このままじゃ絶対不遇な奴が出てくるな……
俺は、ハンドル剣を構えてはぐれ悪魔に向かっていった。
『ハアッ!!』
「ギイィッ!?」
ズバッ!!
ハンドル剣ははぐれ悪魔の体を切り裂き、切り傷から煙を吹き出す。
「こ、これは!? 光力だと!? 貴様、教会のエクソシストか!?」
『ちょっと違うな。こいつは堕天使の総督様が作ってくれた物だ!!』
「薄汚れたカラスの手先がぁぁぁぁ!!!!」
全く、人を食うような奴はどうしてこう怒りっぽいのか?
どう見ても薄汚れてんのはてめえの方だろうが。
それに…… ハートやライズに比べれば、遅すぎるぜ!!
俺ははぐれ悪魔の腕を掴み、合気道の要領で仰向けに地面に叩きつけた。
「カハッ!?」
『人を食うような奴に言われたくないな!』
「くそぉ…… コロス…… コロシテやるぞぉぉぉ!!!!」
すると奴は起き上がって更に激昂しながら向かってくる。
『チッ、狂ってやがる』
『ダンプでFinishだ!!』
『ああ! 来い、ダンプ!!』
俺はやって来たランブルダンプを、シフトワイルドと入れ換えて、タイヤ交換した。
『タイヤコウカーン!!!! ランブル ダンプ!』
トライドロンから、黄色いドリル付きのダンプカーのタイヤが射出され、ワイルドのタイヤを押し出し装着され、ドリルは手に着いた。
『ハァァァァァ…… オリャァッ!!』
「ギャアァアァア!!!!」
向かってくるはぐれ悪魔に俺は、カウンターをするように、懐に潜り込んでドリルを叩きつけ吹き飛ばした。
痛みが激しいのか、はぐれ悪魔はその場でのたうち回る。
『これで決める!』
イグニッションを回し、イグナイダーを押し、ダンプを倒して必殺技を発動させた。
『ヒッサーツ!! フルスロットル!! ダンプ!』
『ハァァァァァッ!!!!』
はぐれ悪魔に向かってドリルを突き出すと、ドリル部分が伸びて、はぐれ悪魔の胸を貫いた。
「ガッ!? グアァアァアァア!!!!」
ドカァァァァァァン!!!!
貫いた胸の穴からエネルギーが迸り、はぐれ悪魔は爆発した。
『ふぅ…』
『Nice Drive! ハート達と戦った時にも思ったが、暫く鍛えていなかったわりにはよくここまで強くなったものだ』
『農作業は結構体使ったんでね』
これも、あの村で培ったことの一つだ。
俺は、ベルトさんに返事をしながら襲われていた女性の確認に向かった。
『大丈夫ですか?』
「え、ええ。大丈夫よ。それにしても貴方…… 凄かったわねぇ……」
『まあ、それなりに鍛えてますから』
俺は変身を解いて元の姿に戻った。
「あら? あんな戦いするからどんな人かと思えば…… 意外とカワイイ顔しているわね。もしかして年下?」
「カワッ!? えっと…… 確かに十七ですけど…」
「じゃあ二つ年下なのね♪」
な、なんだこの人…… 俺が年下って分かったとたんなんか雰囲気が変わったぞ!?
「…… あれ?」
俺はここであることに気がついた。
「もしかしてさっきの劇に出演してました?」
さっきベルトさん達と見ていた劇に出てくるヘンリエッタの人にそっくりなのだ。
「私のステージ見てくれたの?」
「はい、凄く良い演技でした。素人の俺が見ても分かる位に!!」
「ホント!? ありがとう! お姉さん嬉しい♪」
そう言って彼女は、俺の顔をその豊満な胸に埋めた。
「んー!? んんっ!! んー!! んー!!!?」
息がっ!! 息が出来ねぇ!? イッセー達は何時もなんでおっぱいに固執するんだ!? これは凶器だろ!?
「あら? ごめんなさい♪」
「ぷはっ!! …… ケホッ!! …… はぁ… はぁ… 絶対悪いと思って無いでしょ!? というよりは楽しんでません!?」
「エヘヘ…… バレちった☆」
テヘ☆ じゃないでしょテヘ☆ じゃあ……
危うくこっちは窒息するところだったんだぞ……
「…… その様子だと大丈夫そうですね。それじゃあ俺はこれで」
兎に角、早めに切り上げてホテルに帰ろうとすると。
「はいストーップ」
女性に腕を掴まれた。
「まだ、何か?」
「さっきまで襲われていた可憐な美女をほったらかすつもり?」
…… 確かに、そう言われるとこのまま帰る訳には行かない。
また襲われるかもしれないし。
「はぁ…… 分かりました送りますよ。 で?何処ですか?」
「貴方観光客でしょ? だったら、同じ所だと思うなぁ~♪」
へっ?
そうして……
「…… マジかよ」
「そう言う事♡」
着いた彼女の目的地は、奇しくも俺と同じホテルだった。
「それじゃ、おやすみなさい。カワイイ仮面の騎士様♪」
そう言って彼女は、自身が予約したであろう部屋に行ってしまった。
『強烈な女性だったね…』
「出来れば二度と会いたくねえわ……」
彼女の強烈な個性に圧され、戦闘よりも寧ろ彼女との会話のほうが疲れてしまった。
その日は、疲れもあり、部屋に入ったら早々に寝てしまった。
そして次の日……
「…… 神様ってトコトン俺の事嫌いなんだな……」
翌日の俺は気分が落ち込んでいた。
何故なら……
「ハァ~イ、昨日ぶりね?」
何故か昨日助けた女性に出待ちされていたからだ。
「何の用ですか」
若干イライラしながら問いかけると、彼女は悪びれる事なく言った。
「怒らないで。考えてみれば昨日助けて貰ったのに、何のお礼もしていなかったでしょ? 今日は丁度オフだし、お礼も兼ねて一緒に観光しましょ?」
「いいですよ別に。お礼してほしくて助けた訳じゃないですから」
「あら? 意外と謙虚…… ね、どうしてもダメ?」
「ダメです!」
「そう…… グスン…」
「えっ!?」
俺が強く断ると、彼女は目に見えて落ち込み、涙を流して泣き出した。
「酷いよ…… グスッ、私はただ、お礼がしたかっただけなのに…… そこまで嫌がるなんて…」
「えっ? いやちょっ!?」
不味い!? 俺のせいじゃないけど不味い!?
しかも周りの視線が痛い!?
「あ、あの……」
「ヒック…… なぁに?」
「別に嫌がってる訳じゃないですから……」
「なら、私と一緒に行く?」
「えっと…」
「行ってくれないんだ……」
ああ!? もうダメだ!? し、仕方ない!! こうなったら腹を括るしかない!!
「分かりました行きます、行きますよ」
「ありがと!」
「はい…… えっ?」
行くと返事をした途端、彼女は泣くのを止めて、俺の腕をロックした。
ま、まさか……!?
「う、嘘泣き!?」
「ピンポーン! 大正解! 私の演技、上手かったでしょ?」
は、嵌められたーーーー!!!!!?
「勿論、男に二言は無いよね?」
「うっ…!?」
「無いわよね!」
「……… はい」
「よろしい! それじゃあ、レッツゴー♪」
有無を言わせない彼女の迫力に圧倒された俺は、二つ返事で頷いてしまった。
「た、助けてくれ…… ベルトさん……」
『走介…… これも試練だ…』
ベルトさんに助けを求めたが、何かを悟ったように、ベルトさんは静かに俺を突き放した。
「はは…… もうどうとでもなれ……」
俺は完全に諦め、放心しながら、彼女に引き摺られて言った。
恐らく、この場にいる全ての男性が思っただろう……
女って怖い…… と。
「あっ、そうだ。まだ名前を聞いてなかったね」
「…… 走介デス……」
「オッケー!走介君ね。 お姉さんの事はセーヌって呼んでね☆」
「…… ワカリマシタ、セーヌ=サン……」
「私忍者を憎んでないからね!?」
そんなこんなで、俺と彼女、セーヌさんの珍道中は始まった。
「ムッフッフ~♪ 何処に行こうかな~」
「はぁ……」
どうしてこうなった?
ホント、セーヌさんの思考には着いて行けない。
だって……
「フランスって言ったらエッフェル塔よね!」
とか言って登らされ……
「次は凱旋門よ!」
とか言って一度行った凱旋門にまた来ることになり……
「フランスと言えばワイン! と言うわけで葡萄畑にレッツゴー!!」
と言って葡萄畑に連れていかれた。
まあ…… ワイン作りを手伝わせて貰えたからまだ有意義だった方だ。
「ほら走介君!こっちこっち♪」
「ちょっ!? 待ってぇぇぇぇぇっ!!!?」
そして今、何処かも分からない所に向かって歩いている。
「はぁ… はぁ… こ、今度は…… 一体…… 何処に行くんですか!?」
「アハハー ゴメンねぇ~。でももうすぐだから、ガンバって!!」
そう言ってセーヌさんは、笑いながら丘を登っていく。
俺は着いて行くのにやっとな状態なのに…… なんであの人は元気なんだ!?
『女性と言うのはそう言うものだ……』
「また悟った事言ってるけど…… 経験があんの?」
俺がそう聞くと、ベルトさんは困った顔をして……
『…… 聞かないでくれ……』
と言われた。
その声色が、余りに悲壮感が漂っていたので、聞くのは止めておいた。
「走介君!ほら、見て!!」
「えっ? …………!」
丘を登りきって振り返ると、そこには沈みかけて真っ赤に染まった太陽があった。
俺はその雄大さに驚き、言葉が出なかった。
「スゲェ……!!!!」
「来た甲斐があったでしょ?」
「はい! でもよく知ってましたね?」
「昔からね、こういう景色を誰かと見るのが夢だったの…… ありがとう走介君、私の夢の一つを叶えてくれて」
そう言うセーヌさんの横顔は、夕陽に照らされ、まるで宝石のように輝いていた。
謎の舞台女優セーヌ。
彼女は一体何者なのか?
そして遂に!あのライダーが走介の前に立ちはだかる!