コウスケはヘリの操縦席にいた。
今は太平洋上にいる。
後ろにはミサト、シンジ、トウジ、ケンスケそしてレイがいた。
ケンスケはビデオカメラを手にして興奮していた。
トウジはしきりにミサトに話しかけていた。
シンジはというと・・・固まっていた。
レイはシンジの横に引っ付いていた。
「碇君は私のもの!」という怖いオーラが立ち込めている。
無論レイにそこまでの意識はない。
レイは第五使徒との戦闘以降、人(というよりはシンジ)に関心を持つようになったようだ。
ミサトはそんな様子のシンジをからかっているようだ。
からかうたびにレイの目が薄く細くなっていたが・・・
「しかし、あなたがあの綾波二尉だったなんて感激です。」
ケンスケは言う。
「そうか?」
「そうです!」
「コウスケさんってそんなに有名なの?」
シンジが問う。
「お前は何も知らないんだな。」
ケンスケは自慢げに
「綾波二尉と言ったらコードネーム「アロー3」国連軍のエースじゃないか。」
「そうなの?」
「参加した作戦は数知れず、成功率はほぼ100%、愛機はSu-37、通称「サジタリウスの矢」、これをエースと言えずに何という。」
「そうなんだ。知らなかった。」
「それが今や人類の危機を救うために戦ってる・・・く~憧れるな。」
「そうだったんだ。」
「ひどい奴だな。一緒に戦ってるんだろう。」
「うん。」
「なら少しくらい知っといてもいいんじゃないか?」
「そうでもないよ。」
コウスケが遮る。
「知ってもいいことなんかない・・・ましてやエースなんて代物はな。」
「またまたご謙遜を。」
「人は知らないほうがいいこともあるんだよ。」
そういうコウスケは重い表情だった。
・・・
オーバー・ザ・レインボウ
国連軍が持つ最大級の空母の名前だ。
今や老朽化しつつある船だが、いまだに現役であることに疑問を感じさせない。
行き届いた整備・・・それだけで乗艦するクルーたちの誇らしい姿が目に浮かぶ。
そんな船にコウスケたちは降りたった。
すると彼らの前に黄色いワンピースを着た見知らぬ少女が立っていた。
赤みのかかったロングヘアーに蒼い瞳が彼女が日本人ではないことを証明している。
少女は吹き飛ばされたトウジの帽子を踏んでいた。
「ハロー。ミサト元気してた?」
「まあね。あなたも背伸びたんじゃない?」
「そっ。ほかのところもちゃんと女らしくなってるわよ。」
トウジは少女の足もとでじたばたしている。
「紹介するわ。EVANGELION弐号機専属パイロット、セカンドチルドレン惣流・アスカ・ラングレーよ。」
不意に風が吹いてきた。
めくれるスカート。
と同時に乾いた音が三つ聞こえた。
トウジ、ケンスケ、シンジがビンタされたのだ。
レイはアスカを見ていた。(実は睨んでいる。)
「なにすんのや!」
「ああ、カメラが・・・」
「見物料よ。安いもんでしょ。」
「なんやて?そんなもんこっちも見せたるわ。」
そういって下のジャージを脱ぐトウジ。
はずみで最終防衛ラインまで脱いでしまった。
「!!なにすんのよ!!」
唸るアスカの手。
アスカの手はトウジに直撃した。
「で?噂のサードチルドレンはどれ?まさか今の・・・」
きつい目つきでトウジをにらむアスカ。
トウジは完全に意気消沈していた。
「違うわ。この子よ。」
「ふーん・・・」
アスカは値踏みするようにシンジを見る。
レイの目が一層険しくなる。
「・・・冴えないわね。」
「むっ。」
「・・・そんなことはないわ。」
レイが介入する。
いつの間にかシンジの真横にいた。
「・・あんたがファーストチルドレンね。」
「・・・」
「仲良くしましょ。」
「なぜ?」
「そのほうが都合がいいから。」
「・・・命令ならそうするわ。」
「こら。」
コウスケは介入することにした。
「レイ。」
「はい。」
「それも宿題な。人と初めて会うときどうすればいいのか。」
「・・・わかりました。」
ちょっとふてくされているように見えた。
「それと・・・惣流」
「なに。」
「その高圧的な態度はやめろ。」
「なんでそんなこと言われなきゃけないのよ。それにあんた誰!」
「俺は綾波コウスケ特務二尉だ。作戦部副部長兼航空隊隊長だ。」
「へー・・・わかりました。特務二尉殿。」
「はぁー」
(これはまずいな・・・)
これがアスカとの初邂逅であった。
・・・
艦橋に移ったコウスケたちは提督と対面していた。
「海の上は我々の管轄だ。黙って従ってもらおう。」
ミサトの顔は暗い炎を宿していた。
(まずいな・・・)
嫌だったが、コウスケは口出しすることにした。
「失礼。提督。」
「君は?」
「綾波コウスケ特務二尉です。」
「・・・おお!君か。」
「御無沙汰しております。」
「あの時は迷惑をかけたな。」
「いえ。お助けできて幸いでした。」
「それでどうしたのかね。」
「出来れば弐号機をお渡し願います。」
「なぜかね?」
「不測の事態に備えてです。」
「そのために我々がいるのだろう?」
「失礼ですが、この艦隊にはNN爆弾以上の火力がありますか?」
「残念だがない。」
「使徒はNNでは撃破できません・・・現に第参使徒が出現した際、NN地雷を使いましたが、効果が認められませんでした。」
「なに?!」
「そして使徒を撃破したのはあのEVAのみです。」
「・・・わかった。NERVに譲渡する。」
「ありがとうございます。」
「いやいや、こちらも意固地になっていたようだ。」
「こちらもいろいろ失礼しました。」
「今度どうかね?」
提督は何かを飲むようなしぐさをしている。
「平和になった時にいたしましょう。」
「わかった。」
そう言って提督はサインをした。
不意に通路から男の声がした。
「あいかわらず凛々しいな。」
「あっ加持先輩。」
嬉しそうにアスカが言う。
対照的にミサトはゲッという顔だった。
「うぇー・・・」
「加持君。君をブリッジに招待した覚えはないぞ。」
「それは失礼。」
ミサトの顔がみるみる変形していった。
・・・
コウスケはブリッジに留まった。
提督と思い出話をしていた。
「しかし君がNERVにいたとは・・・世界は狭いな。」
「そうですね、提督。」
「所属は空戦隊か?」
「ええ。隊長です。とは言っても一人ですが。」
「どうなのかね?」
「EVAが無ければだめですね。」
「そうか。」
「人類の命運が14歳にかかっている・・・なかなか苦しいですよ。」
「そうだな・・・」
「自分も全力は尽くすのですが・・・サポートで精いっぱいです。」
「君でそうなら我々では無理だな。」
「否定できないのが心苦しいです。」
「となれば我々も無事に輸送できるようにするしかないか。」
提督との世間話が続いてゆく。
突然船が揺れた。
「どうした!」
「未確認物体の攻撃です。」
「おそらく使徒ですな。」
「なんてこった。」
そうしている間に友軍艦が沈んでいく。
「提督。戦闘機をお貸し願いたい。」
「・・・わかった。」
「ありがとうございます。」
コウスケは敬礼をした後ブリッジを出ていった。
・・・
「提督からは許可をもらっている。予備の機体をくれ。」
命令がすでに届いていたのだろう、すぐに案内された。
Su-33だった。
コウスケはすぐにチェックを開始した。
「異常なし。」
エレベータを使いカタパルトに出る。
「綾波・・・出る。」
コウスケはカタパルトから出撃した。
・・・
友軍艦は一隻また一隻と沈んでいった。
発射される魚雷。
コウスケも機銃を放つが効果がない。
「・・・この程度じゃだめか。」
(やはりEVAしか・・・)
「葛城。EVAを出せ。」
「今起動中よ。」
「了解。」
すると通信が入った。
「オセロ―より入電。EVA弐号機起動。」
すると使徒は弐号機に突進した。
空を舞う弐号機。
弐号機は友軍艦を足場にしていた。
(あいつは何考えているんだ。)
コウスケは怒っていた。
いくら足場がないとはいえ、退避勧告もなしにEVAの足場にすれば被害が出るだろう。しかもそれを見せつけるように少し遠回りしていた。
「EVA弐号機、着艦しま~す。」
「うわああああああああ・・・」
シンジの絶叫が聞こえる。
「・・・シンジ君も乗ってるのか。」
レイがしかめっ面をしているのが目に浮かぶ。
そうしているうちに弐号機は空母に乗り移った。
バランスが崩れる空母。
海に落ちる戦闘機たち。
海から躍り出る使徒。
カジキのようなフォルムだが巨大すぎた。
飛行甲板はたちまち使徒の陰に隠れてしまった。
空母のバランスがまた崩れるが何とか立て直す。
持ちこたえる弐号機。
だが弐号機はエレベータを踏み抜き海に落ちた。
(B型装備で水中戦は無理だ。)
つながれたケーブルのコードが生き残った戦闘機たちを海に叩き落とす。
「再建に時間がかかるな。」
海に入れないコウスケはなすすべがなかった。
それでも通信機越しに状況はわかった。
「くち~!」
「使徒だからね。」
(・・・冷静だな、シンジ君)
「EVA弐号機、目標体内に侵入。」
「・・・食われた・・・」
なすすべなく過ぎていく時間
だが、空母の一つのエレベータが動いていた。
「おーい葛城。」
「加持?!」
「届け物があるんで、俺先に行くわ。」
唖然とする一同。
「か~じ~!コウスケ君やっちゃいなさい!」
ミサトは号令を飛ばす。
「・・・了解。」
(葛城、やけにこだわってないか?)
機体をYak-38改に向ける。
「悪く思うなよ。」
ターゲットロックオン
モニターに映し出される。
「うわっ!ちょ・・・ちょっと待ってくれ。」
加持が慌てて降りてきた。
・・・
結局使徒は艦隊の援護を受け殲滅した。
コウスケは空母に着艦し提督のもとに急いだ。
ブリッジからエントリープラグから出るシンジとアスカが見えた。
シンジはケンスケとトウジにからかわれている。
レイは赤いプラグスーツを着たシンジを見て固まっていた。
コウスケは提督から一つ書類をもらいブリッジを後にした。
・・・
甲板にでるとプラグスーツを着たアスカが誇らしそうにいた。
ミサトは加持を折檻していた。
「あんたってやつは~!」
「おい、葛城ちょっとタンマ!」
ケンスケとトウジは弐号機を見ていた。
「すごい。すごすぎる!」
「ほえ~。弐号機は赤いんやな。」
シンジはレイに引っ付かれている。腕でも折りそうな勢いだ。
「あっ綾波!痛いよ!」
「問題ないわ。」
レイは・・・・・・
恐ろしいオーラを振りまいていた。
どうやらエントリープラグに一緒に乗っていたのとおそろいのプラグスーツが気に食わないようだ。
「ダメだよ綾波!」
「問題ないわ。」
「やめてよ!」
「問題ないわ。」
「せめてほかの人がいない所で」
「も、ん、だ、い、な、い、わ。」
「あっあやなみ~!」
シンジが着るプラグスーツを脱がそうとしている。
ちなみに元着てた服は海の底だ。
(ほかの人が居なければいいのか?・・・完全に動転しているな。
シンジ君、がんばれよ。)
心の中でシンジに声援を送るが、コウスケ自身は楽しんでいた。
コウスケはアスカの前に立った。
「どう?EVAのエースパイロットの華麗なる操縦は?」
「・・・」
「なによ。」
「これを見ろ。」
副官からもらった資料を渡す。
資料にはご丁寧にも名前まで書いてあった。
「・・・使徒の攻撃で犠牲になった人?」
「違う。」
「じゃ、何よ。」
「お前が踏みつぶした人たちだ。」
アスカの顔が青くなる。
「華麗なる操縦とやらで出た被害だ。」
「・・・しょうがないじゃない。」
「確かにな・・・だが死んだ人間はそう思わない。使徒にではなく味方に殺されたんだからな。」
「・・・」
「それにエースパイロットと言ったか?」
「・・・そうよ。」
「エースパイロットって何だ?」
「決まってるでしょう。操縦がうまくて一番敵を倒しているパイロットよ。」
「何もわかってないな。」
「どういう意味よ!」
「・・・エースパイロットと言うのはな・・・一番生き物を殺している人のあだ名なんだよ。」
「・・・」
「一番殺してる人って言われて満足しているのか?そういう意味なら君がエースパイロットだな。」
「どういう意味よ・・・」
「シンジ君は3つ、レイは0、君は使徒1つにその人数・・・」
「・・・」
「奪った生命の数では惣流が一番なんだからな。」
「そんな・・・」
「エースというのにこだわりがあるみたいだが、ちゃんと考え直すんだな。」
コウスケはシンジたちのもとに去って行った。
「そんな・・・あたしはただ・・・」
アスカはただうわごとを述べていた。
・・・
アスカに対してかなり厳しいことを書いてますが、主人公と対立させるつもりはありません。
今回もおまけがあります。
かなりアホなことが書かれていますが、これもありうるということだけ・・・
おまけ
空母から帰った次の日
NERVにて
「どうしたの?綾波?」
シンクロテストが開始される前にプラグスーツに着替えようとしていたシンジは、ロッカールームの前でレイが何か言いたげなのに気付いた。
すでにレイは着替えていた。
「・・・」
「?」
「・・・これ」
と言って白いものをシンジに差し出す。
シンジの脳内では第一種警戒体制が敷かれていた。
「なに?これ?」
「・・プラグスーツ」
「へ?」
「私の」
「なんで?」
いきなりそんなものを差し出されて理解できる人などいないだろう。
「・・・着て。」
途端にEMERGENCYの文字が点滅を繰り返す。
初号機が頭を撃ち抜かれた時の発令所なみに慌てた。
「!!だっダメだよ!」
「なぜ?弐号機パイロットのは着たんでしょ。」
「あの時は非常時だったから・・・」
「・・・」
無言、紅い眼から放たれる圧力
それはロンギヌスの槍に匹敵した。
だが、それを着てテストに参加しようものなら変態扱いされるのは目に見えている。
特に某作戦部長のにやついた顔が思い浮かんだ。
ついでに某オペレータの「不潔」という声とその師匠の「無様ね」
そして某司令の「おまえには失望した」という声・・・
なぜかクラスメイトの「不潔よ~!」という声まで聞こえたらしい。
(逃げなきゃだめだ!逃げなきゃだめだ!逃げなきゃだめだ!)
シンジは人々に支えられて(?)かろうじてATフィールドの維持に成功した。
「とっとにかくダメだよ!」
「なぜ?同じプラグスーツよ。」
「とにかくダメなんだよ!」
そんなやり取りをしていた二人はテスト間際にリツコに発見され、きつい説教を受けたという。
そんなシンジはテスト終了後
「綾波。君が何を考えているのか解らないよ。」
とコウスケに愚痴っていたという。
追記
艦載機について誤りがありましたので修正しました。
ご指摘ありがとうございます。