NERV航空隊隊長綾波   作:浩介

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第25話 未来への一歩

あれからというもののコウスケは以前の状態に戻った。

家には帰るようにしているし、迷惑をかけた人たちには一通りに謝った。

何が何だかわからない人たちはかなり訝し気に見ていたが、チルドレン‐特にレイとの受け答えを見て安心していたようだ。

もっともコウスケ自身の心情の変化には気づいてないようだが

・・・

 

第三新東京市から離れた山岳の上空を一機のヘリが飛んでいた。

そのヘリを操縦しているのはコウスケである。

元々戦闘機乗りであるコウスケだが、ヘリの操縦もできるのだ。

ふと下を見ると大きな湖が二つあった。

「第二、第三芦ノ湖か・・これ以上増えないことを望むな。」

そう言うのはNERV副司令たる冬月だった。

彼は使徒との戦闘で出来た二つの湖を見ながらもの鬱げな顔を隠そうとしなかった。

「昨日キール議長から計画遅延の文句が来たぞ。俺のところに直接。」

と横にいる男-総司令である碇ゲンドウに言う。

「相当いらついてたな。しまいにはお前の解任も仄めかしていたぞ。」

「そりゃ大変ですな。」

冬月の話を聞いていたコウスケが思わず口にした。

「計画に関することは順調である。SEELEの老人は何が不満なんだ?」

(ダミーだからだろ。)

ゲンドウと冬月のことを知るコウスケは心でそう言った。

「肝心の人類補完計画が遅れてる。」

当然ながら冬月は計画を進める気などない。

無論ゲンドウもだ。

「問題ない。気づいたところで何もできんよ。」

ゲンドウはこういった裏工作が得意な人だった。

だからこそNERVの総司令になりえたのだろう。

もしかしたらシンジにもその素質があるのかもしれないとはコウスケ一人が考えることだった。

「ところでレイはどうだ?特務一尉。」

ゲンドウが気になったのかコウスケに聞いてきた。

「元気ですよ。今までの遅れを取り戻すように。」

「そうか。」

というもののその声は大変優しく感じた。

「零課は?」

「編成は済んでいます。ただ、訓練を行えないのが痛いですな。」

「君には苦労を掛けるな。」

「ありがとうございます。ただ、それは副司令にこそ必要なのでは?」

「むっ・・・」

「まったくその通りだ。」

冬月が首を縦に振っている。

「む~・・」

ゲンドウが押し黙ってしまった。

「この前言った食事だが・・・」

(話題を変えたな?)

コウスケは思わず笑いそうになったが堪えた。

「あの日に頼む。」

「了解しました。」

まったくこの男は・・とのつぶやきが聞こえてきた。

「あの男はどうする?」

冬月が気になったのかゲンドウに訪ねた。

「好きにさせておくさ。マルドゥック機関と同じだ。」

(加持か・・・今は京都にいるな?)

実際提出された出張計画は松代であったが、零課の監視から京都に行ったことが報告された。

(なにも見つからんよ加持。)

・・・

 

NERVでの仕事を終えてコウスケは帰宅していた。

帰るとレイが夕食の準備をしていた。

「おお、こりゃさらに腕を上げたんじゃないか?」

並べられた料理を見てコウスケは言った。

おそらく自分よりもうまいんじゃないか?

レイはシンジに料理を教えてもらっていた。

最初は苦労したとシンジから言われた。

レイは包丁をプログレッシブナイフのように持ったらしい。

それをシンジが白刃どりで受け止めたとか・・・

まあ、戦闘訓練しかやってこなかった少女だ。

料理のことをよく知らなくて当然だろう。

余談だが、いつ教えてもらうのかはすぐにわかるのだ。

なぜなら、ときどきレイは妙にそわそわするのだ。

そして帰ってきたときに妙に嬉しそうであった。

つまりそういうことだった。

「やっぱりうまいな。」

コウスケが料理を食べて思うことだった。

ちなみに家事はちゃんと分担している。

料理、掃除は交代で行うのだ。

コウスケがNERVの仕事で遅くなる時はレイをお隣の葛城家に預けるのだが・・・

ちなみにレイはその日を結構楽しみにしているらしい・・・

洗濯だけは別々で個人が行うことになっていた。

家事に関しては某作戦課長とはかなり違うだろう。

「レイはいいお母さんになりそうだな。」

と言ってコウスケはしまったと思った。

レイにとってお母さんと言えば遺伝子提供者である碇ユイ

つまりは碇ユイと重ねていると言っているようなものだった。

これはレイが嫌がることの一つである。

ゲンドウが碇ユイと重ねてみていたことを何となく感じ取っていたのだろう。

碇ユイの名前を出すと少し嫌そうになる。

(まずい・・・)

コウスケはひそかにレイの様子を窺う。

だがコウスケの予想に反してレイは赤くなっていた。

「どうした?レイ。」

「・・碇君にも同じことを言われました。」

「シンジ君に?」

ということは同じ反応をしたんだろ

なぜだ?

お母さんと言われて赤くなる?

お母さん・・・母性的?優しい?

コウスケは考える。

夫婦?

そして一つの結論にたどり着いた。

「もしかして嬉しかったのか?」

「・・・」

「恥ずかしかったとか」

レイは答えないが、うっすらと赤くなっている。

そんなレイを見てコウスケはニヤリと笑う。

だから碇司令と同じ笑いをするとレイに思われたのだが、そんなことを知らないコウスケ。

「自分がお母さんになったことを想像したのかな?」

レイが明らかに動揺している。

「でもお母さんって一人じゃできないからな・・・」

ますます赤くなるレイ

「お父さんは誰だったのかな?」

レイはコウスケの視線に耐えられず俯いてしまった。

「鈴原君?それとも相田君?」

コウスケはわざとやっていた。

「もしかして・・・碇君?」

碇君と聞いてビクッと反応するレイ

「そうかそうか。・・そういえば明日だな。碇司令との食事。」

そういうコウスケの顔は真面目に戻ってない。

「いや~。ちゃんと挨拶しないとな。碇司令に・・おっと、未来のお義父さまに。」

「・・いじわる。」

「ははは・・・」

(いいもんだ。こんな風に笑える世界に俺もいていいんだからな。)

「冗談はここまでにして、レイ。」

「・・はい。」

いまだに余韻が抜けないのかうっすらと赤い。

「レイもそんな未来を描いていいんだ。俺は教えてもらったからな。今度はレイの番だ。」

「解りました。」

と言ってじっと考え込むレイ

(どうした?)

「・・子供はどうすれば生まれますか?」

コウスケは盛大に吹いた。

口の中に何もなかったのはよかった。

レイがひそかに嫌な顔をしていた。

「・・知らないのか?」

(まさかとは思うがレイにそういうことを教えていないのか?)

そういうことは学校である程度は習うものだ。

「はい。」

レイは元々計画のためだけに存在した。

したがってそういうものをゲンドウとリツコが教えるわけなかった。

(うかつだった。そして十分あり得る事態だった。恨みますよ、碇司令・・)

その方法を教えればおそらく、いや絶対やるに決まってる・・シンジで・・・

なぜコウスケがここまで危惧するのか?

それはレイのお兄ちゃん発言だった。

ミサトとリツコに言われるままコウスケをお兄ちゃんと呼んだレイ。

このことからレイは人に言われたことをそのまま実行してしまうということをコウスケは学んでいた。

しかもそれが人に必要だとレイが考えるのだからたちが悪い。

今回の件は確かに人には必要なことだが・・・

(どうしよう・・葛城・・絶対からかうな・・赤木・・うわぁ、喜んで教えそうだな。)

そしてシンジが犠牲になる・・・

簡単に想像できた。

(伊吹二尉・・・潔癖症だからな・・変に話がこじれそうだ。)

その犠牲者は自分・・・

「特務一尉。教えてください。」

レイが促す。

じっと紅い眼で見つめてくる。

コウスケは汗が止まらないことを自覚した。

「・・それは後日、最適な人に教えてもらう。だからその話は他人にしてはダメだ。」

とは言っても最適の人なんて見つからない。

「・・わかりました。」

しゅんとしているレイに罪悪感を感じる。

(教えられるわけないだろ。・・どうしよ。)

人としてもっとも重要なことである。

だからこそ簡単に教えられない。

ましてや自分は男なのだ。

ちなみにコウスケは知識はあってもそういう経験はない。

この問題をどうするべきか本気で思案しなければならなかった。

・・・

 

「碇司令。ここでよろしいのですね?」

コウスケはNERVのヘリを飛ばしていた。

「ああ。」

今、コウスケたちは共同墓地の真上にいた。

「降下します。」

そう言ってコウスケはヘリを下していった。

(墓参りか・・・)

コウスケに家族はいない。

セカンドインパクトで皆いなくなってしまったからである。

おそらくはどこかに埋葬されているだろうが、混乱の中にあった日本でコウスケ自身生き延びるのに必死であったため、コウスケはその場所を知らない。

(親不孝な奴だな・・・俺。)

「待機していてくれ。」

そう言ってゲンドウはヘリから降りた。

ゲンドウの向かう先には妻である碇ユイの墓がある。

そこには先に来ていたシンジがいた。

「心配か?あの二人が。」

返事は帰ってこなかった。

だが、もう一人の同乗者であるレイはじっと二人のことを見ていた。

「心配するな。碇司令から一歩踏み出したんだ。あとはシンジ君次第だろ。」

それでもレイは視線を離すことはなかった。

(二人ともレイに近い人だからな。)

そう思うと仲違いをしないか気になるだろう。

なにせ親子どころか人としてもまともに接してこなかった二人である。

気になるのもしょうがあるまい。

コウスケが碇親子に目をやると、二人がこっちに向かって来ているが見えた。

するとシンジがこっちに手を振ってきた。

そんな様子のシンジにレイがほっとしているように見えた。

「レイ、シンジ君に手を振ってやったらどうだ?」

その言葉にレイは少し戸惑うが、小さく、はっきりとシンジに見えるように手を振った。

シンジが走ってくる。

「ちゃんと見えたらしいな。」

レイのほうを見ると少し赤くなっていた。

(初々しいね。)

そしてそれを感じていたのはコウスケだけではないことを知っていた。

シンジの後ろでゲンドウもフッと笑っていたのが見えたからだ。

シンジがヘリに乗ってきた。

「よろしくお願いします。コウスケさん。」

そう言ってシンジはレイの横に座った。

「ちゃっかりレイの横に座るか。」

「へっ・・あ、ごめん綾波・・」

「・・別にいい。」

そっけなく答えるが嬉しいのはよくわかっている。

そんな二人にコウスケは思わず微笑んでしまう。

「では碇司令。出発します。」

「頼む。」

ゲンドウはシンジの対面に座っていた。

コウスケはヘリを飛ばした。

ヘリの中で会話はなかったが、ぎすぎすした雰囲気ではなかった。

・・・

 

「こりゃすごい。」

コウスケはテーブルに並べられた料理たちに感動していた。

なぜなら、そう簡単に食べられるものではなかったからだ。

「自分も同席してよろしいんですか?」

「構わん。綾波特務一尉には借りもある。」

コウスケはどういうわけかよくわからなかった。

ゲンドウもそれ以上説明することはなかった。

コウスケの対面にはレイがいる。

レイは以前にも来たことがあるのか平然としていた。

シンジはゲンドウの対面に座っていた。

シンジは初めてなのだろう少し戸惑っていた。

そういうコウスケもこういう場所は初めてである。

高級軍人ならばそのような機会があるだろうが、士官とはいえ下から数えた方が早い階級のコウスケだ。

したがってテーブルマナーというものもよく知らない。

レイのほうを見ると完璧な作法であった。

(碇司令のおかげだろうな・・計画のためと言っていたが、どこかで人として接していたのかもしれんな。)

一方シンジはどうもちぐはぐだった。

それを見てゲンドウが・・・

「シンジはこういうのも教えてもらえなかったのだな。」

それはつぶやきであったが、ゲンドウ自身が今までしたことの重さを感じさせるものだった。

「シンジ、作法はあとで教えてやる。今は楽にしろ。」

「うん。」

シンジはいつもの食べ方になるが、元々雑ではないので荒っぽくはなかった。

黙々と時間が過ぎていく。

コウスケはじっと待っていた。

ゲンドウが何かを話そうとするのが解っていたからだ。

「シンジ。」

「何?父さん。」

「・・私の話を聞いてくれ。」

そしてゲンドウは語り始めた。

EVAのこと

使徒のこと

NERVのこと

そして人類補完計画のこと

(思い切ったことをするな。)

シンジのほうを見ると十分に理解できているとは思えなかった。

「やっぱりそうだったんだ。」

「知っていたのか?」

「うん。零号機に乗った時に。」

「そうか。」

「・・父さんはなんでこんなことをしていたの?」

シンジはじっとゲンドウを見ている。

ゲンドウの真意を知りたい。

それがシンジなりに一歩踏み出した結果なのだろう。

「ユイに再び会うためだった。」

「母さんに?」

「ああ。それがすべてだった。」

「そのために綾波を・・・」

「ああ。だが、それが間違いであったことを知った。」

ゲンドウがどういう表情なのかサングラスのせいで読み取れなかった。

ただ雰囲気から後悔を読み取ることはできた。

「私のエゴでシンジとレイに苦痛を与え続けた。・・すまなかった。」

ゲンドウの声はいつもの高圧的なものではなかった。

(本心なんだな。)

「父さん。」

「なんだ?」

「母さんのこと愛してたの?」

「ああ、それは今も変わらない。」

「そうなんだ。」

そしてシンジは一人納得したような顔になった。

「正直父さんのこと許せない部分もあるよ。でも父さんのことがわかってよかった。」

「シンジ・・」

「それに綾波に会えたしね。」

「碇君・・」

レイの目は少し潤んでいた。

(綾波に会えたしね・・か・・天然だなシンジは。)

なんてことを思うコウスケだった。

「もうしないんでしょ?計画。」

「ああ。完全に破棄した。」

「ならいいよ。」

「そうか。」

(和解への一歩か)

その一歩がこの二人に与える影響は大きいだろう。

少なくとも関係が悪化することは無いだろうと考えるコウスケだった。

「シンジ。」

「なに?父さん。」

「私はNERVの総司令だ。だから今後お前とこうしたことができるとは思えん。だが、すべてが終わった時もう一度会ってくれるか?」

(碇司令もつらいな。)

「うん。解ったよ父さん。」

「そうか。・・シンジ、レイのことをよろしく頼む。」

「う、うん。」

いきなりレイのことをよろしくと言われて赤くなるシンジ

よく見るとレイも少し赤かった。

それを見たコウスケの口がニヤリとなる。

「そういえば碇司令。シンジ君って意外ともてるんですよ。」

「へっ!」

シンジは意外だという顔だった。

「NERVにファンクラブがあるくらいですからね。」

実際に存在するのだ。

非公式だが・・・

なぜコウスケが知っているかと言うと同じ課の同僚にいるからであった。

なんでもゲンドウとは全く違うというのがいいらしい・・・

遺伝子の神秘とかなんとかと騒いでいるらしいが、真実はコウスケでも解らない。

「そうなの?!綾波。」

シンジはレイに確認を取ろうとするが

「・・・・・・知らない。」

と言ってレイはそっぽを向いてしまった。

(知らない・・嘘だなあれは。絶対に知ってる。)

などとコウスケは楽しんでいた。

「それに意外とやり手なんですよ。」

「・・そうなのか?」

そう聞くのはゲンドウだった。

「ヤシマ作戦が終わった直後、シンジ君は助け出したレイになんて言ったかな?」

「コウスケさん!聞いてたんですか?!」

「ばっちりと。・・ああ、安心しろ。俺しか聞いてなかったから」

この時、零号機の救出で発令所は大慌てであり、さらに使徒の攻撃で一時的に通信機能がマヒしていた。

そのため近くに居て通信が妨害されなかったコウスケだけがシンジとレイの会話を聞けたのだ。

「そんなこと言われても・・ね、綾波。」

とシンジはレイに振るが、レイはじっとシンジを見ていた。

何かを期待するような目だった。

「な、なに?」

「言ってほしい。」

「え!」

「もう一度言ってほしい。」

シンジは困り果ててしまった。

そんな様子にコウスケが口を挟んだ。

口元はニヤリとしている。

「・・じゃあレイから始めたらどうだ?」

「解りました。」

というレイにシンジも覚悟を決めたようだった。

「何泣いてるの?」

「・・そこから始めるのか?レイ。」

「はい。」

レイの目はコウスケに抗議していた。

なぜ邪魔するの?

と・・・

「・・すまん。続けてくれ。」

ゲンドウは興味津々のようだった。

「ごめんなさい。・・こういう時どんな顔すればいいのかわからないの。」

「・・・笑えばいいと思うよ。」

シンジは女殺しの笑顔を見せていた。

「碇君、ずるい。そんな風に笑ってなかった。」

とレイは赤くなりながら言った。

「・・・シンジ、それは口説いているのか?」

とゲンドウはシンジに聞いた。

「ちっ違うよ。」

「やっぱりそう思いますか?碇司令。」

「ああ、どう考えても口説いているようにしか聞こえん。」

そんなゲンドウの言葉にシンジは真っ赤になって俯いてしまった。

「意外と侮れんな。」

とゲンドウはつぶやいた。

「あとシンジ君。」

「はい・・」

シンジの声は小さくなっていた。

「昨日レイになんて言ったんだ?」

「特務一尉。」

レイの声は大きくないが、はっきりと抗議している声だった。

「いや~、レイに聞いても答えてくれなくてな。」

レイが必死にシンジに向かって顔をフルフルしていた。

からかわれるとわかっているからだろう。

だが、シンジは気付かなかった。

「昨日ですか?・・たしか掃除中に綾波を見て、雑巾の絞り方がお母さんみたいだったから、お母さんみたいだと言いましたけど。」

「シンジ、それは・・・」

ゲンドウは珍しく慌てるように言ったが、コウスケが宥めた。

(昨日の俺と同じ考えをしたんだな。)

「まあまあ、碇司令。あれを見てください。」

と言ってコウスケはとある方向を指さした。

その方向には赤くなったレイがいた。

「どうした?レイ。体調がすぐれないのか?」

ゲンドウの声にビクッと反応するレイ

「いえ、なんでもありません。」

「何でもないわけないよな?レイ。」

「どういうことだ?」

ゲンドウは何が何だかわからないと言いたげだった。

「レイの楽しい未来図ですよ。なあ、レイ。・・お父さんは誰だったのかな?」

レイはやはり答えなかった。

(黙秘か・・・なら)

「シンジ君は誰だと思う?」

「どういうことですか?」

「お母さんは一人ではなれんだろ?・・当然お相手がいるということさ。つまりレイが旦那さんに考えている相手さ。」

コウスケはニヤニヤとしながら言う。

するとシンジは真面目な顔になった。

「誰だろ・・・トウジは・・違うだろうし・・・まさかケンスケ!」

(すごい結論だな・・・)

コウスケは内心あきれていた。

どうすればそんな結論になるのか、シンジの脳内を見てみたかった。

「違う。」

レイがはっきりと答えた。

そして目でコウスケにもうやめてと言っていた。

「碇司令は誰だと思いますか?」

ゲンドウも真面目に考えていた。

「う~む・・・冬月・・はないだろう。オペレータ・・無いな・・まさか、特務一尉!君なのか?!」

(こっちもすごい結論だな・・・)

やはり似た者同士なのかとついつい考えてしまう。

「違います。」

またもやレイは答えた。

そしてコウスケを見る目が険しくなっていた。

だが、そんなもので止まるコウスケではない。

伊達にエースとは呼ばれていないのだ。

「フフフ、碇君ですよ。」

「へっ!」

「むっ!」

シンジとゲンドウの二人が反応した。

(なんで碇司令が・・・両方碇だったな・・・)

「・・・碇司令、シンジ君ですよ。」

「そっそうか。」

と言うゲンドウは何となくがっかりしたように見えた。

(おいおい・・・)

「シンジ君、ご感想をどうぞ。」

「あの・・・その・・・」

真っ赤になったシンジはまともに答えられそうになかった。

「じゃあ、レイ。ご想像の世界はどうだったかな?」

レイに矛先を向けたコウスケだが・・・

「・・お兄ちゃんのいじわる。」

「が・・・」

レイの手痛い反撃を被ることになった。

一瞬レイがにやっと笑ったように見えた。

「コウスケさん・・・やっぱり・・・」

シンジは噂で聞いていたことを思い出していた。

コウスケがレイに下心があるという・・・

「誤解だ!シンジ君!」

「綾波特務一尉。」

とても低い声が聞こえた。

「君に一任すると言ったが、レイにそう呼ばせているのか?」

声の主はゲンドウだった。

「そんなことはありません!」

「お兄ちゃんと呼べと言われました。」

レイの言っていることは事実であった。

ただ、「誰に」が抜けているだけだ。

(巧妙に事実を隠蔽か・・・くそっ!)

こういう時は後に言うほうが不利なのだ。

とってつけたように聞こえてしまうからだ。

「汚いぞ!レイ。」

「仕返し。」

「ぐ・・・」

確かにコウスケはやり過ぎた。

因果応報と言うやつだろう。

「・・思った以上に良好な関係のようだな。」

いつの間にかゲンドウはフッと笑っていた。

「それは赤木博士か葛城三佐の入れ知恵だろう。」

「はい。」

レイは素直に答えた。

「綾波特務一尉。」

「はい。」

「レイを頼む。」

「解りました。」

(よかった。碇司令はわかってくれたか。)

と安心したのだが・・・

「特務一尉。」

ゲンドウがささやくようにコウスケを呼んだ。

「はい。」

そんなゲンドウの様子に嫌な予感がした。

「・・お兄ちゃんと呼ばれてどうだった?」

(なんてこと聞いてくるんだ?!)

「どうだったと聞かれましても・・」

ゲンドウがじっと見てくる。

(何とか逸らせないものか・・・)

「それより碇司令。レイの未来図ですが・・・」

「問題ない。レイが望むなら構わん。必要とあらば、今すぐにでも特例で結婚できるようにする。」

(そこまでやるか?・・ていうか完全に職権乱用だな。)

「・・碇司令もお義父さんと呼ばれますな。」

「むっ・・・」

などと唸ってゲンドウは沈黙した。

(動揺しているな・・・)

しばらくするとゲンドウが再起動を果たした。

「それもいいな。」

と言ったかと思うとシンジの方に向き

「シンジ、早く孫を見せろ。」

などと言うのであった。

「とっ父さん?!」

シンジが慌ててふためいている。

「碇司令、段取りがかなり飛んでいますよ。」

「問題ない。」

「問題ありますよ・・・」

(レイは静かだな・・・)

コウスケはレイの方を見た。

赤くなり俯いており目もぼんやりしていた。

「孫・・碇君との子供・・・」

などとレイはつぶやいていた。

(妄想モード突入・・・)

おそらくレイにとってとても幸せな未来でも見ているのであろう。

(・・まあ、いいか。)

そんな未来を描けるのは悪いことじゃない

レイは純粋だ

だからレイを見るたびに自分が嫌になった

血塗られた過去の自分に

過去はもう変えられない

いや、その過去があったから今がある

そして俺も考えるべきだ

いや、だからこそ考えるべきなのだろう

自分にとって良い未来とは何かを

そんな思いがコウスケの頭に響くのであった。




実現しなかった四人の食事会
それが実現していたらどうなっていたのか?
これを書いたときそんなことを考えてましたね。

今回のおまけはこの話を書いている途中で思いつきました。
アホな話です。
では、どうぞ。

おまけ
綾波家にて
「そういや、レイ。」
「はい。」
「未来のシンジ君はどんなだった?」
レイがどんなシンジを想像したのかコウスケは好奇心で聞いてみたのだ。
「今と変わりません。」
「そりゃ、無いだろう。」
「そうですか。」
などと言いレイはまたもや想像の世界に入ってしまった。
綾波レイ、妄想モード突入
「未来のシンジ君か・・・碇司令がああだから・・・背は高くなるな。」
おそらく自分よりも高くなる
コウスケはそう考えていた。
「顔はもっと男らしくなって・・かっこいいだろうな。」
と言うコウスケの言葉にレイがビクッと反応する。
「碇君・・・」
などと言い赤くなっていくのだ。
相当いい男に見えているんだろう。
そんなレイにコウスケはニヤリと笑った。
悪戯心が出てしまった。
「髭も碇司令みたいに生えるんだろうな。」
レイが止まった。
「ぼうぼうになって・・・」
「・・・」
顔の赤みが消えていった。
「黒い服を着て・・・」
レイは俯いてしまう。
「そのうちサングラスをかけたりして・・・」
レイの周りがどんどん暗くなっていく。
ゲンドウみたいなシンジ
サングラスを上げて
「問題ない。」
・・・
シンジに限ってそれはないだろう。
と言いきれないのは、やはり似た者同士だからだろうか・・・
いつの間にかレイはぶるぶると震えていた。
ゲンドウみたいなシンジを想像したからであろう。
おそらく、いや、はっきりと想像できたのだろう。
二人ともレイに近い人だから・・・
コウスケはちょっとやり過ぎたと思った。
「いや~、レイ。」
「・・・・・・」
レイは頭を抱えて何かぶつぶつと言っている。
「冗談だよ。」
「・・嫌・・・」
「おい、レイ。」
「・・・嫌・・嫌、いや~!」
・・・

「なんでここで寝てるんだ?俺。」
コウスケはリビングで目が覚めた。
時間を見ると朝だった。
なぜか顔がものすごく痛かった。
不意に携帯電話が鳴りだす。
「はい。綾波です。」
『コウスケ君?赤木よ。』
「赤木か。どうした?」
『今すぐ私の研究室に来てちょうだい。大至急!』
「わかった。」
コウスケは部屋で寝ているであろうレイの様子が気になったが、とりあえずリツコのもとに急ぐことにした。
・・・

「どういうことなのかしら?」
「俺にもよくわからん。」
「昨日、突然来てからずっとあの調子なのよ。」
コウスケがリツコのもとに行くと、ベットでうつぶせになりながらさめざめと泣くレイがいた。
時々「碇君・・」というつぶやきが聞こえてくる。
「それに、あなた・・顔に痣ができてるわ。」
「ほんとか?」
と言ってコウスケは鏡を見た。
「・・すごいな、これ。」
コウスケの頬に拳一つ分の痣があった。
「あなた、まさか・・・」
「何だ?赤木。」
リツコのコウスケを見る目が変わった。
汚らしいものを見る目に
コウスケは考える。
何も覚えてなく顔に痣ができている男
恋人の名前を呼びながらさめざめと泣く少女
考えられるシチュエーションは
・・・
「バカなことを考えるな!そんなことしたら碇親子に抹殺されるわ!」
シンジはEVAで
ゲンドウは謀略で
何となく初号機が手を貸しそうだ。
おそらくこの世で生きていられまい。
戦自一個師団くらいは平気で動員してきそうだ。
もしかしたらJAが走ってくるかもしれない・・・
「そうよね。コウスケ君に限ってそれはないわね。」
リツコは納得したようだった。
どことなくほっとしたように見えたのは気のせいか?
「昨日、何があったのかしら?」
「未来のシンジ君について話したな。」
「未来のシンジ君?」
「碇司令みたいになるだろうと・・・」
そこでレイが
「碇君!髭だけは止めて!お願い!私、何でもするから!」
などと泣きながら叫んだ。
ついでにとんでもないことも言っている。
「・・なるほどね。あなた変にいたずらしたでしょ。」
「・・やっぱり俺のせいなのか?」
「状況からそう判断できるわ。」
「俺のせいなのか・・・」
ふとリツコが何かを考えている。
「碇司令みたいなシンジ君・・・なかなかの精神汚染ね。」
何気にひどいことを言うリツコ
「・・俺はそんなに重大なことをしたのか?」
「少女の夢をぶち壊しにしたのだから、重罪、いや死罪に値するわ。」
「・・面目ない・・・」
・・・

そのあと髭はちゃんと剃ればあんな風にならないと説得し、何とか成功した。
コウスケは二人に迷惑をかけたということで昼食をおごる羽目になったが、自業自得だろう。
なぜコウスケはリビングで寝ていたのか?
それはレイから強烈なストレートを受けたからである。
伊達に戦闘訓練を受けていない。
何も準備なしに受けたためコウスケは気絶していたのだ。
実を言うともう一人被害を受けた者もいた。
「どうしたの?綾波。」
レイがじっとシンジを見つめている。
「なっなに?」
レイの顔がシンジの顔に近づく。
シンジは赤くなっていた。
この時シンジは何かを期待していたそうだ。
心臓がバクバクなっていたらしい。
「・・生えてない。よかった。」
と言いレイはほっとする。
「・・なにが?」
何が何だかわからないシンジだった。
そのあともシンジは定期的にレイにじっと見つめられることになった。
・・・

「碇、話は聞いたな?」
「ああ。」
「しかし、レイがあそこまで嫌がるとは・・・」
「・・・」
「髭に嫌な記憶でもあるのか?」
「そんなことは・・・」
「何かあったんだな?」
「昔、レイに髭で・・・」
「・・なるほど、頬擦りしたんだな。」
「やってみたかったのだ。だが、今ほど生えてなかったし、あれは一人目だったはずだ。今のレイが覚えているはずが無い。」
「そうか。」
(・・魂が覚えていたのだな。)
「しかし、碇。お前も昔は髭なんぞ生やしてなかったろ。」
「髭を生やした時ユイが嫌がっていたからな。」
「そういえば顔に痣ができていたな。あれはその時のものか。」
「・・・問題ない。」
なんて会話があったそうだ。
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