レイとの同居生活が始まりすでに数日が経っていた。
一般常識というものが著しく欠如していた。
それはレイに罪があるわけではなく、その保護者だった者の罪である。
それでもコウスケのできる限り教えるものの、男性と女性の壁はさすがに突き抜けなかった。
だが以外にも救いの手は近くにあった。
横の葛城家に住むアスカである。
一度何を思ったのか綾波家を訪れたことがあるのだ。
その時レイの部屋を見て驚愕したのであった。
「レイ!明日はあたしに付き合いなさい!」
そのあと帰ってきたコウスケが見たものは女性に必要な日用品を持ってボ~としているレイだった。
そのあとも何かしらレイの面倒を見るアスカを頼もしく思うが、高級品ばかり選ばないでくれとは言わずじまいであった。
一方、葛城家のもう一人の同居人であるシンジもレイに料理を教えている。
同居初日目に料理の味を占めたレイは恐ろしいほどの大食いになっていた。
相変わらず肉はダメなのだが、その食べる量はコウスケと同じくらいであった。
成人男性しかも軍人と食べる量が同じ・・・
それでもって体型は変わらないのだ。
(しょうがないか、食事の楽しみを覚えたばかりだからな・・・)
もしかしたら碇ユイも似たようなものだったのではと考えるコウスケであった。
そしてレイはただ食べるだけでは飽き足らず料理をしてみたいと言うのであった。
その講師役にコウスケはシンジを選んだのだ。
シンジは意気揚々と快諾した。
「よかったなシンジ君。」
「なっ何がですか?」
「レイに堂々と会えるチャンスじゃないか。」
「・・・」
「シンジ君はレイのことどう思っているのかな?」
この時シンジは嵌められたと思ったそうだ。
ちなみに煙草はベランダで吸っている。
コウスケがレイに配慮したためだ。
喫煙所の番人はそこらへんのマナーもちゃんとしていた。
NERVはというと組織の体系に一部変更があった。
作戦部として一括りにあったものが作戦局として再編された。
それに伴い一課、二課、三課と分かれた。
一課は作戦の立案、課長にミサト。
二課はEVA以外での支援行動、課長にコウスケ。
三課は市民の避難誘導およびシェルターの管理となった。
そして作戦本部として各課の課長と副課長が選ばれた。
作戦本部長にミサト、副部長にコウスケが選ばれた。
それに伴いコウスケはミサトと同じ形のジャケットを着ることになった。
色は緑だ。
なぜ作戦部が再編されたのか
これは組織体系を見直すことにより、より効率的に運用するというのが目的であった。
だが、一課、二課、三課の他に「零課」が存在するらしい。
零課は対人戦闘を行う部署であるらしい。
らしいというのは、それは噂以上のものではなかったからである。
一課課長で本部長を務めるミサトですら知らないものである。
総司令たるゲンドウなら知っているだろうが、それを表立って確認する者などいない。
加持などもそんなものはないと断言するほどだった。
・・・
コウスケは朝のトレーニングを終えて朝食の準備をしていた。
料理を覚えたレイも夕食の準備を手伝うが、朝はコウスケだけが行っていた。
なぜならレイは朝によく葛城家にお邪魔しているからだ。
コウスケは時間を確認する。
「そろそろ行くか。」
コウスケは家を出る。
NERVに行くのではない。
「・・痛い。」
レイはつねられた頬をさすりながら言う。
「行くぞレイ。朝食だ。」
つねった本人であるコウスケが言う。
(今日は葛城か・・・)
当のミサトは爆睡している。
かなりだらしない寝相だった。
(はぁ~、29の女性なのか?こいつ・・)
そしてレイはよく無事だったなとも思った。
ちなみに昨日はシンジ、一昨日はコウスケだった。
(明日はアスカだな。)
などと予想を立てることのできるコウスケだった。
・・・
「今日は本部で試験があったな。」
「はい。」
「遅れると赤木がうるさいから時間だけは気を付けろよ。」
「はい。」
黙々とレイは朝食を平らげる。
(ほんとによく食うな。)
「・・・レイにはつらい思いをさせるな。」
今日行う試験は裸でEVAとシンクロするというものだった。
それが何を意味しているのか?
つまるところダミーシステム、ダミープラグの開発にかかわることだった。
コウスケとしては代われるものなら代わりたい。
だが、コウスケではEVAにシンクロできない。
「問題ありません。」
「・・そうか。」
というコウスケの顔はすぐれなかった。
試験そのものがレイが人ではないということを言っているからである。
なぜならダミープラグにはレイの素体が使われているからだ。
レイをよく見ると問題ないという割には嫌そうな顔をしていた。
「今回と、次の試験で終わりだ。それまですまないが耐えてくれ。」
コウスケはそう言うしかなかった。
万が一パイロットが出撃できないとなった時、それは使徒に対する手段を失うと同意義であった。
そしてそれは人類の滅亡。
楽しくない未来図である。
それはコウスケの望むものではないし、レイ自身もやっと人として生きようとするのに邪魔なものだった。
だからこそレイは気丈にふるまえると考えるコウスケだった。
・・・
NERVに登庁したコウスケを待っていたものは忙しく動き回る技術局の人たちであった。
今日はMAGIの定期検診の日なのだ。
「どう?リツコ。MAGIの診察終わった?」
「大体ね。約束通り今日のテストには間に合わせたわよ。」
「さっすがリツコ。同じものが三つもあって大変なのに。」
と言ってミサトは近くにあったマグカップを手に取りコーヒーを飲んだ。
「・・冷めてるわよ、それ。」
ミサトの顔がうえっという顔になる。
「赤木。わざとやったろ。」
「ミサトが悪いのよ。勝手に飲むから。」
「だな。」
ミサトは無言だった。
『MAGIシステム再起動後、自己診断モードに入りました。』
『第127次定期検診異常なし。』
『了解。みんなテスト開始まで休んでちょうだい。』
「ほんとに頑張ってくれてるな。」
「まあね、手抜きして使徒にやられたなんて冗談じゃないもの。」
「ミサトはいいな。使徒が来ないと仕事が無いもんな。」
「違うわ。ミサトの場合は押し付けてるのよ。」
「そんなわけないでしょ!あたしだっていろいろ・・・」
「その割には忙しそうに見えんな。」
「代わりに日向二尉が忙しそうだけど。」
ミサトは押し黙ってしまった。
・・・
コウスケは執務室にいた。
二課の課長になり書類決済しなければならないものが増えたのだ。
とはいっても兵装ビルに関するものが多く、さほど時間はとられなかった。
「課長。」
と声をかけてきたのは榛名ミツヒサである。
実を言うとコウスケを課長とは誰も呼ばない。
特務一尉と呼ばれるのが普通である。
そっちの方がわかりやすいのだ。
特務一尉なんてコウスケ以外いないからである。
「どうした?」
「部隊の編成が大方終了しました。一班から四班まであります。」
「そうか。」
「できれば実戦訓練を行いたいのですが・・・」
「それは無理だな。シュミレーターによる訓練しかできないだろう。」
「ですな。」
「それでも実戦経験が多く、また戦自にも引けをとらない人材を選べたんだ。100人も、これ以上は望み過ぎだろう。」
「なら、彼らの勘が鈍らないように訓練を施します。」
「やってくれ。それと・・・」
「ばれないようにですよね。わかってますよ。」
「頼む。」
ミツヒサが出ていった。
「荷重勤務だなこりゃ・・・」
軍人にはふさわしくないことを述べるコウスケであった。
彼の手元には矢を模したバッジが輝いていた。
・・・
今テストが開始されたところだ。
テストが開始されるにあたってこんなお触れがあった。
「パイロットの人権を侵害するものは厳罰に処する。」
そもそもテスト自体が人権侵害に値するが、そんなことに気を留めることなくそういうゲンドウ。
それにパイロットの少年は感心していたそうだ。
少年の同居人は嫌がっていたとか・・・
ともあれ、まずシンジが乗り込みそのあとに残る二人が乗り込むようになり、画像による記録は一切禁止となった。
コウスケもそれ自体には賛成なのだが、ゲンドウがわざわざお触れを出した理由が知りたかった。
「レイの体が見ず知らずの男の目に触れていいというのか?」
とサングラスを輝かせながらコウスケに言った。
横では冬月も頷いていた。
(それが本音かよ・・・)
ゲンドウにとってレイはユイとは別人とはいえ、やはり似ているのだろう。
冬月とて同じなんだろう。
それは感情の面でどうしようもなかったのだ。
・・・
コウスケはミサトの代わりに発令所にいた。
「確認してるんだな。」
冬月が厳かに告げる。
「ええ、一応。」
(一応だと?)
「青葉二尉。報告は正確に行え。」
コウスケが毅然とした態度で言う。
少し怒気も含まれていた。
軍人である彼は報告を正確に伝える重要性をよく知っていた。
一応という言葉は便利に思うが、それはどっちか解らないということを曖昧に誤魔化してしまうのだ。
「すみません。確認しています。ここです。」
映し出されたモニターにはシグマユニットD-17第87タンパク壁とあった。
「三日前に搬入されたパーツです。・・ここですね、変質している場所は。」
「第87タンパク壁か。」
青葉がモニターを操作し拡大する。
「拡大するとシミのようなものが確認できます。何でしょうね?これ?」
「浸食だろ?温度と伝導率が若干変化しています。無菌室の劣化はよくあるんです。最近。」
日向がデータを基に分析していた。
「工期が60日近く圧縮されてましたから、また気泡が混ざっていたんでしょ。ずさんですよ、B棟の工事は。」
「そこは使徒が現れてからの工事だからな。」
冬月の言葉には現状の苦い現実が含まれていた。
「無理ないっすよ。みんな疲れていますからね。」
「それは理由にならないぞ。日向二尉。」
とコウスケが言った。
「疲れているが理由で使徒に負けたらどうする。第一、一番負担がかかっているのは子供たちなんだからな。」
「そうですね。失言でした。」
(少し言い過ぎたかな。)
「まあ、これが終わったらみんなで飲みに行くか。」
「お、やった。」
と喜ぶのは青葉だった。
「子供たちも連れていくから無茶するなよ。よろしいですね副司令。」
「まあ、いいだろう。息抜きは必要だ。」
「というわけだ。もう少し踏ん張ってくれ。俺のおごりだ。」
「やった~!」
「明日までは処理しておけ。碇がうるさいからな。」
「「了解!」」
青葉と日向が元気よく返答する。
その裏では・・・
「副司令。経費でいくばくか落とせますか?」
「しょうがない。領収書を忘れないでくれたまえ。」
・・・
「葛城も喜びそうだな・・・ただ酒だし。」
だが、冬月のお墨付きはもらったし大丈夫だと考えることにした。
なにを言おうNERVの資金関係は冬月が見てた。
その大蔵省から許可が出たのだ。
恐れる事はない。
ちなみにコウスケはミサトよりも高給なのだ。
なぜかというと、戦場に出るので危険手当がつくからである。
基本給はミサトより低いが、危険手当がそれを補っている。
ともかくコウスケが飲み会の資金について考えているうちに警報が鳴った。
「なんだ!」
『シグマユニットAフロアに汚染警報発令!』
『第87タンパク壁が劣化。発熱しています。』
『第6パイプにも異常発生。』
「何が起きたんだ?」
「第87タンパク壁の浸食部が増殖しています。」
青葉がモニターを回した。
爆発的なスピードで浸食が広がっていた。
浸食を抑えようとパイプが閉鎖されるが
「ダメです。壁伝いに浸食が広がっています。」
(実験場に近いな。)
「副司令。実験を中止なさるべきです。」
コウスケが言う。
「だが・・・」
重要な実験である手前、簡単に中止にはできない。
「既に必要なデータは抑えてあるはずです。それに子供たちに何かあれば・・・」
「・・わかった。赤木博士に連絡しろ。」
・・・
浸食は使徒だった。
レーザーによる攻撃が行われたがATフィールドではじかれたのだ。
セントラルドグマはすでに物理的に閉鎖された。
警報はゲンドウの命により誤報ということになったが、使徒はいまだに活動している。
だが、場所がまずかった。
(アダムに近いな。)
これはコウスケが最高レベルのカードで得た情報だった。
EVAは地上に射出された。
EVAが使徒に乗っ取られるなど悪夢でしかない。
使徒に関するデータからオゾンに弱いとのことで使徒に対抗したものの、すぐに効果がなくなった。
「すごい。進化しているんだわ。」
リツコは感心するように言った。
「厄介だな。」
コウスケがつぶやく。
この短時間で爆発的な進化を遂げる使徒。
今後どうなるかわからないが、厄介な相手というのは間違いなかった。
すると警報が再び鳴り始めた。
「どうしたの?」
ミサトが確認をした。
「サブコンピュータがハッキングを受けています。侵入者不明。」
「くそ!こんな時に!Cモードで対応!擬似エントリー展開!」
「擬似エントリーを回避されました。」
次々に防壁を展開するが突破されてしまう。
「逆探に成功。この施設内です。」
(加持か?)
コウスケはそう予想するも外れだった。
「B棟の地下・・プリブノ―ボックスです!」
その間に使徒の模様が変化した。
電子回路にそれは見えた。
ミサトの指示で次々と使徒を妨害するが効果なし。
「保安部のメインバンクに侵入されました!メインバンクを読んでいます。」
日向が現状を報告する。
「奴の目的は何だ?」
冬月が皆が知りたいことをつぶやいた。
(保安部のメインバンク・・・電子回路・・・)
「まさか!」
コウスケは気づいた。
「このコードは・・・やばい!MAGIに侵入するつもりです!」
青葉が使徒の目的を報告した。
ゲンドウの命でI/Oシステムをダウンさせようとしたが無理だった。
そして
MelchiorはNERVの自立自爆を提訴した。
残る二つが否定したためすぐには行われないが、今度は
止まらない使徒。
焦る人たち。
そんな中
「ロジックモードを変更。シンクロコードを15秒単位にして。」
リツコの機転により使徒の侵攻が一時的ながら収まった。
・・・
会議室で使徒に関する分析が行われた。
珍しくゲンドウもいた。
「進化し続ける相手か・・・嫌だな。」
「MAGIの物理的排除が一番簡単なんだけど・・・」
ミサトがそういった。
「無理言うなよ。MAGIがなくなったら本部も終わりだぞ。」
「そうよね。」
(NERV本部はハードウェアに頼り過ぎだな。)
「赤木に任せるしかないだろ。」
・・・
今回は使徒に自滅プログラムを送り込むことになった。
リツコはミサトとともに
(MAGIか・・・)
コウスケの得た情報にはMAGIに関することもあった。
人格移植OSであるMAGIにはリツコの母親である赤木ナオコのデータがインプットされている。
それも三つとも同じものではない。
Melchiorには科学者
Balthasarには母
Casperには女
人が持つジレンマをわざと残したのだろう。
人はその時の立場によって考え方が変わるものだ。
それをOSに利用するなんてなかなか考え付かない。
そしてそれをシステムアップし、更新をつづけるリツコ。
やはりリツコも只者ではないと思うコウスケだった。
・・・
「来ました!Balthasarが乗っ取られました!」
日向が報告する。
『人工知能により自立自爆が決議されました。』
「始まったか・・・」
こうなってはコウスケの出る幕はない。
「BalthasarさらにCasperに侵入!」
「押されているぞ!」
冬月が焦る。
それは職員全員そうだろう。
いや、コウスケとゲンドウは冷静になっていた。
(人間ダメなときはダメなもんさ。しかし・・・)
『自爆装置作動まであと20秒。』
(今回のことでハードウェアに頼り過ぎだということがよく解った。あの部署の設立は正解かもしれん。MAGIだけだと侵入者に対処できないかもしれない。)
「いかん!」
冬月がたまらずに叫ぶ。
一秒一秒が長く感じられる。
(赤木は約束は守る人だ。大丈夫だろう。)
不意にミサトの声が聞こえた。
相当焦っているのだろう。
なかなか大きな声だった。
「一秒って・・・」
「一秒あれば十分だな。」
一秒
それが意味するもの
戦場に長くいたコウスケにはその価値がわかっていた。
その一瞬さえあれば優位に立てるのだ。
逆に不利になることだってある。
(間に合うな。)
長らく戦場にいた勘からそう予測するコウスケ
そうしている間にもカウントダウンは進んでいく。
『6秒』
伊吹の声が聞こえた
「行けます!」
『5秒』
『4秒』
『3秒』
『2秒』
伊吹の手が動いた。
『1秒』
『0秒』
・・・・・・・・
沈黙が続いた。
すべての時が止まったようだった。
爆発音は聞こえない。
メインモニターが動きだす。
赤く染まっていたMAGIがクリアされていく。
『人工知能により自立自爆が解除されました。』
あちこちから聞こえてくる歓喜の嵐。
皆が生還の喜びをかみしめている。
・・・
「お疲れさん。」
コウスケはリツコに労いの言葉をかけた。
リツコの顔は青いが、安心したようだった。
ミサトもコーヒーを持ってきていた。
「それじゃ、俺は行ってくるよ。」
「どこに?」
「子供たちだよ。」
・・・
コウスケはプラグが射出された地底湖にいた。
0という数字からレイはおそらくここにいるだろうと思っていた。
タオルを手にしプラグに近づくが、ハッチが開いており無人だった。
「どこに行ったんだ?」
(まさか湖に落ちたのか?)
すると通信が生きていることに気付いた。
『綾波・・もう少し離れて・・・』
『嫌。』
『も~どうなっているのよ!』
通信からシンジのプラグはアスカのプラグとつながっていないことを知った。
(・・今、裸だよな・・・)
「シンジ君。無事か?」
『コウスケさん!』
シンジの声は喜びと焦りの半々だった。
「レイもいるんだろ?」
『・・・』
沈黙がすべてを語っている。
(暗いプラグで一人・・寂しいのはわかるが・・・)
「後でお仕置きだ。」
・・・
その後コウスケはシンジのプラグにたどり着き、中にいたレイの頬を思いっきりつねった。
レイは痛そうにしていたが、かなりご満悦のようだった。
ちなみにシンジは
「地獄でした・・・」
と答えたが、鼻の下が伸びていたのはコウスケだけが知る事実であった。
まったくの余談だがシンジはアスカに強烈な蹴りをもらっていた。
地底湖に射出された後のことがばれたためである。
NERVってハードウェアに頼り過ぎだな
と書いていて思いました。
便利な道具に頼るのは人を短所でしょうか?
今も便利な道具が開発されてますがそれは良いことなのでしょうか?
技術の進歩と言う面では人は成長していると思いますが
ニュースなどで流れる事件を見て人の心はどこに向かうのでしょうか
などと暗いことをついつい考えてしまいます。
皆さんはどう思われますか?
おまけがあります。
途中で私の注意書きもあるのでしっかりと呼んでください。
おまけ
コウスケは約束通りにオペレータ三人とミサト、リツコ、そしてパイロット三人を連れて飲食店にいた。
生き残れた開放感からか、最初から飛ばして飲んでいる大人たち(コウスケ以外)。
子供たちもちまちまと料理を食べていた。
「でもいいの?コウスケ君。」
酔っぱらってますという顔を隠さずに言うミサト。
「別に構わん。」
「悪いわね。」
「俺がした約束だからな。」
後ろ盾に冬月がいるから大丈夫だとコウスケは考えていた。
コウスケはウィスキーをあおる。
こういう時コウスケはわざと強い酒を頼みゆっくりと飲むのだ。
ミサトはビールばっかし・・・
リツコはそこそこ強い酒を飲んでいた。
それでも理性が飛ばないリツコはさすがというべきだろう。
コウスケは不意に子供たちが気になった。
(三人とも無事だな。)
と思たのだが・・・
「・・レイ。大丈夫か?」
「もんひゃいありまひぇん。」
大丈夫ではなかった。
ここで作者より注意
未成年の皆様へ
お酒は20歳を超えてから飲みましょう。
未成年は進められても断りましょう。
断ることは恥ではなく、自分を守るために必要なことです。
また、好奇心が勝ることもあるかもしれませんが、それをこらえるのも大人への第一歩です。
いけない事には勇気をもってダメと言えるようになりましょう。
20歳以上の皆様へ
未成年にお酒を薦めるのは止めましょう。
また、嫌がる人に無理やり進めるのは犯罪です。
お酒は節度と限度を守って楽しく飲みましょう。
それが社会人というものです。
以上
「誰だ!レイに酒飲ませたのは!」
「私じゃないです!」
「僕も違います!」
「俺だって!」
オペレーター三人は違うみたいだ。
リツコはずっとコウスケの目の前で飲んでいたので除外
とすると・・・
「葛城!」
ミサトがびくっと反応した。
「いっいやね~。」
「なんてことをするんだ!」
「だって、レイが飲みたそうにしてたし・・・」
「だからって飲ませるバカがいるか!」
よく見るとシンジも顔が赤くなっている。
アスカもだ・・・
「おい、レイ!大丈夫か?」
レイは何を思ったのか突然立ち上がり、シンジに抱き付いた。
シンジも嫌がっていなかった。
「いいぞ~レイ!」
アスカがパンパンと手をたたきながら上機嫌で言う。
「煽るな!レイ、これを飲め。」
コウスケは水を差しだした。
「なじぇでしゅ?」
とろんとした目で見つめてくる。
完全にろれつが回ってない。
「酔ってるからだ。」
「私、よってましぇん。」
「酔っぱらいは皆そういうんだ。」
「どうしてそういうこと言うの?お兄ちゃん。」
レイはやってしまった。
しかもこういう時に限って発音はしっかりしている。
「バカ!それを・・・」
いち早く反応したのは・・・
「綾波特務一尉・・レイちゃんにそう呼ばせてたんですね。」
バンとジョッキを振り落としながら言う伊吹だった。
・・酔っているようだ。
「誤解だ!」
「不潔。」
「ぐはっ!」
コウスケは何とも言えない罪悪感にとらわれた。
「やっぱあの噂はほんとだったんだ。」
これは青葉の言葉
「みたいだな。」
これは日向の言葉
「特務一尉がレイちゃんにお熱だっていう・・・」
「だから引き取ったって言われてたもんな。」
コウスケの知らぬところでとんでもない言われようだった。
ちなみにこの話はかなり広まっている。
(碇司令・・・恨みますよ。)
「そんなわけあるか!」
「でもコウスケ君ってNERVに来た時、チルドレンのうちレイに一番最初にあったのよね。シンジ君もいたのに。」
リツコが言う。
口元がわずかに微笑んでいた。
「お前、わざとやってるだろ。」
「あら、事実じゃない。」
「この・・・」
(金髪、厚化粧!)
と言いそうなのをコウスケは我慢した。
リツコの言うことは事実ではあったし、何より実験材料になるのは嫌だった。
「コウスケさん!」
「なんだ?シンジ君。」
シンジは普段声を張り上げて人の名前を呼ばない。
そんなシンジを見てコウスケは嫌な予感がした。
「コウスケさんも綾波が好きなんですか?!」
とんでもないことを言うシンジ。
後ろではアスカが「もっと言え~」と煽ってくる。
さらりと「も」と言っていることに気づかないようだった。
それにリツコだけ気付いたが、敢えて無視した。
口元の微笑みが止まらない。
「んなわけあるか!」
全力でコウスケは否定した。
シンジが何を言おうとするのかわかるだからだ。
だが、それがわからない者もいる。
「しょうなんですか?」
レイである。
悲しそうにコウスケを見ている。
その眼に何ともいたたまれなくなってしまうコウスケ。
「うっ・・・いや、そういうわけじゃ無くてな・・・」
異性として好きではないと言いたいのだが、紅い眼に気後れしてしまう。
「嫌いなんでしゅね・・・」
「違うぞ!レイ。」
「じゃあ、やっぱり好きなんですね!」
シンジが絡んでくる。
微妙な食い違いからくる誤解
これほど厄介なものはなかった。
「ああ、もう!ああ言えばこう言う・・・・」
コウスケは乱暴に自分の髪を掻いていた。
(だから酒の場は嫌いなんだ!)
「そうだよな・・コウスケさんって大人でかっこいいし・・・僕なんて・・・」
自虐モードに入るシンジ
ちなみにコウスケはかっこいいとは言われない。
言われたことなんか一回もない。
あくまでシンジの主観だからだ。
「しょんなことないわ。碇君。」
レイは顔をシンジの顔に近づけていた。
「碇君はかっこいいわ。」
と言って接吻するレイ。
「「「おお~」」」」
一同が驚きと喜びを交えた声ではもる。
「残念でしたね。特務一尉。」
「また次の機会がありますよ。」
「残念ね。コウスケ君。」
上から青葉、日向、ミサトの順である。
伊吹は一人で「不潔。」を連発していた。
リツコはわれ関せず。
アスカは喜んでいる。
ともかく三人から嬉しくない慰めをかけられるコウスケ。
「い、い、か、げ、ん、に、し、ろ!!!!!」
・・・
この後オペレーター三人とミサトはゲンドウから直々に減俸を言い渡された。
リツコはその光景を見てお決まりの
「無様ね。」
とコメントした。
なぜリツコはおとがめなしなのか?
それはリツコが事実に基づいて報告したからだ。(ただし自分に不利になることは隠蔽された。)
リツコの一人勝ち?
一方子供たちは・・・
何も覚えていないらしい。
コウスケから一部始終を聞いて
「そんな・・・綾波とキスなんて・・・」
「碇君と・・・」
と言って二人とも止まってしまった。
アスカは
「残念だわ。カメラがあればよかったのに・・・」
と悔しがていた。
ちなみに冬月は請求書を見て少し剥げたとか・・・
これは概ねコウスケのせいである。
何があったかは誰の口からも出てこなかった。