NERV航空隊隊長綾波   作:浩介

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第22話 I am alone.

第三使徒 サキエル

俺が初めて戦った使徒だ。

全身が深緑で人型とも言える姿をしていた。

あの戦いは多くの犠牲者が出た。

今でも覚えている。

俺の後退とともに爆炎に飲まれた街を・・・

あそこにもシェルターがあったのだろう。

だが、NNに耐えられるほど強いとは思えない。

おそらく多くの民間人が呑み込まれたのだろう。

守るべき・・いや、許されざる俺は生きて

守られるべきの人たちが犠牲になる・・・

しかもその事実は隠蔽された。

だから公式記録なんて当てにならない。

・・・世の中は理不尽にできている。

そして俺の戦友が散って行った戦いでもあった。

思えば

あいつは俺に

笑うということを教えてくれたのかもしれん。

三年前だったかな?

何とか心の再建を果たした俺だったが

人らしい感情がまるでなかった。

いや、忘れていたんだろ。

二年の空白が思ったよりも俺を蝕んでいたんだな・・・

最初はうざいと思っていた。

何かしら絡んできては厄介なことばかり持ち込んで・・・

でも

それが心地よかった。

あの時

俺はエースと呼ばれてたが

二年で張り付いてしまった仮面のおかげで

遠巻きに見られていたからな。

確か・・・

「お前って人らしくないな。」

初対面に向かって大変失礼な物言いだった。

だが

そういうことを面と向かって言える彼がうらやましかった。

一緒にバカやったな・・・

こっそりと食糧庫に忍び込んだり

強い酒を飲んで店の前でひっくり返ったり

上官の悪口を言い合ったり

時には殴り合いのけんかもしたっけ・・・

煙草もあいつが教えてくれたんだよな。

むせ返った俺を見て笑ってたな。

思えば、時々寂しく感じる。

やっぱりあいつがいないからだろ。

・・・なんで死んだんだよ。

バカヤロ

・・・

 

第四使徒 シャムシエル

茶色いイカのようなフォルムに鞭のようなものをふるっていた。

あの時シンジに特攻を命じたな。

・・・軍人失格だよな

民間人と変わらないシンジに特攻なんて・・・

しかもシンジのクラスメートも乗り込んでたな。

なんであんなことを命じたんだ?

・・・結局は俺も人ってことか。

エースだのなんだの言われても土壇場に弱い。

・・特攻か

戦闘機で特攻した国があるって聞いたっけ

あの時のパイロットたちはなんて思ったんだろ・・・

そしてシンジは・・・

・・・

嫌だろうな

俺だったら

・・・

シンジは泣いていたかもしれん。

そう考えると俺の罪は重いな。

だからって俺が特攻してたら・・・・

シンジは自分を責めるんだろうな。

・・・シンジは内罰的すぎるのか

戦いには向かない少年だな。

でも

シンジがいなければ

今頃俺たちはどうなっていたか。

・・・

早く終わらせないと

・・・

 

第五使徒 ラミエル

クリスタルのような姿だが

一番厄介な相手だったな。

一度シンジが死にかけた相手だったか

・・・なんでシンジは乗ろうと思ったんだろ

死にかけたのに

普通は嫌だろ

・・・

レイが何かしたのか?

あの時

シンジの病室に行ったときにレイと会ったな。

レイか・・・

同居人

同じ人

同じ「綾波」

人も使徒だからな。

・・・

使徒と人は分かり合えるのか?

どうなんだろ

レイを見てると

出来なくはないように思える。

・・・

でもあの時のレイは人に関心がなかったはず

スケジュールを伝えに来たと言っていたな。

レイのことだからそれだけをやってきたんだろ。

レイは事実しか言わないからな。

時々それで困るんだけど・・・

そんなレイが明らかに変わってきたのは・・・

ヤシマ作戦の後だったはず

・・・

笑えばいいと思うよ

・・・こうして思い返すと口説いているように思えるな。

シンジは天然のジゴロになれそうだからな。

加持とは違うタイプだな。

笑えばいい・・・か

俺は笑えているのか?

どうなんだろ

そもそも俺に笑う資格はあるのか?

血まみれの俺に

・・・

 

第六使徒 ガギエル

魚というかカジキが巨大化した姿で体当たりしかやってなかったな。

ATフィールドを使っていたのか?

弐号機

食われたっけ

・・・

あんときアスカに悪い事したな。

でも

耐えられなかった。

エースパイロットと言う言葉に

エースパイロット(人殺し)と言う言葉(罵倒)

それを解らずに言うアスカに・・・

解ってる

俺の被害妄想だ。

でも

忘れられない。

忘れてはいけない。

俺は罪人(人殺し)なんだ。

その事実は決して消えない。

死ぬときは地獄だろうな。

・・・俺は許されないだろう

どんなことをしても

人類の危機を救っても

・・・

 

第七使徒 イスラフェル

初めて複数で攻めてくる奴だった。

ユニゾン訓練

あれは心地よかった。

あいつと一緒に飛んでいるときと同じだった。

三人も少し打ち解けた感じだったしな

・・・

俺はどうだったんだろ。

そういえば俺

三人のことを戦友と呼んでるよな

なんでだ?

・・・

あいつの代わりなのか?

それとも

・・・

もしかしたら

俺はすがっているのかもしれない。

あの心地よさが欲しくて

求める相手が欲しくて

・・・

一度吹き飛ばした(殺した)くせに

何を考えてんだ?

あの夢で許されたと思ってるのか?

・・・

でも

そう思いたい自分がいる。

殺しておいて虫がいいのはわかってる。

でも

・・・

俺は同じ過ちを繰り返すかもしれん。

だが

使徒がいる限りはダメだ。

でも

使徒がいなくなったら

平和になったら

俺は

・・・

 

第八使徒 サンダルフォン

蛹だったらしい。

俺が初めて殲滅した使徒

A-17に反対したな

飢えに苦しむ人が増えるって

・・・

今更何言ってんだか

さんざん殺しておいて

善人面か

それで罪が軽くなるとでも思ったのか?

・・・バカだよな、俺

・・・

あのあと

温泉に入りに行ったな。

あれはよかった。

平和だなんて思ったしな

・・・

平和な世界に

(人殺し)はいらないよな

いや

いない方がいい。

そうに決まってる。

・・・

 

第九使徒 マトリエル

どういう使徒か

俺はわからない。

あの時NERVは停電中だったからな

それに俺は病院にいたし

あの時

未来の話をしたな。

使徒を倒したらどうするのか

三人とも考えてなかったな

まあ中学生でこれという目標がある方が珍しいけど・・・

・・・

俺の中学生時代か

セカンドインパクトですべてを失ったな。

目の前にいた家族を見捨てて

俺一人

助かった。

行くとこなくて

いろんなところを転々としてたな。

同じ境遇の仲間とつるんで

食糧を盗んでたな。

きつい仕事もしたし

未来なんてなかった。

大人たちも

俺たちを見捨ててたし

むしろ食い物にしてたな。

何人か帰ってこなかった奴がいたな。

とくに女子が・・・

・・・

ただで食えるっていうんで軍に入隊したんだよな。

幸い適性診断で戦闘機乗りになれるってわかったんだよな。

あれが俺の始まりだったのか。

俺らしい

甘い誘惑に乗った代償がこれか

それで今は人類の危機を救う英雄(人殺し)

感激過ぎて泣けるね。

・・・

 

第十使徒 サハクィエル

宇宙空間からNERV本部めがけて落ちてきた。

使徒もなかなか粋なことをするなと思った。

センスは微妙だけど・・・

あんときはほんとによくやってくれたな。

葛城の奇跡に近い

いや

奇跡を願う作戦・・・無茶ぶりによく答えてくれた。

葛城の作戦って行き当たりばったりだな・・・

ラーメン食べに行ったとき

人の安心した顔が忘れられない。

特に

子供の笑顔が

俺みたいになって欲しくないと願ったね。

もっとも俺みたいのに願われても

嫌なだけだろうけど

・・・

そういや

昇進もしたな。

嫌だった。

昇進なんて

それを喜ぶ奴がいっぱいいたけど

解ってるのか?

解ってないだろ。

給料が上がる?

権限が大きくなる?

何言ってんだか

昇進って

それだけ

殺したってことなんだから

それを喜ばれて

嬉しいか?

命が金になるのか?

俺には解らない。

・・・

そういや葛城って

なんでシンジとアスカを引き取ったんだろ。

父と母はいなくて

兄弟もいない。

・・家族が欲しかったのか?

家に帰って

そこに居てくれる人

・・ペンギンも飼ってるし

あながち間違いでもないかもしれない。

俺もそうなのかな

・・・

 

第十一使徒 イロウル

NERVに初めて侵入した使徒

MAGIを乗っ取って自爆させようとしたな。

EVAなしで殲滅された使徒

あんとき

みんな焦ってたな。

人なんてできること

限られてるのに・・・

でも

だからこそ

人は美しいんだろうな。

人に限らず

生命は生きようとする。

だから美しい。

あんときの

皆が喜ぶ声は

心地よかった。

・・・

俺は

生きていていいのか?

どうなんだろ

解らない。

まあ

いずれは死ぬんだ

だったら

それまで生きていてもいいか。

年貢の納め時が

いつか来るだろ。

・・・

この時だよな

レイと同居しはじめたの

最初は耳を疑ったよ。

碇司令は狂ったんじゃないか?

とまで思ったね。

俺に預けるなんて

人として必要なことを教えてほしい?

バカな

俺が何を教えられるってんだよ。

殺しのテクニックでも教えろってか?

でも

他にいなかったんだろうな。

レイの境遇を考えれば・・・

・・・

そう考えると

レイの行動も少しわかるな。

シンジにべっとりのレイ

あれは幼い子供が親から離れたくない。

そんな心情と同じなのかもしれん。

だからと言って無理やり離したら

多分レイは壊れる。

それは嫌だな。

折角人として生きられるのに

そのチャンスが失われるなんて・・・

特にレイは

人と違うということに敏感だからな。

ダミーシステムの開発

相当嫌がってるし

俺だっていやだ。

碇司令も苦い顔だったな。

赤木も

・・・

あの時

碇司令の眼鏡を持って行かなかった。

心の成長はなってるみたいだから

うまくサポートしないと・・・

下手して

俺にすがるようになったら

レイは一生

成長できない。

それに

人殺しにすがるなんて

そんなことになったら

レイは

不幸なだけだ。

・・・

俺が居なくなったら

レイはなんて思うかな?

・・・

何期待してんだ?

涙でも流してくれると

思ってるのか?

人殺しに必要なのは

涙じゃなくて

・・・

過保護と支援は違うからな。

もっとも俺がサポートなんて

出来るとは思わないが

・・・

 

「ふう。」

コウスケは煙草を取り出して一服することにした。

目の前のPCには今まで戦ってきた使徒のデータが映し出されていた。

「何考えてんだろ・・・」

煙がゆらゆらと部屋に充満していく。

普段気にしないにおいが嫌に鼻を刺激する。

たまらず煙草を灰皿に押し付けたようとしたが、できなかった。

「俺は・・・」

そのつぶやきを聞いたものは誰もいなかった。

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