NERV航空隊隊長綾波   作:浩介

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第36話 大切なもの

あれからというもののコウスケとレイとリリスの奇妙な生活は続いていた。

あの時リリスが張ったATフィールドは長く展開しなかったためMAGIに感知されなかったようだ。

「ねぇ、まだ?」

「もう少し待ってろ。」

コウスケは台所でフライパンをふるっている。

リリスに朝食を作るためだ。

こうしてリリスと共にする時間は家にいるときだけになっている。

学校に登校するときはレイに入れ替わっている。

その時までレイは眠っているらしい。

「ほら、できたぞ。」

コウスケはテーブルに料理を並べていく。

リリスは嬉しそうに食べていく。

リリスが食べる量はレイと変わらない。

最初出会ったときに尋常じゃない量を食べたのはATフィールドを使ったからだそうだ。

ATフィールドを使うとかなりのエネルギーが消費されるらしく最大でも三回が限度だそうだ。

そう考えるとEVAは途方もない電気エネルギーを消費している。

あれだけ巨大な体を動かすのだからとコウスケも考えていたが、その大本はATフィールドにあるのではと思ってしまう。

そう考えると人も微弱ながらATフィールドを使っている。

人が空腹になるのは科学的根拠に基づいて解明されているが、大本はそれのためではないかなどとついつい考えてしまう。

「はぁ~、食べた食べた。」

などとリリスは満足そうに言う。

そんな姿を見てコウスケは満足感を覚えるのであった。

レイの時でも感じるのだが、わずかに表情が変わるだけなのだ。

それについて不満ではないが、やはりリリスのように目に見えて満足しているということがわかる方が気分がいいのだ。

「そろそろ時間だな。」

コウスケは時計を見て言う。

「あら、もうそんな時間なの?仕方ないわね。」

リリスは目を瞑る。

すると再び目を開いた。

「…特務一尉、おはようございます。」

「ああ、おはよう。」

リリスが現れてからというものの、ここ数日間の遣り取りは概ねこんな感じだった。

最初はレイが空腹ではないのかと思ったのだが、体のエネルギーは共有しているらしく問題はないらしい。

そのため新たに朝食を作るということは無かった。

レイは台所で二つの弁当箱を作ったあと、自分の部屋に戻り登校の準備を進めた。

しばらくするとレイが部屋から出てくる。

「行ってきます。」

「気を付けていって来いよ。」

レイは二人の弁当箱を鞄に入れると玄関に向かい学校へと登校していった。

コウスケは通信機を取り出す。

「綾波だ。今、レイが外に出た。護衛を頼む。」

通信機から了解と返事が返ってくる。

「やれやれ…」

今のところリリスの存在が外に漏れてはいないようだった。

リリスの存在を知るのはコウスケとNERV首脳部しかいない。

「………俺も行くか。」

コウスケはNERVへと登庁することにした。

・・・

 

コウスケがいつものように執務室へ行くと机には山のような書類があった。

とは言っても使徒戦直後に比べれば格段に減っている。

ミサトも復帰しておりその分の仕事が本来の主のもとに帰って行ったのだ。

その半分以上はとある二尉のもとに行っていることをコウスケは知っている。

その二尉にコウスケが1ダースの栄養ドリンクを送ったのは余談だ。

「エリア4はもう少しかかるか…」

コウスケは地上の迎撃施設の復旧状況をPCで確認する。

既に再建された地区では一般住宅の修復も行われている。

ただ、空き家が以前より多くなっているが

ジオフロントも復旧してきている。

既に瓦礫は撤去され、多くの重機で施設を建て直していた。

NERVのピラミッドはすでに修復されて以前より強固な装甲を纏っている。

「あと三体と一体か…」

前の使徒戦ではまったくと言っていいほど歯が立たなかった。

初号機が覚醒していなければ今頃こんなことはできなかっただろう。

最後の一体はどうにでもなる。

しかし残る三体はいったいどう攻めてくるのか

それがコウスケには気がかりだった。

もし前以上に強力な使徒が現れたらどうするのか

「いかんよな、俺がこれじゃ…」

ともかく復旧作業を急ぐべきだ

そうコウスケは思い仕事に集中する。

だが、使徒のことを考えたためか集中力が切れてしまったようだ。

コウスケは煙草を取り出し火をつける。

(そういや使徒ってATフィールドを使っているんだよな…)

最初はただのバリヤーだと思っていた。

今はそれは違うことを知っている。

ATフィールドは心の壁であることを知っている。

それゆえに人も微弱ながらATフィールドを使って個人として生きている。

(だとすると……使徒にも心があるというのか?)

見たところ使徒にそんなものがあると思えない。

だが、ATフィールドが使えるということは心があると同義なのだ。

(リリスも言ってたな。心の壁だと…)

そのリリスを間近で見ていてリリスに心があると納得がいくのだ。

そしてここ数日間見ていたリリスのしぐさやコウスケにまとわりついてあれこれ聞いてくること、そしてリリスの笑顔を思い出して不意に笑みが浮かんだ。

そのことにコウスケ自身が驚いていた。

(俺は笑っているのか…)

ここまで自然に笑みが出たのはどれくらい前のことだろうか

そう考えるが思い出せない。

レイに対してもここまでの笑みを浮かべたことはコウスケには無かった。

(もしかしたら俺は嬉しいのかもしれない。)

今まで使徒は殲滅以外に選択肢がなかった。

意思疎通もできず、人に災いをもたらす存在であるからだ。

しかしその使徒にもATフィールドがある。

心があることを何となく感じ取っていたのだろう。

そしてお互いに拒絶しかできない悲しい現実

それを無意識のうちにコウスケは悲しく思っていたのかもしれない。

リリスも人を生み出した存在とはいえ、人から見れば使徒であることに違いはない。

そんなリリスが変わっているが人と変わらぬ生活を送っている。

それが嬉しいのかもしれない。

だが、コウスケは不意に考えてしまった。

もしリリスを殲滅することになったら

そう考えるだけでコウスケは何とも言えぬ恐怖に囚われる。

今まで数百人も葬ってきたコウスケだがこんな感覚に囚われることは無かった。

コウスケは頭を振り払う。

リリスが殲滅されることは今の段階では無い。

リリスを殲滅となるとレイもともに消滅させねばならない。

それは誰も望んでいないことだった。

(殲滅するって決まったわけじゃない。…碇司令も現状維持を命じていたしな。)

問題の先送りなのかもしれない。

ただ、コウスケは何故かほっとする自分がいることにさらに驚いた。

(そういや、あんとき俺の前にATフィールドが張られてたな。)

リリスのことをNERV首脳部に話した時のことだ。

コウスケは壁をイメージして手を突き出してみた。

「……できるわけないよな。」

目の前にはゆらゆらと揺れる煙草の煙以外何もなかった。

「だとしたらあれはリリスのものなんだよな。」

そう考えると何か釈然としないものを感じる。

何故、自分の目の前にリリスのATフィールドが張られたのかを

(それだけ信用しているってことかな?)

ATフィールドが心の壁だというのならば、その中に入れた自分はそれだけ心を許されている

それだけ信用されているんだとコウスケは思った。

執務室の外に人の気配を感じた。

ドアが開き人が入ってくる。

「綾波特務一尉。」

入ってきた人物は黒服だった。

「なんだ?」

「碇司令がお呼びです。」

(またまた厄介なことかな?)

「わかった。」

コウスケは黒服とともに執務室を後にする。

・・・

 

総司令執務室に赴いた時、いつもと同じやり取りをしながらコウスケは部屋の中に入った。

ふとテーブルを見るとやはり将棋盤が置かれていた。

戦況は五分五分と言った所だが、よく見ると片方は飛車と角行がなかった。

生け捕った駒を置く場所に無いことから、初めからその二つが取り除かれていたことは明らかであった。

「綾波特務一尉、レイとリリスの様子はどうかね?」

「変わってはいますが特に問題は無いように思われます。」

コウスケは再びここ数日間のリリスを思い出してふと笑った。

だが、それも一瞬のみであった。

「それでご用件は何でしょうか?」

(今度は何をやらされるのか……SEELEの本拠地でも襲撃して来いとか言われるのかな?)

コウスケがそう考えているとゲンドウが口を開いた。

「……リリスについてだ。」

「リリスですか?」

「うむ、綾波特務一尉にはリリスの監視を行ってもらう。そしてリリスに関することは綾波特務一尉にすべてを委ねる。」

(リリスの監視? リリスに関することは全部委ねる? なんだろう……とても嫌なんだが…)

コウスケは首にひんやりとした空気を感じていた。

「………」

ゲンドウが無言で見つめてくる。

(監視……リリスに関する全権の委任………そう言うことか……)

「……レイはどうしますか?」

「それは………考慮する必要はない。」

ゲンドウが珍しくためらうように言う。

「シンジ君に恨まれますよ。」

「………だとしてもだ。」

「本気なのですか……」

「………」

重苦しい空気が流れていた。

見かねた冬月が口を開いた。

「綾波特務一尉、必要なことだ。」

と言う冬月はコウスケではなくゲンドウに視線を向けていた。

その視線は決して冷たいものではなく、どちらかと言うと仕方がないだろと言うものであった。

「………任務、了解しました。」

かろうじてコウスケはそう口にすることができた。

「下がってよろしい。」

「失礼します。」

冬月から許可をもらったのでコウスケは総司令執務室を後にした。

………かなりの早歩きで

・・・

 

(どうしたんだ? 俺は……)

コウスケはNERVの喫煙室で一人煙草を吸っていた。

吸っていたのだが、臭いが嫌に鼻を刺激したのですぐに消してしまった。

(碇司令や副司令の言うことは最もじゃないか。)

監視とリリスに関する全権の委任

リリスについて知る人が少ない中、もっともリリスに近いコウスケがそうなるのは当然と言えるだろう。

だが、コウスケはそこに隠された意味を正確に把握していた。

(リリスが敵対したとき、殲滅しろ…………)

だからこその全権の委任であるのだ。

(そうだろ……リリスは使徒なんだ……敵対するなら殲滅するしかないだろ。)

それにリリスが何故この星にやってきたのか

それを知っていればやはりそういう結論になるだろう。

たとえレイを殺すことになっても

シンジに恨まれたとしても

しかしコウスケは一つの戸惑いを覚えた。

レイを殺すこと以上にリリスを殲滅することに

「よう、綾波じゃないか。どうしたんだ?」

コウスケが顔を上げると加持が傍らに立っていた。

「…………」

「なんだよ。偉く不景気な顔じゃないか。」

加持がコウスケの隣に座り、煙草に火をつけた。

「………悩み事か?」

「まあな………」

「………」

加持はそれっきり口を閉ざした。

まるでコウスケが話すのを待っているかのように

コウスケは思いきって聞いてみることにした。

「………一つ聞きたい。」

「いいぞ。」

「もし、世界と大切な人が天秤にかかっていたら……どうする?」

「こりゃ、難問だな。……大切な人ってレイちゃんのことか?」

「多分……そうだと思う。」

(レイのことなんだよな……ほんとにそうなのか?)

加持が訝し気に見ていた。

「そうだな…俺なら…………わからない。」

「そうか……」

コウスケはがっかりしていた。

「綾波は一度その選択をしてるだろ。それと同じじゃダメなのか?」

ふと見ると加持が冷たい眼でコウスケを見ていた。

それに思わず腹が立つ。

「それができたらどんなに楽だろうか…」

「なら、答えは出てるじゃないか。」

「……人が滅ぶかもしれないんだぞ?」

「わかってるのに世界を選べない……別にいいんじゃないか?」

加持は煙草を消していた。

「世界を敵に回してでも守りたいもの……そう言うことなんだろ。」

「そうか……そうだったんだな。」

何故かコウスケは奇妙に納得ができた。

「すまんな。」

「別にいいさ。俺は綾波から真実を教えてもらったんだ。これくらいどうと言うことは無いさ。」

「そうか…」

(リリスのこと話すか……全権委任されてるから問題ないだろ。それでもし皆が敵対するなら……)

ふと加持の視線を感じてコウスケは加持を見た。

加持はニヤニヤとしていた。

「なんだよ。」

「いや~、綾波が世界を敵に回してでも守りたい人って誰かな…なんてな。」

「別に誰でもいいだろ。」

「レイちゃんではないみたいだし…リッちゃんか?」

「はぁ? なんで赤木が出てくるんだよ。」

加持は驚きを隠さなかった。

「お前……本気で言ってるのか?」

「何言ってるんだ?」

「……マヤちゃんか?」

「伊吹二尉? どうして彼女が出てくるんだ?」

「……アスカ。」

「元気な娘だが、レイの方が可愛い。」

コウスケはさらりと言ってのける。

顔は真面目であった。

「………まさか葛城……」

「それはお前だろ。」

その後も加持がいろいろと女性の名前を挙げていた。

そのたびにコウスケは

「無い。」

「誰だよ。」

「娘(レイ)の方が可愛い。」

などとコメントする。

三番目のコメントの方が他に比べて多かった。

「いったい誰なんだ!?……俺が第三新東京市で知らない女性なんていないはずだぞ。」

「へぇ~……詳しく聞きたいわ。」

いつの間にかミサトが近くにいた。

こめかみには青筋が浮かんでいる。

「か、葛城……」

「よう、葛城。」

「コウスケ君。いったい何の話をしていたのかしら?」

ふと見ると加持がぶんぶんと首を振っていた。

コウスケは思わずニヤリとする。

「……加持の女性関係の広さを自慢されていたんだ。」

一瞬で加持が青ざめた。

「そう……」

そろりと加持が逃げようとしたが、ミサトがしっかりと捕まえていた。

「か、葛城……これには……」

「その話はゆっくりと聞きます。」

いかなる言い訳も許さない声だった。

「あ、葛城。シンジ君たちが来たら俺の執務室に連れて来てくれ。赤木もだ。……加持は生きていたらな。」

とコウスケは加持を引っ立てているミサトに言った。

・・・

 

「よし、全員そろったな。」

コウスケの執務室にはパイロット三人とミサトとリツコ

そして

「加持、どうにか生きられたようだな。」

「……後で覚えてろ。」

ボロボロの加持がいた。

皆はやれやれといった感じだった。

(ん? アスカが何ら反応を示さないな……)

ボロボロの加持を見てアスカが何らかのアクションを起こすと考えていたが、コウスケの予想は外れた。

それを訝し気に思うが、本題に入ることにした。

「レイ、ちょっと来てくれ。」

コウスケは手招きでレイを呼んだ。

「何でしょうか?」

「リリスに代われるか?」

「……いいのですか?」

「大丈夫だ。リリスに関しては俺が全権を預かっている。……何かあっても俺の責任さ。ただし、セカンドインパクトについては何も言うな。…ここで暴動なんて起こされたらさすがに守り切れない。」

「わかりました。」

そう言ってレイは目を閉じた。

「ねぇ、さっきから何やってるのよ。」

アスカがしびれを切らして言う。

少しイライラしているように聞こえた。

「すまん、もういいぞ。」

コウスケはリリスを促すが、何もしゃべらなかった。

「レイ、どうしたの? コウスケ君に何かされた?」

などとミサトは言う。

「……コウスケさん、綾波はどうしたんですか?」

シンジの顔は心配と言うよりは不安の方が大きかった。

(……ちょっと悪戯するか。)

「目の前にいるだろ。」

「………」

シンジはリリスをじっと睨んでいた。

「シンジ、なに怖い顔をしてるのよ。」

「そうよ、コウスケ君とレイの間に自分の知らない秘密があるからって妬いちゃダメよ。」

そんなアスカとミサトの言葉が耳に入っていないかのようにシンジはリリスを見る。

そして

「………あなたは誰ですか?」

「……どうしたの? 碇君。」

どうやらリリスも悪乗りしてきたようだ。

「違う、綾波はそんな風に呼ばない。」

微妙なイントネーションの違いをコウスケも感じていたが、シンジもそれを感じていることに少し驚いた。

(ふむ、さすがに聞き分けたか……じゃなきゃ一生認めんがな。)

「シンちゃん、何言ってるのよ。」

「どう見たってレイじゃない。」

「リツコ、シンちゃんに何かした?」

「変なこと言わないで。シンジ君のバイタル、メンタルともに正常よ。」

そんな中、加持もリリスを疑わしい目で見ていた。

「シンジ君、君にはわかるんだね。」

「はい。……加持さんもわかるんですか?」

「シンジ君が言わなきゃ気づけなかったよ。」

(冗談はこれくらいにするか。)

コウスケとしてはシンジがリリスを見わけたということに満足はしていた。

「そろそろ種明かしするぞ。」

「そうね、これくらいにしましょ。」

皆は驚いていた。

レイが突然口調を変えてしゃべり始めたように見えるのだから無理もない。

「さてと……紹介しよう。彼女はリリスだ。」

コウスケがそう言うと皆は固まってしまった。

「………コウスケ君、リリスって………」

いち早く回復したのはリツコだった。

「知ってるだろ? 第二使徒のリリスだ。」

「使徒って呼ばれ方、好きじゃないんだけど…」

リリスが拗ねながら言う。

「わかってるよ。でもそっちの方がわかりやすいだろ。」

「わかってるわよ…」

それでも不満なのだろう。

リリスはつま先を床に押し付けてくりくりと回していた。

「あはは……レイもそんな冗談を言うようになったのね。」

ミサトが乾いた笑い声を立てながら言う。

「ああ、今のは冗談だったのね。」

「ふう、雰囲気まで変えるなんて大したものだ。」

ミサトに続いてアスカと加持が言う。

「そうよね。リリスの魂はレイなのだからそんなわけないわよね。」

リツコもそのように納得したようだ。

そんな様子の皆にリリスが膨れていた。

「む~。」

「やっぱりそうなるか。」

(まぁ、冗談に聞こえるのが当たり前か…)

膨れるリリスを横目にちらりとシンジを見た。

(……どうやらシンジはわかっているみたいだな。)

シンジはじっとリリスを睨んだままだった。

「ほら、レイ。いい加減にしないとシンちゃんが怒るわよ。」

「そうね。こんな冗談はやめてほしいわ。」

「冗談じゃないわ。私はリリスよ。」

(……あれしかないのか?)

それをした後にリリスにたらふく食わせねばならないと思うと正直しんどく思うが、それが一番手っ取り早いとも思っていた。

どうやらリリスも同じことを考えていたようだ。

「あれが一番早いかしら。」

「……だな。」

「大丈夫だとわかってるけど……」

と言うとリリスはため息をついた。

「しょうがないわ。やりましょう。」

と言ってリリスはコウスケから離れる。

それを見たコウスケはグロック17を取り出しリリスに向けた。

「ちょ、こ……」

ミサトが止めようとするが構わずに発砲する。

銃弾はATフィールドで防がれた。

「今のは……」

「ATフィールド?」

「……使徒!?」

とっさにシンジ以外の皆が身構えた。

「ちょっと待て。そう身構えることもない。」

「そうよ。あなたたちリリンを殲滅するつもりはないわ。」

「……それもそうね。そのつもりならコウスケ君が無事であるはずないものね。」

「リツコ!?」

「だな。何より綾波がリラックスしている。」

そう言うと加持は構えを解いた。

「……確かに敵対する意思がないみたいね。」

アスカも納得してくれたようだ。

それにミサトも消極的ながら同意した。

コウスケはそんなミサトを作戦本部長としては正しいと認識していた。

「それで……リリスだっけ? 本当にそうなの?」

「ええ。」

ミサトの問いかけにリリスが答えると話し始めた。

セカンドインパクトのことはさすがに避けていた。

話を聞き終えたリツコが呟くように言った。

「信じられないわ……」

「信じられないも何も現実に起こっているんだ。」

「まっ、あたしたちと敵対しないならいいんじゃない?」

「そうね。」

皆が納得してくれる中、一人だけ沈黙していた人物が口を開いた。

「………綾波はどうしたんですか?」

そう言うシンジは不安で彩られていた。

「レイならちゃんといるわよ。」

「………」

「レイも嬉しかったみたいね。……私の碇君はわかってくれた……だって。」

「へ?」

「だから、私の碇君はわかってくれた……そう言っていたわ。」

それを聞いた皆は

「リツコ、聞いた?」

「ええ。」

「私の碇君ですって。」

「ほう、レイちゃんも言うじゃないか。」

などと言うものだからシンジが赤くなってしまう。

「何? ……言っちゃダメだったの?」

不思議そうにしているリリスにコウスケは声をかけた。

「どうした? リリス。」

「レイが動揺しているわ。今更、隠す必要もないのに。」

するとリリスは微笑みながらシンジに近づく。

「な、なんですか?」

「うふふ、あなたはこの子のことを知っても逃げずに受け止めてくれたわ。」

さらにリリスは近づいた。

「だから、そのお礼。」

と言うとリリスはシンジに唇を重ねる。

それはどれほど続いたかわからない。

ただ、コウスケにはえらく長く感じた。

リリスがシンジから離れる。

「……はっ! 何をするんですか!」

シンジが慌てて飛びのいた。

「だから、お礼よ。……もしかして間違ったのかしら? この前テレビを見ていた時こうしてたわよ。……あら?」

リリスが困ったというような顔になった。

「この子嫉妬してるわ。……安心して、あなたの碇君は取らないから。」

と言うとリリスは微笑んだ。

「……綾波。」

加持が声をかけてきた。

「………なんだ。」

「どうしたんだ?」

「何の事だ?」

「お前……わかってないのか? 今、ものすごく怖い顔してたぞ。」

「……目の前で娘の接吻を見せつけられたんだ。……当たり前だろ。」

「リリスだろ?」

「レイの体だ。」

「……そう言うことにしよう。」

加持は妙に納得したという顔になっていた。

(それ以外にいったい何があると言うんだ?)

そう納得したいのだが、なぜか納得しきれない自分がいることに妙な感覚を覚えるコウスケであった。

「コウスケ君? これって最重要の機密事項ではないの?」

シンジたちのやり取りを横目で見ながらリツコが聞いてきた。

「ああ、これはSSS級に属するよ。」

コウスケから出た意外な言葉にミサト、リツコ、加持が体をこわばらせる。

「SSS級って噂だけだと思ったけど本当にあったのね。」

長年NERVにいたアスカはどこか暗い顔をしながら言った。

一方シンジだけはその意味が解らないようだった。

「……SSS級は書類、データに記録することも許されないことなのよ。」

「つまりは自分の頭だけに留めておけってことさ。」

リツコが言うことを加持が簡単に説明する。

「それを破ったらどうなるんですか?」

シンジの問いに

「消されるのさ。」

とコウスケがあっけからんと答えた。

「消されるって……」

「そのままの意味だよ。」

シンジの顔が驚愕に入れ替わった。

「そんな……じゃあ、コウスケさんは……」

「それをコウスケ君がわかっていないはずないじゃない。いったいどういうつもりなのかしら?」

リツコは淡々と言っているようだが、どこか上ずっているようにも聞こえた。

「リリスに関することはすべて俺が握っている。それにお前さんたちにはいろいろ話してるからな。後で下手に漏れるよりはここで話した方がいいと判断したのさ。」

「……なるほどね、さすがのコウスケ君もそこまで無鉄砲じゃないか。」

と言うミサトは加持をじっと睨んでいた。

「なんだよ。俺だって……」

「フリとはいえ三足足袋をやってるあんたにそんなこと言える?」

「そうね。」

「リッちゃんまで……」

そう言うと加持は降参だと言いたそうであった。

それを見届けたコウスケは続ける。

「それに……」

「それに?」

ミサトはコウスケが何を言うのか興味津々で聞いてくる。

「こいつは意外と可愛らしいところもあるんだ。だからみんなにも紹介しても損はないと思ったのさ。」

一瞬で皆が固まった。

いや、リリスだけは

「可愛いなんて……」

と言いながらもじもじしている。

ミサトが皆よりいち早く回復した。

「……あ、あんた、何言ってるのかわかってる?」

「ああ。」

それを聞いた加持が横から口をはさんだ。

「それはレイちゃんを娘のように思っているのと同じか?」

「それ以外に何がある。」

「本当にそうか?」

加持がニヤニヤと笑っている。

「なんだ? 何をにやついてるんだ?」

コウスケがそう言うと加持が驚いていた。

「……そう言うことか。」

と言うと加持は一人で納得していた。

「そうなのよね。コウスケってそう言うところは鈍いから。……好きだって言ったのに全然気づいてくれないし………」

それにアスカが飛びついた。

「あんた! 本当に言ったの!?」

「そうよ。」

「……コウスケ君は何て答えたのかしら。」

リツコが言うが、いつもの冷静な口調ではなかった。

(何なんだ? 何かあったのか? 赤木。)

と内心では思うがあったことをそのまま答えることにした。

「ん? 嫌いではないと答えたよ。リリスは俺を信頼してそう言ってくれるんだろ。」

そう言うとリリスはため息をついていた。

「どうしたんだ? リリス。」

「……何でもないわ。」

それを見たリツコが

「……なるほどね、まだ勝算はあるわ………」

とつぶやく。

「いいの? このままだとあの二人に取られるわよ。」

などとミサトはアスカに囁いているのが聞こえた。

「べ、別にいいわよ!」

アスカが真っ赤になりながら叫んだ。

そしてちらちらとコウスケ見ているのだ。

「なんだよ。」

「何でもないわよ!」

そう言うとアスカはリリスに向かって

「これからよろしく!」

と強めの口調で言うのであった。

「私も……これからよろしく頼むわ。」

リツコも続けているが、どこか不自然に聞こえた。

「うふふ、よろしく。」

リリスはにこやかに答える。

だが、三人を中心に何やら嫌な空気が流れ始めたのをコウスケは感じた。

「……何なんだ?」

「僕にもわかりません。」

コウスケとシンジは首を傾げながら、ただただこの空気を嫌なものとして感じていた。

「……ねぇ、コウスケ君……本当にわかってないのかしら。」

「だろうな。」

「他人のことはすぐにわかるのに?」

「自分だからわからないんだろ。それに……」

「それに?」

「綾波自身、自分のことをわかってないみたいだからな。」

「それって……」

「そう言うことさ。」

完全に傍観者になっていた二人であった。




コウスケ争奪戦勃発?
なんでこうなったのかは私でもわかりません。
確か思いつきだったことは覚えているんですけど…

今回のおまけはちょっと珍しいかな?
……おまけの中に作者の本音が混じっているなんてことはありません。
あくまでも冗談の一つです。
そう言うことにしてください。

おまけ
つかつかと少し早歩きでNERVの通路を歩く人物が一人いた。
その人物を知っているものならその歩き方はらしくないの一言で足りる。
だが、その人物が歩いたところの気温がかなり低く感じることから誰も触れることがない。
そしてそれを追いかける少年が一人
「待ってよ! 綾波!」
そう、つかつかと早歩きで歩く人物は綾波レイであった。
いつもならその声を聞いて振り返るのだが、まるでシンジの声が聞こえないかのように歩いていく。
この時のレイを一言で言うならば怒りの一言であろう。
何故、彼女は怒っているのか
それを知るためには少し時間を遡らないといけない。
・・・

コウスケによる衝撃的な発表が終わり、シンジたちはいつものごとくシンクロテストを行った。
この時すでにレイとリリスは入れ替わっている。
シンクロテストが終わりチルドレン三人は帰ることになった。
アスカは先に帰ってしまい、必然的にシンジとレイの二人で帰ることになる。
と言うよりはアスカがそのように仕組んだのだが……
この時のレイはさほど怒っているわけではない。
リリスがシンジにキスしたことは確かに衝撃的だったが、シンジからしたものではなく、またリリスもお礼以外に他意がないことから嫉妬の炎は収まっていた。
そんなレイがシンジに
「リリス、どうだった?」
と聞いたのだ。
人ではなく自分の中にいるリリスを受け入れられるのか
そういう意味でレイは何となく聞いてみただけなのだ。
だが
「……表情豊かな人で可愛かった。」
などとシンジはぼそりと口走るのであった。
シンジに他意はないこともないが、この時の言葉はただ単に思っていることがそのまま口に出てしまった。
そしてそれはロンギヌスの槍のようにレイの心にグサリと突き刺さるのであった。
・・・

時は戻る。
シンジは何とかレイを捕まえることができた。
「綾波……その……ごめん。」
「……どうして謝るの?」
「綾波が怒っているから……」
「どうして私が怒っているのかわかる?」
「………」
「……もういい。」
それを言うとレイは再び帰ろうとする。
「待ってよ!」
とっさにシンジはレイの腕をつかむのに成功する。
「なんで綾波が怒ってるのか本当にわからないんだよ。」
この時、作者はシンジを抹殺しようかと思ったことは余談だ。
このシンジを抹殺して実はシンジもクローンがあったなんて話を二分間、真剣に考えたとか考えなかったとか……
………書いたのは自分なのを棚に上げて………
「………私は表情がない……だから可愛くない……」
小さな声で悲しそうにレイは言った。
シンジからはレイの表情が見れなかったが、何がレイを怒らせたのかはっきりとわかった。
わかってもらわねば私が困る。
じゃないとこの続きが書けないのだから……
「ごめん……僕が無神経なことを言ったね……でも……」
と言うとシンジはレイを振り向かせてレイの唇を奪うのであった。
……本気で抹殺しようかな………
レイはシンジの行動に驚いていた。
シンジが唇を離して
「こんなことしたいと思うのは綾波だけだよ。」
などと言うのであった。
レイは真っ赤になり何も言えなくなってしまう。
そんなレイにシンジが言う。
「それに綾波は十分に可愛いよ。」
「……何を言うのよ………」
とにかくレイの心をつなぎとめることに成功したシンジであった。
しかし、レイとシンジのキスを見ていた者がいた。
シンジの親ではなく、またシンジの保護者でも同居人でもない。
潔癖症の二尉でもないし、その師匠でもない。
ただ言えることはその人物は特殊な階級を持つ者とだけは書いておこう。
シンジの命もあと少し………?
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