「一体… 今度は誰がお前を泣かせたんだ?」
「そんなの決まってます…… 貴方です!!!! 走介先輩!!」
だよなぁ~…… 自殺なんてやらかしといて心配しない奴は居ないよな。
どうやらまた俺が小猫を泣かせたらしい。
「走介!? 貴方死んだって…」
「未練たらたらでまだ死ねませんよ。イッセー! 久しぶりだな」
「お前…… 今の今まで何やってたんだ!?」
「…… 色々あったんだよ……」
そう言って俺は振り返る。
トライドロンを挟んで向こう側に居たのは、美猴と知らない二人だった。
「よう仮面ライダー、久しぶりだなぁ」
「会談の時以来か? そっちの二人は知らないが」
「こいつらか? こいつらは……」
美猴が説明しようとすると、割り込んで黒歌が話し出す。
「ふぅ~ん。あなたが仮面ライダーなんだ…… ライズをボロボロにしてくれた……」
「ライズ? 何でアイツの名前が出てくるんだよ」
「黒歌はライズの恋人なのさ。俺はハート、見ての通り、
と、赤いロングコートを着た青年が自己紹介をしてくる。
『気を付けろ、走介。あのハートと言う男…… この中で一番強いぞ』
「気を付けろよ走介。そいつデッドゾーンを使ってくるぜ」
デッドゾーンを!? それは…… 確かに強そうだな…
「さてと…… それじゃあ、俺っちは竜王様でもやり合おうかねぃ」
「フン、言うではないか猿ごときが! 私を魔龍聖タンニーンと知っての事かッ!!!!」
「当然だろ!!!! 竜王とやり合う機会なんて滅多にねえんだからよぉ!!!!」
そう言うと美猴は、出現させた雲に乗って、タンニーンさんに向かっていき、タンニーンさんも火を吐いて応戦を始めた。
「そっちの猫と神器使いは何とかしろ!! そのぐらいの障害を乗り越えて見せろ!!」
『あっちはタンニーンに任せていいだろう。我々は目の前に集中するとしよう』
「ああ」
だが、問題は……
「にゃん♪」
アレが小猫の姉か…… 見るだけでも分かるドス黒いオーラだな。
文字どおりの殺意の塊!!
「姉さま。私はそちらに行きます。だから、三人は見逃してあげてください」
!? はぁ~…… いきなり何を言い出すかと思えば…… この後輩は……
「姉さまの力は私が一番よく知っています。三人では…… 勝てません」
「それでも、あなたを渡すわけにはいかないわ。あんなに泣いていた小猫を目の前の猫又は助けようともしなかった!」
「妖怪が他の妖怪を助ける訳ないじゃない。今回は手駒が欲しかったから、白音が欲しくなっただけ」
「ム、実の妹に手駒は無いんじゃないのか、黒歌」
「あんたは黙っててハート」
本当にこの後輩は……
「くだらないな小猫」
「!? 何が… くだらないんですか…」
「だってよ。泣くほど嫌なのに、アイツの所に行くって…… くだらなさ過ぎるだろ?」
「でも…… 姉さまには……」
「勝てないって? そんなこと誰が決めた。少なくとも…… 俺は…… もう、エンジンを止めるのだけはウンザリだね!!」
俺はそう言うと、ハンドル剣とドア銃を持って二人に向かっていった。
「何なの?アイツ」
「さあな、だが嫌いじゃ無い」
ハンドル剣を降り下ろすと、ハートは異形に姿を変えて、ハンドル剣を受け止めた。
『まさか仮面ライダーと戦える機会があるとはな!! 楽しくなりそうだ!!』
「そうかよ!!」
俺は後退して、ドア銃を乱射するが、ハートは体に紅い稲妻を迸らせて、それを防ぐ。
「どうして…… どうしてそこまで…… 私の事……」
「俺はな小猫! クッ! 今回、色んなモンを失ない過ぎた!!!! グアッ!? だから…… もう何も、失ないたく無いんだ!!」
俺は、泣きじゃくっている小猫にそう言いながらハートと戦っていた。
『随分と余裕だな!!』
「グアァァァアッ!!!!」
そのせいか、稲妻を纏ったハートの拳を避けられずに食らい、吹き飛んでしまった。
「走介先輩!!!?」
慌てて小猫がよってくるが、俺は気にせずまた立ち上がる。
「もう…… いいんです… 止めて下さい!! これ以上走介先輩が傷つく事は無いんです!!」
「あっはっは!! 弱すぎにゃ~ こんなのにライズはボロボロにされたの? ホント… ムカつく!!」
いきなり黒歌は俺に魔力弾を放つが、今避ければ小猫にも当たる。
「小猫、危ない!!」
必然的に俺は小猫を抱き締め、魔力弾から庇った。
「グアッ!!」
「先輩…… どうして……」
「ハァ…… ハァ…… 言ったろ? もう大切な者を誰も失ないたくないって……」
今、漸く分かった。
本当に小猫が恐れているものを……
「小猫…… お前、黒歌と自分の力が怖いんだろ?」
「…… はい」
「だろうな。俺も、自分の力が怖かった。街一つを簡単に焼き払えてしまう力。それを無意識に使う俺自身も…… 何もかもが怖かった。だから自殺したんだ」
「でもさ、気づいたんだ。何時までも怖じ気付いてはいられない。正直、今でも怖いけど… 小猫の、仲間の為なら、もう一度だけ、挑戦してみる」
そう言って俺は、ポケットからシフトデッドヒートを取り出した。
「でも先輩が!!」
「何時かは通る道だ。お前が少しでも勇気が出せる様に…… 俺は…… もう一度だけ、デッドヒートを使う!!」
そして俺はベルトさんのイグニッションを回し、待機状態にした。
「いくぜ…… ベルトさん!!!!」
『ああ、今度こそ、乗りこなしてみせよう!!』
デッドヒートのバイクを、サイドカー部分に収納して、シフトブレスに装着した。
「変身!!」
『DANGEROUS!!!!』
「ウグッ!? グアァァァアッ!!!!」
装着した瞬間、デッドヒートから紅い稲妻が迸り、俺の体を包み込む。
予想はしてたけど…… 完成しているとはいえ…… スゲェ、パワーだ…… ッ!!!!
「走介先輩!!」
「「走介!!!!」」
「クッ…… 来るなッ!! 万が一、グアッ…… 暴走したら…… アグッ!? 巻き込んじまう…」
前に、比べて…… 話す、余裕は…ある、がッ!! …… それでも…… 意識が、飛び、そうな、のは…… 変わら、ねぇッ!!
「何するのか知らないけど、このままやるにゃん♪」
『いや待て黒歌。このままやらせてみよう』
どうやら…… ハート達は、傍観して… くれる… みたいだ…
けど、もう…… 意識、がッ!!?
――――― ソウスケ。
「!」
もう意識が飛びそうになり、暴走一歩手前まで来た瞬間、ある声が、俺に聞こえてきた。
その声に意識を集中すると、周りの風景が一面果ての無い大草原に変わり、その場には俺しか居らず、デッドヒートの使用による痛みも消えていた。
「ここは……?」
「ソウスケ」
「!」
ああ、出来れば…… 其処に居るのが、彼女であります様に……
俺は、聞こえてきた声の方を振り返った。
其処に居たのは、俺の愛した最愛の人。
「マリア……」
俺の妻、マリアだった。
「ソウスケ、私との約束…… ちゃんと覚えてる?」
「ああ、勿論だ」
「なら、きっと大丈夫。きっとその力を正しい事の為に使えるよ、きっと……」
マリアは、俺の傍まで来て俺の両手を、真っ白なその両手で包み込んだ。
「マリア、俺は…」
「その先は言わないで、ちゃんと分かってるから」
「そうか…… だったら俺はマリアに…… 君に誓う。俺が ―――――」
その誓いを聞いたマリアは、驚いた顔をしたあと、俺の大好きだった、あの輝く笑顔を見せてくれた……
「ア、グッ!!」
ヘヘッ…… ありがとう、マリア。
お陰で…… どうにかなりそうだぜ!!
『まだ耐えるのか!?』
「もう止めて下さい先輩!! これ以上は本当に死んでしまいます!!!!」
「俺は… 約束したんだ!!!! アイツが見れなかった花!光! 景色! それら全てを守ってみせると!!」
俺の体に蠢いていた紅い稲妻が、俺の体を痛め付けるものから、優しく、まとわりつくものに変わっていく。
「俺はもう二度、復讐の炎は燃やさない!!!」
その瞬間、俺の中で何が変わった。
『DRIVE!!!! type DEAD HEAT!!!!』
軽快な音声を掻き鳴らしながら、俺の体に鎧が纏われ、紅白のタイヤがたすき掛けされ、右肩にDーHコウリンが付きメーターが出力の計測を始める。
ベルトさんのディスプレイも、デッドヒートを表すDに変わった。
赤と白が合わさった、マッハの様でもあってドライブの様でもある。
そんな印象の鎧が、タイプデッドヒートの鎧だった。
『ウオォオォオォオオッ!!!!!!』
そして俺の体から、変身した時の余剰エネルギーが解放されて、黒歌が作り出した空間を弾き飛ばした。