NERV航空隊隊長綾波   作:浩介

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第15話 招待状

「最近レイは変わったわね。」

部屋に煙が漂う。

行き場がなくただ漂う煙は彼女の心のようだった。

「確実に心が芽生えている。」

「そのきっかけは・・・シンジ君」

「・・・そして綾波コウスケ。」

「計画はすでに放棄されている。でも・・・」

「あの人は見てくれない・・・」

「真実を知れば・・・」

煙はいまだに漂っている。

・・・

 

「特務一尉か・・・」

コウスケは肩の傷も治り、普通に暮らしている。

そんな時に昇進の辞令をもらった。

「・・・まあ、返すほど無欲ではないからな。貰っとくか。」

実際に戦闘で活躍しているのは子供たちである。

コウスケも戦闘機でサポートに回るが、あくまでもメインはEVAである。

「もっと負担を減らせるようにならんとな。」

と新たなる決意をするのであった。

・・・

 

「よう、葛城。」

「あら、コウスケ君。」

「仕事・・・押し付けたな?」

「ギクッ!」

普段ずぼらなミサトなので少しカマをかけて見たのだが、図星だったようだ。

「あんまり日向二尉に迷惑かけるなよ。」

ミサトが仕事を押し付ける相手は日向二尉なのだ。

おかげで日向の事務処理能力は一段と冴えることになったが・・・

「えへへ・・・」

ミサトは引きつっている。

ふとコウスケはミサトの階級章に目をやった。

「ん?・・・葛城も昇進したのか。」

「ええ、そうよ。」

と言っても嬉しそうじゃなかった。

「・・・やっぱ、子供たちのことか・・」

「まあね。」

(どうも違うみたいだな。)

「でも、できることは限られてるだろう。つらいだろうけど全力で支援するしかないな。」

「そうね。」

・・・

 

「あっコウスケさん。」

通路にてコウスケはシンジとあった。

「おう。どうした?シンジ君。」

「今度の土曜日にミサトさんの昇進祝いがあるんですけど、コウスケさんも来ませんか?」

(昇進パーティか・・・)

コウスケはパーティがあまり好きではなかった。

それに酒も好きではない。

なので必ず酒が出される場というのが苦手なのだ。

だが、誘われて断るほど嫌というものではないのだ。

ましてや戦友からの誘いだ。

「そういうのも悪くないな。」

「じゃあ・・・」

「俺も行こう。」

「わかりました。」

「準備は?」

「友達と一緒にやるので大丈夫です。」

「わかった。なるべく早く仕事を済ませるよ。」

「はい。」

・・・

 

休憩室に行くとレイがベンチに座っているのが見えた。

何となく悩んでいるように見えた。

「よう、レイ」

「こんにちは、特務二尉。」

「もう二尉じゃない。」

「・・・特務一尉」

「で、どうしたんだ?こんなところで。」

「・・・何でもありません。」

レイが無表情で答える。

普段ならここで会話は終わるが、コウスケはなぜか終わらせてはならないと感じた。

「嘘だな。」

「・・・」

「そんな雰囲気でいたら、何か悩んでるなんてすぐにわかる。」

「そうですか・・・」

「やっぱり感情表現が苦手なだけか。」

コウスケはもしかしたらと思っていたことであった。

「感情表現?」

「人だけでなく動物なら痛い、嬉しい、怒るといったことを体、顔、しぐさで表すものなんだ。」

「・・・」

「そういったことをレイはなかなか表せないが、雰囲気でわかるんだな。」

「・・・変ですか?」

「変じゃないだろう。そんな人はいっぱいいるしな。」

「・・・」

「まあ、それを含めて綾波レイだろう?」

レイの目がピクリと動いたような気がした。

「人なんてひとくくりにするけど、生い立ち、経歴が同じ人なんているか。碇シンジ、葛城ミサト、惣流・アスカ・ラングレー・・・人にもいろいろいるんだ。感情表現が苦手なんて個性の一つだな。」

はた目からではわかりにくいが、レイは感心しているように見えた。

「で、何を悩んでたのかな?」

「・・・葛城三佐の昇進パーティの参加です。」

「それで?」

「・・・断ろうかと。」

「それは綾波レイとしての判断かな?」

「・・・」

「・・・ファーストチルドレンとしての判断か・・・綾波レイとしては?」

「・・・・・・行ってみたいです。それに・・・」

「それに?」

「碇君。」

「・・・シンジ君と一緒に居たいのか。」

「はい。」

そういうレイはうっすらと赤くなっている。

「なら行くべきだろう。シンジ君はファーストチルドレンに言ったんじゃないからな。」

「なぜ、わかったのですか?」

「何となくだ。多分どもりながら言ったんだろう。」

(そして周りに冷やかされたな。)

「はい・・・」

その時のことを思い出しているようだった。

「早くシンジ君に言ってやれ。」

「はい。」

「もう少し自分に素直になれよ。もう一人の綾波さん。」

コウスケは仕事に戻った。

・・・

 

ミサトの昇進祝賀パーティの日

コウスケはNERVでの仕事を終え、会場であるミサトのマンションに寄る前にレイのマンションに寄っていた。

レイと話した日から何となく気になっていたコウスケは諜報部の力を借り、レイがどこにいるのか探し出していた。

レイのマンションは再開発のため取り壊しが決められていたが、使徒襲来による都市部の復旧のため延期になっていた。

402綾波と書かれた表札の前に立ったコウスケはインターフォンを鳴らすが、反応がない。

仕方ないのでドアを叩くことにした。

「・・・おかしいな。ここにいるはずなんだが・・・」

少々ためらわれたがドアノブに手をかけた。

「・・カギは空いているか。・・・綾波コウスケだ。入るぞ。」

そう言ってドアを開けた。

部屋に入ると人が暮らしている感じがしなかった。

むき出しのコンクリート、散らばったプリント、暗い部屋・・・

何となく部屋全体が綾波レイを表しているようにコウスケは思えた。

(普通なら耐えられんな。こんなところ・・・)

コウスケがそのまま進むとベットに腰かけているレイが見えた。

「こんなところで何してる。」

レイは答えなかった。

「・・はぁ~。素直になれと言ったが・・・」

「・・・」

「行くぞ。」

「・・・」

「お前さんはどうしたいんだ?」

「・・・行ってみたいです。でも・・・」

「なら行くぞ!」

そう言ってコウスケは無理やり連れていくことにした。

・・・

 

ミサトのマンションについたコウスケとレイは、本日貸切と書かれた紙が張られているドアの前に立っていた。

コウスケがインターフォンを鳴らした。

ドアが開くとシンジが迎え入れてくれた。

「コウスケさん。それに綾波も。」

「すまん。遅れた。」

「いいですよ。それにしてもよかった・・・」

「何が?」

「綾波が来てくれて。」

そう言って笑顔を見せるシンジ

「早く上がってください。綾波も。」

そう言ってシンジは先に入った。

「よかったろ。」

「はい。」

レイはとてもうれしそうに見えた。

「・・・あ、ありがとう・・ございます。」

照れながらつぶやくようにレイが言った。

「礼には及ばんよ。」

そう言ってコウスケたちは中に入った。

・・・

 

中に入るとミサトにアスカそしてクラスメート三人組がいた。

「なんだ。加持さんじゃないの。」

「加持でなくて悪かったな。」

テーブルを見るとなかなか豪勢な料理が並んでいた。

「ほう。これは全部シンジ君が用意したのかな?」

「いえ。洞木さんにも手伝ってもらったんです。」

と言って洞木ヒカリのほうに向いた。

当然ながらコウスケはシンジのクラスメートの顔は全員覚えている。

「ふむ・・・なかなかよい嫁さんになりそうだな。」

「そんな・・・」

ヒカリは赤くなっていた。

ちらちらと鈴原トウジを見ているのがわかった。

「・・・ふむふむ。なるほどね。」

(わかりやすいな。)

「?」

トウジは気がつかないようだ。

「・・洞木さんも大変だな。」

「・・・」

ばれてしまったというような顔のヒカリであった。

「ほらほら、そんなところに突っ立ってないで早く座りなさい。」

ミサトが促す。

コウスケとレイは手近な場所に腰かけた。

「ああ!」

ケンスケが吠えた。

「綾波特務に・・一尉も昇進したんですね。」

ケンスケはコウスケのことを綾波特務二尉と呼んでいた。

なので今日から呼び名が変わるのだ。

「まあな。」

「しまった!もっと早く知っていれば・・・」

「気持ちだけでいいよ。」

そうしているうちにビールがコウスケの前に差し出された。

「それでは葛城三佐と綾波特務一尉の昇進をお祝いして・・・」

いつの間にかコウスケの昇進も加えられていた。

「「「「乾杯!」」」」

するとレイだけきょとんとしていた。

「どうした?」

「乾杯って何ですか?」

「・・・お祝い事があるときに飲み物を入れだグラスを互いに軽くぶつけることを乾杯というんだ。」

「・・・?」

「まあ、やってみろ。グラスを割らないようにな。相田君、レイは初めて乾杯するらしい。」

「了解しました。」

ケンスケは咳払いをした。

「では、気を取りなおして」

「「「「乾杯!」」」」

「・・・乾杯。」

こうして宴会が始まった。

「どうだった?初めての乾杯は。」

「・・暖かいです。」

「そうか。」

コウスケは満足そうにした。

ミサトはビールを飲む。

その横でペンペンも一緒に飲んでいる。

(ほんとにペンギンか?)

などとコウスケは考える。

爪で器用にプルタブを開き、ごくごくとビールを飲むペンギンなんているだろうか。いや、いまい。

アスカはちょっと騒がしい。

シンジはこの雰囲気が苦手なのかちょっと冷めた顔だった。

トウジは料理に夢中だ。

ケンスケは昇進したミサトに謝辞を送っていた。(コウスケには無い。)

ヒカリもアスカとの会話に楽しんでいた。

レイは・・・

「・・・」

黙々とフライドポテトに侵攻していた。

(気に入ったんだな。)

そんな時インターフォンがなった。

「きっと加持さんだわ!」

アスカの言う通り加持が現れた。

同時にリツコも一緒だ。

「本部から直なんでね。そこで一緒になったんだ。」

「「怪しいわね。」」

ミサトとアスカがシンクロする。

「あら、やきもち?」

「そんなわけないでしょ。」

ミサトが拗ねるように言う。

「にしてもレイがここにいるなんてね。」

リツコが嫌な顔で言う。

レイが少しおびえているように見えた。

「俺が無理やり連れてきたんだ。それにレイが居ちゃまずいのか?」

「あら、別にそんなつもりで言ったんじゃないわよ。」

リツコはごまかすように言う。

(嘘つけ。)

コウスケはそう思った。

「しかし、司令と副司令がそろって日本を離れるなんて前例のなかったことだ。これも留守を預けた葛城を信頼してるってことさ。」

「父さんはどこにいるんですか?」

シンジがもっともな疑問を問いかける。

「今は南極にいるわ。」

「・・・南極ね・・・あんなところに何しに行ったんだか。」

コウスケはつぶやくように言った。

ふと見るとミサトが苦い顔をしている。

南極という言葉に反応しているようだった。

「さあね。私にもわからないわ。」

(ほんとにそうかな?赤木博士。)

リツコは何かを隠している。そうコウスケは思うのであった。

・・・

 

宴会も進んでいき終わりが見えてきたころ、コウスケはシンジの横にリツコがいるのを見た。

よく見ると何かを話しかけているようだ。

(・・・レイ・・秘密・・・知りたくない・・・)

コウスケは読唇術を駆使し、何を言っているのかを読んだ。

なぜコウスケが読唇術を使えるのか?

それはコウスケの訓練のたまものだった。

(明日・・・夜・・・NERVゲート・・・)

その時のリツコの顔は嫌な顔に見えた。

(なかなかすごいものが見えるかもしれんな・・・)

レイを見ると黙々とフライドポテトを食べていた。

「・・レイ、そればっかだな・・気に入ったのか?」

「はい。」

「そうか。」

(レイの秘密ね・・・)

コウスケは好奇心に駆られていた。

・・・

 

宴会が終わりコウスケはレイを送り届けることになった。

ほんとはシンジに行ってもらいたがったが、片づけをする人がいないのと、コウスケが無理に連れてきたということでそう決まった。

「どうだった?」

「・・心が弾んでいるように感じました。」

「そうか。楽しかったんだな。」

「楽しい・・そう楽しかったのね。」

「もっと素直になれよ。自分に。」

「・・・はい。」

いつの間にかレイのマンションについた。

「・・レイはここに居て何にも感じないのか?」

「命令ですから。」

「そうか。」

(命令最優先ですか・・)

「で、どう思ってるんだ?」

「・・・胸が痛いです。」

「・・・寂しいんだな。」

「・・・」

(ここに一人か・・・碇司令に持ち掛ければ・・無理か。)

「・・・じゃ、また明日な。」

「はい。・・・」

「ん?どうした。」

「・・あ、ありがとうございます。」

またもやつぶやくように言うレイ。

「フッ。案外かわいい奴だな。」

「!」

「そういうレイは嫌いじゃないよ。じゃあな。」

コウスケはレイのマンションを後にした。

・・・

 

「・・・レイの秘密か・・・」

リツコがシンジに言っていたことを思い出す。

「何が隠れているかな?」

そう言ってコウスケは自分の家に帰って行った。




レイが食べるものをフライドポテトにした理由は一応あります。
・・・どんな状態でも好感度が上がる唯一のアイテムですからね
なぜか解りましたか?
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