レイの見合いが終わった後、コウスケはゲンドウから衝撃的な事実を聞くことになった。
使徒の数は不明
ゲンドウからその話を聞いたコウスケは酷く落胆することになる。
次の第十七使徒ですべてに決着がつくと思っていたからである。
そのことをリリスに問い詰めて事実であることを確認していた。
なんでそれを早く言ってくれなかったのかと言いたかったが、すまなそうに暗く俯いている彼女を目の前にしてそんなことを言えなかった。
だから、体を僅かに震わせているリリスにコウスケは言った。
「それを知ってお前さんを嫌うとでも思ったのか?」
「で、でも……」
「隠し事なんて人なら絶対にあるもんだ。たとえそれが………」
そこまで言ってコウスケは頭をぼりぼりと掻き始めた。
コウスケの視線が少しリリスから逸れていた。
「ふ……夫婦だとしてもだ………」
その時の綾波コウスケを一言で表すなら、よく熟れた「ふじ」であった。
「ふじ」とはりんごの品種の一つである。
そんな様子のコウスケにリリスはふっと微笑む。
「やっぱりそっちの方が………」
コウスケらしくなく最後にごにょごにょと喋っていた。
「え?」
「い、いや! 何でもない。」
妙に慌てるコウスケをリリスはじっと見ていた。
暫くにらめっこが続くが、コウスケの方が折れた。
「…可愛いって言ったんだ…………」
これも彼らしくなくぼそりと呟くような声だった。
だが、リリスには聞こえたようだった。
「い、いきなり何を言うのよ……」
ここに観客がいたら初々しいとのコメントを残したことだろう。
だが、残念なことにこの二人に茶々を入れられるような観客は誰一人といなかった。
二人は榛名ミツヒサが呼びに来るまでそのままでいたそうだ。
・・・
ミツヒサに呼ばれたコウスケが向かった先はEVAの実験室であった。
「待っていたわ。」
管制室で待っていたリツコが言う。
「とうとう完成したのか。」
「ええ、力作ですよ。」
コウスケの問いにミツヒサが強く答えた。
「前から開発していたEVAの新兵器……マゴロク・E・ソードとマステマよ。」
そう言ってリツコはモニターに映し出された新兵器を指していた。
「マゴロク・E・ソードは日本刀みたいだな。」
「ええ、彼の高周波ブレードをヒントに作り上げたものよ。」
「いや、お役に立てて光栄です。」
そう言うとミツヒサは照れくさそうにしていた。
榛名ミツヒサが持つ高周波ブレードは彼が自分で作り上げたものだ。
そのためマゴロク・E・ソードを作る際にも彼の意見が取り入れられている。
さらに耐ATF装甲も使われており、戦車や軍艦、やりようによってはビームなども一刀両断できるとはミツヒサの言である。
「それで……これがマステマか……」
「全領域兵器マステマよ。」
リツコが誇らしげに言うが、この時コウスケが考えていたのは別のことであった。
全領域人型決戦兵器
コウスケに密かにそう呼ばれている某三佐を思い出していたのだ。
特にあの時(EX2)に使われたMCのことを……
コウスケは頭を振り払うと意識を現実に戻した。
「すごいスペックだな……でも、出来れば使わないでほしいな……」
「どうしてかしら?」
「そうですよ。使わないなんてもったいない。」
リツコとミツヒサはコウスケに不満そうな声をかけていた。
「マシンガンとソードが付いているのは理解できる……だが、なんでNNミサイルまでついてるんだよ。」
コウスケの一番の疑問はマステマについている二本のNNミサイルであった。
NNミサイルなどどう考えても第三新東京市内で使うことはできない。
やれば使徒ごと町も吹き飛ぶからだ。
そして吹き飛んだ町の管理はミサトの仕事ではなく、コウスケの仕事になるのだ。
使徒の攻撃で被害を受けたなら理解できるが、EVAの攻撃で被害を受けるなどコウスケからしてみればたまったもんじゃない。
「近、中と来たら遠距離も攻撃できるようにするのが当たり前でしょ?」
「そうですよ、綾波特務一尉。それに必殺技みたいで良いじゃないですか。」
コウスケの前で金髪の技術者と眼鏡の整備員が誇らしげにしていた。
「はぁ~……新兵器についてはわかった。本命に入ろう。」
コウスケは足を進めて特殊強化ガラスの前に立った。
ガラスの向こうには蒼く塗装されたモノアイのEVAの上半身が見えていた。
零号機である。
「こっちはなかなか骨が折れましたよ。」
「でも、本来のB型装備に比べれば数倍の戦闘力になっているはずよ。」
「……F型装備か。」
普通、F型装備とはEVAの空挺輸送用の装備のことを指して言う。
だが、コウスケが言うF型装備とはそのことでは無かった。
「正式名称はAFCエクスペリメント、対SEELE決戦用装備……各EVAをそれぞれ特化改装したものよ。」
「まさしく決戦用の秘密兵器……いや~、碇司令も男のロマンがわかる方なんですな。」
ミツヒサの言葉にコウスケは絶対違うと心の中で反論していた。
「それで、零号機は……」
「見ればわかる……砲戦特化型なんだろ?」
コウスケの目に映る零号機はいつものスマートなフォルムではなく、右腕に大きなライフルが付いていた。
ライフルの名称は
重粒子を浸食型のATフィールドで包み込み、それを反発型のATフィールドとの間に生まれる反発力で打ち出す兵器である。
理論上ではこの装備のみでヤシマ作戦を行えるらしく、使徒が持つATフィールドに対し絶大な威力を発揮すると期待されている。
しかし、単独でATフィールドを展開させる装置がない。
それをEVAとドッキングさせることでその問題を解決したのだ。
「はい。初号機は装甲強化と武装の追加、弐号機は運動性の強化がしてあります。」
「最も弐号機はもう少し時間が掛かるけどね。」
実を言うと最初にF型装備に移行したのは初号機が最初であった。
元々計画だけは存在していたのだが、EVAの総重量が3倍になってしまった。
耐ATF装甲の開発によって幾ばくか軽くはなったものの運動性が大きく犠牲になってしまった。
それが解決できなかったのだが、リリスが現れたことにより状況が一変したのだ。
ATフィールドの応用
それは人類には全く未知の領域であったのだが、リリスの協力によりフィールド偏向制御運用に成功することになる。
そのため現行では不可能とされていたF型装備の開発に成功することになる。
そして初号機のF型装備が実装された後、零号機の改装、今は弐号機の改装が行われているということだ。
だが、あれほど嫌がっていた実験にリリスが参加するなんてコウスケに取っては不思議でならなかった。
その疑問にリツコが答える。
「あなたが乗るSu-37の改装……二人乗りにしてくれと頼まれたのよ。」
それを聞いてコウスケはようやく納得できた。
Su-37LCに改装される数日前から妙にリリスの機嫌がよかったのだ。
それに改装にあたってゲンドウから直々に言われたことを覚えている。
「この改装は必ず成功させねばならない。」
耐ATF装甲のテスト運用程度にしか考えていなかったコウスケはここで初めてゲンドウの思惑に気付いた。
「大凡の経緯はわかった。でも……」
コウスケは視線を真横に向けた。
「レイが納得していないようだな。」
視線の先には暗く俯いていじけているレイの姿があった。
レイはコウスケよりもガラスに近いところに佇んでいた。
実を言うとコウスケはこの部屋に入った時からレイがいることを知っていたが、何故か暗く俯いていたので声をかけられずにいた。
コウスケはレイに近づく。
「どうしたんだ? 零号機が改装されたのに嬉しくないのか?」
レイは何も答えなかった。
ただ、視線が一か所に固定されているのはわかった。
「新兵装が気に入らないのか?」
そう思っていたコウスケはレイから意外な返答を得ることになる。
「……足が無い……」
「足?」
不審に思ってコウスケはガラスの向こうを覗き込んだ。
「………なんだ? あれ………」
コウスケの目に入りこんできたのは零号機の青い足……
ではなく、本来ならば右足があるはずの場所に銀色のパイルバンカーのようなものがあった。
「何って零号機の固定装置よ。」
「天使の背骨はかなりの反動がありますからね。」
二人がやはり満足そうに言う。
「……あれじゃ、歩けないだろ。」
「ええ、自走はほぼ不可能よ。」
「陸戦兵器なのに歩けなくしてどうするんだよ!」
不意にミツヒサの眼鏡がきらりと光った。
「わかっていませんね。足なんてただの飾りですよ! 偉い人にはそれがわからないようですね。」
「なら、飛べるのか? それとも浮けるのか?」
「そんなわけないじゃないですか。EVAはモビルスーツではないんですよ?」
ミツヒサの答えにコウスケは人知れず汗をかいていた。
空を飛んで移動できるなら足が要らないというのも理解できるが、飛べない上に自走もできないEVAはただの的なんじゃないか
そんなことをコウスケは考えていた。
ただ、モビルスーツと言う単語にはどこか聞き覚えがあった。
ミツヒサの言葉を聞いたレイがぽつりと喋る。
「歩けない……固定砲台…………的?」
どうやらレイもコウスケと同じ考えにたどり着いたようだ。
レイはより一層、暗く俯いていた。
「お気に召さなかったようね。」
「レイさんにはまだまだ理解できないようですな。」
(どう見たって大艦巨砲主義……俺にも理解できないぞ。)
それを内心だけで留めるコウスケであった。
「レイが嫌がってるんだから元に……」
「戻せないわよ。」
コウスケの思考を読んだリツコが遮った。
「EVAの第一素体から新調したんですから戻すにも時間、追加の予算が掛かるわよ。」
「そうですよ、いくら綾波特務一尉の命令だとしてもお断りです。私たちの努力の結晶を無にする気ですか?」
そう言われてはコウスケも何も言い返せなかった。
そしてこのF型装備を開発するために巨額の予算が投入されていることも知っている。
それで冬月の頭が少し後退したことも……
「ですから、何とかレイさんを説得してください。」
「俺に押し付けるなよ。」
「私たちは開発を頼まれたけど、パイロットの説得までは言われてないわ。」
「それにこういうことは綾波特務一尉の方が適任ですよ。」
コウスケは折れることにした。
ここで抵抗しても今度は総司令執務室に呼ばれるだろうことは容易に想像できたからだ。
ゲンドウと冬月のことは嫌いではないが、あの暗い部屋は嫌なのだ。
コウスケはため息を付くと娘の説得に向かうのであった。
「あ~……よかったじゃないか。」
レイは答えない。
「ほ、ほら、あのライフルだってかっこいいじゃないか。」
「……でも、歩けない……」
「反動で吹き飛んだら大変だろ?」
「……零号機……気に入ってたのに…………」
その感情はコウスケには痛いほど理解できた。
ここ一年ほどだが、レイは基本的に零号機と共にあった。
使徒が現れれば零号機と出撃し、起動実験もほとんど零号機をメインに行ってきたのだ。
以前のレイならいざ知らず、今のレイが零号機に対して何らかの愛着が湧いたとしてもおかしくなないだろう。
コウスケだってSu-37が勝手に複座型に改造された時は憮然としていたのだから……
とにかくコウスケは必死に考えた。
なんとか平行線を崩すしかない。
「……歩けないんだったら誰かに運んでもらうとか……」
それにレイがピクリと反応する。
「それに零号機単体だと危ないから護衛が必要だよな。」
「……護衛………」
「そうよね、動けない零号機は誰かに守ってもらわないといけないわね。」
コウスケの後ろではリツコがそのように呟いていた。
この時、コウスケの脳裏に浮かんだのは今の零号機だけでヤシマ作戦が行えるということだった。
「ヤシマ作戦の時はシンジ君を守ったんだから……今度はレイが守ってもらえばいいじゃないか。」
「そうね、アスカでもいいけど……」
「それだとせっかくの高機動型がもったいないですからね。」
二人がコウスケを援護するように言った。
レイははっとコウスケを見る。
レイの瞳が揺れ動いている。
今までの零号機とシンジに守ってもらうことがレイの中で天秤にかかっているのだろう。
「コウスケ君……少女の恋心をうまく使ったわね。」
「さすが綾波特務一尉。えげつないですな。」
(外野は黙ってろ!)
内心で悪態をつくコウスケにそんな気は全くなかった。
だが、客観的に見れば二人が言うことの方が正しい。
それを自覚してしまったコウスケは何とも言えない罪悪感を感じていた。
「………零号機……ごめんなさい……」
レイは零号機に頭を下げていた。
零号機は碇シンジに敗北した。
レイの中ではやはりシンジの方が上だった。
コウスケは物凄い後味の悪さを感じていた。
ふと零号機を見ると、何となく俯いているように見えた。
・・・
この時期になってEVAの強化が進められているのは気まぐれと言う無責任なものでは無い。
先に現れた第十四使徒
その使徒に対しNERVは持てるだけの戦力を持って対峙した。
その結果が敗北
かろうじて初号機の覚醒によって使徒を殲滅するもその被害は甚大であった。
それに対する作戦局と技術局の議論の結果、圧倒的な火力不足があげられることになった。
もともとEVAはどんな戦況でも対処できるようになっている。
その汎用性が今まで使徒に対する多様な作戦を可能にしてきていたが、それが崩れてしまった。
そのため各EVAの互換性を犠牲にしてでも特化改装することによって役割の分担と火力の向上を図ったのである。
それが今になって実を結んだということだ。
そしてこれが表向きの理由である。
コウスケを含む一部の上級職員たちにはそれが理由でないことを知っている。
先にリツコが言っていたようにF型装備はもともと対SEELEように開発されたものである。
コウスケがNERVに来る以前より開発が進められていた。
SEELEとは既に和解しており、SEELEと決戦ということにはならない。
…………はずだった。
・・・
『碇、ルシファー……急に呼びだててすまぬ。』
ゲンドウとコウスケの前にいる01のモノリス‐キールがそのように言った。
「急を要することと聞きましたが……」
ゲンドウとコウスケはキールから急な呼び出しを受けていたのだ。
ふとコウスケは違和感を感じていた。
「……何人かいないようですが………」
数字が足りないのだ。
数えてみると3、5、8、10、11、13が消えていた。
『……SEELEで造反者が出たのだ……』
キールが苦々しい声で言う。
「造反者ですか?」
『左様。これは忌々しき事態だよ。』
『SEELEの実権は既に我々には無い。』
『気付いたときには手遅れであった。』
他のモノリスからも苦々しい声が出ていた。
「……計画的なものだったということですか。」
モノリスの言葉を聞いたゲンドウが口を開いた。
「……実行犯は誰なのでしょうか?」
『……13だ。』
コウスケはSEELEの13であるミカエルを思い出していた。
カヲルの遺伝子提供者であるミカエル
初めて出会ったときには妙な男だと思っていた。
「それでここにいないメンバーたちは?」
『遺体が発見された。』
『それに伴い人類補完委員会の実権も我々から離れてしまった。』
「人類補完委員会も兼ねているメンバーが先に暗殺されたということですか。」
ゲンドウが重く閉ざしていた口を開いた。
「議長、よく無事でしたな。」
『偽造した戸籍が役に立っただけだ。』
「それにしても、ミカエルは何が目的なのでしょうか?」
ここで反乱を起こすということは何かしらの目的があるはずだ。
そう思って聞いたコウスケは周りが静まり返っているのに気が付いた。
「どうなされたのですか?」
『ルシファーよ、ミカエルとは誰だ?』
キールの言葉にコウスケは疑問符しか浮かばなかった。
「誰って……13ですよ。」
『何を言っている。奴はミハエルだ。』
キールの言葉を聞いた他のメンバーが口を開いた。
『議長、彼はマイケルではないのですか?』
『ミシェルと名乗っていたぞ。』
『私の時はミゲルと名乗っていた。』
場が騒然としていた。
「どういうことなんだ……」
コウスケも混乱していた。
彼は確かにミカエルと名乗っていた。
だというのにSEELEのメンバーからは次々と違う名前が挙がってくるのだ。
『静粛に! ……ともかく13の造反は事実である。おそらく奴は人類補完計画を再び進める気だ。』
「それは意味がない物だということは……」
『わかっているはずだ。だが、奴がここで離反するということはそれ以外にあるまい。』
『人類補完計画……碇君の協力もそうだが、彼の協力なしに計画を立てることは不可能だった。』
『セカンドインパクト後に突然現れた奴は人類補完計画を強く推し進めていた。』
『左様。まさかここまで固執していたとは……』
コウスケは深く考え込むことになる。
意味がないと知っていながら人類補完計画を進める理由はいったい何なのか
ゲンドウが再び口を開いた。
「……おそらく、リリスを神にしたいのでしょう。」
たった一言であるが、ゲンドウが何を言いたいのか理解できた。
『バカな! 我々に具現化された神など不要である。』
『それに今のリリスはそんなことを望んでいない。』
『左様。しかし、碇君の言うことが彼が目的としていることなのかもしれん。』
コウスケには全く理解できない。
今のリリスは人として生きることに価値を置いていることはコウスケが一番わかっていることだ。
だというのにリリスを無理やり神なんてものにしようなどと何故考えるのか
そうすれば自分は神の使いとして生きられるとでも思っているのか
コウスケは自分の内側で荒れ狂う怒りを抑え込むのがやっとであった。
『ともあれ、ルシファーよ。奴の目的がリリスの神への道だとすれば、君が直接狙われるだろう。』
『リリスに一番近い君に何かがあればリリスが黙っておるまい。』
『それに奴が開発していた新型のダミープラグとEVA量産機……』
『奴が直接NERVに攻め込んでくることもありうる話だ。』
『人類補完委員会の実権がない今、NERVの予算も大きく削られる可能性もある。』
『我々もできうるだけ支援するが、あまり期待しないでほしい。』
SEELEメンバーたちの言葉にさすがのコウスケも厄介事だなんて言ってられなかった。
『SEELEが離れてしまった以上、我々もSEELEでは無く新たなる組織を立ち上げる。』
『目的はSEELE所属のEVAの殲滅と離反した13の人類補完計画遂行の阻止……』
『彼我兵力差は1:3……』
「……あまりにも分が悪い。」
コウスケは思わずそう呟いた。
「だが、ここで負けるわけにはいかん。」
ゲンドウが隣で強く言っていた。
『そこでルシファーよ。』
「何でしょうか?」
『新たなる組織を立ち上げる以上、組織名が必要だ。それを君に決めてもらいたい。』
コウスケは少し考え込んだ。
名前は体を表す
そんな言葉がコウスケの頭に浮かんだ時、一つの単語が浮かび上がった。
「意思……リリスは人として生きることに意味を見出しています。その意思を俺は守っていきたい。」
『意思か……わかった。』
キールは少し間を開けて続けた。
『これより我々は「WIILE」と名乗る。異存があるものはいるか?』
他のモノリスから声が上がらなかった。
『良かろう。碇、ルシファー、困難な戦いとなるが……』
「わかっております。」
「負けるつもりはありませんよ。」
『うむ……これにてSEELE……いや、WIILEの会議を終了する。具体的な案は後日、再び討議することにする。』
・・・
予期されるミカエルの襲撃
新型のダミープラグとEVA量産機
ミカエルが襲撃してくるとすればそれらが用いられることが容易に想像できたからだ。
そして襲来する使徒
この双方に対処するためにEVAの改装が急務となったのだ。
EVAの改装にはWIILEから送られてきた資金が投入されている。
既に人類補完委員会からの資金はかなり縮小されており、EVAどころか第三新東京市が吹き飛んだら修復などとてもできない予算となってしまった。
コウスケは自分の執務室でこれから起きうることに対する方法を考え込んでいた。
「どうしたの?」
声がした方にコウスケが顔を向けるとリリスが心配そうな顔でコウスケを見ていた。
「……お前さんは神になりたいか?」
「神? そんなもの望むわけないじゃない。」
「そうか……そうだよな。」
「そんなものより、コウスケが無事でいてくれる方が嬉しいから。」
そう言うとリリスは屈託のない笑顔をコウスケに見せる。
コウスケは思わず赤面し、顔をリリスとは反対の方に向けた。
リリスは純粋にコウスケに向けて好意を表してくる。
それがコウスケに取っては嬉しいことでもあるが、あまりにも直球で表してくるのでやはりどこか恥ずかしく思ってしまう。
だからこそコウスケはリリスを選んだわけであるが……
リリスがコウスケに見せる喜怒哀楽
それを守っていきたい
永遠とは言わない
コウスケとて寿命には勝てないからだ
だからこそ今ここにある笑顔を守りたい
それが堕天使の名で呼ばれる男の
F型装備は出す予定ではありませんでしたが、画像を見てどうしても出したくなりました。
WIILEが出てきましたが、空中戦艦などは出ません……
今回のおまけは
コウスケのWIILEが変に発動されてしまう
そんなお話
おまけ
総司令執務室
ここに加持リョウジが急に呼び出された。
「それでご用件は何でしょうか?」
加持はそう言うものの全く心当たりがなかった。
「うむ、加持三尉……」
ゲンドウの声に身が固くなるのを加持は感じた。
ここにきてどこかに潜入して来いなんて言われると思ったからだ。
だが、ゲンドウから出た言葉は意外すぎるものであった。
「リリスに手を出していないな?」
一瞬、何の事かと耳を疑ったが言われたことをもう一度思い返した。
「そんなことをしたら綾波に命を狙われますよ。」
「ならば良い。」
おどけながら言う加持に対してゲンドウと冬月は心底疲れたような感じであった。
「僭越ながら、何があったんでしょうか?」
「よく聞いてもらいたい。今後、どのようなことがあってもリリスに手を出してはいかん。」
そう前置きを言いながらゲンドウは喋り始めた。
・・・
ゲンドウと冬月は総司令執務室で将棋を指していた。
これはゲンドウから対局を挑んだのである。
前にゲンドウはコウスケに見事に将棋で敗北したため、そのリベンジをするためである。
最も暗くなっているゲンドウを見ればどのような結果であるかは一目瞭然であるが……
「妙に騒がしいな。」
冬月が手を止めてそのように言う。
ゲンドウも耳を澄ましていた。
よくは聞こえなかったが…
「俺の邪魔をするな!」
と言う男の声が聞こえてきた。
すると黒服が一人入ってきた。
「いったいどうした。」
冬月がそう投げかけると黒服はらしくもなく慌てていた。
「碇司令! お逃げください!」
「……訳を話せ。」
「あやな……」
そこまで言って黒服は吹き飛んだ。
代わりにコウスケが入ってきた。
「綾波特務一尉、どうしたのかね?」
冬月がそう投げかけるもコウスケは何も答えなかった。
「綾波特務一尉?」
どうもコウスケの様子が変であることを認識する二人
「……ここにいたか……碇ゲンドウ……」
その声はとても低く、そら恐ろしい声であった。
そして妙に殺気立っていた。
「い、碇! 何をしたんだ!」
「私は何もしていない!」
ゲンドウにはコウスケを怒らせるようなことなど身に覚えはない。
「仮にも総司令ですからね……半殺しで許してあげます……」
「ま、待て! 訳を……」
「美しく残酷にこの大地から往ね!」
そう言ってコウスケはゲンドウに襲い掛かった。
・・・
コウスケがここまで激怒している理由を知るには少し時間を遡らなくてはいけない。
コウスケが暴走する少し前
綾波家にて
コウスケはいつも通りに起きると真横で寝ているリリスを起こした。
「おはよ……」
いつもなら寝ぼけながらも挨拶をしてくるリリスが固まっていた。
「どうしたんだ?」
リリスは何も答えない。
視線が一点に集中しているようだった。
「おい……」
「………ひげ………」
リリスがそう呟いた時、コウスケは顎を手で触って確認した。
「あ~、出てきたか。」
コウスケとて男である以上、それは避けられないことである。
なるべく処理するようにしていたが、ここ最近は少し手抜きをしていた。
だが、そんなことよりリリスの様子がおかしいことに気付いた。
「どうしたんだ?」
リリスはぶるぶると震え始めた。
「……ひげ……ひげが………」
「ひげがどうしたんだ?」
「……ひげ………ゲンドウ………いや!!」
そう言って身を縮こまらせて一層震えるリリス
「碇司令がどうしたんだ!」
「いや……ひげ……ゲンドウ……止めて!!」
実を言うとこれはリリスがレイと同化していた時の記憶である。
一人目のレイに対しゲンドウは自慢の髭で頬擦りをしたことがあるのだ。
最もその時は今ほどの立派なものでは無いが……
その時の感触がレイと同化していたリリスにとっては嫌なものとして記憶されていたのだ。
ちなみにレイも髭は嫌らしい。
とにかくリリスはコウスケに髭が生えているのを見てその時の感触を思い出し、嫌がっているということだ。
余談になるが、リリスはゲンドウを見るときに髭をわざと見ないようにしていた。
だが、コウスケにそんなことはわからない。
そしてコウスケはたちの悪い想像に駆られてしまった。
リリスがゲンドウを嫌がって泣いている
リリスは女でゲンドウは男
女性が男性を嫌がっている
そしてリリスはレイをもとに体を構成している
その大本はゲンドウの妻である碇ユイ
そして碇ゲンドウには女性関係で前科がある
そこまで考えが及んでコウスケがたどり着いた結論
碇ゲンドウがリリスに手を出した
それはコウスケが暴走するのに十分な理由となってしまった。
・・・
「そういうわけなのだ……」
ゲンドウはほどほど疲れたというような声で言う。
加持は人知れず冷や汗をかいていた。
「しかし、よくご無事でしたな。」
「リリスが後から駆けつけて説明してくれたからだ。」
ゲンドウは少し震えていた。
その時のコウスケの様子を思い出したからだ。
「とにかく、リリスには手を出すな。」
「り、了解です。」
加持は心の中で手を出さなくて本当によかったと思ったそうだ。
・・・
ちなみにコウスケは独房に入れられそうになったが、それではコウスケがいない寂しさでリリスが暴走すると考えられたため始末書で何とか済まされたそうだ。