ユニゾン作戦の後あとアスカはミサトに引き取られた。
レイも元のマンションに戻って行った。
それから既にひと月がたとうとしていた。
・・・
コウスケは自分の執務室にいた。
使徒が来なければ日々平穏であるNERVでも、書類の決裁という形式ばかりだが、重要な仕事はほぼ毎日あるのだ。
装備の点検、兵装ビルの修理と設置、愛機のチェック、防衛計画の草案などなど忙しい毎日である。
無論一つ一つの確認を怠らない。
怠れば使徒との戦闘で有利になることなどないからだ。
と言っても通常兵器でできることなど限られているが・・・
デスクワークは苦手ではないものの長い間椅子の上というのは疲れるものだ。
「もう昼時か・・・」
コウスケは気分転換もかねて上の街-第三新東京市にでることにした。
・・・
「・・・どこにしようかな。」
街に出たものの何を食べようか迷うコウスケであった。
コウスケには行きつけの店がない。
ただその時の気分で店を選ぶだけなのだ。
すると前に見覚えのある二人が見えた。
「よう。アスカに加持じゃないか。」
「あっコウスケ。」
「よう。綾波。」
「何だ?デートか?」
「そうよ。」
「んにゃ。ただの買い物さ。」
「・・・お前がたらしってのはほんとなんだな。」
「おいおい、人聞きが悪いな。」
「そうよ!加持さんはそんなんじゃないわ。」
「はいはい。」
横では加持が乾いた笑いを見せていた。
取りあえずコウスケは話題を変えることにした。
「そういや、何を買いに行くんだ?」
「水着よ。」
「水着?」
「今度の修学旅行で使うのよ。」
「修学旅行か・・・」
コウスケは苦い顔になる。
「コウスケも行ったんでしょ?」
「いや、俺たちにはそんなもん無かったよ。なあ加持。」
「そうだな。セカンドインパクトがあってそれどころじゃなかったからな。」
加持も何かを思い出しているようだ。
「なんにせよお邪魔して悪いな。もう行くよ。」
「じゃあね。コウスケ。」
「またな綾波。」
コウスケは二人と別れた。
「・・・修学旅行か。青春だね・・・」
などとつぶやていた。
・・・
翌日
コウスケは発令所にいた。
「浅間山の観測データは可及的、速やかに
MAGIの淡々とした声が響く。
オペレータ席にはちゃんと三人が座っている。
伊吹は何かの文庫本を読んでいる。おそらくは恋愛ものだろう。
日向は漫画を読んでいた。時折笑い声が聞こえる。
青葉はエアーでギターを弾いていた。鼻歌も聞こえる。デスクにはギターの本が置いてあった。
対使徒戦を任される場所としてはいささか頼りなく見えるが、休みなど有って無いNERVではささやかな休憩時間くらいは自由を満喫できるのだ。
「修学旅行?こんなご時世に暢気なものね。」
リツコは何かの資料を読んでいた。おそらくは新装備に関することだろう。
「こんなご時世だからこそ、遊べるときに遊びたいのよ。あの子たち。」
「だろうな。何といってもまだ子供だしな。」
「そうね。」
「その子たちは今、どこにいるんだ?」
「NERVのプールにいるわよ。」
「・・・葛城も大変だな。」
修学旅行に行けない代わりにプールを開放するために奔走したミサトの苦労がコウスケには伝わった。
「こういう時くらいは羽を伸ばしてもらいたいわ。」
「プールか・・・」
「どうしたの?」
「いや、最近泳いでないからな。」
「なら、行って来れば?どうせ暇だし。」
「そうするか。ついでに監視もするか。」
そういってコウスケはプールへと向かった。
・・・
「へ~以外ね。」
アスカが感心したように言った。アスカはビキニタイプの赤と白の縦しま模様の水着を着てた。
「まあな。海の上で撃墜されて溺れたなんてみっともないからな。訓練で泳ぎの練習は必死にやったよ。」
コウスケは重い装備のせいで何度も溺れかけたことを思い出しながら言った。
プールサイドを見ると制服姿のシンジがいた。
「シンジ君は泳がないのか?」
「ほんっと、つまんない奴。プールに来たのにお勉強なんかしてるわ。」
「レイは?」
「レイならあそこよ。」
と言ってプールを指していた。
レイはプールの中をすいすい泳いでいた。昔のスクール水着を白くしたような水着を着ていた。
「水の中が好きなんだろうな。・・・以外と無駄な動きが無いな。」
などと感心したコウスケはシンジのところまで行った。
「何してるんだ?」
「理科の勉強です。」
「たく、お利口さんなんだから。」
アスカが茶化すように言った。
「そんなこと言ったってやらなきゃいけないんだから・・・」
途端にシンジの顔が赤くなった。
「・・・初々しいな。」
「どれどれ何やってんの?ちょっと見せて。」
アスカがPCのモニターを覗いた。
シンジは心なしか鼻の下が少し伸びている。
何気にこっちを見るレイが怖い。
「こんな数式も解けないの?・・・はい、できた。」
シンジは気を取り直したようだ。
「こんな難しい数式は解けるのに、何で試験は悪いの?」
「なんて書いてあるかわからないのよね。向こうの大学では漢字なんて習わなかったし。」
「大学?」
「そうだ。シンジ君。アスカは大学を出てるんだぞ。」
コウスケが補足する。
「へっ?」
「それにレイも本部で勉強しているからな。知識なら大学並だろう。」
何といっても人類の最新技術が駆使されている所だ。
専門分野のエキスパートたちに学べば超一流になれるだろう。
ちなみにコウスケは並である。
「綾波も?」
「勉強を教わるなら二人から教えてもらえばいい。」
「そうなんだ・・・」
「別に気を落とす必要はないよ。シンジ君だってちゃんとやればできるはずさ。」
「・・・そうですよね。」
「ところでシンジ君・・・なぜ君は泳がないのかな?」
「え・・・いや、宿題がありますし・・・」
「こんな時に遊ばないなんてもったいない。」
「そうよ。シンジ。」
アスカも同調した。
「いや・・・その・・・・・・・」
(泳げないんだな・・・)
「まぁ、シンジ君がそれでいいなら別に構わんが。」
「・・はい。」
シンジはほっとして、宿題に取り掛かった。
そんなシンジを見てコウスケはニヤリと笑った。
「アスカ、レイ。」
コウスケはシンジから離れて二人を呼んだ。
「いいか?・・・・・・・・・」
コウスケはシンジに聞こえないように二人に言う。
「いいな?」
「はい。」
「わかったわ。」
「よし、作戦開始。」
コウスケは再びニヤリと笑った。
レイがシンジに近づいていた。
「碇君。」
「なに?あやな・・・」
シンジはレイの水着姿を見てまたもや赤くなっている。
「なぜ泳がないの?」
「いや・・・宿題が・・・」
「それは家でもできるわ。」
「いや・・・その・・・」
「一緒に泳いでくれないの?」
心なしかレイの目がうるんでるように見える。
(・・・あれは反則だな。意外とやり手か?・・いや無意識だな。)
コウスケはそう分析した。
「あの・・・・・・・・・・・・」
シンジの脳内はすでにショートしていた。
「あの目は予定外だが・・・いけるな・・・よし第二段階だ。」
「わかったわ。」
アスカもシンジに近づいた。
「そうよ。レイの言うことに一理あるわ。」
「アスカまで・・・」
完全にシンジは固まっている。
「意外と最初の一発が効いてるか。行けるな・・・最終段階スタート。」
コウスケはシンジの背後にひっそりと近づいた。
「一緒に行きましょう。」
「あんたも来なさいよ。」
「えっ・・・いや・・・」
徐々にシンジに近づく二人。
シンジは二人に気を取られている。
純情なる少年だ。美少女しかも水着姿の二人に迫られて動けるわけない。
「というわけだ。シンジ君。行くぞ。」
シンジの真後ろに来ていたコウスケが声をかける。
「え?」
シンジはコウスケに持ち上げられた。
そのままプールにダイブするコウスケ。
「うわああああ。」
シンジの情けない声が響く。
どぼん!
アスカは笑っている。
レイは心配そうな表情だった。
「ひどいですよ。コウスケさん!」
「ははは、すまん。後日何かおごってやるから。」
「もう!」
「泳げないと思っていたが、そうでもないんだな。」
「へっ?」
シンジは自分が浮かんでいることに気付いたようだ。
「浮かんでる。」
「初めてか?」
「はい。」
「EVAの訓練をするうちに無意識で出来るようになったんだろう。なら、泳げるようになるな。」
「碇君。」
いつの間にかレイが近くにいた。
「ごめんなさい。」
「いいよ。綾波。」
「でも・・・」
堂々巡りになりそうだったのでコウスケは介入することにした。
「じゃあ、レイがシンジ君に泳ぎを教えるっていうのでどうだ?なぁシンジ君。」
「へっ?」
「レイじゃダメなのか。」
「そう・・ダメなのね・・・」
心なしかレイの周りが暗い。
「ダメってことはないよ。でも・・・その・・・」
後半は小さくてよく聞こえなかった。
「いいじゃない。素直に教えてもらいなさいよ。」
「はい、決まりだな。じゃあシンジ君は着替えて来い。」
「・・・はい。」
そういってシンジは着替えに行った。
その後シンジはレイに泳ぎを教えてもらい普通に泳げるようになっていた。
レイは何となく嬉しそうだった。
アスカも修学旅行でできなかったことを一通りできて満足していた。
コウスケは訓練が終わるとプールサイドの監視員よろしく三人を見守っていた。
・・・
コウスケは呼び出されていた。
向かう先は総司令執務室である。
「綾波特務二尉参りました。」
ドアが開く。
中は変わらず暗い部屋だった。
「綾波特務二尉。浅間山で使徒が発見されたのは知っているな?」
冬月が尋ねる。
「はい。」
「それで現場で指揮を執る葛城一尉がA-17を要請してきた。」
「A-17ですか?」
A-17とはこちらから打って出るための特別処置だ。
ただ、そこには日本中の現資産の凍結が含まれている。
「大事ですな。」
「だから君に意見を聞きたいのだ。」
A-17が発令されれば日本の経済は大打撃を被る。
それだけにNERV首脳部が慎重になっているのだろう。
「私はA-17発令には反対ですな。」
「なぜかね?」
「あまり利益が無いからです。無駄に恨みを進んで買うことはないでしょう。」
(それにそれだけで何万人のも餓死者が出る。・・特に子供が・・・)
コウスケは続けた。
「使徒はいまだに幼体、ということは十分に自己防衛ができないものと考えられます。ならば成体になる前に殲滅がよろしいかと。」
「ならば捕獲も可能では無いのかね?」
「捕獲も可能でしょう。しかし捕獲後ここに輸送中に孵化すれば迎撃に時間がかかりますし、何よりここにきて孵化した場合最悪の結果が待っているでしょう。ならば殲滅した方がいいと考えます。」
だがこの時使徒が未知の生命体であることにコウスケの考えが及んだ。
「使徒のサンプルにちょうどよいと考えるが・・・」
「今の使徒は幼体との判断ですが、もしかしたら擬態なんてこともあり得ます。」
「擬態か。」
「はい。その可能性があるならばやはり殲滅がいいでしょう。」
冬月とコウスケのやり取りを聞いていただけのゲンドウが口を開いた。
「よかろう。A-17は発令しない。」
「碇!」
「使徒は殲滅せよ。」
「はい。」
「では下がりたまえ。」
コウスケは敬礼をして出ていった。
「いいのか?貴重なサンプルになりえるものを・・・」
「綾波特務二尉が言ったことは可能性の一つだ。」
「ならば・・・」
「だからこそ万全を期せねばなるまい。」
「・・・そうだな。わかった。」
・・・
「で、結局A-17は撤回、使徒は殲滅するわけね。」
「ああ、上層部でそう判断した。」
「うまくいけば貴重なサンプルになるのに。」
「賭けにしてはリスクが大きすぎるな。」
浅間山の研究所にはコウスケ、ミサト、リツコとオペレーターがいた。
「まあいいわ。碇司令がそう判断したなら。」
ミサトは使徒の殲滅に意欲を見せた。
「で、どうやって殲滅する?コウスケ君ならどうする?」
「俺なら冷却剤を交えた爆弾で一発だな。」
「EVAは?」
「万が一のために待機ってところだな。」
「ちなみになぜ冷却剤なの?」
「マグマの中に使徒はいるんだろう?なら急激に冷やしてやれば自滅するんじゃないかな?」
「なるほどね・・・」
ミサトは考え込む。
「リツコ。うちにそういうものある?」
「確か・・・綾波特務二尉の機体用に一発あるはずよ。」
「なら確定ね。」
「すぐに取り寄せるわ。」
「じゃ、コウスケ君。後はお願いね。」
「ああ。」
・・・
使徒はコウスケの放つ冷却機雷により自滅した。
浅間山の火山活動に若干影響を及ぼしたものの、問題なしとの報告が入った。
・・・
「今日は楽でよかった。」
コウスケたちは浅間山近くの温泉に来ていた。
太陽は西に沈みかけていた。
「そうですね。」
EVAに乗って待機していたシンジが答えた。
EVAは全機出撃でアスカやレイも当然来ていた。
近くには一羽のペンギンがいた。
ミサトの家にいるペンペンである。
ペンペンは温泉を気持ちよさそうに泳いでいる。
「やっぱり温泉はいいな。」
「ええ、風呂がこんなに気持ちいいなんて知りませんでした。」
「また来たいな。」
「そうですね。」
反対側から声が聞こえてきた。
「葛城たちも来たな。」
「ええ。」
すると反対側から呼び声がした。ミサトだ。
「シンジ君。聞こえる?」
「はい!」
声が上ずっていた。
「ボディーシャンプー投げてくれる?」
「持ってきたの無くなっちゃった。」
「うん。」
シンジはボディーシャンプーを持って塀の近くにより反対側に投げた。
「いたっ!バカね、どこに投げてるのよ下手くそ!」
「ごめん。」
「変なところにあてないでよね。」
「どれどれ~?」
途端に危ない雰囲気になった。どういうことが起こっているのかはご想像に任せるしかない。
「アスカの肌ってぷくぷくしてて気持ちいい~」
「・・・おやじか?あいつは・・・」
シンジは少し赤くなっていた。
しばらくミサトとアスカのやり取りが続いた。
「そんなこと言ったらレイだって・・・」
ミサトの矛先がレイに向いたようだ。
「確かに・・・えい!」
「!!!」
「あたしも!」
「!!!・・いやっ・・・助けて碇君!」
思わずシンジに助けを求めたようだ。
「・・・ごめん。・・・綾波ごめん・・・・」
と言いつつ真っ赤になりながら温泉でブクブクしていた。
「・・・後で慰めてやれよ。葛城!アスカ!いい加減にしてやれ!」
と外からフォローするコウスケ
「・・・まあ、平和だね~。」
こんな日々が続けばいいと願わずにはいられないコウスケだった。
すごいあっけない使徒戦
ほんとにこんなので殲滅できるのか?
なんて思いますが、いいんじゃないでしょうか?
最近おまけのほうに力が入っているように思います。
気のせいだと・・・
思いたいです・・・
おまけ
「碇君。」
レイは少し膨れていた。
シンジは普段見せないレイの表情に少しかわいいと思ったとか思わなかったとか・・・
「なっ何?」
「どうして来てくれなかったの?」
あの時のことを根に持っていたようだった。
「だって、女湯だよ。いけないよ!」
シンジの心の叫びだった。
「碇君が助けてくれると信じてたのに。」
「でも・・・」
「私、もてあそばれた。」
「・・・ごめん。」
「・・・もう、ダメなのね。」
うっすらと影が差しているレイ
「!そっそんなことないよ!」
「なら、なぜ来てくれなかったの?」
再びシンジを問い詰めるレイ
などということがコウスケが来るまで繰り返されたという。