NERV航空隊隊長綾波   作:浩介

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第19話 新たなる任務

「のんびりと歩くのはやっぱりいいね。」

そう独白するコウスケは、第三新東京市をただ当てもなく歩いていた。

そんな彼を年寄りなんて言う人もいるが、コウスケ自身はあまり気にしていなかった。

道端に咲く花、見たことのない野良猫、新しく掲載されている看板・・・

休日にそういった微々たる町の変化を見つけることが何よりの楽しみだった。

そんな彼は一つの変化を感じた。

「・・・嫌だな。」

それは悪寒というものだった。

コウスケはひそかにあたりを見回した。

感じた悪寒を気のせいと受け流すことを彼自身が拒んだ。

よく見るとわずかながらこの雰囲気にそぐわない人を見つけた。

コウスケは注意深く、だがさりげなく観察するとわずかながら殺気を感じる。

その殺気がどこに向いているのかさりげなく見ると、第一中学校の制服を着た少女に向いていた。

髪の色は空色だった。

「・・まずいな。」

彼女は本屋に立ち寄った。

コウスケは彼女を追うため同じ本屋に入った。

・・・

 

「よう、何か探し物か?」

「はい。」

空色の髪の少女-レイが答えた。

「何を探してるんだ?」

「人の心理に関するものです。」

よく見るとレイの手には人の心理に関する本が握られていた。

タイトルから研究者が読むようなものだろう。

「なるほど。だが、それよりももっと良いものがあるぞ。」

(・・まだ見張ってるか。)

と言ってコウスケは一つの小説を取り出した。

「それはあくまでも学術研究のためだろう?人の心理をもっと知るには、小説や漫画を読むほうがいいかもしれん。」

(護衛は・・・やられてるな。)

レイはきょとんとしている。

「なんだ?読んだことないのか?」

「はい。」

「そうか。」

(俺を警戒しているのか。)

「・・ダメですか?」

「別にそういう本がダメなわけじゃないが、こういったものを読むのも勉強になるってことだ。」

(単独じゃないな。)

「それより、これからどうするんだ?」

「自宅で待機します。」

(・・まずいな。)

ガードがやられてる以上、自宅で待機など危険なだけだった。

「なら、俺に付き合ってくれ。レイももっと外の世界を知らないとな。」

(何とかして本部と連絡せんとな。)

「・・わかりました。」

・・・

 

本屋を出たが、やはり見張っていた。

幸いにもこっちが気づいていることは、まだ知らないようだった。

おそらく油断しているのだろう。

だが、コウスケの正体が知られている以上時間の問題だろう。

取りあえずコウスケは適当な店に入って物色することにした。

そこはアクセサリーなどを扱う店だった。

コウスケがレイにいろいろ見せるが、特に関心を示さなかった。

不意にレイの足が止まる。

「どうした?」

レイの視線の先には船の錨を模したキーホルダーがあった。

「・・わかりやすいな。」

レイは動かない。

「いかりだな。それ。」

びくりと反応した。

「欲しいか?それ。」

僅かながら顔が立てに揺れた。

「・・買ってやるよ。付き合ってくれた礼だ。」

といってコウスケはキーホルダーをレジに持っていき清算した。

「ほら。」

コウスケはキーホルダーをレイに渡した。

「なくすなよ?」

「はい。ありがとうございます。」

「かばんにでもつけておけ。」

(明日の学校でどうなるかな?)

「はい。」

と言ってレイは早速かばんにキーホルダーをつけた。

(もう限界だろう。)

すると携帯電話が鳴った。

「はい。綾波です。」

『コウスケ君。』

ミサトからだった。

『レイも一緒に居るでしょ?そのまま本部まで連れてきて。』

おそらくガードが消えたことに不安を感じたのだろう。

「わかった。」

コウスケは電話を切った。

「レイ。このまま本部に行くぞ。呼び出しだ。」

「はい。」

コウスケたちはそのまま駅に向かい何とか事なきを得た。

・・・

 

コウスケはNERVについた後、発令所に向かった。

「よう、葛城。助かった。」

「無事でよかったわ。レイは?」

「一応、控室に行くように言ったよ。」

「そう。」

ミサトは安心したようだ。

「他の二人は?」

「本部に来るように言ったわ。」

「それが安全だな。」

「今、MAGIを使って背後関係を調べてるわ。」

「と言っても簡単に尻尾はつかめないだろうな。」

「でしょうね。」

どう考えてもプロだった。

そんな連中が簡単に尻尾を出すはずがない。

「それよりもこれからだな。」

ミサトの顔には?が浮いていた。

「レイだよ。あいつは一人だろう?」

「・・そうか、うちのガードは簡単にやられちゃったしね。」

「多分狙われるだろう。」

「・・でもうちの管轄じゃないのよね。」

「そこが難しいな。」

レイの管轄はゲンドウなのだ。

ゲンドウが首を縦に振らなければ、どんな嘆願も実行できない。

NERVの総司令は絶対的な存在なのだ。

すると黒服が現れた。

「綾波特務一尉、碇司令がお呼びです。」

「わかった。」

「なに?何かしたの?」

「おまえじゃないんだから。でも気になるな。」

「まあ、いってらっしゃい。」

コウスケは黒服の後に続いた。

・・・

 

「綾波特務一尉をお連れしました。」

ドアは「入れ。」という言葉とともに開いた。

相変わらず暗くて辛気臭い部屋だった。

(よく見ると天井に樹のようなものが書かれているな。)

などと少しは部屋のインテリアに気を回す余裕ができているコウスケだった。

「綾波特務一尉、参りました。」

目の前には二人の男-ゲンドウと冬月がいる。

「今日から新しい任務に就いてもらう。」

ゲンドウが顔の前で手を組みながら言う。

ゲンドウから紡がれた言葉に唖然とするコウスケ

「申し訳ありません。新たな任務についてもう一度伺いたいのですが・・・」

「・・ファ―ストチルドレンの保護者代理だ。それに伴いファーストチルドレンと同居してもらう。場所は葛城三佐の隣だ。」

(レイの保護者代理?意味が解らん。・・って同居?!)

「なぜ自分なのでしょうか?」

あくまでもコウスケは冷静に答えた。

「他の人間には無理だからな。」

ゲンドウが満足そうに言った。

(よくわからん。自己完結しているのか?)

「仰る意味が解りません。」

「碇。それで納得しろとは無理な話だろう。」

冬月がフォローする。

が、ゲンドウは何も答えない。少し不満そうだ。

(碇司令って口下手なんだな。)

冬月がため息をついた。

「代わりに私が説明しよう。」

「お願いします。」

「レイについてはもう知っているな?」

どのレベルでという疑問がつくが、コウスケは大凡のことならミサト以上に知っている方だろう。

だが、それをここで出すわけにもいくまい。

「ファーストチルドレンということと、経歴くらいしかわかりませんが・・・」

「そんなはずあるまい。セントラルドグマに行ったのだろう?赤木博士と。」

(まあ、知られてるわな。)

「・・・」

「最近チルドレンを狙う組織が多くてな。」

今日のことを考えれば言われなくてもわかる。

「シンジ君とアスカ君は葛城三佐と同居しているからいいのだが・・・」

「なるほど、レイは一人・・だからですか。」

「話が早くて助かるよ。」

「では、なぜ自分なのでしょうか?同居するなら同性の、例えば赤木博士とか、伊吹二尉とか・・・」

普通に考えればコウスケの言うことの方が正しいだろう。

「ダメだ。二人はダミーシステム開発に携わるからな。」

(なるほど、レイを見て平然としていられないということか。)

ダミーシステムと聞いてなぜと答えなかった地点で、何が行われているかを知ってると二人に言っているようなものなのだが、コウスケはそこまで考えが及ばなかった。

「ならば、他の職員にでも・・・」

「それこそダメだろう。」

「なぜです?」

「レイの経歴が複雑すぎるからだ。下手をすれば他に漏れかねないからな。」

既に冬月はコウスケがレイのことを知っていると確信して話している。

無論ゲンドウもだ。

(だな、人のクローン・・叩かれるには十分すぎる。)

「それに他の職員がレイのことを知ったとき、レイを忌避する可能性がある。」

(十分に考えられるな。)

セカンドインパクトを経験したもので構成されるNERV。

そのためセカンドインパクトを起こしたという使徒に対して、少なからず思うことがあるはずだ。

その使徒とのハイブリットである綾波レイ。

下手をすればとんでもない勘違い、筋違いの果てに殺される、あるいは他の研究機関に誘拐される可能性がある。

「だが、レイのことを知る君ならばそんなことはあるまい。」

「それで自分ですか。」

「そうだ。」

沈黙が訪れる。

コウスケは必死に状況を整理していた。

二人はそんなコウスケの反応をうかがっているようだ。

「・・お二人は何を成そうというのですか?」

コウスケは別に期待はしていなかった。

だが、思わぬ人物から思わぬ返答を得た。

「我々の目的は人類補完計画にあった。」

「人類補完計画?」

「碇。いいのか?」

「構わん。・・人為的にサードインパクトを起こすことだ。」

「な!」

NERV職員はそのサードインパクトを阻止するのが目的なのだ。

だが、実際やっていることがそれを起こすためと聞いて驚かずにはいられまい。

「人は群体生物だ。それゆえに心に空いたものがある。それを一つにまとめ完全なる単体生物として人工的に進化させる。それが人類補完計画だ。」

「それでは今までやってきたことは無駄だったと・・・」

「いや無駄ではない。使徒を放置すれば人類は駆逐されることになるだろう。」

「・・・確かに。」

使徒が放置されれば何年かかっても否応なしに人類は絶滅だろう。

「それに人類補完計画はSEELEの考えるシナリオだ。」

「SEELE?」

「世界を裏で操るものたちだ。国連の人類補完委員会はそのメンバーで構成されている。」

人類補完委員会の名前は国連軍にいたコウスケも聞いたことがある。

何でも国連の諮問機関で決定権を持っているほどの組織であった。

「・・なるほど、人類補完委員会というのは隠れ蓑というわけですか。」

コウスケは危機感を感じていた。

サードインパクトを起こそうという連中が国連の決定権を持っているなど、悪夢でしかない。

「SEELEがということはあなたたちは違うのですか?」

目的が同じならわざわざSEELEを出す必要はない。

それがコウスケには引っかかった。

「我々の目的はそれを利用し、ユイに会うことだった。」

(ユイ?・・碇ユイか)

「既に死亡しているのでは?」

「公式ではそうなっているが、実際はいる。初号機の中に。」

その言葉にリツコの「EVAには人の魂が宿らせてある」という言葉を思い出していた。

「だから初号機にはシンジしか乗れん。」

コウスケはもしやと思うものがあった。

「弐号機には・・まさか。」

「アスカ君の母親がいる。」

(母親とその子供・・専用機なのはそのためか)

「レイはどうなのでしょうか?親がいないはずですが・・・」

「レイこそ特殊だろう。他の二人には無いものがある。」

「・・使徒の遺伝子ですか。」

今まで知りえたものから答えをはじき出すコウスケ。

「それと第二使徒の魂と呼べるものだ。」

「第二使徒?」

「最初に会敵した使徒は三番目だ。第一はアダム。第二をリリスという。」

(第二使徒の魂・・・ということは地下にあるのは・・・)

「・・なるほど、使徒はリリスを目指しているということですな。囮というわけですか。」

「そうだ。そしてアダムは今、我々の手の内にある。そして人類補完計画の要であるロンギヌスの槍も。」

(ロンギヌスの槍って何だ?)

「切り札はそろっているということですか。」

ゲンドウは微動だにしないが、コウスケはそれを是と受け取った。

「それで何を成そうというのですか?どうやら目的が変わったような印象を受けますが・・・」

「ユイの意志を受け継ぐ。子供たちに未来を見せる。」

「どのような未来ですかな?」

「人が人として生きていく未来だ。群体生物として。」

(つまりは人類補完計画をつぶすということか。だが・・・)

コウスケいまいち信用できなかった。

「碇司令。司令の仰ることはわかりますが、信用ができません。」

冬月は当然だなと言いたげだった。

「なので、サングラスを外していただけますか?」

「・・わかった。」

冬月が驚いていた。

ゲンドウがサングラスをする理由が何かを知っているからだ。

ゲンドウがサングラスを外した。

その中にはしっかりとした視線でコウスケを見る目があった。

「なるほど、わかりました。どうやら思った以上に信頼していただけるのですな。」

ゲンドウは無言だったが、目が肯定と言っていた。

「となると、これからが大変ですな。」

世界を牛耳る相手と喧嘩するのだ。

「それは我々に任せてもらう。」

「わかりました。」

コウスケはゲンドウを見た。

人相が確かに悪いが・・・

「シンジ君は司令に似ているのですな。」

この発言には二人も驚いていた。

シンジは母親に似ているのだと噂話で聞いているが、ゲンドウからサングラスと髭を取り除けば、やはりゲンドウのほうに似ていると思うコウスケだった。

「となると全力でレイを守らないといけませんな。シンジ君に司令と同じ道を歩かせるわけにはいきませんから。」

「なかなか痛いな。碇。」

と冬月が言うがゲンドウは無視した。

「では・・」

「新たなる任務については承知しました。・・でレイはどうすればいいでしょうか?」

「レイは我々の計画のために存在した。そのため人として必要なことを教えていない。」

最初に出会った時のことをコウスケは思い出していた。

自分というのがないレイ

「それは私の罪だ。だが私では出来ないのだ。それを君に頼みたい。」

「つまりは普通に接していればいいということですな。」

「それは君に任せる。」

(おいおい、いくらなんでも無責任すぎだろ。)

と思うが、顔には出さない。

「しかし、今聞いた話を自分が他人に話すとは思われないのですか?」

「それも君に任せる。だが加持一尉はダメだ。」

「・・日本政府とつながっているからですか?」

「それだけではない。・・SEELEに知られるわけにはいかない。」

(加持・・そこまで節操なしだったのか。)

NERV、日本政府、そしてSEELEのトリプルスパイ

今の話はコウスケを驚かせるのに十分だった。

「わかりました。」

(となると・・葛城にも黙っておくか。)

コウスケの返答を聞き、ゲンドウはカードを取り出した。

「これを持っていたまえ。」

「これは?」

「最高レベルのカードだ。私と冬月、赤木博士、そしてレイのみが持っているものだ。」

(レイも持っているか・・計画の要というのは嘘じゃないんだな。)

「自分で五人目ですか。」

「ああ。」

「・・ありがたく頂戴します。」

コウスケはカードを受け取った。

「MAGIのデータベースにあるすべての資料を閲覧可能だ。必要に応じて使いたまえ。」

コウスケはそれを信頼の証と認識した。

「以上だ。」

「何か聞きたいことはあるのかね。」

冬月がゲンドウに促されるように聞いた。

「ここが戦場になるというのはすでに織り込み済みなのですね?」

「ああ。」

「ということは使徒があと何体来るかもご存じなのでは?」

「当然だ。使徒はあと7体と1体来る。最後の使徒はすでに分かっている。」

(7体と1体・・わざわざ分ける必要があるのか?)

「最後の1体はどういうものでしょうか?」

「同じ人間だよ。」

「は?」

「人も使徒なのだ。第二使徒から生まれた18番目の。」

(人も使徒?・・・嘘じゃないんだな。)

「ということは壮大な兄弟げんかということですか。」

「喧嘩ではない戦争だよ。お互いの生存の権利をかけた。」

「チップが大きすぎますな。」

「だから負けられないのだ。」

「ちなみに最後の使徒・・人間に負けた場合はどうなるのでしょうか?」

「SEELEのシナリオどおりになるだろう。」

(サードインパクトですか・・・)

「となるとその日まで対人戦を想定した部署が必要ですな。」

「それについては検討してある。」

(伊達に司令はやってないか・・・)

「自分からは以上です。」

(必要なら調べられるからな。)

「レイのことをよろしく頼む。」

・・・

 

総司令執務室を後にしたコウスケはいつもの場所にいた。

「まさかこうなるとは・・・」

今日知りえたことは正直信じられないものだった。

これが一般人から聞いたものなら妄想と片付けられるが、ゲンドウから聞いたのであるならばそうは言ってられない。

「何にせよ、やれることはやっとかないとな。」

と言いつつもコウスケは煙草をふかすだけであった。




こういう展開になりました。
これを予想された方はいたのでしょうか?
当初こんな予定有りませんでした。
・・・ゲームの影響ですね・・・
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