あいつが、少しでも退屈しないように…
「じゃあな、マリア」
マリアの首に掛かっていたペンダントを俺の首に掛けて、穴を埋め始めた。
『あーあ。可哀想に…… これで本当にお別れだな』
その時だった、前に暴走して精神世界に訪れた時に現れた俺の影が現れたのは。
『人外は何時だってそうだ。俺達の大切なモノを奪っていく。それを憎いと思わないか?』
「黙れ……」
『平気そうに振る舞うなよ、憎いだろ?人外が、殺したいだろ?人外を。力があれば出来るんだ、求めろよ! 全てを殲滅する力を!』
「黙れよ……!」
『マリアはもう何も出来ない。復讐することも、恨み言を言うことも、これじゃあ本当に無駄死にだろ?』
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇ!!!!」
無駄死にだと!? マリアの死が…… 無駄死にだと言うのか!? ふざけるなよ……!
「マリアは…… この村の人達は! ただ生きる事に必死にだった!! それでも精一杯生きて!明るく楽しそうに笑って!! 毎日を生きていたんだ!! それを無駄だとは言わせない!!!! 言わせてたまるか……!」
『だが事実だろう? それに、今は力があるじゃないか』
影に指差され、ポケットから大きめの長方形の物体を取り出した。
それは鍵の様な形をしていて、ドライブのライダーマークが刻まれていた。
『ソウ兄さん、これ……』
『……… これは?』
『トライドロンキー、アザゼルがクリム無しでもトライドロンを遠隔操作するために作った物だよ。…… ソウ兄さん、もし戻ってくる気になったら…… それ使って戻って来てよ、皆待ってるからさ……』
俺は、アレンから託されたそのキーのライダーマークを押した。
これで暫くしたらトライドロンが来るだろう。
「………」
そうして俺はマリアを完全に埋めて、簡単に作った、木の十字架を埋めた場所より前に突き立てた。
「……… ゴメンなマリア…… 今度、ちゃんとした物を用意するよ……」
十字架を擦りながら俺は呟いた。
十字架を擦る俺の手を、影は誘惑するように包み込む。
『これで心置き無く殲滅出来る! さあ、先ず何処から攻める?』
「…… 勘違いするな……」
『何?』
影は、訝しむ様に俺の後ろに回り、うざったく首に手を回す。
「俺はマリアに言った!!!! もう二度と、種族云々で、誰かを憎んだりしないと!!!!」
『だが事実、お前には憎しみがあるだろう!?』
「確かにそうだ! だが、マリアには無い!! ここで俺が人外を憎み、復讐を始める事は…… この村の人達を! なによりマリアを否定することになる!! それは…… マリア達とした約束を…… 違える事になる」
あの時、マリアと婚約する時に爺さん達に誓った約束、それは……
「それは…… 俺の命よりも重たいモノだ……」
『愚かな!! 貴様はそんなちっぽけなモノの為に復讐のチャンスを棒に振るのか!?』
「愚かなのは貴様だ! 消えろ!! 俺の中から出ていけ!!」
俺は咄嗟に、斧を掴んで勢いよく振り返り、俺の影に向かって降り下ろした。
『よせ…… 止めろ!!』
「オオォォオォオォオッ!!!!」
『止めろぉぉぉぉぉぉっ!!!!』
斧は影を霧散し、灰の様になって散っていった。
俺はそれを見届けると、小さく呟いた。
「じゃあな…… 俺の生き甲斐……」
すると、彼方から懐かしいクラクションの音が響く。
目を向けると、トライドロンが丁度やって来た所だった。
そしてシフトカー達も、自分たちの主を見つけた事に興奮して、俺の回りを世話しなく旋回した。
「…… 久し振りだな…… 皆」
声を掛けると、更に嬉しそうに各々クラクションを鳴らしたり、動きで喜びを表現している。
サーカス、デコトラ、コマーシャルなど、自分の能力をフルに活用していた。
「…… ゴメンな、俺の心が弱かったばかりに…… 迷惑かけちまって……」
すると、コマーシャルが皆を代表して映像で、俺に伝えてくれる。
《私達はそんなこと気にしていない。マスターが無事で良かった。私達は、二度もマスターを喪う所なんて見たくない》
それを聞いて、皆頷く様に機首を上下に動かす。
「俺を…… 許してくれるのか?」
《許すも何も、私達は怒っていない。私達はマスターと共に在るもの。故に、
そーだそーだと言わんばかりに、シフトカー達は動きを荒ぶらせる。
「…… ありがとな、皆」
すると、トライドロンの影に隠れているシフトカーを一台見つけた。
それは、俺の暴走の切っ掛けになったシフトカー、シフトデッドヒートだった。
俺はデッドヒートを手の平に乗せると、デッドヒートはプルプルと震えていた。
コマーシャルはデッドヒートの思っている事を伝えてくれた。
《デッドヒートは責任を感じている。マスターを暴走させたのは自分のせいだと。デッドヒートは最後まで私達と来るのを躊躇っていた》
そうか…… 今更ながら、コイツらにも意思が合ったことを再確認させられる。
ベルトさんだけじゃない、シフトカー達にも、俺は支えられていたんだ。
「デッドヒート、気にしないでくれ。あれは俺のせいでもあるんだ。俺の心が復讐に負ける程弱かったから……」
デッドヒートはそうじゃないと、激しく左右に車体を揺さぶる。
悪いのは自分だって言いたいのか、だったら……
「だったら一緒に乗り越えようぜ。またあんな事にならないように、一緒に強くなろうぜ。それに、お前はもう完成しているじゃないか。そのサイドカー、似合ってるぜ」
そう言うとデッドヒートは、嬉しそうに車体を動かし、クラクションを鳴らす。
「あとは…… 俺だな……」
俺は、トライドロンに乗り込む。
「やっぱりか……」
トライドロンのナビゲーター部分、何時もベルトさんが鎮座している場所に、ドライブドライバーは置いてあった。
「…… 起きてるんだろ? ベルトさん」
『…… Yes、何時気がついたんだい?』
すると、ドライブドライバーのディスプレイに光が灯り、ベルトさんの顔が現れた。
「今だ。あんたがここに居たからな、何となく分かったよ……」
『そうか…… 暫く見ない内に、大人の顔つきになったようだね、走介』
「色々あったからな……」
本当に色々な事があった。
マリアと出会って…… マリアに恋して…… 結婚して…… 短い時間でかなり生き急いだ気がする。
俺はどうしてもベルトさんに聞きたい事があった。
「なあ、何でベルトさんは俺と喋ろうとしなかったんだ?」
『君の為だった…… 頼るものがなくなれば少しは冷静に物事を判断してくれると思ったんだ。だが、君の心は私の想像を遥かに越えて荒んでいた。だから暴走したときアザゼルに頼んだんだ』
◇◆◇◆◇
私をメンテナンスし終えた時の事だ……
『話って何だ?クリム』
『アザゼル、折り入って頼みたい事があるのだが…』
『クリムからの頼みとは珍しいな? 俺に出来る事なら言ってくれ』
『済まない、頼み事と言うのは……』
そこで私は、デットヒートの完成、トライドロンキーの製作、そして君の暴走の克服について話したんだ。
『…… 正気か?』
『ああ…… だが走介は人間だ。くれぐれもシンと同じには見ないでくれ』
『お前さんがそれでいいならいいが……』
『ああ、走介の為に、私は走介とのコミュニケーションを断つ、冷静な心を取り戻してくれるまで……』
◇◆◇◆◇
『あとは、君の知っている通りだ。まさか自殺までするほど追い詰められていたとは…… 知っていたら、君とのコミュニケーションを断ったりはしなかっただろう…… すまない、走介』
そうか…… ベルトさんは俺の為に……
「ありがとう、ベルトさん」
『何を言う。私は君に恨まれても仕方の無い事をしたのだぞ? 罵られはすれど、君にお礼を言われる様な事は……』
「それでもだ。今度は俺の話を聞いてくれよ、ベルトさん」
そう言うと俺は、今までにあったことを話し出した。
「自殺したあと、俺は一人の女の子に拾われてさ、ソイツは…… 見ず知らずの俺の為に、色々してくれたんだ…… 食べ物と服、寝床をくれて…… 一家全員で俺を歓迎してくれたんだ」
「何とか恩を返そうとして、農作業を手伝って…… 少しして、俺はその女の子を好きになったんだ…… 多分…… 初恋って奴かもしれない」
『ほう! 走介が恋か! 中々に興味深い話じゃないか』
「話の腰を折るなよ…… で、アレンが俺を探しに来てくれたんだけど…… 俺はもうドライブになるつもりなんてなかった。だから断って、マリアと結婚して、穏やかに暮らそうとしていたんだ……!」
話していたら、マリア達との事が鮮明に思い出され…… 俺は涙を溢していた。
『どうした? 走介』
「…… 俺は……! また、守れなかったんだ…! 大切な人を……! また……」
『走介……』
「俺が替わりに死ななくちゃいけなかったのに…… なんで…… なんで!!」
『走介!!!!』
「!?」
不意にベルトさんが怒り、俺はビビった。
それはそうだろう、俺はベルトさんの怒った所を見たことがないから…
『間違っても!! 死ななくちゃいけない等と口にするな!!!! それは君が愛した者達への冒涜だ!!!!』
「…… だって……」
『今回だけじゃない。何故、マザークレアが君を救ったか分かっているのか!? 彼女は言った筈だ!! 何時でも君を見守っていると!! それは、その少女だって変わらないのでは無いのか!?』
俺は、首に掛かっていたマリアのペンダントを見た。
すると、ペンダントが開き、中から俺とマリアの結婚式の時の写真が出てきた。
「マリア…!」
『そして思い出せ!! まだ君には、喪っていない者達がいるだろう!?』
そう言われて思い出すのは…… ロマリー、アレン、イッセー、小猫、部長、オカルト研究部の皆。
「あ、ああ!! 居るよ! 俺には、まだ守るべき人達がいる!!」
『ならばいい加減、その錆び付いたエンジンを動かす時だ!』
「…… 俺に…… 守れるかな…… 今度こそ……」
『今度は私もいる。大丈夫、きっと守れるさ』
「ああ。行こうベルトさん! 皆の所へ!!」
『OK!Start our Engine!!!!』
俺はトライドロンにキーを挿し込み、エンジンを駆けた。
それと同時に、俺の心も熱く燃えたぎってきた。
そんな俺を乗せたトライドロンは、グレモリー領に戻るべく、タイヤを回転させ始めた。
遂にエンジンが掛かった走介!!
次回タイプデッドヒート変身まではいきたいです!
あと、ドライブ魂見ました?
ハート様の扱いが雑でしたが、本人だったし、短編として見れば良い作品だと思いました。
W魂とかに期待ですね!