「レイ、フォースチルドレンが決まったよ。」
コウスケは朝食を食べながら、目の前でコウスケと同じくらいの量を食べるレイに話しかけた。
「そうですか・・・」
レイは心なしか俯いて見えた。
「・・本人がやるって言ったんだ。はぁ~・・・」
ため息をつくコウスケをレイが心配そうに見てきた。
「ありがとな、レイ。だが、俺よりも鈴原君のことを頼む。うまくサポートしてやってくれ。」
「・・・私にできるでしょうか?」
レイはコウスケの言葉に戸惑っているようだった。
「大丈夫だよ。」
「でも・・・」
「デモもストライキもない。お前さんなら大丈夫だ。」
レイはきょとんとしていた。
よくわかっていないのだろう。
だが、コウスケはレイが他人を心配するのをよく見ていた。
そして様々な報告書からコウスケはトウジはそう言ったことに気付る少年であると思っている。
・・・恋愛ごとに関しては鈍感だが
そのためレイが心配しているとトウジが感じるだけでも幾分かは違うであろうと思っているのである。
「そろそろ時間だろ。シンジ君やアスカが待ってるんじゃないか?」
時間を見るとレイが登校する時間になっていた。
とはいっても充分に時間はある。
これはコウスケが約束の時間の10分前には必ず到着するようにしてるのをレイが無意識のうちに真似しているのだ。
「じゃあ、気を付けて行って来い。」
「はい、行ってきます。」
とレイが玄関を出ようとしてドアが開いたときに隣から声が聞こえた。
声は葛城家の前からした。
「おはようございます。今日は葛城三佐にお願いに上がりました。」
いたって真面目な声であった。
「自分を・・自分を・・・」
途中で葛城家に入ってしまったので肝心な部分が聞こえなかった。
「あれは・・相田君だよな。」
「はい。」
レイはなぜケンスケがここにいるのか不思議でたまらないようだ。
コウスケは葛城家の前に移動した。
後ろからレイもついてくる。
葛城家の玄関には直角で頭を下げるケンスケがいた。
シンジやミサト、アスカは困っていた。
ちなみにミサトはNERVの制服であった。
松代に参号機を受け取りに行くからだ。
「朝早くどうしたんだ?相田君。」
「おはようございます、綾波特務一尉。今日はEVANGELION参号機のパイロットに志願したくて参りました。」
(なんで相田君は参号機が来ることを知ってるんだ?)
後で情報漏洩の出所を調べさせるかとコウスケは考えた。
「ほう、EVAのパイロットになりたいのか。」
「はい!」
ケンスケが目を輝かせながら返事をした。
「なぜ、EVAのパイロットになりたいんだ?」
「人類の平和のためにお役に立ちたいのです。」
ケンスケの言うことは至極立派なものだった。
だったが
(英雄願望か・・)
コウスケはケンスケの目に宿る輝きからそう判断した。
「なるほど君の意気込みはよくわかった。」
「ちょっと!コウスケ君?!」
ミサトが咎めるように言った。
パイロットの選出はマルドゥック機関・・とは名ばかりの実質NERVの首脳部が行うのだ。
いくらゲンドウに近いコウスケとはいっても勝手にパイロットを決めれるほど権限があるわけではない。
無論ミサトにもない。
真実を知るミサトはそれを言いたいのであった。
ケンスケはコウスケの言葉に目がさらに輝いていた。
「ちょっと大人げないことをするぞ。」
皆が疑問符を浮かべるがすぐにその意味を知ることになる。
コウスケは全神経を目の前の少年‐相田ケンスケに集中させた。
それは辺りを包み込み、殺伐とした嫌な緊張感を出していた。
所謂、殺気と言うやつだ。
シンジとアスカは普段見ない無表情のコウスケに怖気づくが、それでも表立って表情を変えることはなかった。
ミサトはコウスケの殺気に反応したが、何をしたいのかわかったのだろう。
妙にリラックスしていた。
レイは少しつらそうにコウスケを見ていた。
おそらくコウスケがこんなことをしたくないというのを感じ取ったのだろう。
コウスケの殺気を浴びるケンスケは完全に怯えきっていた。
数歩後ずさりをしてそのまま尻餅をついてしまう。
「あ・・・・ああ・・・・」
ケンスケは言葉を発することができなかった。
コウスケはゆっくりと神経をいつもの状態に戻した。
辺りを包んでいた緊張が解けていく。
「すまないな、相田君。」
コウスケはケンスケの手を取って立ち上がらせた。
「だが、覚えておいてほしい。EVAのパイロットになるということはこれ以上に恐ろしいことだ。」
(それを鈴原君が味わうのか。)
「お、俺は・・・」
ケンスケは走ってどこかに行ってしまった。
シンジが追いかけようとするがコウスケが止めた。
「シンジ君、今はそっとしておいてやれ。」
「にしてもすごかったわね、コウスケ。」
アスカが先ほどの感触を思い出しながら言った。
「40%くらいだぞ?」
「あれで?!」
「もっとすごいのを浴びた人がいるよ。」
と言ってコウスケはレイの方を見た。
レイはこくりと頷いた。
「大丈夫だったの?レイ。」
アスカがすごく心配そうな顔でレイに訪ねた。
「大丈夫だった。特務一尉は演技だったから。・・でも、怖かった。」
「そうだよな、最後にシンジ君を呼んでたし。」(第17話参照)
と言いながらコウスケはニヤリを発動させた。
「あら、そうなの?いいわね、シンちゃん。命が危ないって時に呼ばれるなんて相当思われてる証拠だわ。」
ミサトもニヤリとさせながら言った。
「それに俺がシンジ君を連れて帰ろうとしたらレイが引き留めたからな。シンジ君だけな。」
「それじゃ、コウスケが帰った後はお楽しみだったのかしら?」
アスカも乗ってきたようだ。
顔がにやついていた。
「そ、そんなわけないだろ?!アスカ!」
シンジが真っ赤になりながら全力で否定していた。
実際、彼らはコウスケが帰ったあと一緒にベットで寝ただけだ。
文字通り寝ただけ。
ちなみにシンジは床で寝ると言ったのだが、結局レイに押し切られる形になった。
レイよりも寝つきが悪かったのは言うまでもない。
レイはと言うと
「碇君と一緒に寝る・・・それはとても気持ちのいいこと。」
なんて言いながらぽっと赤くなっていた。
「ほら、レイだって言ってるじゃない。」
「あ、あやなみ~・・・」
シンジは情けない声を出していた。
コウスケは笑いを堪えている。
「ねぇ、コウスケ君。さすがにやばくない?」
ミサトがものすごく真面目に言ってきた。
「何が?」
「シンジ君、寝たんでしょ?レイと・・・」
「今だって寝てるじゃないか。」
レイの夜中の奇行は治らなかった。
最近はシンジのところに行くことが多いようでコウスケはレイが寝ぼけてもシンジの気配を察知しているのではと考えている。
「それはただ寝てるだけじゃない。」
「レイは事実しか言ってないよ。」
「だからやばいんじゃない。」
ミサトはあれこれ考えているようだ。
(監督責任とか考えてるんだろうな。)
ふと見るとアスカはシンジを問い詰めていた。
「アスカ、そこまでにしてやれ。それにレイは事実しか言ってないよ。本当にただ寝ただけだ。」
(それにそんなことになったら、多分レイが嬉しそうに・・・いや、困惑しながら言ってくるだろうよ。・・直球でな。)
「だからそれが・・・ああ、そういうことなの。」
どうやらアスカはわかったようだ。
「それなら早く言いなさいよ!バカシンジ!」
「最初からそう言ってるだろ?!」
「レイも紛らわしいこと言ってんじゃないわよ!」
レイは疑問符を浮かべていた。
「なんだ?アスカは何を想像したんだ?」
「何って・・・」
と言うとアスカは真っ赤になっていった。
「アスカもそういうお相手が欲しいのかな?」
その時アスカがちらりとコウスケの方を見るのをレイは見逃さなかった。
「な、そんなんじゃないわよ!」
「シンジ君とかどうだ?」
コウスケはわざとシンジの名前を出したのだ。
するとレイはシンジの腕に抱き付いた。
「ダメ!いくらアスカでも許さない。」
「あやなみ?!」
レイのただならぬ声にシンジが驚く。
「碇君がもう私から離れないようにする!だから・・・」
レイから並々ならぬ決意を感じる。
(マナがいたときの影響だな。・・予想通り)
「取るわけないでしょ?!」
そんなレイにアスカは怖気づきながらも言い返した。
「綾波!・・痛い、痛いよ!」
どうやらレイの手に力が入り過ぎたようだ。
シンジがものすごく痛そうにしている。
「監督責任・・・ああ・・・減俸・・・」
ミサトはまだあれこれ考えている。
(楽しい・・実に楽しいよ。そう思わないか?ペンペン。)
いつの間にか玄関に来ていたペンペンは「クェ」と鳴き、冷蔵庫(ペンペンの部屋)に戻って行った。
そんなペンペンに満足しながらコウスケは時計をみた。
時刻は8:30を示していた。
「・・ああ!お前たち時間!」
「嘘!」
「不味いよ!」
「走っても間に合わないわ。」
「リツコに怒られる~」
一人かなり情けないことを言っているが、ともかく時間は大幅に過ぎていた。
「仕方ない、お前たち車に乗れ!俺が送る!」
コウスケたちが住むコンフォート17にはNERVの非常用の車があるのだ。
コウスケとミサトのIDカードで使用できる。
「葛城も急げよ!」
と言ってコウスケは三人を連れて駐車場に向かうのであった。
・・・
「よう、綾波。」
「なんだ、加持か。」
コウスケはNERVの喫煙所で加持と出会った。
「子供たちが遅刻しそうになったんだって?」
「耳が早いな。」
「じゃなきゃ、やってられないよ。」
加持の仕事を考えればこれくらいの情報収集なんてお手の物だろう。
「しかも、校内の駐車場でドリフトを決めたらしいじゃないか。」
コウスケがやったことはそれだけではない。
MAGIを使い信号を強制的に青に変更までした。
これを職権乱用というだろう。
ちなみに一人の女性が赤信号にやたらと止められ、遅刻したのは余談だ。
「ばれなきゃ問題ない。」
ばれても始末書で何とかなるだろうとコウスケは考えている。
「で、用件はなんだ?」
「なんだ、ばれてたか。」
加持が両手を上げてひらひらさせていた。
「当たり前だ。」
「・・フォースチルドレンは決まったのか?」
「決まったよ。鈴原君だ。今日、正式に通達されるよ。」
「そうか。」
加持が煙草を取り出した。
コウスケもつられて取り出す。
「妹をNERVの病院に移してほしいだとさ。もう一度考え直せと言ったんだがな。」
「妹思いのいい兄じゃないか。」
「何言ってんだよ。」
加持を見るとどうやらコウスケの言いたいことがわかっているようだった。
「解ってるならそんなこと言うなよ。」
「それもそうだな。」
コウスケが危惧すること
それはトウジの妹‐鈴原サクラのことだった。
NERVとしてみれば別にどうということはない。
むしろそれくらいの条件は飲んでも痛くはない。
だが、敵対組織からしてみればNERVを叩くチャンスでもあるのだ。
NERVが妹の転院を条件にEVAのパイロットにした。
本人の希望と言ってもそれで脅したと解釈もできるからだ。
いや、そのように解釈してくるに違いない。
NERVに友好的な組織などほとんど無いに等しいのだから。
それでもNERVが保ってられるのは国連の特務機関、人類補完委員会の下部組織と言うところが大きいだろう。
「思い通りにならない・・それも人生だな。」
コウスケは煙を吐き出すが、今日の煙は妙に白く濁っていた。
・・・
翌日
コウスケは自分の執務室で決裁仕事に追われていた。
「これは三課のじゃねえか。何でここにあるんだよ。」
と言って三課行と書かれたケースに書類を放り込む。
横には一課行と書かれたケースもある。
「最近たるんどるな。ニアミスが多いぞ。」
他の課の書類が入っていたり、誤字、脱字が有ったりなどするのだからコウスケとしてはたまったものじゃない。
「これもだ。まったく・・・」
今度は要訂正のケースに放り込む。
脱字が見つかったからだ。
この場合、訂正しない限り許可は下さないようにしている。
「そういや、今日だな。起動実験。」
コウスケは昨日の夜のことを思い出した。
レイはトウジからEVAに乗るのはどういう感じなのかを聞いてきたと言っていた。
おそらくシンジやアスカにも聞いているのだろう。
(そうだよな。怖いのが当たり前だよな。)
既にトウジは松代にいる。
今頃はEVAに乗っているはずだ。
「しかし、EVAを五機も独占か・・・」
ふと先日見た初号機が脳裏に映し出された。
使徒を引き裂き咆哮する初号機
初号機単独でこんなに力があるのにそれがあと四機もある。
純粋な軍事力なら世界でトップだろう。
「まぁ、碇司令にそんな気が無いのが幸いだな。」
すると内線が鳴りだした。
「はい、綾波です。・・なに?!松代で爆発事故だと?すぐに行く。」
・・・
コウスケが発令所に行くと慌ただしく動き回る職員たちが目に入った。
『松代にて爆発事故発生。』
『被害不明。』
『救助及び第三部隊を直ちに派遣。戦自が介入する前にすべて処理しろ。』
今だ状況報告がされておらず、爆発以外の情報が入ってこなかった。
「事故現場に未確認移動物体発見。」
「パターンオレンジ。使徒とは確認できません。」
(参号機が暴走しているのか?)
暴走と言えば初号機だが、他のEVAにも無いとは言えないだろう。
それにトウジはぶっつけ本番でEVAに乗ったのだ。
(それとも使徒が松代を襲ったのか?)
まだ実戦配備されていない参号機を狙ってきた
使徒にそんな知恵があるとは思えないが、逆にあり得ないと切り捨てることもできない。
使徒とは確認されていないが、パターンオレンジは先日の使徒もそうだったので使徒ではないと言い切れない。
「綾波特務一尉。指揮を任せる。」
ゲンドウが厳かに告げた。
「了解。総員、第一種戦闘配置。」
「総員、第一種戦闘配置。」
「地対地戦、用意。」
「EVA全機発進。迎撃地点へ緊急配置。」
オペレーターたちが次々と指令を下した。
コウスケはそれを黙ってみていた。
・・・
時間が幾ばくか過ぎたころ
「野辺山で映像をとらえました。主モニターに回します。」
前のモニターが映し出される。
「「おお・・・」」
職員が一斉に声を上げた。
モニターにはゆっくりと歩く参号機が映し出されていた。
「活動停止信号を発信しろ。エントリープラグを強制射出だ。」
コウスケの指示に伊吹が即座に対応した。
参号機のハッチから煙が上がるが、エントリープラグは半射出のまま出てこなかった。
何か粘着質な糸のようなものが見えた。
(暴走ではないな。)
「ダメです。停止信号及びプラグ排出コード認識しません。」
「パイロットは?」
「呼吸、心拍の反応は有りますが、おそらく・・・」
日向がモニターの情報を報告するが顔色があまり良くなかった。
「使徒に乗っ取られたか・・・」
EVAが使徒に乗っ取られるなんて予想外にもほどがあるだろう。
しかもパイロットが乗っているときに
正直気分はよくなかった。
だが
「碇司令、目標を第十三使徒と識別してよろしいですね?」
皆がコウスケの言葉に驚き一斉に振り向いてきた。
「・・・わかった。EVANGELION参号機は現時刻を持っては破棄、目標を第十三使徒と識別する。」
ゲンドウの声はいつもより低かった。
「しかし・・・」
日向が戸惑うように言った。
「予定通り野辺山で戦線を展開する。」
オペレーターたちはコウスケの命令を聞いて渋々ながら従った。
・・・
「目標接近。」
「地上戦用意。」
使徒は着実に近づいていた。
既に迎撃の準備はできている。
EVAはパレットガンを持った初号機とソニックグレイブを持った弐号機を組ませて前衛に、零号機はライフルを持たせ二機の後ろに展開させた。
『使徒?!これが使徒ですか?』
シンジが使徒を見て驚いていた。
「残念だが、そうだ。」
この時のコウスケの顔を見たものは誰もいない。
コウスケはこの時無表情であった。
いや、レイが見たならばその表情に隠される苦い思いを感じ取ったかもしれない。
『目標って・・トウジのEVAじゃないか・・・』
『使徒に乗っ取られるなんて・・・』
レイの声は聞こえないが、その沈黙がレイの思いを感じさせる。
コウスケは使徒を見る。
参号機の黒いボディーが嫌に禍々しく見えた。
戦闘開始まで多くは無いが時間はあった。
『・・殲滅するんですか』
シンジの声は普段より低くそら恐ろしかった。
「そうだ。」
コウスケの声もいつもとは違う冷たいものになってしまう。
『でも、トウジが乗ってるんでしょ・・・』
「それは戦闘拒否と受け取っていいのか?」
『嫌ですよ!』
「わかった。」
コウスケはゲンドウの方に振り向いた。
「・・・・碇司令、ダミーシステムの使用許可を」
それに即座に反応したのはレイだった。
『特務一尉、それは・・・』
「シンジ君が嫌がるんだ。しょうがあるまい。」
逆に言えば他の二機も拒否するなら使うと脅しているようなものだ。
だが、シンジの気持ちもわかるのだ。
それでもやらねば人類に未来はない。
そんな思考の悪循環にコウスケの心はますます暗くなっていく。
「許可する。」
ゲンドウが苦みを含みながら言う。
いつになくサングラスが光っていた。
ゲンドウから許可をもらったコウスケは伊吹にとあることを訊ねた。
「伊吹二尉。ダミーシステムを使った場合、鈴原君はどうなる?」
「おそらく・・・」
(死ぬか。)
顔を伏せる伊吹を見ながらコウスケはそう思った。
「いつでも使えるようにしておけ。」
と言って再び使徒を見た。
ふとコウスケは気になった。
それはこれ見よとばかしに半射出されたエントリープラグである。
(エントリープラグは半分出てる・・・・半分は?)
コウスケは参号機のエントリープラグを見てなぜか引っ掛かりを感じた。
(・・・・・・そういうことか。)
「皆に朗報だ。」
コウスケの言葉に皆が何を言っているんだという顔になっていた。
これから子供一人を殺すって時になんて不謹慎なと考えたのだろう。
「鈴原君はただ捕まっているだけだ。」
「なぜそう判断できるんですか?」
日向が皆を代表して聞いてきた。
「仮に鈴原君が使徒となっていた場合、エントリープラグが半分だけ射出されるか?それにEVAを使う意味もない。」
人と同じサイズになったのならそのままでNERVに潜入すればいい。
そっちの方がはるかに効率的であり、またEVAに人のような小型の目標をとらえるのは大きさの問題で難しいのだ。
実際、第十一使徒は細菌サイズでNERVに潜入したのだから
それにトウジ自身に寄生したのであれば、それは強固になり射出自体できないだろう。
あるいは完全に射出されて救助された後に機会を窺えばいい。
結果で言うと使徒はEVA本体に寄生し、トウジは捕まっているだけ
そういう判断をコウスケは下したのだ。
『じゃあ、トウジは助けられるんですね?』
シンジがわずかな希望を持って聞いてきた。
「そう言うことになるな。みんな気合を入れろ!」
とコウスケが言うと発令所にあった暗い雰囲気がわずかながら取り払われた。
「よし、作戦変更だ。鈴原君の救出後に使徒を殲滅する。」
『そういう事ならとっとと助け出すわよ!』
『了解。』
『解りました。』
三人も気合が入っているようだった。
「レイはまだ待機、他の二機でまず接近するんだ。そしてどちらかがエントリープラグを引き抜いた後、戦線離脱。わかったな。」
了解と返事をした後、三人との通信が切れた。
「伊吹二尉、万が一のために神経接続のカットと腕の切断準備をしておけ。・・助けたのにまた乗っ取られたなんて嫌だからな。」
「解りました。」
伊吹も幾分か元気な声で返事をした。
他の二人も緊張が少し解けたようだ。
上の二人もポーズこそ変わらないが、安堵したような空気を感じた。
しかしコウスケはまだ安心していない。
使徒の本体がどこにいるのか
それがまだわからないからである。
いくらトウジを救出できても使徒を殲滅できなければ意味がない。
だが、それを口には出さない。
今はトウジの救出に皆が集中しているからだ。
時間はまだある。
使徒の動きが止まった。
EVAと使徒が対峙するように睨め合う。
「二人とも気を付けろ。どんな動きをしてくるかわからないからな。」
すると使徒の体ががくがくと動き始めたかと思うと、空に浮かび上がっていた。
使徒は初号機の方に飛び上がり、ドロップキックを放つ。
初号機はパレットガンで防御するが、耐えきれず後ろに吹き飛んだ。
『シンジ!』
「アスカ!気を抜くな!」
使徒は弐号機の方に向き、腕を伸ばしてきた。
弐号機はソニックグレイブで使徒の腕の薙ぎ払う。
使徒が横に吹き飛んだ。
立ち上がった初号機が使徒にタックルをしたのだ。
吹き飛んだ使徒は空で体制を立て直し、地面に降り立っていた。
「二人ともあの腕を封じ込められるか?」
どれほど伸びるかは不明だが使徒の腕は厄介であった。
『僕が行ってみます。』
「わかった。無茶はするな。」
コウスケの返答を得て初号機は使徒に向けて走り出した。
使徒は再び腕を伸ばす。
初号機は使徒の手をつかんだ。
使徒は伸ばした腕を縮めて初号機と取っ組み合いを始める。
それを弐号機が見逃さなかった。
弐号機は使徒を後背に組み付いた。
「今だ!エントリープラグを!」
弐号機は参号機のエントリープラグに手を伸ばし使徒から引き抜いた。
使徒はそれに気づくが、目の前に初号機が居るので動くことができない。
発令所から安堵の声が鳴り響いた。
「よし、アスカはそのまま戦線離脱だ。」
『了解。シンジ、レイ。後は頼んだわよ。』
弐号機は第参新東京市に向けて走り去った。
「伊吹二尉、弐号機の腕は?」
「異常なしです。」
「そいつは重畳。」
(さて、次は・・・)
コウスケは皆が不思議そうに見ているのが気になった。
「なんだ?」
「・・いえ、重畳とはどういう意味でしょうか。」
青葉がそのように言った。
「大変喜ばしいという意味だ。後で調べてみろ。」
と言うと皆は納得したようだった。
(少しは余裕が出てきたか。)
戦闘中にそのような質問が来るということはそれだけ余裕ができたということだ。
「弐号機、戦闘区域を離脱しました。」
日向が弐号機の様子を報告した。
「よし、直ちに弐号機の回収と鈴原君の救助だ。部隊を送れ。」
日向はコウスケの指示を聞いてすぐさまに指令を下す。
一方、初号機は使徒と取っ組み合いを続けていた。
「シンジ君、大丈夫か?」
『何とか・・・』
すると初号機が一歩後ろにのけぞる。
(不味いな。・・いったいどこなんだ?)
いまだに使徒の本体がどこにあるのかわからない。
コウスケが考えているうちに初号機は一歩、また一歩と後退していく。
もし、使徒にもう一本でも腕があったら初号機は窮地に陥っていただろう。
『特務一尉、射撃許可を。』
初号機の不利な状況にレイが攻撃許可を求めてくる。
「ダメだ。もう少し待て。」
『・・・了解。』
しぶしぶながらレイは従う。
(どこなんだ?・・参号機のコアか?)
と考えるがコウスケは違うと否定する。
もし参号機のコアに使徒の本体があるのなら、コアに近いエントリープラグもただでは済まないからだ。
コウスケがあれこれ考えているうちに初号機は山肌に叩きつけられていた。
かろうじて使徒の手をつかんでいるので大事には至っていないが時間の問題だろう。
『特務一尉・・・』
レイの焦りの声が聞こえる。
発令所にも徐々に焦りの雰囲気が立ち込めていた。
「まだだ。」
コウスケも焦りを感じていた。
(いかん・・)
コウスケは戦いの基本である冷静になることを思い出した。
(情報の整理だ・・・)
使徒とはいえEVAを乗っ取っている。
見る限り使徒は参号機を完全に乗っ取っているだろう。
EVA・・・
人造人間EVANGELION
・・・
人造・・人間・・
人間・・人・・
人はどうやって動いてる?
人が体を動かすとき指令を送る場所・・・
そしてEVAの構造は・・・
・・・!
「レイ!頭だ!使徒の頭を狙い撃つんだ。」
『はい。』
「シンジ君、もう少し耐えてくれ!」
『わかり・・ました。』
どうやらシンジはかなり消耗しているようだった。
「よし。レイ、できるか?」
『はい。』
「タイミングはレイに任せる。」
『了解。』
零号機が射撃体勢に入った。
使徒の後ろを取る形になっている。
使徒は依然と初号機と取っ組み合いをしている。
『この・・・』
初号機が若干押す形になった。
使徒の体が少しのけぞる。
それを零号機は見逃さない。
『くっ・・・』
ライフルから弾丸が発射された。
弾丸は逸れずに使徒の頭に吸い込まれる。
使徒の頭は打ち抜かれた。
使徒はがくりと力が抜け、初号機に倒れ掛かった。
「パターンブルー消滅。」
日向の報告に発令所は歓喜の嵐に巻き込まれた。
「ふぅ~・・三人ともよくやった。」
そこに青葉からも報告が入る。
「松代の救助部隊より連絡。葛城三佐と赤木博士は重傷ながらも命に別状は無し。」
「そいつは重畳・・あいつら、強運だけはいいんだな。」
すると上の方から呼ばれた。
「綾波特務一尉、よくやった。」
「はっ!」
コウスケは思わず敬礼で返した。
「後の処理を任せる。」
と言ってゲンドウと冬月のいる席が下に潜って行った。
「・・・」
(押し付けやがったな・・・)
コウスケは自分に残された仕事の量を思うと再び暗くなっていくのであった。
・・・
「よう、鈴原君。体は大丈夫か?」
使徒戦から翌日
コウスケは朝早くにトウジが目を覚ましたと連絡を受け、見舞いに行くことにした。
「コウスケはん。」
「大丈夫そうだな。」
医師からトウジの体に異常なしと報告を受けていた。
それでも本人を見るまでは安心できなかったのだ。
「これからの君の処遇なんだが、チルドレンとしては資格が抹消されたよ。君のEVAがなくなってしまったからな。正式な通達は後日来るだろう。」
EVA参号機は使徒に乗っ取られたため解体処分となった。
パーツを残すことも考えられたが、使徒に乗っ取られたため危険と判断されたのだ。
「そうでっか。」
「すまないな。折角決心してくれたというのに・・・」
コウスケは頭を下げる。
「すまない・・今回はNERVの落ち度だ。」
EVAが使徒に寄生された上に子供をそこに乗せてしまった。
危く使徒とともに殲滅するところだったのだ。
こんなことで許されるとは思わないが、それでもコウスケは頭を下げた。
それがトウジに対する精いっぱいの誠意であると思うからだ。
「コウスケはん!もういいですわ。わしは無事にいる・・それでいいやないですか。」
「そうか、ありがとう。」
「それで妹なんやけど・・」
チルドレンとして資格がなくなったから妹もここにいれない。
それが言いたいのであろう。
「安心してくれ。サクラちゃんはここで預かるよ。」
その言葉にトウジは安心したようだった。
不意に病室の扉が開いた。
「トウジ!」
シンジがトウジのそばに駆け寄った。
「良かった・・無事なんだね・・・」
「せんせ・・すまんの。」
「いいんだよ。ほんとによかった・・」
再び病室のドアが開く。
「こら!シンジ!あんたがそんなんじゃダメでしょ!」
「そうよ。碇君。」
「そうだったね。」
トウジは意外な人物の登場に驚いているようだった。
「惣流に綾波も・・・」
「鈴原!あんたに会いたいって子を連れてきたわよ。」
レイとアスカの後ろから一人の少女が現れた。
洞木ヒカリである。
「委員長・・」
「鈴原・・体は大丈夫なの。」
「おおきに。もう何ともあらへん。」
そんな二人を横目にコウスケは尋ねた。
「ちゃんと許可はとったのか?」
レイは不意に目をそらした。
アスカはばつが悪そうにしていた。
「はぁ~、ちゃんと貰って来いよ。それとあれはなんだ?」
コウスケにはヒカリが隠し持っているものがちゃんと見えていたが何かは解らなかった。
「・・・お弁当です。」
レイがこっそりと教えてくれた。
(お弁当・・・・そういうことか。)
ヒカリは不安そうにコウスケを見ていた。
「そういうのも事前に知らせろよ。」
コウスケは携帯電話を取り出す。
コウスケはちらりとヒカリを見る。
もしかしたら追い出されるのではないか
そんな不安が見え隠れしていた。
「鈴原君の担当医か?鈴原君は普通に食事しても構わないのかな?・・・わかった。」
コウスケは電話を切った。
「普通に食事してもいいらしい。本人の希望があれば外食もいいそうだ。」
そう言うとヒカリはぱっと明るくなっていた。
「さて、俺たちは行くか。」
「そうね。」
アスカはコウスケが何を言いたいのかわかったのだろう。
レイも無言で同意した。
「え?もう行くんですか?」
シンジ一人だけわかっていないようだった。
「碇君・・邪魔しちゃダメ。」
「え?綾波?どういうこと?」
シンジはレイにずるずると連行されていった。
「冗談だろ?あれで解らないのか?」
コウスケには不思議であった。
「だから三バカトリオの一人なのよ。」
アスカはため息をついていた。
「ともかく、二人とも元気でな。」
コウスケは先に出ていった二人を追って病室を後にした。
そのあと病室で何があったかは知らないが、少なくとも悪いことは起きないはずだとコウスケは思うのであった。
こうなりました。
ペンペンをちゃんと出せて嬉しいです。
もしかしたら期待外れだったなんて人もいますかね?
レイに引きずられるシンジ
なんか映像で見てみたいです。
感想を書いていただければ嬉しいです。
今回はおまけがあります。
ある人物からの一人称を書きました。
ちゃんと書けたかな?
では、どうぞ
おまけ
お弁当・・
外出先で食事するため、器物に入れて持ち歩く食品
洞木さん・・特務一尉から許可を貰って嬉しそうだった
目の前に今日買ってきた弁当箱がある
私のでも特務一尉の物でもない
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・いかりくん
「どうしたんだ?レイ。」
この声は特務一尉
これは隠さないと
「何でもありません。」
「ふ~ん、そうか・・・」
特務一尉が笑った
碇司令と同じ笑い方
この時の特務一尉はいじわる・・・
「レイの物でも俺の物でもないからな・・・」
何を言ってるの?
「友達でもないだろう。女の子には少し大きいからな・・・」
・・・ばれてる?
「高校生以上ではないだろう。少し小さいからな・・・」
わざとやってる
「となると年齢はレイと同じくらいでそんなに多くは食べない男子だな?」
特務一尉のいじわる
ダメ、顔が熱い・・・
「そんな男子は・・・ずばり、碇君!」
やっぱりばれてた
「どうせ洞木さんを見ててやりたくなったんだろ。」
どうしてわかったの?
「いや~、青春だね。結構なことだ。」
特務一尉がニヤニヤ笑ってる。
なにかいや・・・
・・・
そう、私は悔しいのね。
でも、私、知ってる。
・・・反撃開始
「特務一尉もお弁当もらってる。」
NERVの職員からもらってるの
それも女性ばかり
私、知ってる
台所で弁当箱を洗っているのを知ってる。
「ああ、昨日は技術局の子だったか・・一昨日は広報部の子だっけ?」
ときどき赤木博士も特務一尉のことを見てる
伊吹二尉は羨ましそうに見てるけど
アスカもちらちらと見てる
それに特務一尉がどういうことをしているのかよく聞かれる
「まぁ、綾波特務一尉は仕事をきっちりとこなしますからな。」
これは榛名三尉の言葉
「見てくれはさほど悪くはないからな。」
これは吹雪三尉の言葉
「綾波特務一尉もそんな対象で見られることはあるでしょう。」
これは長良三尉の言葉
特務一尉はひそかに人気があるのを私は知っている
「はぁ~、困ったもんだ。」
特務一尉が悲しそうな目をしている
・・・
そう、彼女が忘れられないのね
私には碇君がいる
特務一尉にはもういない
・・・
なんだか嫌な気分・・・
特務一尉・・ごめんなさい・・・
「まぁ、練習台にでもしてるんだろ。」
・・・
何言ってるの?
そう、聞き間違えたのね?わたし・・・
「本命にそれをすればいいのに・・・」
もしかして気づいてない?
そんなはずない
特務一尉に限ってそんなはずはない
私のことをよくわかってるし
「自信がついたら挑戦するのかな?」
・・・
もしかしたら・・・
・・・
・・・・・・
聞くのが怖い
初めての感覚・・・
「どうした?レイ。そんな難しい顔して。」
「・・何でもありません。」
照れ隠しなのね
そうに違いないわ
たぶん・・・
・・・
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
面白いリリンね