NERV航空隊隊長綾波   作:浩介

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第28話 奪う者、創る者

富士山の近くを一機の航空機が飛んでいた。

辺りはすでに暗いが、地上からその航空機を見ることは簡単であった。

なぜならその航空機は普通では考えられない高度を飛んでいるからだ。

生い茂っている木々の真上を飛んでいる。

少しのミスで木に引っかかって墜落もあり得る。

だが、そのパイロットはそんなことにお構いなく悠々と飛び続けるのであった。

「死神は~・・・」

軽快なテンポと音程とは程遠い不吉な単語で歌を歌うパイロット‐綾波コウスケがいた。

『課長、何ですか?その不吉な歌は。』

コウスケの歌を聞いたミツヒサが不機嫌そうに言う。

「課長は止めろ。作戦行動中だ。」

作戦行動中に歌を歌う自分を棚に上げてコウスケは言った。

『すみません、「アロー3」。それでその歌は何ですか?』

『俺も気になる。・・死神って何だよ。』

シンゴも会話に入ってくる。

「綾波家に伝わる由緒正しい歌だよ。」

と自慢げにコウスケは言う。

『聞いた事ねえよ。そんな歌・・』

『同じく僕もありませんね。』

「当たり前だ。・・俺が親父から教えてもらった歌だからな。」

実を言うとこれは嘘ではない。

だが、綾波家に伝わる由緒正しい歌ではない。

これはコウスケが幼い時に父親にからかわれて教えてもらった歌なのだ。

その時は純粋なコウスケであったため、嘘だとはつゆにも思っていない。

その真実を知る前にセカンドインパクトが起きたため、コウスケは真実を知らずにいるのだ。

・・今では父親を感じる唯一のものとなっているが

そもそもなぜ彼らは富士山の近くにいるのか?

それは数時間前に遡る。

・・・

 

「綾波特務一尉、参りました。」

「入れ。」と言う言葉とともに開くドア。

コウスケはゲンドウから呼び出しを受けていた。

「碇司令、どういったご用件でしょうか。」

(こういう時って大体厄介ごとなんだよな。)

コウスケは今までの経験からそう思っているが、顔には出さない。

「最近、戦自が動いている。」

とゲンドウはいつものポーズ、口調で言う。

「ほう、NERVでも襲う計画があるのですかな?」

と冗談交じりに言うコウスケにゲンドウは資料を渡した。

「・・・陸上軽巡洋艦?トライデント級?」

コウスケは初めて見る言葉に疑問符が浮かぶ。

(陸上なの巡洋艦?何がしたいんだ?)

資料には詳細なスペックまで書かれている。

写真もついており、恐竜のような形であった。

変形機構も擁しており水上、水中、陸上での活動ができるようだ。

これを用意したのは加持だ。

加持は一通り調べ物が終わった後、NERVに協力を申し込んできたのであった。

これは加持の信頼の証でもあった。

三足足袋は一応続けているフリをしている。

「これは使徒対策ですかな?」

「いや、六年後の運用を考えているようだ。」

「つまりは次世代型の主力兵器と言うことですか。」

(こんなもん使えるのか?)

写真を見る限りかなり大きなものである事がわかる。

大きいということはそれだけ頑丈であるだろうが、その分だけ当たりやすくなるのだ。

「綾波特務一尉ならどうする?」

ゲンドウの言葉は足りないが、コウスケは戦場で敵として出会ったらと言うことを正確に把握した。

「そうですな・・・まず、市外に誘導・・そのあとNN爆雷で一発ですな。」

なにせ装甲は戦車、戦艦などと変わりがなく、EVAのようにATフィールドも張れないのだ。

「それで自分に何をさせたいのでしょうか?」

ゲンドウがこんなものを見せるために呼び出すはずがない。

コウスケはゲンドウの言葉を待つことにした。

「これも見てもらいたい。」

と言ってゲンドウはもう一つの資料を差し出した。

「・・・なるほど、そういうことですか。」

コウスケはゲンドウとこれを渡した加持が何をやらせたいのかわかった。

「それで残りはどうしますか?」

「君に任せる。」

(めんどくさいからって・・・)

コウスケは横にいる冬月に視線を送った。

冬月はやれやれと言いたそうであった。

「解りました。」

・・・

 

「よし、今回の作戦の確認をするぞ。」

コウスケは手短く作戦を確認する。

場所は青木ヶ原に位置する戦自の研究所

目標はそこにとらわれている少年兵の確保、およびトライデント級陸上軽巡洋艦の破壊

『トライデントね・・とんでもねえもん作ったな。』

シンゴが呆れるように言った。

『EVAに触発されたのでしょう。』

「だろうな。だが・・・」

少年兵を使うとはどういうことか

しかも操縦席は劣悪らしく、それで幾人も命を落としている

NERVでもレイたちは少年兵として登録されているが、それはEVAの特殊性からくるものである。

だが、トライデントは少年兵を使う必要などない。

『それで・・研究所の職員はどうするのですか?』

ミツヒサが聞いてくる。

少し戸惑いも見れた。

「殲滅だ。非戦闘員への無条件発砲も許可する。一人も残すな。」

何とも非情な命令だった。

『いいのか?』

シンゴがためらうように聞いてくる。

「構わん。・・トライデントに関係ない職員は早々と返されている。」

つまり、日が暮れてあたりが暗くなる時間に残っているのはそれに関係する職員と言うことだ。

「ともかく初の実戦だ。気を抜くなよ。」

『了解。』

『そんなへまはしねえよ。』

それを聞いたコウスケは頷きながら

「・・・

 あの世に行っては

 また戻る~」

などとまた歌を歌うのであった。

『今日の作戦は成功しそうね。』

それは少し低めの女性の声だった。

『長良、何言ってんだよ。』

シンゴが不機嫌そうに言う。

・・コウスケが歌をつづけたからだ。

『あなた知らないの?「アロー3」の歌って国連軍で有名よ。』

と長良は言うのであった。

彼女は長良ユキ

階級は三尉

茶色が混じった黒い髪のショートカットで目は少しきつめに見える。

体はスレンダーな体つきであった。

・・・とある部位はミサトどころかレイにも劣る。

どこかは残念ながら言えない。

コウスケと同じく国連軍から出向してきた。

出向してきた時期は日向と同じである。

NERVでは作戦局一課に所属している。

零課では第三班の班長だ。

ちなみに彼女の年齢はコウスケの三つ下である。

ミツヒサは同じ、シンゴは一つ下である。

『そうなんですか?』

ミツヒサの声はとても不思議そうだった。

コウスケの歌声は悪くはなくむしろ透き通っていて聞きやすいのだ。

さらにテンポ、音程もずれていない。

だが、歌詞が不吉すぎるのだ。

『国連軍ではHope march(希望の歌)と呼ばれてたわ。』

『希望?!絶望じゃなくてか?』

シンゴが冗談は止めろと続ける。

ちなみに敵対組織からはDeath march(死の歌)と呼ばれている。

ある組織は日本語で歌うため何かの暗号と思ったのだ。

それで解読を進めた結果、歌詞の意味を知ることになった。

その時からそのように呼ばれることになる。

コウスケが歌を歌い始めたのは三年前からだ。

『あの歌を歌ってる時の彼は最高潮に機嫌がいいのよ。・・ワンフレーズで敵機が平均して一機落ちるのよ。』

『冗談・・では無いんですね。』

『いいんじゃないか?それだけやる気があるってことだろ。』

シンゴの言葉に二人は同意する。

しかしそれは間違いであった。

コウスケは確かに上機嫌であったが、それは三人が考えているようなものではない。

コウスケが上機嫌な理由・・

それは明日にはレイから言い渡された肉禁止令がとうとう解かれるのだ。

それが楽しみでしょうがないのだ。

ちなみにレイは今、葛城家に預けてある。

レイが喜んでいたのはコウスケしか知らない。

「晴れでも雨でも

 死んでゆく~」

とコウスケは歌を止めた。

「お、そうだ。レイにも教えてやらないと」

よくよく考えてみるとレイが歌っている所を見たことが無い。

歌を知らないのではとコウスケは考えた。

「綾波家に伝わる由緒正しい歌だからな・・レイも喜ぶだろう。」

そんなわけないだろと三人はひそかにため息をつくのであった。

「よし!目標が見えてきた。全員配置はすんでるな?」

コウスケの目には緑で偽装された人工物が見えていた。

零課の隊員たちはその周りの密林に潜んでいた。

「始めよう。予定通りだ。」

・・・

 

モニタールームの前で男たちが何かを操作している。

モニターにはトライデントのデータが写っていた。

「暇だな。いつもいつもデータ採取ばかり」

「ぼやくな。」

「戦闘にもなればな、もっといいデータが取れるのに」

「しょうがないだろ。それにここはうちの特殊部隊が守ってんだ。トライデントなんて出る幕ねえよ。」

「もっといい奴いないのか?昨日は二人死んだろ。」

「明後日には補充が来る。」

すると部屋が大きく振動した。

「なんだ!」

アラームが鳴り響く。

「敵襲?!」

モニターに戦闘機が映し出された。

戦闘機は研究所に設置されている武装を破壊して回っていた。

「敵だと?!哨戒は何してたんだ?!」

「あれは・・Su-37?!」

「ということは・・ブラッディアロー?!」

Su-37を使うパイロットはコウスケ以外にいない。

なぜならSu-37自体が世界で二機しか作られていないからだ。

しかも一機は途中で装備を外されSu-35として配属された。

コウスケが乗るSu-37は2002年に一度墜落したものの原型を留めていた為、修復、改修されたものである。

もっともコウスケがもらい受けるまで誰も乗っていなかった物だが・・・

『施設内に侵入者!防御できません!』

別のモニターでは戦自のものとは違う黒いボディスーツを着た謎の集団が施設を破壊しながら走り回っていた。

隔壁は爆薬で破壊、屋内でもお構いなしにバズーカを発射する。

両手を上げている職員にも発砲していた。

うまく隠れても部屋ごと爆破される。

「研究データだけでも本部に送れ!」

施設の司令官が現れ命令を下すが

「ダメです!ネットワークが一方的に遮断されています。」

「衛星もつながりません。」

「くそ!」

司令官は悪態をつきながら考える。

何とかしてデータだけでも持ち帰らねばならない。

脱出を考えたときモニタールームのドアが爆破された。

ドアの近くにいた職員は真っ黒になり、すでにこと切れている。

司令官は胸に熱さと痛みを感じた。

それは自分が死んだことを感じさせるのに充分であった。

最後の力を振り絞りボタンを押す。

思わず笑みがこぼれるのを最後に彼は意識がなくなった。

・・・

 

「あらかた終わったか。」

コウスケはコックピットの中でつぶやく。

研究所はいたるところから火が出ている。

逃げようとして出てきた者には容赦なく機銃を浴びせた。

密林にうまく隠れてもミサイルで吹き飛ばした。

コウスケはためらっていなかった。

同じ日本人とはいえ、平気で子供を殺すような輩に持ち合わせる感情などなかった。

中には夫や妻、子供がいる連中もいるだろう。

子供が死ぬ時、自分の子供が重ならなかったのか

コウスケにはそれが理解できない。

ちなみにコウスケがそれを想像したときレイの悲しそうな目が浮かんだ。

「一足先にあの世で待ってな。」

すると通信が入った。

藤頭(とがしら)だ。ターゲットの確保に成功したぞ。』

シンゴからだった。

『こちら末弭(うらはず)です。ターゲットの破壊に成功しました。』

ミツヒサからも連絡が入った。

『緊急事態です。』

ユキからも通信が入った。

「どうした?弦輪(つるわ)。」

『自爆装置が作動しています。20分後に起爆します。』

「総員撤退!爆発に巻き込まれるなよ。」

コウスケはしばらく研究所の上を飛んでいた。

零課が無事に脱出できるか心配なのだ。

10分後わらわらと黒い集団が研究所から飛び出してきた。

中には何かを背負っているものもいた。

「無事だな。」

コウスケは愛機を研究所から離した。

さらに10分後

零課が完全に離脱した後、研究所を中心に爆発が確認された。

・・・

 

「助け出せたのはこの二人だけか。」

NERVの病院にいたコウスケは目の前で眠る少年二人を見て言う。

「後の三人はどうした?」

「二人は死んでたよ。あと一人はいなかった。」

シンゴが報告する。

「まさか・・あの研究所に?」

コウスケは嫌な想像をしたがユキがそれを否定する。

「違うわ。・・二日前に異動したみたい。」

「そうか。・・よかった。」

「それでこの二人はどうするんですか?」

ミツヒサが二人を気遣いながら言った。

なにせ体が思った以上にボロボロなのだ。

「治療は赤木に任せる・・そのあとはこの子たち次第だ・・」

・・・

 

「久しぶりの肉だ!」

コウスケはテーブルに並ぶ料理たちを見て感激する。

「レイ、ありがとう!」

コウスケは思わず目頭が熱くなった。

レイはそんなコウスケをやれやれと見ているのであった。

ある程度食事が進んだころ

「昨日の爆発は何だったんでしょう?」

とレイが言うのであった。

「昨日の爆発?」

(NERVで何かあったのか?)

「富士山の向こう側でありました。」

コウスケは当然ながら知っている。

・・・というか当事者である。

だが、それをレイに言う必要は無いと考えるコウスケであった。

「そんなことがあったのか・・NERVにいて解らなかった。」

とコウスケは答えることにした。

「・・そのせいで碇君が気絶しました。」

「は?」

近くにいて爆発に巻き込まれたならわかるが、第三新東京市には被害が無かった。

コウスケは何故としか思い浮かばない。

「アスカに蹴られて・・・」

とレイが言うが正しくない。

何故、シンジが気絶したのか・・・

爆発があった時アスカは風呂に入っていたのだが、そのままの格好でベランダに出ていたのだ。

そしてシンジが後からやってくるのであった。

それにアスカが気付きシンジを蹴るのだが、シンジは気絶していない。

床に倒れただけだった。

シンジは慌てて謝っていた。

その後、レイが来た時にアスカとなぜか床に倒れているシンジを見て、慌ててシンジの介抱したのだ。

だが、思ったよりも体が密着したらしい。

目の前には何も着ていないアスカ、密着してきているレイ

そして初めてレイが住んでいたマンションに行った時のことを思い出してしまった。

シンジは限界を突破してしまい、鼻血を噴きながら気絶してしまうのであった。

理性が限界突破するよりはましだったのかもしれない。

とにかくきっかけはアスカだが、トドメはレイであった。

「まぁ、戦自がなんかやったんだろ。」

そう言って誤魔化すことにした。

「そういや、学校はどうだった?」

と言うコウスケは何かからかうネタを探したいだけだった。

こう話せばレイはシンジと何があったのか嬉しそうに報告してくるのだ。

最初はシンジ君とはどうだと聞いていたが、レイがそれで答えるとからかわれると学習したのだ。

さんざんコウスケがからかったからである。

「・・転校生が来ました。」

「転校生?・・レイのクラスにか?」

レイのクラスは少し事情がある。

レイのクラスである2-AはEVAのパイロット候補たちが集められている。

当然NERVが介入したためだ。

そんなクラスに候補でない人が転入するということは、何かしらの介入があったということだ。

「名前はわかるか?」

「・・霧島マナ。」

(霧島マナ・・だと?!)

コウスケは驚いていた。

なぜなら戦自の研究所を襲って保護するはずだったからだ。

ふとレイの方を見ると何かをつぶやいている。

「霧島マナ・・・・ポカポカしない・・・・」

(珍しいな・・レイが人を嫌がるなんて)

実際コウスケはレイが人を嫌がるなんて見たことが無かった。

あるとしたらリツコくらいなもので、それもリツコからの嫉妬に反応していただけである。

(こりゃ、調べないとダメだな。)

霧島マナがいるということは戦自が絡んでいるはずである。

そしてレイがポカポカしないという理由も

コウスケはひそかに決心することにした。

・・・

 

コウスケの決心から二日後

「学校に来るなんて久しぶりだな。」

コウスケは第三東京市立第壱中学校を見ながら言う。

レイたちの通う学校である。

「これは綾波さん。お忙しいところすみません。」

学校から初老の男が現れた。

風格からおそらくは教頭あたりの教師であろう。

「いえ、こちらも無茶を言ってすみません。」

「いえいえ!NERVとしては当然だと思います。」

コウスケがなぜ学校にいるのか?

それはレイたちが通う学校の警備状況を知るためであった。

と言うのが表向きの話で、コウスケはレイから聞いた「霧島マナ」なる人物がどういう人かを見に来たのであった。

コウスケは教師の後について校舎内に入って行った。

・・・

 

校長から警備に関する話を一通り聞いた後、コウスケは校内を自由に見回っていた。

いたるところから学生たちの喧騒が耳に入る。

(若い力にあふれているな。)

コウスケはとても懐かしく感じていた。

セカンドインパクトが起こる前はコウスケも一介の学生であった。

もう十五年ほど前の話だ。

緑色のNERVのジャケット(NERV関係者だけがわかる)を着ているコウスケはかなり目立ったが、事前にお触れが出ていたのだろうコウスケを怪しむ人はいなかった。

時々真面目な教師に声をかけられたが、NERVの名を出すだけで簡単に引き下がった。

「あら、コウスケじゃない。」

廊下でアスカと出会った。

「よう、アスカ。」

「どうしたの?こんなところで。」

「学校の警備状況の視察だよ。」

「へ~、コウスケも大変ね。」

アスカはコウスケの言うことに疑問を持っていないようだった。

「アスカのクラスはどこだ?一番確認しなきゃならないところだからな。」

するとアスカは何かを考えているようだった。

「どうした?」

「う~ん・・行ってもいいけど・・」

アスカにしては何とも歯切れの悪い言い方だった。

「・・・まぁ、コウスケなら大丈夫かな。」

なんてことを言う。

(なんだ?何かあるのか?)

「ついて来て。」

と言いアスカは歩き始める。

コウスケもアスカの後に続くのであった。

・・・

 

「やっぱり・・わかる?」

アスカが聞いてくる。

中で何が起こっているのか知っているからだろう。

コウスケはとても冷たい空気を感じていた。

「・・・嫌な空気だな。」

(それに僅かに感じるこれは・・・)

自分に似ている

そう感じていた。

「ここよ。」

アスカが2-Aと書かれた札の前に立った。

(・・・絶対零度)

コウスケはドアの向こうから感じる冷気に対してそう評価した。

「なんなんだ?この空気は・・・」

「シンジのせいよ。」

「シンジ君?」

「それ以上は中を見ればわかるわ。」

コウスケは意を決してドアを開けた。

そして一瞬で理解する。

まず冷気の正体

それはレイだった。

窓際にいるレイが放つものだった。

レイはじっと何かを見つめている。

その視線を追うとシンジがいた。

そしてシンジにぴったりとくっつく少女が一人・・・

茶髪のショートカットにたれ目の少女だった。

(・・・あれが霧島マナだな。)

シンジはマナにくっつかれているが、まんざらでもなさそうであった。

マナはと言うと時々レイに視線を送っていた。

どうも挑発しているように見えた。

そしてレイの目が一層険しくなる。

とはいってもレイの表情を見抜けていないクラスメイト達には解らないようで、ただ単に空気で判断しているようだった。

コウスケは逃げ出したいと思ったが

(逃げるわけにはいかん・・・)

と覚悟を決めるのであった。

「よう、お二人さん。仲がいいね。」

レイは聞きなれた声を聴いて驚いていた。

シンジも同様であった。

「こ、コウスケさん?!」

シンジは明らかに動揺していた。

「あなたは誰ですか?不審者?」

マナがコウスケに向けてそう言った。

「おいおい、不審者がこんなところに来たら大変だろ。・・俺は綾波コウスケ。そこで怖い顔をしている綾波レイの保護者だ。」

と言うとシンジはレイの方を向いた。

レイはシンジの視線を感じてそっぽを向いてしまう。

(おやおや・・こりゃ、大変だね。)

後ろではレイのクラスメイト達が

「綾波さんの保護者?!」

「と言うことはNERVの偉い人だよな。」

「怖い顔って綾波さん怒ってたのか・・・」

なんて声が聞こえてきた。

(どうなってんだ?機密情報が洩れてるじゃないか・・・)

レイの保護者だってことだけで、なぜNERVの偉い人だと知られたのか?

この原因はシンジにあるのだが、そんなことはコウスケには解らない。

(・・やっぱりこの子だ。)

コウスケはマナから感じる軍人のにおいを嗅ぎ取っていた。

(しかし、シンジ・・レイというものがありながら・・・それに食い物の恨みは海より深いぞ!)

コウスケが決心してから学校に来るまでの間、日常生活でとんでもないことが起きていたのだ。

レイに原因があるが、大本はここであることをコウスケは知る。

・・・コウスケはとても不機嫌であったのだ。

「シンジ君も隅に置けないな。・・婚約者がいるのに」

とコウスケはNN爆雷を投下した。

「碇君に婚約者?!」

「いったい誰なんだ?」

クラスメイト達が騒ぎ出す。

「ちょ、コウスケさん?!」

シンジが慌てる。

「罰だよ。婚約者をほっといてるな。」

と言うがコウスケは専らマナの方に気を回していた。

(ふむ・・婚約者の話は漏れていなかったのか。レイを挑発しているからてっきりそうだと思ったんだがな。)

動揺を隠せていないマナを見てコウスケはそう思った。

「それとも嫌になったのかな?」

ちらりとレイを見るとこの世の終わりみたいな顔になりながらフルフルしていた。

目から

「嫌、捨てないで。」

とコウスケは感じ取った。

レイはマナが来てからというもののシンジに近づくことができないでいた。

いつもマナが先を越してシンジを連れて行ってしまうからだ。

シンジは断り切れずにいたのだろう。

そしてコウスケの言葉を聞いて考えたくなかったことを考えてしまったというわけだ。

つまり、シンジがレイを捨ててマナのもとに走ることを・・・

だが、ここで予想外の出来事が起きる。

「何言ってるんですか?!僕が綾波をほっとくなんてそんなことしませんよ!」

なんてシンジが叫ぶのであった。

ちなみに、ここ三日間のレイとマナに対する時間は2:8くらいである。

それをどうとるかは人によって違うだろう。

(このバカ・・俺がわざわざレイの名前を伏せた意味がないじゃないか!)

「え~!碇君の婚約者って綾波さんだったの?!」

「だから仲が良かったんだな。」

「NERVで一緒に戦うなんて素敵!」

「くそぅ。碇の奴め。」

なんかやっかみも聞こえた。

(もう、なるようになれ・・・)

「そういうわけでシンジ君はあきらめたまえ。そこの少女。」

そしてコウスケはマナだけに聞こえるように

「この後、屋上に来れるかな?霧島マナさん。」

マナは少し驚くが

「そんな・・・私は遊びだったのね。」

と教室の外に駆け出して行った。

(大した演技だな。)

「誤解だよ!マナ!」

とシンジもついていきそうになるが

「嫌!行かないで!」

とレイがシンジにしがみついた。

心なしか目も潤んでいた。

(ナイスだ!レイ。)

レイは別にコウスケの手伝いをしたわけではない。

本当にシンジに行ってほしくなかっただけである。

コウスケの「嫌になった」発言が思ったよりもレイに響いてしまったのだ。

「それじゃ・・ごゆっくり。」

コウスケは教室を後にする。

「・・なんか引っ掻き回しただけね。」

質問攻めにあう二人を見ながらアスカはつぶやいていた。

・・・

 

「それでご用は何ですか?」

マナがコウスケに言う。

マナとコウスケは学校の屋上にいた。

「なに、簡単なことさ。・・戦自の霧島マナさん。」

マナは警戒していた。

「言っとくが変なまねはよせ。・・あんたの護衛はいないんだからな。嘘だと思うなら確認してみろ。」

マナは通信機を出すがすぐにしまった。

「本当みたいね。」

「四日前に比べれば大したことなかったがな。」

マナは訝しげにコウスケを見ながら

「四日前?」

なんて聞いてくるのだった。

「戦自の研究所の方がまだ手ごたえがあったよ。」

とはいっても零課に被害はない。

皆無傷で帰還したのだから。

「・・・あなただったのね。」

マナはコウスケを仇のように見てくる。

「そこの職員はどうしたの?」

「皆殺しだ。誰一人、生かしてない。」

するとマナは殴りかかっていた。

コウスケは拳を避けるとマナの足を払った。

マナはそのまま転んでしまう。

マナが振り返るが目の前にグロック17が突きつけられる。

マナの両手は下についており、すぐに行動ができなかった。

「いきなりひどいな。」

(無理やり連れていくのはあんまり気が進まないけどな・・・)

「あんたが・・・ムサシとケイタを・・・」

マナはキッと睨んでくる。

(ん?ムサシとケイタ?)

「・・・ムサシ・リー・ストラスバーグと浅利ケイタのことか?」

「・・・そうよ。」

「その二人ならNERVで保護している。」

マナは驚きで目が開いていた。

「今、皆殺しにしたって・・・」

「職員はな。・・子供たちは保護した。」

マナは黙ってしまう。

おそらく信じていないのだろう。

「君には選択肢がある。」

(嫌な役だな・・・)

と思うがコウスケは進めることにする。

「一つはこのまま戦自に帰る・・この場合は死ぬな。」

何のために来たのかはいまだ不明だが、作戦に失敗した少年兵がどうなるか簡単にわかる。

マナが顔をしかめる。

「一つはこのまま逃亡する・・この場合も戦自に捕まって終わりだな。」

いくら訓練を受けたとはいえ相手はプロだ。

そう簡単に逃げられるとは思えない。

「一つは俺とNERVに来る。・・君が心配する二人にも会える。」

(出来ればこれを選んでほしいな・・そっちの方が楽だ。)

「NERVに言った途端に捕まるなんてこともあり得るでしょ。」

マナが言う。

「それは俺がさせない。」

「あなたにそんな権限有るの?」

明らかに小ばかにした態度だった。

「いいだろう。」

コウスケは空いている手で携帯電話を取り出した。

マナは何をしたいのかわからないようだった。

『私だ。』

「碇司令、最後の子供の確保に成功しました。」

「碇司令って・・碇ゲンドウのこと?」

マナがコウスケに聞いた。

「それ以外誰がいる?」

『そうか、NERVに連れてこれるか?』

「このままだと無理やりになりますよ。」

『だとしても構わん。』

マナはそんなゲンドウの声にやっぱりと言いたそうであった。

『治療を受けさせねば、体がもたないだろう。』

と言うゲンドウの言葉にマナが驚く。

「そうですな。」

『こちらからも朗報だ。二人が目を覚ました。』

コウスケはちらりとマナを見て

「二人とは・・ムサシ・リー・ストラスバーグと浅利ケイタですな。」

『それ以外誰がいる。』

「生きてるの?二人が・・・」

「それは良い知らせですな。」

『君からもよい知らせが来るように期待している。』

「了解です。碇司令。」

コウスケは電話を切った。

「さぁ、どうする?霧島マナ君。」

・・・

 

「ムサシ・・ケイタ・・」

「霧島・・」

「マナ・・」

マナは泣いていた。

マナはコウスケについていくことにし、コウスケの案内で二人がいる病室に通されたのだ。

二人は清潔なベットの上に腰かけていた。

「良かった・・・」

(よほど会いたかったんだな。)

しばらくコウスケは感動の再会を眺めていたが、やるべきことを思い出した。

「さて、そこまでにして」

三人がコウスケを見つめてくる。

「俺は綾波コウスケだ。解っていると思うがNERVの関係者だ。」

少年たちの方は警戒しているようだった。

「君たちには選択肢がある。」

(またこれかよ・・・なんか嫌だな・・・)

「一つ、このまま戦自に帰る。」

三人が強張った。

「一つ、NERVに残る。」

やはりこの言葉にも体を強張らせる三人

「一つ、他人として暮らす。」

これには驚いたようだ。

「そんなことできるのか?」

ムサシが口を開いた。

「出来る。ここの設備を使えばな。それに日本政府に対して我々はすでに切り札がある。なんなら君たちが死んだことにすることもできる。」

MAGIを使えばそんなことは造作もないことだった。

「NERVに残る場合はEVAに乗るんですか?」

ケイタが言う。

「それはない。」

EVAの正体を知っているコウスケはそう答えるしかなかった。

第一、そんなことをしたら三人を何のために救出したのかわからない。

「まぁ、体が完治するまではここにいてもらうがな。それまでに決めてくれればいい。」

「いいのか?」

ムサシが疑うように言った。

「そのために君たちを保護したんだ。じゃなきゃ戦自に送り返してるよ。時間はあるからしっかり考えてくれ。」

(出来れば他人として暮らしてもらいたいんだがな・・・)

だが、ゲンドウから子供たちにまかせると言われた手前、コウスケが勝手に判断できることではない。

「積もる話もあるだろう。ゆっくりと休んでくれ。」

・・・

 

まだ早朝と呼べる時間にコウスケは駅のプラットホームにいた。

コウスケの前には保護した子供たちがいた。

三人はリツコの尽力と若い生命力で尋常じゃない回復を見せたのだ。

既に列車は来ており、いつでも出発はできるようになっている。

「お世話になりました。」

マナがぺこりとお辞儀をする。

少年たちも同じくお辞儀をする。

「別に構わん。・・それよりもこれでいいんだな?」

「はい。」

マナが答える。

「これに乗ったら、君たちは別人として暮らすことになるが・・・」

「別にいい。」

「僕もいいです。」

ムサシとケイタが言う。

「そうか・・・」

コウスケは三人の目を見てその覚悟があることを知る。

「しばらくはNERVの監視がつく・・君たちが安全だとわかるまではな。」

「戦自にいた時よりはましだ。」

「そうだね。」

「泥棒の心配もなさそうだし。」

ムサシ、ケイタ、マナがそう言って同意してくれた。

(心配なさそうだな・・あとは俺たちの仕事だ・・)

まだこの三人の安全は確保されたわけじゃない。

一応死んだことになっており、別人として戸籍は登録してある。

この時日本政府とひと悶着があったそうだが、ゲンドウと冬月がトライデント計画を盾に迫ったため一応解決したようだ。

今頃、戦自では大問題になっているだろう。

だが、それでも油断はできないのだ。

そう思いコウスケは一つの通帳を渡した。

「これは?」

マナが通帳を見ながらコウスケに聞いた。

「君たちが大学を卒業できるくらいまでの金だ。持って行け。番号は今日の日付だ。足りないようならそこにある番号に連絡くれれば俺とつながる。」

「そんな大金もらえるかよ。」

「そうですよ。そこまでしていただかなくても・・・」

ムサシとケイタが通帳を返そうとするが

「持って行け。君たちが餓死しましたなんて悪夢だからな。」

と言うコウスケに三人はしぶしぶ通帳を受け取った。

「時間だ。・・達者で暮らせよ。」

ムサシとケイタは列車に乗り込んだ。

マナは少し戸惑いながら

「コウスケさん。綾波さんとシンジ君に謝ってもらえますか?」

「わかった。ちゃんと伝えておくが、シンジ君はダメだ。」

「なんでですか?」

「あいつはレイを泣かせた。これは重罪だからな。」

(ついでに俺の飯の分もだけどな。)

そう言うとマナはくすりと笑った。

「・・そうですね。女の子を泣かせるのは重罪ですね。」

「お前さんも二人が泣かせるようなことがあれば、いつでも連絡していいぞ。相棒と一緒に駆けつけてやる。」

「解りました。その時は甘えさせてもらいます。」

と言いマナは列車に乗り込んだ。

列車が出発する。

たちまち小さくなって見えなくなっていった。

「・・・これでいいんだろ?加持。」

どこからともなく加持が現れた。

「ああ、ありがとな。綾波。」

「まったく、体よく利用しやがって・・・」

「それについては謝るよ。」

加持が煙草を一本取り出した。

コウスケはそれを受け取り火をつける。

「これがばれたら・・・」

「解ってるよ。」

加持も煙草を吸っていた。

「・・・葛城を泣かせるなよ。」

「女の子を泣かせるのは重罪なんだろ?」

「そう言うことだ。」

これからあの三人には何があるだろうか

列車は出発した

どんなことがあっても止まることはない

出来れば三人に幸が大からんことをコウスケは祈らずにはいられなかった。




鋼鉄編ですね。
こんな形になりました。
・・・
マナのキャラがいまいちつかめなくて大変でした。
ゲームやったことないので・・・
シンジ派手に自爆
そこを書くとき私は笑いながら書いてましたね。

研究所あたりの描写はちゃんとモデルがあります。
何かはおそらくわかるでしょう。

今回はおまけが二つあります。
一つはレイ、もう一つはコウスケです
では、どうぞ

おまけ
レイのクラスは静寂に包まれている。
いや、一つの歌声に支配されている。
「なあ、シンジ。どうにかならへんか?」
「そうだよ。声はきれいだけど・・・」
トウジとケンスケがシンジに詰め寄る。
二人が言うことはシンジにもわかる・・と言うかクラス全体の意見でもある。
「どうして僕に言うのさ。」
とシンジは抵抗するのであった。
「お前、婚約者だろ?」
「そや、シンジが言うのが一番いいに決まっとるわ。」
シンジとレイが将来を約束した間柄と言うのは学校全体で知られていることだった。
「解ったよ・・・」
シンジは覚悟を決めて婚約者のもとに行く。
「あのさ・・綾波・・」
「何?碇君。」
「その歌なんだけど・・・」
「特務一尉に教えてもらったの。綾波家に伝わる由緒正しい歌なの。」
この時シンジはコウスケを恨んだそうだ。
同時刻にコウスケがくしゃみを三回ほどしたとの記録がMAGIに残されている。
「学校では止めた方がいいよ。」
「どうしてそういうことを言うの?」
「いや、なんか怖いし・・・」
レイはそんなシンジの言葉を聞いて
「・・そう。」
そういってレイは何かをあきらめるような雰囲気になる。
碇君が望むなら・・・
こんな所だろう。
そんなレイを見てシンジは何とも言えない悲しさに包まれる。
マナが襲来した時レイに悲しい思いをさせたことをシンジは負い目を感じており、レイにあまり強く言えなくなっていた。
なぜそんなことをシンジが知っているかと言うと、マナが来てからレイがどうなっていたのかをコウスケに聞かされたからである。
食事に関することもついでに教えたようだ。
後半は恨むような声だったとシンジ本人が語っている。
「・・綾波が歌いたいんならいいんじゃないかな。」
後ろではクラスメイト達が一斉にため息をついていた。
もはや彼女を止められる者はいなかった。
するとレイがじっとシンジを見つめてくる。
「な、何?」
「歌って。」
シンジにはレイが何を言っているのかわかる。
「綾波家に伝わる歌なら碇君も知らないといけないわ。」
遠回しに一緒に歌ってほしいと言っているのだ。
そしてシンジはわかっていた。
ここで拒否すればレイが嫌いなのねと言ってくることを
シンジに選択肢はないのだ。
「・・・解ったよ。でも歌がよくわからないから、あとで教えてね。」
と言うほかなかった。
「いいわ。」
レイが喜んだのは言うまでもない。
そしてレイは歌う。
「死神は~・・・」
嬉しそうな表情とは裏腹にとても不吉な歌詞であった。
この歌を歌えるのはレイの他にはもう一人の綾波だけである。
この後、第三東京市立第一中学校で「2-Aのセイレーン」が怪談話として長く語り継がれることになる。
残念ながらレイのクラスの希望の歌にはなりえなかった。
この歌で二人がデュエットをしたかは確認が取れていないが、シンジが完璧に覚えるまでレイは根気よく教えたそうだ。

おまけ2
加持はPCの前にいた。
モニターには
「SS級」
と映し出されている。
これは極秘中の極秘情報として扱われるものだ。
資料として残されるが、持ち出しや声を出して読むことは禁じられている。
トライデント計画が破たんした時にゲンドウから最上級のカードを加持はもらっている。
加持は黙ってその資料を読み始めた。
・・・

○月×日
今日は碇司令から呼び出しを受けた。
どうせ厄介ごとだろ。
と思っていたらやっぱり厄介ごとだった。
しかし、戦自もとんでもないことしでかしてくれたね。
トライデント?
そんなもんただのおもちゃだよ。
デカけりゃいいなんて馬鹿げた話だ。
しかも子供を乗せている?
EVAに対抗したいんだろうけど無理な話だよ。
五人中二人は救出できた。
二人は残念な結果だったけど・・・
あと一人はどこに行ったのかな?
そう言えば、明日はいよいよ解禁だ。
ここ一週間ほど耐えたかいがあったよ。
早く明日になってほしい。

○月×日
昨日救出した子供たちは命に別状はないらしい。
今は病院でぐっすり眠ってる。
おそらくレイたちと同じくらいの年なんだろ。
赤木が任せろと言ってたし、任せるしかないな。
夕食は待ちに待った肉料理だった。
もう、嬉しくて泣いちまったよ。
レイは料理するのが楽しいらしく、俺が当番でもほとんど自分がやると言って聞かない。
結構、頑固なんだな。
そういやレイが爆発について聞いてきたな。
誤魔化したけど当事者がここにいるって言ったらどんな顔になっていたかな?
・・・興味深いけど教える必要はないな。
あとレイから消えた一人である霧島マナの行方をつかめた。
まさか学校に来るなんてな。
大方、戦自の差し金だろ。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
何とか保護するまでだからな。
そういや、驚くことにあのレイが人を嫌っていた。
ポカポカしないなんて言ってたもんな。
その相手が霧島マナなんだから
いったい何があったのか
これも含めて調査が必要だな。
・・・
うん、レイの料理はうまい。

○月×日
司令から許可はとったし、明後日実行だ。
学校か
懐かしいな
今はどういう風になってるんだろ。
レイに聞いてもシンジのことばっかりだし
からかうネタに困らなくていいけど・・・
普段レイって学校でどうしてるんだろ?
なんでだろうか
シンジに引っ付いてるイメージしかない。
レイは知識だけは俺よりはるかに上だからいいけど、シンジはそうじゃないだろ。
しかもNERVもあって忙しいし。
学力が落ちたら大変だな・・・
そこは葛城に任せるか。
今日の夕食・・・
めちゃくちゃ苦かった。
レイが作ってくれたんだが
こんなことなかったのにな・・・
でも別に食べられないわけじゃないし、それにレイが作ってくれたものだからな・・・
何があったか聞いてもしゃべらないし
ポカポカしないと何度もつぶやいてたな。
・・・
シンジ、何かしたか?

○月×日
とうとう明日だ。
NERVでいろいろ手続きがあったがすべて終わった。
これでようやく霧島マナなる人物とレイが不機嫌な理由がわかる。
・・・今日は一段とすごかったな。
見た目は普通なのに食べた瞬間甘い、辛い、苦いが一斉に襲い掛かってきたからな。
どんな事すればああなるんだ?レイ・・・
まぁ、MCに比べればかわいいもんだ。
・・・あれは兵器だ。誰が何と言おうともあれは兵器だ。
レイはぶつぶつ何かを言ってた。
唇から読み取れたものは
キリシマ、イカリ、ポカポカ、イヤ
と言う単語だったな。
あと壁にガンガンぶつかってたし
・・キーマンはシンジだな
あいつめ・・・
食い物の恨みは恐ろしいことを教えてやらんとな。
ついでにレイを泣かせた罰もだ。
・・・
取りあえず明日行くんだから、最終的な判断はその時だな。

○月×日
レイが通う学校に行った。
やはり霧島マナはターゲットの一人だった。
だが、それ以上に収穫があった。
レイが不機嫌な理由だ。
ありゃ、すごかったよ。
よくあんな空気に触れて息ができるな。
でもクラスメイトはレイの表情に気づいてないんだな。
薄情な奴らだ。
わかるだろ!
目が2㎜つり上がってたぞ。
眉毛も3㎜つり上がってたし
あれほど怖いものはないぞ!
・・・結局シンジのせいだった。
あいつめ・・・
しかも隠してたのをばらすし
・・・
まぁ、いいか。
俺の飯を台無しにしてくれた罰だ。
ついでにレイを泣かせた分もな。
それに霧島マナも保護できたし。
・・・今日は久々にまともな食事だった。
少し甘かったけど許容範囲だろう。
レイも機嫌がよかったし・・・
レイに歌も教えてあげた。
喜んでたな。
初めての歌だって
そう言われると俺も嬉しいよ。
・・・

加持はふっとため息をついた。
「綾波が不機嫌だった理由はこれだったのか・・・」
戦自の研究所を襲ったあたりからコウスケは妙に機嫌が悪かった。
理由は食い物の恨み
・・・
確かにSS級かもしれない。
NERVのVIPがこんなことを書いているなんて知られたら・・・
そもそも何故こんなものが存在するのか
それは作者がただやりたかっただけなのだ。
ただ、作者ですら何故こんなものを書いたのか不思議でならない。
「見なかったことにするか。」
それ以降その資料を見たものはいない。
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