NERV航空隊隊長綾波   作:浩介

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第20話 人として

「・・・というわけでこれから一緒に暮らすことになる。」

コウスケはテストが終わった後、レイに会っていた。

横にはシンジとアスカ、ミサトがいた。

「これからはお隣さんだな。」

「そうですね。」

「よろしくね。コウスケ。」

シンジとアスカが言った。

「でも、大丈夫なの?」

と聞いてきたミサトの顔はニヤニヤだった。

「お前と一緒にするな。」

「でも、よく碇司令が許したわね。」

「碇司令からよろしく頼むと言われたんだ。」

皆が意外そうな顔をしていた。

いや、よく見るとひとりだけ不安そうな雰囲気だった。

「今日はもう何もないだろう?」

「・・はい。」

レイの返事はいつもと比べれば妙にはっきりしない返答だった。

(そういえば碇司令が計画のためにいたと言っていたか・・・)

「・・そのことについては後で話すよ。後から碇司令からも話が来るかもしれん。」

レイには聞こえるような声でコウスケは言った。

レイはなぜ知っているのかと言いたげであった。

「なになに?二人だけの秘密ってか?」

何も知らないミサトがニヤニヤとしながら言った。

「嬉しそうに言うな。それにそんなものじゃない。」

「またまた~、照れちゃって。」

(面倒だな・・・よし。)

コウスケは携帯電話を取り出した。わざとスピーカを最大にして皆が聞こえるようにした。

『私だ。』

それはゲンドウの声だった。

一同が驚愕する。

「綾波です。」

『どうした。』

「葛城三佐がレイとの同居にいらぬ疑惑を抱いているようです。」

「ちょ・・コウスケ君。」

さすがのミサトも焦っていた。

『どのようなものだ。』

「自分とレイにただならぬ関係が有るとのことです。」

『・・・わかった。こちらで対処する。』

「ありがとうございます。」

コウスケは電話を切った。

途端に館内放送が流れる。

『葛城三佐。至急、総司令執務室にお越しください。』

「よかったな。葛城。」

「よくないわよ!」

と言ってミサトは走って部屋を出ていった。

「なんで父さんと・・・」

とシンジが聞いてきた。

「そりゃ、レイを預かるからな。前の保護者と連絡できるようにしておいた方がいいだろう。」

「でも、碇司令とのホットラインがあるなんて普通じゃないわ。」

アスカが疑うようにコウスケを見ていた。

(俺と碇司令の関係か・・・)

「いわば・・・同志みたいなものだな。」

皆の目が点になっていた。

いや、一人は明らかに動揺していた。

その一人はコウスケを何か怖いもので見るような目であった。

「どうした?レイ。」

「・・・・何でもありません。」

(計画に加担していると思っているのか。)

「・・・計画は破棄されたよ。」

二人は何のことか解らずにいたが、レイは気づいたようだった。

「計画って何よ。」

アスカがおずおずと尋ねる。

「いずれわかるだろう。いや、俺が話す。」

コウスケの真剣な目にアスカは押し黙った。

「・・・コウスケさん。」

「何だ?シンジ君。」

「信じてもいいんですか?」

期待と不安が絡み合う表情だった。

「ああ、いいぞ。もし俺が裏切ったのなら、EVAで踏みつぶしてくれてもいい。」

「・・・わかりました。」

と言ってシンジは考え込んでしまった。

(疑ってるか・・・まあ、しょうがない。)

「別に悪いもんじゃないから、それは安心しろよ。」

だが、納得がいかない。

顔にそう書いてあった。

「今日は帰ろう。レイも荷物をまとめなきゃいかんだろう。」

・・・

 

ちなみにミサトはゲンドウから減俸を言い渡されたらしい。

・・・

 

コウスケは途中でトランクケースを買い、レイとともにレイのマンションに行った。

部屋ではいそいそとレイが荷物をトランクケースに詰め込んでた。

途中で業者が入り込み、ベットを持って行った。

ふとレイの手が止まる。

レイの手の先には眼鏡があった。

眼鏡はひびが入っており、フレームも少し歪んでいた。

「レイのものか?」

レイは答えなかった。

コウスケが眼鏡を見ると、そこにはG.Ikariと刻まれていた。

「・・・碇司令の眼鏡か。」

(ここに置いてあるってことは相当大切なものなんだろうな。)

レイはやはり答えなかった。

「持って行かないのか?」

「・・もう、私には必要ありませんから。」

寂しそうにレイは答えた。

(必要ないか・・・)

「なぜそう思う。」

「計画は破棄された・・・もう私はいらない。」

(思ったより根が深いな・・・)

「・・だとしたらなぜレイは無事にいるんだ?」

「・・意味が解りません。」

「レイは計画に必要だった。そのために禁忌を冒してまで生み出した。」

レイは俯いた。

「いわば、レイの存在はNERVにとって、碇司令にとって罪の証なんだよ。だが、計画は破棄された。となると一番厄介なのはレイなんだ。」

コウスケはレイを見つめながら淡々と言う。

レイはいっそうに暗い雰囲気を醸し出していた。

「碇司令は子供たちに未来を見せたい・・そう言った。この意味が解るか?」

レイが振り返りコウスケを見るが、目には怯えが含まれていた。

(先日のあの件が思い出されたか。変に深読みしすぎだな。)

コウスケがレイに向かって発砲した時のことだ。

「勘違いしているようだな。そんなものじゃない。」

コウスケは優しく言った。

「・・碇司令はレイに綾波レイとして生きろと・・そう言っているんだ。」

レイの目が大きく開かれた。

「俺は碇司令に人として預かってもらいたいと頼まれたんだ。」

「私は・・・望んでいいんでしょうか・・・」

その言葉は不安で彩られていた。

「それはレイ次第だな。人として生きるかどうか、それは自分で決めるんだ。それが人というものだ。」

それでもレイは不安そうだった。

「少しの違いが何だって言うんだ?人にもいろいろいるといったろ?俺が会ってきた人の中には手足が無い者、遺伝性の持病を持つ者もいたぞ。そんな人たちは普通の人に比べれば確かに違う。」

コウスケは続けた。

「俺の昔の友人にもいたな。確か・・・若年性の糖尿病だったか?彼は薬なしでは一日と生きていられない体だった。」

レイはなにが言いたいのかという顔だった。

「普通の人と比べれば確かに違う。注射器を見るたびに他人とは違うということを思い知らされると常々言っていたな。だが、それども生きている。今はどこにいるか知らんが、たしかに生きている。」

コウスケは懐かしそうに言った。

「レイの場合はもっと複雑だが・・・まあ、結局は人として生きる意志があるかないかということだな。」

コウスケはレイに視線を戻した。

「・・その眼鏡は大切なものなんだろう?なぜ大切なんだ。」

「・・絆をくれた最初の人だったから。」

コウスケは過去形で話したのが気になった。

(碇司令を否定し始めたか・・・そんなつもりはないんだけどな。)

「その人がレイに人として生きてほしいと言っている。」

レイは眼鏡を見ていた。

「それにシンジ君の言葉を覚えているか?普通の女の子という・・これはシンジ君がレイのことを知っても人として見ているということだろう?」

レイは何かに気づいたようにピクリと動いた。

そしてコウスケを見た。

(シンジのほうが上なのか・・・)

「あなたは・・・」

すこし躊躇っていたが

「あなたはどう見ているんですか?」

期待と不安が見て取れた。

「・・バカだな。戦友という言葉は人にしか使わないよ。動物とか道具だったら相棒がせいぜいだ。だから俺は愛機を戦友とは呼ばない。少なくとも俺はな。」

いつの間にか不安という言葉が消えていた。

「レイを不当に扱う者がいたら、碇司令、副司令が政治的に、俺が物理的に叩きのめしてやる。ついでにシンジ君にもEVAで暴れてもらうか。」

というとコウスケは少し顔をしかめた。

「・・・シンジ君なら喜んでやりそうだな・・・」

コウスケの脳内では初号機が咆哮していた。

「まあ、そういうことで少なくてもレイを人だという者が4人はいるんだ。・・ああ、赤木博士を忘れてたな。」

「赤木博士?」

「レイとシンジ君をどうにかしてほしいと言っていたからな。」

レイは驚いているように見えた。

(・・赤木の悪意を何となく感じていたのか?以外と鋭いのかもしれんな。)

「そんなことはどうでもいいな。それでレイはどうする?」

「・・これからよろしくお願いします。」

その顔は髪の色に似て晴れ晴れとしていた。

「よろしく。レイ。」

そして荷造りを再開した。

だがレイは眼鏡を持って行こうとしなかった。

「持って行かないのか?」

「はい。」

(碇司令へのわだかまりがまだあるのか?)

レイは眼鏡のほうに向いておりコウスケからはレイの顔が見えなかった。

「・・形として見える物だけが絆じゃないもの。」

意外な答えを得た。

「そうだな。」

コウスケは嬉しく思っていた。

絆というものを形あるものでしか求めることができなかった少女。

それがEVAであり、またゲンドウの眼鏡でもあった。

だが、それだけが絆のあり方ではない。

むしろ目に見えないもののほうが多い。

(過去への区切りか・・・成長しているんだな。・・俺はどうだろうか・・)

「・・じゃ、行くか。」

「はい。」

コウスケとレイはマンションを後にした。

チェストに置かれた眼鏡はいびつに歪んではいたが、太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。

・・・

 

「なんとまあ、手際のいいことで・・・」

コウスケたちは一度コウスケの家に行ったのだが、待っていたのはガランとした部屋だけだった。

ご丁寧に清掃もされていた。

もしやと思い、あてがわれた新居に行ってみたら玄関で戦友たちの写真が迎えてくれた。

「断るとは思わなかったのか・・・」

家具の配置なども終わっていた。

部屋の間取りは依然見たミサトの家と同じだった。

「まあいいか。」

取りあえず手間がかからなかっただけましだと思うことにした。

コウスケの部屋は葛城邸でいうアスカの部屋(旧シンジの部屋)になり、レイはミサトの部屋となった。

これはコウスケが狭い部屋のほうが落ち着くからという理由だった。

「しかし、恐ろしいほど私物が無いな。」

コウスケはレイの部屋を見ながら言った。

実際レイの部屋はクローゼット、ベット(以前コウスケがあげたもの)、机、本棚以外見当たらない。

本棚には何やら難しそうな本が数冊あるのみで、机には教科書とノート以外見当たらない。

クローゼットに至っては学校の制服が数着ぽつんとぶら下がっているだけだ。

クローゼットの引き出しには下着も有るが、コウスケは開けて確認するつもりはない。

「変ですか?」

というレイの顔は暗かった。

(ちょっと配慮が足りなかったか・・)

「・・・これから増やせばいいだろう。時間はある。」

「はい。」

(とはいっても俺ではどうしようもないな・・・葛城は却下。赤木・・同じく却下。伊吹二尉・・気後れする可能性があるな。アスカ・・不安だな。)

女性にしかわからないことを誰に頼むかコウスケは迷った。

(洞木さん・・・俺と接点がない・・・)

ヒカリが一番適任かと思ったが、コウスケ自身とあまり接点がないのがためらわれた。

(他に誰がいるんだ?)

と考えて

(いっそのことシンジとか・・・ダメだな。司令と副司令は時間ができないだろう。加持・・・絶対にダメだ。許さん。)

加持はなぜだめなのか。

それは加持にまつわる女性関係のせいだった。

ほとんどが噂だが、NERVでの彼を見ると確信に迫るものがあったのだ。

そんな男にレイを任せると考えるとどんな悪影響があるかわからない。

もちろん加持もそこまでバカではないが用心に越したことはない。

「誰かいないかな・・・」

「?」

レイが不思議そうな顔をする。

「・・ああ、女性にしかわからないものがあるんだ。それを誰に頼むか・・・」

と言ってコウスケはぴんと来る人物を見つけた。

「この前、赤木のところにいた職員・・・・・・名前が出てこない。」

童顔で茶色のショートカットというのは思い出されるが、肝心の名前が出てこなかった。

ちなみに白衣を着ていたことから上級職員であることはわかる。

「・・・後日赤木に聞けばいいか。」

ということで保留することにした。

「そういえば、もう夕食の時間だな。」

時計を見ると6時を回っていた。

・・・

 

コウスケは冷蔵庫から余っている食材を取り出して簡単に調理したものをテーブルの上に並べていた。

ちなみに料理は野菜を中心としたものであった。

レイは椅子にちょこんと座って待っていた。

「よし、食事にするか。」

「はい。特務一尉。」

「・・・」

「どうしました?」

「家で特務一尉はやめてくれ。気が休まらない。」

「はい。」

と言ってレイは考え込んでいた。

(なんて呼ばれるかな?)

とコウスケは少し期待していた。

「・・・お兄ちゃん」

「ブホッ!」

コウスケは思いっきり咳込んだ。

「大丈夫ですか?お兄ちゃん。」

(何だ?何か罪悪感が・・・)

「なぜその呼び方なんだ?」

「同じ綾波だから大丈夫だと聞きました。それにお兄ちゃんのほうが喜ぶとも聞きました。」

コウスケのこめかみには青筋が浮かんでいる。

「・・誰に。」

「葛城三佐と赤木博士。」

「あいつら~!!!」

二人の名前が出てきて帰り際にレイに何か言っていたのを思い出した。

今頃二人は大笑いでもしているのだろう。

ちなみにこれが原因で一騒動起きるのだが、それは別の話である。

「その呼び方はダメだ。」

「ダメですか?」

「ダメだ!止めるんだ!命令だ!」

「はい。」

レイがしゅんとしているのは気のせいだとコウスケは思うことにした。

(なんか、疲れた・・・)

「・・・特務一尉でいい。」

コウスケさんと呼ばせてもよかったのだが、コウスケはそこまで考えが及ばなかった。

よほどお兄ちゃん発言が効いたのだろう。

「はい。」

「とにかく食事にしよう。」

と言ってコウスケは気を取り戻した。

するとレイは何かを取り出した。

「なんだ?それ?」

見るとカプセルを取り出していた。

「食事です。」

「はぁ?」

「食事です。」

レイは変わらない口調で淡々と言う。

「・・・誰にもらったんだ?」

「赤木博士です。」

「あいつは・・・」

とはいってもリツコはレイにカプセルを渡すつもりはない。

だが、それしか知らないレイが要求するので仕方なく渡しているだけだ。

(レイが細身なのはこれのせいなのか?)

「それは今すぐに廃棄だ。」

と言ってコウスケはカプセルをゴミ箱に放り込んだ。

「これからはあれを飲まなくていい。」

「なぜですか?」

「食事というものはあんなものじゃない。」

「?」

「こういった料理を楽しみながら食べるのを食事というんだ。」

「?」

(こうして人と食べることがなか・・・あったな。俺と。確か綾波定食だったな。)

忌々しい定食が頭に浮かぶがすぐに取り去った。

「まあ、食べてみろ。」

コウスケは茶碗をレイに渡した。

レイは普通に食べていた。

「どうだ?」

「カプセルよりおいしいです。」

「当たり前だ。カプセルよりまずい料理なんて・・・」

と言ってコウスケは一人の女性が思い浮かんだ。

思わず頭を抱え込むコウスケ。

「あったな・・・非殺傷兵器が・・・」

コードネーム「MC」

思い出すだけでも恐ろしいものだ。

(違う。あれは兵器だ。兵器なんだ。兵器以外の何物でもない!)

このままでは思考のループに入りそうだったので話題の転換をすることにした。

あくまでも平静を装って・・・

「これからはこういうものを食べるからな。」

「はい。」

「まあ、シンジ君の方がもっとすごいからな。」

「碇君?」

「ああ、シンジ君の才能だな。修行すればいい料理人になれる。」

「・・・食べてみたい。」

「家は隣だからな。頼めばやってくれるんじゃないかな?」

と言ってコウスケは気づいた。

「そういえば、シンジ君は隣だったな。」

「!」

「よかったな~。碇君の近くに来れて。」

ニヤニヤが止まらない。

こうなったコウスケはミサトと同類になってしまう。

唯一の違いはビールが無いことだろう。

レイの箸が止まっていた。

「学校にも一緒に登校できるな。」

みるみる赤くなっていくレイ

「ん~?もしかして一緒に登校する場面を想像したのか?」

何も答えないレイ

「ほら、答えてみろよ。」

「・・お兄ちゃんのいじわる。」

それはレイの反撃だった。

思わぬ痛手を負ってしまったコウスケ

「すまん。レイ。俺が悪かった。だからそれは許してくれ・・・」

とこのように夕食の時間は過ぎていった。

・・・

 

コウスケは食後の紅茶を飲んでいた。

レイは風呂に入っている。

(そういえば、寝間着はあるのか?)

最初に気づくべきであった。

(・・・期待はできないな。)

レイの私物を見れば容易に想像できた。

(今日は俺のを貸すか。)

となるのだが、嫌な予感がした。

(・・・待て。じゃあレイは脱衣所に何を持って行ったんだ?)

猛烈に嫌な予感が襲ってくる。

(服を・・・)

時は待ってくれなかった。

「ブホッ!」

コウスケはまたもや咳込んだ。

「大丈夫ですか?特務一尉。」

なぜなら

「なんて恰好をしてるんだ!」

首にタオルをかけただけの格好だった。

「?」

「ちょっと待ってろ!」

と言ってコウスケは自分の部屋に大急ぎで駆け込んだ。

そして服を持って来た。

「ドアを閉めてこれに着替えろ。」

コウスケはレイを押し戻した。

(なんてこったい・・・碇司令、赤木・・・恨みますよ。)

するとレイは着替えて戻ってきた。

服が大きくぶかぶかであったが・・・

「レイ。風呂に入ったら必ず着替えて出て来い。」

「なぜですか?」

「・・簡単に裸を見せちゃいかん。」

「・・・はい。」

しぶしぶながらレイは了承した。

(思ったより大変だな、こりゃ・・・)

こうして共同生活の一日目が終わった。

多くの課題を残しながら・・・




15歳差って兄弟、親のどっちに分類されるのでしょうか?
兄弟と呼ぶには離れすぎてますし、親かな?
でも主人公はミサトと同年齢という設定なので、この場合は兄弟でしょうか。

思いつきって怖いですね。
なんてことを考えながら書いたおまけです。
では、どうぞ

おまけ
(何だろう・・・すごくいい匂いがする。)
とシンジはまだ覚醒していない頭で考えてた。
(それに・・なんか動きづらいな。)
自分の体が拘束されているようだった。
シンジは顔を横に向けた。
(空だ・・・空が見える。)
シンジの目には空が見えていた。
部屋で空を見るなんてことは窓を眺めるしかないのだが、残念ながらシンジの顔は窓とは正反対に向いていた。
それに気づかない。
(空と言ったら・・・空色・・雲・・白・・白と空色と言ったら・・綾波だよな。)
シンジは空から連想される色からそんなことを考えていた。
(綾波・・・・?あやなみ?)
特定の言葉にたどり着いたシンジの脳がフル回転を始めた。
(よく見たら空じゃない。糸みたいになってる。)
シンジは状況を整理し始める。
(・・・もしかして髪?)
シンジは空いている左手で恐る恐る布団をめくる。
「うわあああああああああああああ!!!!!!」
シンジの叫びで目が覚めた葛城家の皆が駆け込んできた。
「朝からうっさいわね・・・ってレイ!あんた何してんの!」
アスカが怒鳴る。
シンジの横には幸せそうに眠るレイがいた。
ちなみにレイは薄い空色をいた薄手のパジャマを着ていた。
首にタオルをかけただけとか、ブラウス一枚とかそんなんじゃないですからね。
「何してんのよ・・・こっちは夜勤明けなんだから・・・」
眠そうに目をこするミサトはシンジのベットを見て驚いた。
「・・そっか、シンちゃんも大人になったのね。」
驚きすぎて考えがぶっ飛んでしまったようだ。
「ちょ・・・ミサトさん!誤解です。」
「こんな状況で五階も六階も無いでしょ。それにここは十一階よ。」
なかなか古臭いことを言うミサト。
ついでにぼけているようだ。
「ちょっと!レイ!起きなさい!」
アスカはレイを起こした。
「・・・」
眠そうに目をこするレイ
「あんた、なんでここにいるのよ!」
「・・ここ、どこ?」
「シンジの部屋よ!」
「・・碇君?・・碇君だ・・・」
と言ってシンジに抱き付いたまま眠った。
シンジはもうフリーズしている。
強制シャットダウンには至らないようだった。
「こら!寝るな!」
「どうしよ。やっぱ婚約しかないかしら。」
ミサトは一人で見当違いな打開策を練っていた。
・・・

この騒動はコウスケによって鎮圧された。
レイの奇行の最初の被害者はコウスケなのだ。
もっともレイはただ単に人のぬくもりを求めているだけなのだが・・・(当然無意識です。)
ちなみにその時の光景は所謂「無様ね」と言われるに値した。
コウスケはいずれこうなるだろうと思っていた。
なぜレイがシンジの部屋に入れたのか?
それは葛城家の玄関の鍵をレイのIDカードでも開けられるようにしたからだ。
当然コウスケのカードでも開けられる。
寝ぼけていてもカードは持っていたようだ。
だからと言って再度ロックをかけられない。
なぜならレイが葛城邸に来た時に入れなくなるからだ。
そうなればいくら夏とはいえ体にいいはずがない。
結局何も打開策がないまま、各自が備えるということになった。
今日もレイは綾波家と葛城家限定で人を求めて彷徨う。
・・・

ちなみに一番被害を受けたのは・・・
さあ、誰でしょうかね。
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