NERV航空隊隊長綾波   作:浩介

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第16話 中心教義の奥

コウスケはいつもの居場所-喫煙所にいた。

「よう、加持。お前も休憩か?」

「ああ、そうだ。」

加持は煙草を取り出す。

「ここの売店って煙草売ってないんだよな。」

「だな。わざわざ外に行かなきゃならんからな。」

「ここに「カード」で買える自販機を置いてくれないかな。」

コウスケはわざとカードを強調した。気づかれない程度に。

「「碇司令」や「副司令」に上申書を出してみようかな。」

「そりゃ「無理」だろう。あのおふた方は吸わないからな。」

加持も気づいたようだ。

「そうか。」

「「赤木」ならどうだ?」

「彼女も喫煙者だったな。「行ける」かな?」

「うまく説得すれば、「行ける」んじゃないかな?」

「・・・ダメもとでやってみるか。」

「「うまく」やってくれよ。」

「わかった。あまり期待はするな。」

・・・

 

「ん?アスカ。今日は上りか?」

NERVの通路にてコウスケはアスカと出会った。

「あら、コウスケ。そうよ。」

「シンジ君はどうしたんだ?」

「先に帰ったわ。」

「そうか。」

「でも、今日はジャージのところに泊まるって言ってたわ。」

「ジャージ?」

「鈴原よ。」

「・・・ああ、鈴原君か。確かにいつもジャージだな。」

数度しかトウジとは会ってないがいつも同じジャージだったのを思い出した。

「まさか、学校でもあの恰好じゃないよな・・・」

「あの恰好よ。」

「・・・私服なのか?」

「聞いてみればいいじゃない。」

「・・それが早いか。」

(何着持ってるんだ?)

「じゃ、もう行くわね。」

「ああ。」

アスカは帰って行った。

「・・うまく騙したわけだ。シンジ君は・・・」

・・・

 

コウスケは暗い通路に立っていた。

加持から教えてもらったターミナルドグマへの道に彼は立っていた。

監視カメラがあったが、加持に頼んでダミーの映像が流されていた。

足もとが見えなくなるような暗さだったが、夜目に慣れているコウスケには苦でもなかった。

遠くからハイヒールの音が聞こえる。

コウスケは身を隠し音が止まるのを待った。

やがて音が止まるのを確認し、その人物の背後に回って銃を突きつけた。

「あら、こんなところに何のようかしら。」

リツコが意外そうに言う。

「なに。昨日シンジ君に渡した招待状を分けてほしくてな。」

「・・・加持君ね。」

「まあな。」

「でもどうしてわかったのかしら。」

「唇を見ればな。赤木博士はわかりやすかった。」

「読唇術ね。」

「ああ。」

「・・・まあいいわ。あなたにも見てもらいたいし。」

そう言ってリツコはカードを通した。

横にいたシンジは不安そうな表情だった。

・・・

 

ライトアップされた場所は真ん中にベット、様々な薬品、むき出しのコンクリート、そしていろんな文字が書かれていた。

「まるで綾波の部屋だ。」

シンジがつぶやく。

コウスケは昨日見たレイの部屋を思い浮かべていた。

「綾波レイの部屋よ。彼女の生まれ育ったところ。」

「ここが?」

「そう、生まれたところよ。レイの深層心理を構成する光と水はここのイメージが強く残っているのね。」

「赤木博士。シンジ君に見せたいのはこんなものじゃ無いだろう。」

「そうよ。綾波特務一尉。」

・・・

 

次に案内されたところは頭と骨ばかりが廃棄されている場所であった。

「EVA?」

「最初のね。失敗作よ。10年前に廃棄されたわ。」

「EVAの墓場。」

シンジが的確に言ってくれた。

「ただのゴミ捨て場よ。あなたのお母さんが消えたところでもあるわ。覚えてないかもしれないけど、あなたも見ていたはずなのよ。お母さんの消える瞬間を。」

シンジはおびえたような目をしていた。

「でも、これも違うんだろ。さっさと本命に案内しろ。」

リツコは冷めた顔だった。まるでこの後になにが起るかわかっているかのように・・・

・・・

 

次に案内されたところは巨大な脳みそのような場所だった。

真ん中にはオレンジ色のチューブがあった。

人ひとりは入れそうだった。

「・・・ここが本命か。」

「ええ。ここは今開発中のダミープラグの生産工場よ。」

「ダミープラグの・・・」

コウスケもダミープラグのことは知っていた。

無人でEVAを操ることができるシステム。

それができればチルドレンに無駄な犠牲を強いることがなくなると考えていた。

「・・真実を見せてあげるわ。」

そういったリツコはニヤリと嗤ったように見えた。

ボタンを押すリツコ

途端に周囲がオレンジ色に明るくなった。

中に無数の人のようなものが見えた。

コウスケはあまりの事態に脳が追い付かなかった。

「綾波・・・レイ・・・」

シンジがつぶやく。

途端にシンジに振り向く無数の「綾波レイ」

「!!」

シンジの目は完全におびえていた。

「・・・まさか、ダミープラグの資材にしているのか!」

「そう。ダミーシステムのコアとなる部分、その生産工場よ。」

「そんな・・・ばかな・・・」

「ここにあるのはダミー。そしてレイのためのパーツにすぎないのよ。」

リツコが話を続ける。

「人は神様を拾ったので喜んで手に入れようとした。だから罰が当たった。それが15年前。」

(セカンドインパクトか・・・)

「折角拾った神様が消えてしまったわ。でも今度は神様を自分たちの手で復活させようとしたの。それがアダム。そしてアダムから神様に似せて人間を造った。それがEVA。」

「人・・・人間なんですか?」

シンジがおびえながら聞いた。

(そういや、人造人間って言ってたな。)

「そう、人間なのよ。本来魂のないEVAには人間の魂が宿らせてあるもの。みんなサルベージされたものなの。魂の入った入れ物はレイ、一人だけなの。あの子にしか魂は生まれなかったの。ガフの部屋は空っぽになってたの。ここに並ぶレイと同じものには魂がない、ただの入れ物なの。」

(入れ物ってことはレイが死ぬと新しいレイが出てくるのか?)

リツコの目が変わった。

「まだこんなものじゃ足りないわ。」

その眼は狂気に彩られていた。

(まだ何かするつもりか・・・)

「・・・どうりで経歴が抹消されていたわけだ。こんなのいくら超法規で守られているとはいえ、許されざることだからな。」

コウスケは銃をリツコに向けた。

「で、碇ユイと何の関係が有るのかな?」

「そう・・・そこまで気づいたの?」

「いくらなんでもそっくりそのままなんて、疑ってくださいと言っているようなものだろう。」

「・・・綾波レイを作るのに遺伝子をもらったのよ。」

(作るか・・創造主のつもりか?)

「クローンってわけか。」

「ただのクローンではないわ。使徒の遺伝子も使っているもの。」

(アルビノはそのせいかな?)

「使徒・・・」

シンジは裏切られたと言いたげだった。

「でもそんなものにも勝てなかった・・・あの人のことを考えるとどんなことにも耐えられた。でもあの人は・・・・あの人は・・・」

リツコの嗚咽が続いた。

コウスケはリツコの今までの挙動から一人の人物をはじき出した。

「・・・碇ゲンドウか・・・」

「父さんが・・・」

「そうよ!」

(なるほど、女の嫉妬というところか・・・それと、どんなことにも耐えられたね・・・)

「・・・で、それが綾波レイとどう関係が有る。」

「・・・」

「答えろ!」

「・・・ないわ。」

「だろうな。と言いたいがそうじゃないんだろう。」

「・・・」

「最初は碇ゲンドウに近いレイが憎かったんだろう。碇ユイにも似ているしな。それだけならまだよかったのかもしれない。だが、そんなレイが心を持ち始めた・・・」

「・・・」

「人形として育てたのに俺やシンジ君が接触したために心を持ち始めた。それが気に入らなかったんだろう?」

「違うわ。」

「ふん!自分は人形に成り果てたのに、作った人形が心を持つことに耐えられなかったんだろう。」

ここはコウスケのカマかけだった。

「違うわ!」

というリツコの言葉に確信に変わった。

「それでシンジ君にこれを見せて、レイからシンジ君を取り上げようとしたのか!」

「・・・」

「で、シンジ君とレイを壊そうってのか。碇夫妻の代わりに。」

「・・・」

「見上げた根性だな!抵抗できない少年、少女をいたぶって楽しもうとしたんだろう!」

「・・・そうよ。」

コウスケは銃を下したが、拳がなわなわと震えていた。

「覚えておけ。俺の戦友をいたぶろうとした罪は重いからな。」

「あれは人じゃないのよ。」

「今の綾波レイは人になろうとしている。無意識だろうがな。それだけで十分だ。それにあんたよりは人らしいよ。人でありながら人形に成り下がったあんたよりはな。」

リツコは何かに衝撃を受けたように倒れこんだ。

「もうこんなものはいらないだろう。いや、あってはならない。」

コウスケは水槽の近くにあったバルブに手をかけた。

「何をするの!」

リツコが飛び掛かるが、一瞬で払いのけられた。

「今言っただろう?・・人形は人形らしくおとなしくしてな。」

コウスケはバルブを回した。

途端に崩れだす「綾波レイ」たち

「・・すまんな。助けることができなくて。せめて安らかに眠ってくれ。」

その声に反応するかのように笑い声が響いた。

それは感激しているようにも聞こえた。

「・・そうか。ありがとう。」

コウスケは何となくそう言わねばならないと思った。

「シンジ君。もう行くぞ。」

「・・・はい・・・・・・・」

コウスケはリツコを放置し、部屋を後にした。

女性のすすり泣く声を背景にして

・・・

 

シンジを自分の家に招待し空いている部屋を貸した後、コウスケは自室に帰った。

シンジのどうすればいいかわからないといった顔が思い浮かぶ。

「・・・綾波レイか・・・」

最近心を持ち始めた少女。

その知られざる秘密。

「・・人は誰しも自分の生まれる場所を選べんからな。」

綾波レイがどんな生い立ちなのかなんて正直どうでもよかったのだ。

なぜなら綾波レイは確かに存在するからだ、人の世界に人として。

だが、そういう風に納得できる者ばかりではないというのも知っていた。

そういう意味ではシンジが心配だった。

「・・・」

もはや何も言えない。

コウスケはそのまま眠ることにした。

・・・

 

シンジの変調はすぐに出た。

シンジはコウスケの家を出た後学校に登校したが、明らかに顔色がよくなかった。

シンジの様子が気になったコウスケはミサトの代わりに午後のシンクロテストを見学していた。

今頃ミサトは泣く泣く書類を整理しているだろう。

リツコが黙々と準備をしている。

何となくどこか吹っ切れたような感じだった。

「アスカは依然好調ね。」

「そうですね。それに比べシンジ君は。」

「落ちているわね。」

「ええ、起動指数はクリアしてますが、あまり高いとは言えません。」

伊吹が報告を行う。

コウスケは前のデータを見せてもらった。

「・・・こんなに違いが出るのか?」

シンジのデータは前回に比べガクッと落ちていた。

「EVAとのシンクロにはパイロットの精神の安定が必要なのよ。・・・シンジ君には悪いことをしたわ。」

コウスケは昨日の出来事を思い出す。

14歳の少年には処理しきれない問題だろう。

「それと・・・」

と言って伊吹がレイのデータを差した。

「あまり変わらないように見えますが、レイも落ち気味です。」

「レイが?」

コウスケは何があったのかを何となく推察できた。

「・・・多分、学校でシンジ君がレイを避けたんだろう。あからさまに。・・赤木博士の思惑通りに。」

「・・・そうなのね。」

リツコはどうすればいいかという顔だった。

「後悔しているみたいだな。」

「あの後冷静になってみれば、レイにはなんにも関係がないってわかったのよ。いや、わかってはいたのよ。・・・バカだったわ。」

リツコは自嘲していた。

「あんたより人らしいか・・・確かにそうかもしれないわね。」

「・・・ならいい。」

伊吹は何の話やら分からないと言いたげだった。

・・・

 

「どうした?シンジ君。」

コウスケはテスト終了後シンジと会っていた。

シンジはすでに制服に着替えていた。

「いえ・・・」

「レイのことだろう。」

「はい・・・」

「・・・」

「あんなこと言われて、綾波とどう会えばいいのかわからないんです。怖いんです。」

「だろうと思ったよ。今まで通りにできないのか。」

「だって綾波は人じゃないんでしょ!」

なかなかの大声だった。

使徒とは言わなかったのはここがNERVだからだろうか。

「・・それが本心か。」

「だってそうじゃないですか!」

「・・・ならなぜ迷ってる。嫌なら嫌だとはっきり言えばいいじゃないか。」

(まあ、それをしたら・・・レイの心は死ぬな。)

「・・・」

「違うんだろ。今までに見てきたレイを見て。」

シンジは俯いている。

(14歳の少年には荷が重すぎるか。)

「シンジ君、人って何だ?」

「それは・・・」

「いや、人間って何だ?どういう風に書くんだ?」

「人の間と書きます。」

「だな、つまりは人の形をして、人の心を持ち、なおかつ人の間に生きるものを人間というんだろう。」

「・・・」

「テスト後に悪いな。もう帰って休んでくれ。」

「はい・・・」

シンジが帰ろうとするとレイが近くにいた。

「・・碇君。」

シンジは顔を背け去って行った。

レイはとても寂しそうに佇んでいた。

・・・

 

数日たったが相変わらずシンジはレイを避けていた。

学校、NERV問わずレイを見ると逃げ出すのであった。

それに伴いシンクロテストもはっきり言って最悪のものとなっていた。

シンジは一向によくなる気配がない。

レイも心が不安定なのが目に見えてわかるようになっていた。

アスカは依然好調なのだが、二人が気になってしょうがないようだ。

「ちょっと!テスト中よ二人とも集中しなさい!」

ミサトが喝を入れるが、変化はない。

「いったいどうしたのよ。コウスケ君、わかる?リツコは何も答えないし。」

それは二人を見ていた人たちの代弁をしていた。

コウスケとリツコは当然ながら理由を知っていたが、答えるわけにはいかない。

「わからん。」

と答えるしかなかった。

「こんな状況で使徒が来たら大変よ。」

「原因がわかればな・・・」

(知ってるけど。)

ミサトは腕を組んだ。

「シンジ君ね。」

「なんでそう思うんだ?」

「シンジ君の態度を見てればわかるわよ。っていうかあからさまに避けてるでしょ。」

実際チルドレンを守るガードからもそう報告があった。

もはや、シンジがレイを避けているというのは皆が知っていることだった。

「そうだな。」

「問い詰めても何も答えないし。」

(言えないな。あんなこと。)

「どうにかならないかしらね。」

「パイロットの管理は葛城の管轄だろ?」

「正直お手上げよ。」

ミサトは両手を上げていた。

(だろうな。)

「なにかいい手がない?」

「・・シンジ君が・・」

「なに?」

「いや、なんでも無い。」

「あんたもお手上げか・・・」

(レイのことを人だと思えれば変わるかな?)

などとコウスケは考えるのであった。

・・・

 

「赤木博士。入るぞ。」

コウスケはリツコの研究室に入って行った。

「ごめんなさい。忙しいのに。」

「なんだ。何か用か?」

リツコは決心を固めたようにコウスケの瞳を見た。

「あの二人のことよ。」

「シンジ君とレイか。」

「ええ。」

「どうしたいんだ?」

「どうにかならないかしら。」

「どうにもならんよ。」

コウスケは両手を上げた。

「あれはシンジ君が解決しないことにはどうにもならんよ。」

「やっぱりそうなのね・・・」

リツコは視線を落とした。

「後悔先に立たずとはこういうことを言うのね。」

「・・きっかけがあればあるいは・・・」

「きっかけ?」

「ああ、シンジ君はレイが人じゃないということに悩んでいるように見える。・・レイの体は人なのか?」

「髪と眼の色は特殊だけど、問題ではないわ。」

リツコは断言した。

「なら、シンジ君がそれをわかるようになればいい。」

「そんな簡単に行くかしら。」

「他の人と同じだということを解ればいい。」

「・・方法があるの?」

ぼりぼりと頭を掻くコウスケ

「う~ん・・・正直成功すると言えないな。」

「そう・・・」

ともかく何とか現状を打破できないか

その思いはまだ一部の人のみが抱えるものだった。




綾波レイは人とどれくらい違うんでしょうか?
公式に書かれているものは無いので、ここでは人と変わりないということにしました。
三人目はそれらしきものがありましたが、二人目はいまいちそこらへんが出てなかったので・・・
多分、二人目は人と変わりないんじゃないかなと
じゃなきゃ自爆なんてしないだろうし・・・
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