「へぇ~、リリンのすることは本当に面白いわね。」
リリスはカートレインの外に見えるジオフロントを見ながら言う。
心なしか嬉しそうに見えた。
あの後、レイの慰めによりリリスは復活した。
コウスケはよくわからない雰囲気に息が詰まりそうだった。
ただ、
「レイの言うとおりね。こんなことで諦めちゃダメよね。」
と言っていたが何の事だかわからない。
生命の実を手に入れることではないというのはわかったが、いったい何を諦めないのかコウスケには全くわからない。
それとリリスはコウスケのことを名前で呼ぶことにした。
「だから私のことも…リリスだから……リッちゃんって呼んでね。」
とにこやかに言われたがコウスケは断った。
リッちゃんと呼ばれる人物がすでにいるからだ。
コウスケは喫煙仲間の二人を思い浮かべていた。
ついでに赤いジャケットを着た女性も思い浮かべたが……
だからコウスケもリリスを名前で呼ぶことにした。
リリスは大変不満そうであったが、不承不承ながら同意した。
「そこまで抵抗するなら、使徒と呼ばせてもらう。」
「それは嫌!うう、コウスケのいじわる……」
(俺が悪いのか? …違うだろ。)
とコウスケは思ったが、口には出さなかった。
………………………
ともかくNERV本部に来た理由はリリスのことを報告するためである。
自分一人ではどうしようも無かったのだ。
ここに来るまでにコウスケはリリスにレイと代われるのか聞いてみた。
「どうしてそういうこと言うの?」
と頬を膨らませながら言われたが、代わることはできるとリリスは返答した。
元々の体の持ち主はレイなので主導権はレイにあるそうだ。
シンジが帰ってきた安心感から隙が生じたそうでその隙をリリスが利用したそうだ。
コウスケはそれに安心するがレイは出てこなかった。
レイが拒んでいるらしい。
「やっぱりレイは優しいわね。」
とリリスが言うがコウスケには全く分からない。
カートレインは黙々とNERV本部に入って行った。
・・・
「綾波特務一尉、いったいどうした。」
総司令執務室でゲンドウがコウスケに問う。
ゲンドウはいつものポーズであった。
傍らには冬月も立っていた。
ふとテーブルが置かれているのに気が付いた。
テーブルには将棋盤が置かれていた。
どう見ても片方が不利に見えた。
あともう一駒あれば不利な方は優勢になれるだろう。
そんな展開に持っていけるだけの力量が有利な方にはあるようだ。
「実はレイの件で話があります。」
「レイの? …何かあったのか?」
「綾波特務一尉がおぶさっているのと何か関係が有るのかね?」
ここに来るまでの間コウスケはリリスをずっとおぶさっていた。
コウスケは歩くように言ったのだが
「レイは風邪をひいているのでしょう? ならおぶさったほうが自然じゃない?」
と言われたのだ。
なので仕方なくコウスケはおぶさることにしたのだ。
何故かリリスは喜んでいたが、その理由がわからない。
ちなみにNERV職員はその光景を見て、やはり親ばかになるのではと囁いていた。
「それは本人に直接言ってもらいましょう。」
この時コウスケは朝、自分が言ったことを完全に忘れていた。
最後に起きた騒動でそれどころではなかったのだ。
コウスケは降ろそうとするがリリスの手に力が入るのを感じた。
「……おい、降ろせないだろ。」
そのまま降ろすとコウスケの首が絞まってしまうのだ。
「え~」
「え~、じゃない。」
「ぷう~」
「ぷう、でもない。」
「む~」
「………いい加減にしろ。」
しぶしぶリリスが降りた。
「レイなのか?」
コウスケとリリスのやり取りを見ていた冬月が聞いてきた。
「レイだったと言う方が正しいわね。」
「どういうことだ?」
ゲンドウが不思議そうに聞いてきた。
「あなたね。レイを産みだしたのは。」
「いったいどうしたのだ?レイ。」
「コウスケはすぐにわかってくれたのに…」
と言ってリリスは拗ねてしまう。
「……普通、他人と入れ替わってるなんて気づくわけないだろ。」
そう言うとリリスは嬉しそうに
「やっぱりコウスケだからわかってくれたのね。」
と言った。
心なしか目が輝いているように見えた。
「当たり前だ。」
とコウスケが言うとさらに嬉しそうになった。
のだが……
「それが出来なくて何が父親だ。」
と言うコウスケの言葉にリリスはがっくりしていた。
「どうした?」
「……何でもないわ。」
リリスはいじけて床を軽く蹴っていた。
「全く分からないのだが……碇は分かるか?」
「……分からん。」
ゲンドウと冬月は置いてけぼりになっていた。
傍目から見ればレイがいじけているとしか見えない。
最もレイがいじけている姿なんてかなり珍しいが……
「何でもなくないだろ。第一、何をいじけてるんだ。」
「別にいじけてないもん。」
「お前な…」
「ウォッホン。」
コウスケが言葉を続けようとしたところに冬月が耐えかねて咳ばらいをする。
「綾波特務一尉、一体どういうことなのかね?」
「すみません、副司令。……ほら、自分で説明しろよ。」
コウスケはリリスに向かって言うが、つーんと顔を背けられてしまう。
「はぁ~、申し訳ありません。自分が説明します。」
「うむ、綾波特務一尉。説明しろ。」
ゲンドウが強く言ってきた。
少しご立腹のようだ。
「彼女はリリスです。」
「………何を言っている。」
「ですから、彼女は第二使徒のリリスです。」
「綾波特務一尉、ここでの偽証は死に値するぞ。」
冬月もイライラを隠せないようだ。
こう見えてもゲンドウと冬月は大変忙しい身であった。
コウスケが緊急に会いたいと申し出たのでわざわざ時間を作ったのだ。
だというのにコウスケから出た言葉は妄言と取られてもおかしくないことだ。
これで怒るなと言うほうが無理であろう。
最もコウスケが来るまで何をしていたかは将棋盤が語っているが……
「ほら、お前が言わないから俺が疑われてるじゃないか。」
「だって……」
リリスはまだいじけていた。
床につま先を押し付けてくりくりと回していた。
「そうしたいのなら別にいいが、俺が死んでもいいならな。」
これは嘘である。
ゲンドウと冬月がコウスケを殺すなどあり得ない。
そんなことをすればレイの処遇をどうするか、また作戦局零課をどうするのかなど問題が発生する。
だが、そんなことはリリスにはわからない。
そのため冬月の先ほどの言葉に便乗したのだ。
「それは嫌!」
なかなかの剣幕であったが、コウスケは成功したことを確信した。
「なら自分で説明してくれ。」
「分かったわよ……」
リリスはゲンドウと冬月に向き合った。
「さっきコウスケが言った通り、私はリリスよ。」
「信じられん。レイ、悪戯は大概にしろ。」
「そんなこと言われて信じろというほうが無理な話だな。困った悪戯だ。」
「む~。」
(まぁ、普通はそうだよな。)
「リリス、朝にやったことをもう一度やるぞ。」
「……あれをやるの? 嫌よ。」
「あれをやるのが一番手っ取り早い。」
「あれをやるとおなかすくのよ。」
「……後で腹いっぱい食わせてやるから。」
「……わかったわ。」
コウスケはリリスの了承を得てグロック17を取り出す。
「何をする気だ! 綾波特務一尉!」
「止めたまえ!」
ゲンドウと冬月が慌ててコウスケを止めに入る。
傍目から見ればコウスケがレイを殺そうとしているようにしか見えない。
そんな二人に気を留めず、コウスケはグロック17を放つ。
銃弾はリリスの作るATフィールドに阻まれた。
「ATフィールド……」
「………使徒! まさかレイに!」
ゲンドウと冬月がUSPを構えた。
それを見たコウスケがリリスの前に立つ。
「何をしている! 綾波特務一尉!」
「どきたまえ! 何故、使徒をNERVに入れたのだ!」
「二人とも少し落ち着いてください。」
コウスケもひやひやしていた。
二人の行動が予想外だったのだ。
「致し方あるまい。」
(攻撃予兆! ……本気だ!)
ゲンドウの言葉を合図に二人は発砲する。
コウスケは目を瞑ったが、痛みや暑さが感じられなかった。
代わりに何かがはじかれるような音がなった。
コウスケが目を開くと目の前にATフィールドが張られていた。
それに二人は驚いていた。
コウスケも不思議に思ったが、それよりも二人を落ち着かせるのが先だと判断した。
「とにかく落ち着いてください。リリスの話を聞いてから判断してください。」
「むぅ……」
「……わかった。」
ATフィールドがあるので抵抗は無駄だと悟った二人はUSPをしまった。
「ほら、話してくれよ。」
「おなかすいた~。」
何とも気が抜ける声でリリスは答える。
先ほどの緊張感が一瞬で吹き飛んでいったようにコウスケは思えた。
「もう少し我慢しろ。」
「ぷう~……」
リリスはコウスケの前に出た。
「お前が使徒であることはわかった。…本当にリリスなのか?」
「さっきからそう言ってるじゃない。」
「何故レイの体に?」
「元々一つだったからよ。」
そう言ってリリスは話し始めた。
朝、コウスケに話した内容と同じである。
リリスの話の内容にゲンドウと冬月は呆気に取られていた。
「信じられん……」
「信じるも何もこれが事実よ。」
「こんなことのためにユイが……」
ゲンドウは意気消沈としていた。
無理もない話だった。
リリスの計画でゲンドウは妻を失ったのだから。
それに人類補完計画を発動しても意味がないと知ったのだから。
「ユイ? ……ああ、あれ………え~と、初号機だっけ? それの中にいるあのリリンね。」
「何故知っている。」
「レイが二回あれに触れているでしょ? その時に知ったのよ。」
リリスは怪しく微笑みながら続ける。
「私なら取り出せるわよ。」
その言葉にコウスケは僅かにピクリと眉毛を動かした。
(……取り出せるだと?)
「ほ、本当か!」
ゲンドウが立ち上がりながら言った。
横にいる冬月も驚きを隠せないようだった。
「意味のない嘘なんてつく必要ないじゃない。」
「ならば……」
「碇司令、お待ちください。」
コウスケがゲンドウを止めた。
「なんだ? 綾波特務一尉。」
ゲンドウは不機嫌そうにコウスケを見た。
ゲンドウにとっては妻に会える唯一の希望が目の前にあるのだ。
それに水を差されて不機嫌になるなと言うほうが酷な話ではないだろうか。
「ユイさんを初号機から救出するのはもう少し後がよろしいと考えます。」
「何故かね?」
ゲンドウに代わり冬月が聞いてきた。
冬月はいたって冷静に聞いてきたが、声にわずかな震えを感じた。
「今、ユイさんがいなくなれば初号機はどうするのですか?」
「もちろん廃棄だ。」
「ならば我々は戦力の減少した状態で残り三体の使徒と戦うのですね?」
とは言ったものの初号機はすでに凍結処分が下されている。
だが、予備戦力があるのとないのではやはり余裕が違うのだ。
その言葉を聞いて二人ははっと思いついたようだ。
「ダミープラグがある。」
「先の使徒戦では受け付けなかったですが……」
「ならばレイに……」
「零号機はどうするのですか?」
二人は唸って沈黙した。
「ここで救出しても使徒を倒せねば意味がありません。」
(二人には残酷な選択だというのはわかってる。)
新しいパイロットを選出することもできる。
だが、先の第十四使徒のような強さを持つ使徒が出現したら勝つことなどできないだろう。
それこそ不必要な犠牲が生まれるだけだ。
「リリス、それはいつでもできるのか?」
「当たり前じゃない。」
「だそうです。」
コウスケが二人を促す。
「………確かに今は初号機の力が必要だ。」
ゲンドウが苦い声で言う。
断腸の思いなのだろう。
「碇司令、すみません。でしゃばったことを申しました。」
「いや、綾波特務一尉の言うことは正しい。そして私はNERVの総司令なのだ。」
「そうだな、碇。ここでユイ君を救出しても怒られるだけだな。」
「今はユイが救出できると知った。それで十分だ。」
「ありがとうございます。」
コウスケがレイを引き取る前のゲンドウは私情ですべてを巻き込んでいた。
だが、今は何よりも優先させていた妻の復活よりNERV総司令としての決断を優先したのだ。
そんなゲンドウにコウスケは自然と最敬礼を行っていた。
そんなやり取りをリリスは興味深そうに見ていた。
「やっぱりあなたは面白いわね。」
「何が?」
とコウスケが問いてもリリスはニコニコと笑っているだけだった。
「それでリリスはどうしますか?」
「レイもいるのだろう? ならば現状維持だ。」
「うむ、リリスが我々と敵対するつもりがないならむやみに事を荒げることもなかろう。」
「先ほどのようなことは出来れば勘弁してもらいたいですな。」
(あれは本当にひやひやした…)
その言葉にゲンドウと冬月は唸ってしまう。
すると冬月が何かを思い出したようだ。
「そう言えば、ATフィールドを直に見るのは初めてだな。」
その言葉を聞いてゲンドウも興味深そうな目でリリスを見ていた。
「リリス、もう一度出せるかね?」
冬月がなぜそんなことを言い出したのかコウスケには解らなかった。
「副司令、なぜでしょうか?」
「いや、ATフィールドをもう少し直で見てみたいと思ってね。」
冬月は今はNERVの副司令として働いているが、元は京都大学の教授をやっていた。
つまるところ研究者としての血が騒ぐのであろう。
横にいるゲンドウも頷いていた。
「え~、嫌よ。」
「そこを何とかしてもらいたい。」
「嫌。」
リリスは頑なに断っていた。
「むう、綾波特務一尉からもお願いしてくれないか?」
「うむ。綾波特務一尉、頼む。」
もはやここにいるのは特務機関の首脳部ではなく、一介の研究者たちであった。
(赤木もいたらもっと大変なことになりそうだな。)
「はぁ~……リリス頼む。」
するとリリスはコウスケを睨んだ。
「朝、実験には使われないようにするって言ったの嘘なの?」
(ああ、そう言えばそんなこと言ったな……)
ちらりと二人を見るが何とか説得しろとプレッシャーをかけてくる。
(はぁ~……厄介ごと……嫌だな……)
「すまん。一回だけでいい。あの二人を満足させてくれ。」
「う~、コウスケの嘘つき。」
リリスは頬を膨らませながら言う。
「……レイからも一言あるそうよ。………約束を破るのは人としていけない事……だって。」
リリスの態度とレイからの一言にコウスケは罪悪感を感じるが、コウスケもATフィールドに興味はあった。
「……あとで腹いっぱい食わせてやるから。」
そう言うとリリスはコウスケを見ながら
「コウスケが作ってくれるなら……」
と言うのであった。
「あれだけの量を一人で作れって言うのか?」
「ならやらない。」
リリスはそっぽを向いてしまう。
コウスケは困り果てた。
取りあえず説得する人物を変えることにした。
このままでは過重労働が待っているのでコウスケも必死であった。
「リリスが嫌がってますし、ここは……」
「そうか……」
ゲンドウが呟くように言う。
(諦めてくれたか。)
とコウスケは安心するが
「リリスよ、綾波特務一尉の料理があればやってくれるのか?」
そのようにゲンドウが言った。
「ほんとは嫌だけど、コウスケが作ってくれるのならやる。」
リリスは即答であった。
コウスケはとても嫌な予感がした。
「綾波特務一尉、命令だ。リリスに料理を作りたまえ。」
ゲンドウのサングラスがいつになく光っている。
「いや、しかし……」
「その程度で済むのであればむしろ幸運と言えるだろう。」
冬月は何度もうなずきながら言う。
二人からのプレッシャーが増した。
NERVの首脳部は伊達ではなかった。
(この……自分たちは何もしないからって………)
コウスケは抵抗を試みる。
伊達に零課の課長はやっていないのだ。
「ですが……」
「仕方あるまい。特務機関NERVの総司令の権限で命ずる。リリスに料理を作りたまえ。」
とうとうゲンドウは総司令の権限まで持ち出してきた。
こうなってしまっては零課課長だろうが経済界の重鎮だろうが大統領だろうが関係ない。
NERV総司令の権限とはそこまで強いのだ。
SEELEのお偉いさんだったら話は違ってくるが…
最もその権限も私的利用されようとしている。
本来ならNERVのNo.2がそれを止めることができるが、その人物も完全に総司令に肩入れしている。
「……レイも特務一尉が約束を破るなら相応の対価が必要です……だって。」
(レイ! 俺を裏切るのか!?)
援護くらいはしてくれると思っていた同居人もとい娘にはこう言われる。
コウスケの味方は誰もいなかった。
「ねえ、なんでそこまで嫌がるの?」
突然リリスがそう言いだした。
「へっ!」
「……私のこと嫌い?」
「何を言ってるんだ?」
「その言葉、また言った。朝にも好きだって言ったのに……」
リリスの周りはかなり暗くなっていた。
「そうなのね……」
ものすごい悲しみに包まれていた。
「綾波特務一尉、君には失望した。」
「紳士としてあるまじき行為だな。」
二人もコウスケを助けるどころか追撃をかけてきた。
何となく楽しそうな声に聞こえたのは気のせいだと思いたかった。
コウスケはため息をついた。
「あのな、リリスはレイの中から見ていたというが、俺は初めて会って話したんだぞ。好きか嫌いかなんて言われてもわかるわけないじゃないか。」
リリスは不満そうに見てくる。
だが、コウスケが言うことも正しいのだ。
いきなり出会った人に好きかどうかなんて聞かれて答えられるだろうか。
「まぁ、レイとシンジ君を助けてくれたからな。嫌いと言うことは無いよ。」
「ほんと?」
「ただ、好きかと言われても何とも言えん。お前さんのことをよく知らないからな。」
リリスはじっと見つめてくる。
「俺を信頼してくれるのはありがたいよ。でも、お前さんももう少し世界を見てから判断すればいい。」
今までレイの中にいたからある程度はわかるのだと思う。
しかしそれはあくまでもレイだけの視点であり、リリス自身が見たものではない。
なのでリリスの視点で世界を見ることがとても重要に思えるのであった。
ぐぅ~
コウスケの前から気の抜ける音が聞こえた。
「やれやれ、お前さんの腹は待ってくれないのか。」
コウスケはゲンドウと冬月がいるほうに向き合う。
「申し訳ありません。リリスが空腹なようなので、また今度でよろしいでしょうか?」
リリスが空腹であることに二人は驚いた。
おなかがすいたなどのやり取りは当然ながら二人にも聞こえていたが、本当に空腹であるとは思いもよらなかったようだ。
「う、うむ、そうだな。」
「非常に残念だが。致し方あるまい。」
(さてと……)
二人が納得してくれたのを確認するとコウスケはリリスの前で屈んだ。
「何してるの?」
「レイは風邪をひいてることになってるんだ。それに腹が減った状態で歩くのはつらいだろ。」
リリスはぽかんとしていた。
「取りあえずNERVの食堂で我慢しろ。家に帰ったら作ってやるから。」
「うん……」
と言うとリリスはコウスケの背中におぶさった。
「では、失礼します。」
コウスケはリリスをおぶさって総司令執務室を後にした。
「碇、リリスは人類に興味を持ったというが……」
「ああ、やはりそう言うことなのだろう。」
「ふむ。」
「ふっ、綾波特務一尉も案外やるな。」
「しかし、レイもいるのだろう?」
「うむ、困った問題だ。」
「珍しいな。」
「何故だ?」
「いつもなら問題ないですませるだろ。」
「……問題ない。」
そんなやり取りがあったが、部屋を出た後のためコウスケには聞こえなかった。
・・・
ゲンドウたちへの報告が終わったコウスケは約束通りリリスに料理を作ってやった。
かなりの量を作ることになったがリリスが嬉しそうに食べるのを見て何となく心安らぐコウスケであった。
その後リリスはTVを熱心に見ていた。
その姿に何となく違和感を感じるが、リリスとレイが別であると奇妙な関心をしていた。
コウスケはその間にもNERVから持ってきた仕事をこなしている。
コウスケのPCはインターネットでNERVとリンクしているので仕事をするのに何ら不便はなかった。
最も緊急を要する事柄が発生した場合は困ったことになるが……
夕日が西に差し掛かるころ、綾波家のインターフォンがなった。
「……やばい。」
画面を確認したコウスケは少し焦っていた。
「どうしたの?」
「シンジ君が来た。」
画面にはシンジが一人で映っていた。
「リリス、レイと代われ。」
「む~、仕方ないわね。」
リリスは不満そうに唸りながらもすっと目を瞑った。
途端に雰囲気が変わることをコウスケは感じ取った。
「……レイだな。」
「はい。」
よくよく考えるとレイと話すのは今日、初めてだななんてコウスケは考えていた。
「レイ、パジャマに着替えるんだ。」
朝からレイはずっと制服を着たままだった。
と言ってもレイにその記憶はない。
制服に着替えたのはリリスだからだ。
「どうしてですか?」
「風邪をひいていることになってるだろ?制服じゃ変に思われるだろ。」
「……わかりました。」
レイは自分の部屋に戻って行った。
コウスケは玄関に向かった。
「シンジ君、すまないな。」
「いえ、綾波は大丈夫ですか?」
心底心配そうな顔で訪ねてくるシンジ
「ああ、もう大丈夫だ。」
「よかった。」
「何なら上がっていくか?」
「いえ、結構です。」
と言うシンジだが、コウスケはそこに隠される表情を見逃すことは無かった。
一目くらい会いたい
そんな思いが伝わってくる。
「なんだよ。つれないな。」
実を言うとコウスケはシンジが学校でどうしていたかを知っている。
レイの席を見ながらぼーと考え込んでいたそうだ。
授業など上の空だったのだろう。
時々アスカやトウジなどからからかわれていたとのことだ。
そう言う報告を零課から受けていた。
ちなみにパイロット三人には承諾を得ている。
依然として三人を狙う組織は存在しており護衛の必要性があるからだ。
いい顔はしなかったが、護衛の必要性を三人は承知しておりコウスケの問いに承諾したのだ。
三人の行動はコウスケのもとに報告されるが、コウスケのもとで厳重に管理されている。
その報告書は一目見てすぐさまに封印している。
コウスケ以外閲覧できるものはいない。
万が一、コウスケ以外の人物が見ようものなら即座に消去されるようになっている。
「一目くらい会ってやってくれ。レイもそれが一番喜ぶ。」
(それが一番レイが喜ぶんだよな……かなり悔しいけど………)
「は、はい。……お邪魔します。」
「ふむ……お邪魔しますがただいまに変わるのはいつになるやら………」
(最もまだ認めんよ。少なくとも俺に一発は当てられるようになるまではな。)
「へ?」
「いや、なんでもない。ただの妄言だ。」
(フフフ、レイを奪い取れるかな? 楽しみだよ、碇シンジ君。)
思わず笑みがこぼれた。
そんなコウスケを見てシンジは疑問符を浮かべていた。
その後シンジはレイの部屋に向かうことになる。
コウスケはリビングで残りの仕事を片付けることにした。
「しかし、どうしたものかね………」
リリスについては現状維持となった。
しかし、現実問題としてリリスがレイの中にいる。
最も二人がへまをやらかすとは考えられないが、周囲の目と言うのはなかなか侮れないのだ。
いっそのこと真実を話すかと考えたが、それは戸惑われた。
NERVの職員はパイロット三人を除くと全員がセカンドインパクトを経験している。
それは上級幹部でも同じことだ。
そのセカンドインパクトの元凶が現れましたなんてことになったらどんなことが起こるかわからない。
NERV職員総力を挙げて暴動など考えたくもないものだ。
零課とて安心とは言えない。
まず、間違いなくコウスケとレイは安全ではいられない。
コウスケは自分は無関係であることを証明できれば安全かもしれない。
だが、コウスケにはそんな気は毛頭も無かった。
娘を見捨てて自分の安全を図るなんて死んでも嫌なのだ。
そしてシンジやアスカが板挟み状態になるのは目に見えている。
ゲンドウと冬月が抑えに回るだろうが、どれほど期待できるかはわからない。
そうなるとNERV職員とはいえ手にかけることも考えねばならない。
そのまま放置すればレイが危険だからだ。
そしてそれが外部‐一般市民に知られたら……
「………ダメだ。現状維持しか思い浮かばない。」
しかもそれは今のところと限定的である。
使徒を倒したらNERVの存在意義は失われる。
当然ながらある程度の情報公開などもあり得るだろう。
その過程で万が一リリスの存在が漏れたら……
「過重労働だ……厄介事だ……はぁ~………」
レイの部屋から話し声などは聞こえない。
だが、部屋からは穏やかな雰囲気が流れているのを感じる。
その感じからおそらく二人きりで話しているの事はわかる。
「どうしたものかね……」
そう何度もつぶやくしかコウスケにはできなかった。
リリス(以下リ)「は~い、私がリリスで~す。」
コウスケ(以下コ)「やけにハイテンションだな。」
リ「だって、やっと出れたんだもん。」
コ「みたいだな。……レイはどうしてる?」
リ「寝てるわ。」
コ「………はぁ~、暢気だな。」
リ「私のことは二か月前から作者は考えてたのに……」
コ「なかなか出せなかったんだろ。」
リ「うふふ、それにしても私はどうして出来たのかしら。」
コ「うむ、どうやらゲームの影響らしいな。」
リ「34話の後書きでも書いてるわね。……何のゲームかしら?」
コ「零課でもまだ情報は入ってきてない。」
リ「まあいいわ。」
コ「しかし、作者はいったいどうする気だ?」
リ「確かにこのままではいけないわね。」
コ「一つの体に二人いるからな。」
リ「シンジはレイに、コウスケは私に………一つしかない体を巡って……」
ぎゅむ!
リ「いひゃ~い! 何するのよ!」
コ「こうしないと止まらんだろ。」
リ「だからって抓らなくたっていいじゃない……」
コ「全く………しかし作者はリリスをどうするつもりだ?」
リ「なんで?」
コ「使徒だからな。」
リ「どうしてそういうこと言うの?」
PPPPPPPPPPP
コ「はい、綾波です。……わかった。」
リ「どうしたの?」
コ「零課が作者の考えをまとめたメモを見つけたそうだ。……リリスは別に殲滅してもいい……そう書かれていたそうだ。」
リ「どうしてそういうことするの?……もしかしたら読者からの意見があれば考え直してくれるかも…」
コ「それで殲滅の意見が多くなったらお前さん消えるぞ。」
リ「………」
コ「28話を考えたら躊躇しないだろうな。この作者は……」
リ「………いや。」
コ「そんなこと言われてもどうすることもできんよ。…さて、いったいどうなるのかは分からんが今後もよろしく頼むよ。」
?「僕はまだでないのかな?」
コ「……そのままなら殲滅だろうよ。」
?「フフフ、1話限りの出番と言うことですか……」
リ「もしかしたら宇宙空間に飛び出すかもしれないわよ。生身で……」
?「それもゲームの影響だね?」
コ「作者は何を考えているんだ? ……なんだろう、俺の苦労が増えそうな気がする……」