それではどうぞ!
「走介君!? しっかりして! 走介君!!」
「………」
私を庇ってキメラの攻撃を受けた走介君は、地面に激突した衝撃で気を失ない、変身が解けてしまっていた。
「グウゥゥ……」
こうしている間にも、キメラは此方に近づいている……
それにしても、どうして私まで攻撃したの!?
考えられるとしたら……
「曹操…… あいつ、レオナルド君の失敗作を寄越したわね…」
レオナルド君はその幼さから、稀に失敗作を生み出してしまう事がある。
そんな適当な物で…… いや、原因はハッキリしているか……
「走介君の…… ドライブのデータを無理矢理詰め込んだから…」
「ガアァァアァアァッ!!」
「ッ!!」
私は、向かってくるキメラの拳を、走介君の体を転がしながら避けた。
「…… 威力だけは、凄まじいわね」
暴走しているなら付け入る隙はあるはず、走介君をここに置いて……
「こっちよ!」
私は、走介君から離れる様に走り出した。
「グルルル……」
暴走して、理性を失っているキメラなら動く物に反応するはず。
それも攻撃してくる奴なら……
「尚更、こっちに来ない訳にはいかないよね!」
『ガ~ン』
ルパンガンナーでキメラを射撃しながら、私は走り回る。
気絶して無防備な走介君に、こいつを向かわせる訳にはいかない!
……… って、何で私、敵の筈の走介君を守ろうとしているんだろう?
「ゴゴゴゴカァッ!!!!」
「そんな大振りの拳に当たるもんですか!!」
再び、大振りに放たれた拳を私は、キメラの腕に飛び乗る事で躱した。
「てえぇぇぇぇぇぇい!!!!」
そのまま腕を駆け登り、キメラの顔面に蹴りを当てる。
「グガアァアァッ!?!?」
激痛が走った事に驚いたキメラは、そのまま仰向けに倒れた。
「これなら…… 行きなさい、
ルパンガンナーを乱射し、数体の虚構の兵士を作り上げる。
彼らの姿は、ハート達ロイミュード派達の感情の神器の初期段階を参考にしている。
頭部に、蛇や蜘蛛、蝙蝠等に見える簡単な装飾と外見だったから、複製しても兵士っぽく見える。
そんな兵士達が、キメラの四肢にしがみつき、鋼鉄の拘束具に姿を変える。
私は、張り付けにしたキメラに、走介君にしたようにフィルムを放ち、更に拘束した。
「ガアァァアァアァァァァ………!」
いくら叫ぼうとも、その拘束から逃れるには時間がかかる筈。
止めを刺したいが、ドライブのデータが詰まっているんだ、簡単に止めを刺せる訳がない。
むしろ衝撃で拘束が解ける方が心配だ。
「今は走介君ね……」
私は、未だ気絶している走介君を連れて、孤児院に逃げ込む事にした。
逃げ込んだ孤児院は、焼け跡だったこともあり、満足に休める場所が無かったが、運良く、院長室にはベットが残っていて、そのベットに走介君を横にした。
「傷は…… うん、そんなに深く無い…」
最悪、内臓は潰れていると覚悟していたけど……
良かった、無事で……
私は持っていた応急セットで走介君の治療をする。
何もしないよりはましだ。
包帯を巻くために走介君の服を脱がすと……
「これは……!」
そこには、夥しい数の傷が、走介君の体に刻まれていた。
「…… 一体、どんな人生を送ったらこんなに傷だらけになるの……」
凡そ、十七の少年が負って良い数の傷じゃない。
『……… そう思うのなら、これ以上走介に構わないでくれ』
すると、誰かが私に声を掛けてくる。
「…… これは走介君の神器よね……」
『何故、君たちは走介を執拗に狙う!!』
「貴方、所有者が気絶していても喋れるの!?」
『私の事はどうでもいい!! 何故走介を狙うのかと聞いているのだ!!』
その声に含まれる怒気は、私を震え上がらせる。
圧倒的な存在から、睨まれている様な感覚だ。
「それは…… ごめんなさい。私にも分からないわ」
『…… もう、これ以上走介から何かを奪うのは止めてくれ…… 何かを奪われるたび、彼の心は磨り減って、戦いから抜け出せなくなる…… 私は、走介に戦って欲しくは、ないんだ……』
先程の怒気からは一転、今度は父親の様な優しさの籠った声で、静かに言った。
「……… 気にすんなよ、ベルトさん」
『走介…!』
「走介君」
そこで、気絶していた走介君が目を覚ました。
「戦う事は、俺が望んだ事だ。それに、ベルトさんは言ったじゃないか。『ここで戦う事を望めば、下手をすると一生戦い続ける事になる。それでもいいのか?』って」
『ああ、そうだったね。それに君は、「もう…… 考えんのは止めた!! 何もしないで殺されるより、俺はイッセーの敵を取ってやりたい!! だから…… 俺は戦う!!」と言ったんだったね』
「そうさ、俺は……… 神藤走介は、自分で選んで戦う事にしたんだ。セーヌさんを責めるのは間違いだよ」
そう言う走介君とベルトの神器には、友情と信頼が感じられた。
それは… 私達英雄派には無い、とても尊いものだと、私は感じた。
「それで? セーヌさんはどうするんです? 今なら簡単に俺に止めを刺せますけど」
唐突に言われた一言、忘れていたが、私と走介君は敵なんだ。
今なら、確かに簡単に走介君を殺すことが出来るだろう…… でも……
「しないわ。殺しは、私の怪盗としての美学に反するの。だから、走介君を殺したりはしないわ」
とは言ってみたが、本当にそうなのだろうか?
現に、私はなにとなく走介君に惹かれている様な気がする。
そんなバカなとは思っているが、ならばどうして私は走介君を助けたのだろうか?
「そうですか」
「そうよ。でも、聞きたいのはこっちも同じ。走介君、何であの時私を庇ったの? 貴方なら、避けられた筈でしょ?」
それだけが分からない。
私は兎も角、走介君に私を助ける理由が無い。
ならば、何故?
「特に何も考えてませんよ。ただ……」
「ただ?」
「少なくとも目の前で、あんなに悲しそうな顔をしていた人を、見捨てる訳にはいかないって…… そう思ったら、体が勝手に動いていたんです」
「悲しそうな顔?」
そんな顔、していただろうか?
「はい。セーヌさんはやっぱり笑顔が一番似合ってますから!」
そう言って走介君は、ニコッと笑った。
「……ッ」
何で? 胸が、少し苦しい。
でも、心地が良い締め付けだった。
「セーヌさん?」
「ふぇ? え、ええ! 何かしら!?」
「? いえ、顔が真っ赤ですけど」
う、うそ!? でも言われて見れば確かに顔が熱い気がする。
な、なんか癪だなぁ~ 怪盗の私がそう言う所を見られるのは……
「も、もう!お姉さんをからかわないの!」
照れ隠しな行動になったけど、走介君の背中をバチンと叩く。
「痛ってぇぇぇぇ!!!?」
「ああ!? ご、ゴメンね!? 走介君!?」
「い、いい… デスヨ…… 効きました……」
そうだった!? 走介君怪我してたんだった…
私のバカちん!!
「つぅ~…… それで、キメラをどうしたんですか?」
そういえば、忘れていた。
まだアイツを倒せて無かったんだ。
「アイツならルパンガンナーで拘束して、さっきの場所で張り付けになってる。ドライブのデータを使っているだけあって、私だけじゃ止めを刺せそうに無かったの」
『フム…… データが渡っているだけでも面倒だというのに』
「なら、一緒にやりますか?」
一緒にやる…… つまり共闘の事を言っているのか。
「いいの? 私は貴方のお祖父さんの遺品を盗もうとしたのよ?」
「どのみちこのままじゃ動けないし…… それに、遺品はあんなのでしたし……」
あー…… 確かに、あれには流石に私も言葉を失った。
まさかエロ本が遺品だなんて……
「……… そうね。ここは共闘しましょう」
『うむ、その方が合理的だ。して、拘束はどのぐらい持つのだね?』
拘束したのは、夕方…… 今はもう日が落ちてる…
それを踏まえると……
「大体、夜明け前… かな」
『フム… 約七時間か…… ギリギリだが、それだけあれば、戦える程には回復するだろう。だが無茶はするなよ? 走介』
「分かってる。そうと決まったら、今日はもう寝よう。少しでも回復させないと」
そう言うと、走介君はベットに横になろうとした。
「あっ、でもそれだとセーヌさんが寝れないな…… 一応このベット二人でも寝れますし…… 一緒に寝ます?」
「え、ええ!?」
い、いい一緒に!?
「でで、でも私敵だし!」
「今は共闘してるでしょ」
「そそ、それに!私、怪我してないし!!」
「気疲れ馬鹿にしてたら酷い目に逢いますよ?」
うぅ…… ダメだ、勝てない。
ど、どどうしょう!? 私、男の子と一緒に寝た事なんてないしそれに……!?
「はぁ…… それ!」
「きゃっ!?」
そうこうしていたら、走介君にベットに引き込まれた。
「ほら、さっさと寝て下さい」
「うぅ…… はい……」
もうその有無を言わせない眼光に私は黙るしか無かった。
「スー…… スー……」
暫くすると、走介君の規則正しい寝息が聞こえてくる。
やっぱりダメージを負っているから、疲れてるんだ……
「………」
ふと、私は背を向けて寝ている走介君の背中に抱き着いてみた。
「……… 暖かいね、走介君」
返ってくるのは寝息ばかりだったが、それが愛おしく思えた。
多分これが……
「恋心…… って物かな……」
私は、走介君の暖かさを感じなから、静かに眠りについた。
『奴は、貴女の大切な物を盗みました』
「それは、一体?」
『…… 貴女の心です!』
「…… そうかも、しれませんね」
『では、私はこれで』
「……… 何やってんの?」
『「カ○○○○ロの城ごっこ」』
ルパンを書いてたら凄く見たくなりました。
それにしてもターキーが食べたい。