NERV航空隊隊長綾波   作:浩介

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第9話 陰謀

コウスケは京都にいた。

正確には京都大であった。

(ここに手がかりがあるかな?)

コウスケは第五使徒との戦闘で一番危険な囮役を引き受けたため、一週間ほど休暇を申付けられた。

彼が京都大に来たのは、碇ユイに関する情報を得るためであった。

校門の前には警備員がいた。

初老に差し掛かった男性のようだ。

「すみません。」

「誰だい? あんたは。」

「昔、冬月先生にお世話になったものなのですが……」

「冬月先生? ……ああ、あの人か。」

「今もいらっしゃいますか?」

「今はいないよ。」

「そうですか……どこにおりますでしょうか?」

当然ながらコウスケは本人がどこにいるのか知っている。

「わからないね。突然おやめになったからね。」

「では、冬月先生のお部屋はまだご健在でしょうか?」

「あー、たしか誰も使ってないはずだよ。」

「少しお邪魔してよろしいでしょうか?」

「なんでなんだい?」

「実は、今度冬月先生にお世話になった連中で慰労会を開こうと思いまして……でも肝心の冬月先生がどこにおらっしゃられるのかわからないので、手がかりでもと……」

「そうかい。あんたみたいな人に思われて冬月さんもいい弟子を持ったね。」

「いえ、自分なんてまだまだです。」

「ほんとはダメなんだろうけど……特別に許可するよ。」

「ありがとうございます。」

「どういたしまして。」

「では、失礼します。」

「頑張りなよ。」

(よし。)

コウスケは校舎に向かった。

・・・

 

「1999年は……これか……」

コウスケは資料室にいた。

ページをめくり細かくチェックしていく。

彼は卒業生の顔写真を一つ一つ確認していた。

「ふぅ……さすがに量が多いいな。」

それでも手は止めない。

時間がゆっくりと過ぎていく。

部屋にはページをめくる音

「………あった………」

ようやく目的の人物の名前を見つけた。

(さすがの碇司令もここまでは手を回せなかったか。)

顔写真をみる。

すると妙な既視感を感じた。

(なんだ? 覚えがある………?)

当然ながらコウスケは碇ユイと会ったことはなく、その存在を知ったのはごく最近である。

(なんだろう……誰かに似てる………)

じっと会ったことのある人たちを思い浮かべる。

(……………………!)

とある人物が頭にヒットする。

(……綾波レイ………)

蒼い髪に紅い眼をした少女を思い浮かべる。

髪の色、眼の色は違うが、それ以外は似ているどころかそっくりそのままであった。

(……偶然か?)

この世には似た人が3人はいると言われている。

だが、ここまでそっくりそのままなんて人はいるだろうか?

(レイと碇ユイと碇ゲンドウか……)

ユイの写真はゲンドウがすべて捨てたとシンジが言っていた。

それはこのことを隠すためのものだったのではないか。

(レイと碇ユイには何か秘密がある。)

そう確信するコウスケであった。

(……とりあえず当初の目的は果たしたか。……このことはシンジにはまだ黙っていたほうがいいだろう。)

そう思いコウスケは資料室の管理人に礼を言い部屋を後にした。

・・・

 

(ここが副司令の研究室か…)

コウスケは冬月の元研究室にいた。

部屋はきれいにかたされており、誰かが使ってる様子はなかった。

「……とりあえず探してみるか。」

机、本棚などを手あたり次第探してみるが、成果はなかった。

(……無駄足かな?)

ふと本棚に目を止めた。

下をのぞくと一枚の紙……茶色く風化した手紙みたいなものが見つかった。

それを拾うと端に小さく碇ユイの文字が目に入った。

裏返すと碇ゲンドウの名前が真ん中に書いてあった。

「なんでこんなものが?」

などと言いつつ回収するコウスケ。

中身を見ようなどとつゆには思わない。

コウスケは部屋から出ることにした。

・・・

 

京都大を訪ねてから一週間。

コウスケはリツコに呼び出されていた。

「あなたに見てもらいたいものがあるの。」

そういってリツコは資料を差し出す。

「……ジェットアローン?」

「そう。今回対使徒専用に開発されたロボットよ。」

コウスケはJAのスペックを確認する。

「……ゴミだな。」

「あら、そう言い切れるの?」

「こんなもん使えるか。」

「そうね。」

「こんなものEVAがなくとも破壊できるな。」

「でもそれがわかってないのよね。」

「……でどうする気だ?」

「何のことかしら?」

「こんなものを俺に見せたということは何かやらせたいんだろう?」

「さすがね。……今回模擬戦をやることになったのよ。」

「……EVAと?」

「いえ。」

「………まさか俺か?」

「そう。あなたがやるの。」

「なんで?」

「使徒との交戦経験が多いから。」

「……なるほど。俺を倒せなきゃ使徒なんかもってのほかということか。」

「そういうこと。」

「わかった。」

そういってコウスケは出ていった。

・・・

 

(俺を殺す気かな? それとも……)

模擬とは言っても実弾を使用するようだ。

NERVにしてみればどっちに転んでも痛くはなかった。

コウスケが負ければ解任、下手すれば打ち所が悪くて死亡することもある。

おそらくJAを使えないようにする第二案もあるのだろう。

一方JAが負ければ計画は頓挫する。

(切り札は早めに切ったほうがいいかな?)

そう思いコウスケは喫煙所へと向かった。

・・・

 

第28放置区域

かつて日本の中枢を担った東京は現在そう呼ばれていた。

セカンドインパクトが起こって世界に大混乱が襲った。

東京も例外ではなく新型爆弾―のちにNN爆弾が投下された。

首都としての機能はもちろん都市としても活動は不可能となった。

このことがきっかけで日本には自衛のための組織「戦略自衛隊」が発足した。

ともかくコウスケは二人の女性-ミサトとリツコとともにかつての東京の上にいた。

「着いたわよ。」

「なにもこんな所でやらなくてもいいのに。」

「ここは放置されてるからな、やりやすいんだろう。」

「……でこの計画に戦自は絡んでるの?」

「戦略自衛隊? いいえ介入は認められずよ。」

「どうりで好きにやってるわけね。」

(計画自体には介入しなくても技術提供、供与くらいはあり得るかもしれないな。)

「コウスケ君は今日模擬戦をやるんでしょ?」

「ああ。」

「大丈夫なの?」

「心配しなくてもあんなポンコツにはやられないよ。」

「でも核分裂炉には気を付けてね。」

「わかってるよ。」

・・・

 

「本日はご多忙のところ、我が日本重化学工業共同体の実演会にお越しいただき、誠にありがとうございます。」

(まったく大人げないな。)

ネルフ御一行様と書かれたテーブルには真ん中にビールの瓶が数本置いてあった。

他のテーブルには様々な料理が置いてある。

(主催者の品がしれるな。)

「ご質問がある方はどうぞ。」

リツコが手を挙げる。

リツコと時田は問答を繰り返すが、徐々にリツコが冷静でなくなるのがわかる。

「赤木博士。落ち着け。」

「そうね…」

リツコは座った。目も据わっていたが

「他にいますか?」

コウスケが手を挙げた。

「これはNERV航空隊のエース、綾波特務二尉ではありませんか。」

「ここには料理がありませんが……これは我々と敵対するという意思表示でよろしいのですね。」

「これは失礼。どうやら手違いがあったようです。」

「非公開とはいえ我々も国連の一組織です。つまりはあなた方は国連と敵対したい……そうとってよろしいか?」

時田は青ざめた。

「いえ、そうではありません。おい早くお出ししろ。」

「結構、今更出されても中に毒なんか入ってたら洒落になりませんからな。」

「毒だなんて……」

コウスケは無視した。

「では質問です。JAは格闘戦を主体になさってますね。」

「ええ、そうですが。」

「あなたは我々の機密情報をいろいろ知っているようだが、第五使徒はご存知ですね?」

「ええ。」

「あのように遠距離からの攻撃にはどう対処なさるおつもりで?」

「それに耐えられるように設計されています。」

「EVAですら溶かしてしまうような砲撃にJAが耐えられるとでも?」

「はい。」

時田は自信満々のようだ。

「それにATフィールド。あなたは時間の問題と仰ったが、日本中のエネルギーを集めてやっと破壊できるものをどうするつもりですかな?」

「それは……その………」

「まさか、自爆特攻させる気ですかな?」

時田は答えに瀕した。

「まあ、兵器としては最強かもしれませんな。」

「は?」

「こんなものが歩いてきたら、放射能が怖くて攻撃できませんからな。戦略兵器としては価値があるのでは?」

会場は静まり返っていた。

「二足歩行ではなく、無限軌道のほうがいいのでは? ……ついでに肩に戦車砲でも付けて。」

(なんかセカンドインパクト前のアニメに出てきそうだな……ていうかよく考えるとEVAそのものがアニメの世界みたいな話だな。)

「この後、模擬戦がありますな。せいぜい楽しませてください。」

「………」

時田は押し黙った。

・・・

 

コウスケは控室にいた。

(物がポンコツなら作った者もポンコツだな……)

時田は少なくとも無能ではないだろう。

仮にも今回の発表で責任者なのだ。

各業界のお偉いさんが来るのに下手な人間は送れないだろう。

ただ、人間ができて無かった。

(まあ、叩きのめしてやるか。)

そう思っていると横の部屋から破壊音が聞こえ、何か焦げ臭いにおいがした。

(こっちも大人げないな……)

ドングリの背比べみたいなものというのがコウスケの感想だった。

・・・

 

「こちら、綾波。準備完了。」

『了解。JAはすでに指定の場所で待機中です。』

「了解。……出る。」

コウスケは愛機とともに飛び立つ。

すぐにJAが見えた。

(悪趣味だな。使徒のほうがまだ好感が持てる。)

などと身も蓋もないことを考える。

『これより模擬戦を開始します。』

「了解。状況開始する。」

(まずは様子見だな。)

JAがパンチを放つが、遅い。

コウスケは悠々と回避した。

今度は裏拳を放つが、遅い。

(格闘戦でこんなに遅くていいのか?)

しかも動作に挙動があるので、攻撃がいつ来るかわかってしまうのだ。

もう少し様子を見たかったが、つまらなくなった。

(もう潰すか。)

コウスケは愛機をJAに向け、機銃を放った。

胴体は狙わない。万が一、核分裂炉に直撃しようものなら爆発どころの騒ぎではない。

装甲にダメージを負わせるが致命傷ではないようだ。

「……自慢することのだけはあるな。」

愛機を大きく旋回させ、再び正面に捉えた。

狙いは足もと。

コウスケはミサイル発射ボタンを押す。

が途端にエラーが出た。

(!? …バカな。ここに来る前のチェックでは異常なしのはずだ。となると………)

途端に機銃に切り替える。

JAに花火が散る。

(こうなれば……)

コウスケは足の付け根を狙った。

JAの黒い足の付け根に飛び込む銃弾。

するとJAの片足が折れた。

人で言う間接に当たるところなので、装甲も柔らかいものだった。

前かがみになり転ぶJA。

JAはじたばたとみっともなく残った手足を動かす。

途端に動かなくなった。

「こちら綾波。状況終了。」

管制室は静寂に包まれた

………一人の女性を残して。

・・・

 

「よくやったわ。おかげですっきりした。」

ミサトがにこにこでそう言った。

「無様ね。」

リツコは満足そうに告げる。

「そういえば、なんでミサイルを使わなかったの?」

「核分裂炉に当たれば危ないからな。」

リツコを見ると少し動揺したように見えた。

「そうね。」

ミサトは納得してくれたようだ。

「何せよ帰りましょう。」

「そうだな。」

(もうやばいか……)

帰路に立ちながらコウスケは身の危険を感じるのであった。

・・・

 

「……以上です。」

静寂に包まれた部屋には三人の人がいた。

「今回の件に関して綾波特務二尉は感づいている可能性があります。」

「………」

「どう対処なさいますか?」

「現状維持だ。」

「わかりました。」

「下がりたまえ。」

「失礼します。」

そう言うと女性が退出した。

「いいのか?」

「……ああ。」

「彼が休暇中に京都大に行ったとの報告が入ってるぞ。」

「………」

「もしかしたら気づいているかもしれんぞ。」

「問題ない。」

「……お前がそういうならいいが。」

「………」

「………」

再び部屋に静寂が訪れた。




17話を執筆中に思いついたことです。
こんな可能性もあり得るとだけ・・・


おまけ
「なるほど、無限軌道に戦車砲か………」
彼は一人でぶつぶつとつぶやいていた。
「いける、いけるぞ!」
どうやらコウスケの発言に何らかのインスピレーションが働いたようだ。
「……フフフ、面白い。」
設計図をにらむ彼にもマッドの気があるのかもしれない。
「みていろ! NERV!」
もはや彼を止められるものはいなかった。
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