NERV航空隊隊長綾波   作:浩介

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第4話 綾波の一日

チッチッチッ

部屋の中には時を刻む音のみが支配していた。

カチッ

ピピピピピピピピピピピピピピピ

ピッ

チッチッチッ

「朝か…」

少々忌々しげにコウスケは目を覚ました。

時刻は5を差していた。

・・・

 

綾波コウスケの朝は早い。

5時には起床、のちにランニングへと向かう。

これは軍人になってからの習慣で彼には欠かせない日課になっていた。

20分のジョギングと40分の走り込みを終えて帰宅、のちにトレーニングを30分ばかり行う。

朝のトレーニングが終わればシャワーを浴びる。

身長は165㎝とさほど高くはないが、引き締まった体に無数の傷が彼が歩んだ人生の軌跡が決して楽ではないことを教えてくれる。

シャワーの後は食事、満腹になるまで食べない。

満腹になった腹に銃弾を浴びると腹膜炎を起こす可能性が高まるからだ。

これもコウスケの習慣の一つだ。

この地点で時刻は8時

新しく支給された制服を身にまといテレビをつける。

ニュースをメインにチャンネルを変え様々な情報を得る。

とはいっても真実とはかけ離れ、各テレビ局が得られた情報をもとに無責任な推論をそれっぽく語っているだけであるが

コウスケはテレビを消した。

灰皿には3つの吸い殻が残っていた。

時刻は8時半

コウスケは出勤するために玄関へと向かった。

玄関にはかつての戦友たちの写真が誇らしげに飾ってあった。

・・・

 

10時には辞令と階級章を受け取った。

そのあと愛機のもとに行き今日も健在であることを確認する。

格納庫には愛機のほかに見当たらない。

なぜなら航空隊と言っても一人しかいないからだ。

タイヤ、銃口、翼、コックピット

様々な場所を整備員とともにチェックしていく。

機体の次は武装のチェックを行う。

戦闘中に武装でエラーなど死んだも当然だ。

そのため念入りにチェックを行う。

異常なしと結論付け整備員にお礼を言い、格納庫を後にする。

時刻は正午を示している。

・・・

 

食堂は人であふれかえっていたが、一人分のスペースを確保するなど簡単なことであった。

彼の前にはカレーライスが一つ

NERVに来て間もない彼はとりあえず当たりはずれの少ないメニューを注文することにした。

料理に特に感心することもなく食事を進める彼の前に紅いジャケットが立っていた。

「おはよう。綾波君。」

「……おはよう。葛城。」

「前いいかしら。」

「どうぞ。」

ミサトはコウスケの前に座った。

「あんだけ飲んだのに……化け物だな。」

「失礼ね。あんなの飲んだうちに入らないわよ。」

「……15本空けたのにか?」

「あら、あれでもセーブしたのよ?」

「まじか……」

ケロッとしているミサトを見るとおそらく本気なのだろう。

(飲み比べでこいつに勝てる奴がいるのか?)

ミサトの体は90%ビールで出来ているのではなどと本気で思案していた。

「どう? もう慣れた?」

「慣れたも何もまだ2日目だぞ。」

「それもそうね。」

「ここの地理を一日も早く覚えんとな。」

「そうよね。ここって複雑すぎるのよね。」

「確かに。一般人をここに放り込んだら三日は出てこれんな。」

「まっ、テロ対策のためにこうなってるからね。」

「そうだな。テログループにあっさり発令所を落とされましたなんて冗談にもならんからな。」

「慣れるしかないわね。」

そういって食事を再開する。

「そういや、昨日の様子から見るとお前、家事をシンジ君に押し付けてるだろ。」

「うっ……」

「もしかしてできないのか?」

「失礼なことを言わないでよ!ただ、ちょっち………」

「つまりはできないんだな。」

「………」

ミサト轟沈

「なんにせよ、過労でパイロットが倒れましたなんてならないようにな。」

「わかってるわよ!」

できないことを指摘されてちょっと興奮気味のようだ。

コウスケは話題を変えることにした。

「……綾波レイってどういう子だ?」

「あら、綾波君も興味あるの?」

「……何を考えているかは知らんがそういう対象ではないからな。」

「ちぇっ。」

「おいおい、俺を犯罪者にしてうれしいのか?」

「違うわよ。ただそうなったら面白いななんて思っただけで…」

「はぁー………」

(まったくこの女は…)

「……綾波君って呼び方も彼女とかぶってるな。だからコウスケでいい。」

「わかったわ。コウスケ君」

「それでレイはどういう子なんだ。」

「昨日シンジ君には自分で確かめろって言ったじゃない。」

「ああ、シンジ君は初対面だろう?だから変な先入観を持たせたくなかったんだ。」

「ふーん。」

「で、昨日俺は綾波レイにあったんだが……」

「?」

「いまいちつかめなかったんだ。」

「え! 碇司令に対してあんだけ語ったあんたが?」

「あまりにも透明すぎてわからなかった。だから葛城に聞いてみたんだが……」

「私もいまいちわからないのよね。」

「そうか。」

「リツコなら何か知ってるかも。あたしより長くここにいるし……あとは司令と副司令かな?」

「その二人はパスだな。となると赤木博士か…」

「リツコが一番無難じゃない?」

「そうだな。」

「ところでいいの?」

「何が?」

「時間。」

時計を見ると1時半を示していた。

「そろそろ行くか。」

「シンジ君のことよろしくね。」

「ああ。」

コウスケは食器を片付け食堂を後にした。

・・・

 

時刻は1時50分

待ち合わせの10分前だがコウスケはNERVのゲート前にいた。

これもコウスケの習慣で待ち合わせの10分前には必ず着くようにしていた。

(まだ来てないか。)

待つこと5分

「お待たせしました。綾波さん。」

「いや、今来たところだ。」

シンジはすまなそうな顔をしている。

「別に大丈夫だ。俺は習慣で時間より早く来るようにしているからな。シンジ君のせいでは無いし、時間どうりに来ているんだからそんな顔をするな。」

安堵の表情を浮かべる。

(他人のことがそんなに気になるか……父親と似ているな。)

他人に拒絶されるのが怖い二人

そういう意味では似ているのであろう。

ただ、表現の仕方が違うだけだ。

そう思うコウスケだった。

「では行くか。」

「はい。」

「そうだ。葛城にも言ったんだが、綾波では彼女と区別しにくいからこれからはコウスケと呼んでくれ。」

「わかりました。コウスケさん。」

「よろし。」

「そういえばコウスケさんは綾波レイとどういう関係なんですか?」

「赤の他人だ。」

「同じ苗字なのに?」

「DNA鑑定で他人とでた。俺もレイなんて子はここに来るまで知らなかったからな。」

「そうですか。」

そういってシンジはコウスケの後に続くのであった。

・・・

 

コンコン

「入るぞ。」

「しっ失礼します。」

シンジは緊張しているようだ。

まあ当然だろう。

自分と同じ年齢のしかも女性の部屋に入るのだ。

コウスケはベットまで近づく。

シンジも促されるように続いた。

「よう。元気か?」

「……問題ありません。」

「とりあえず元気そうだな。これ見舞い品だここに置くぞ。」

見舞い品を机に置く。

「それともう一つ…」

シンジを前に立たせる。

「ほら、緊張してないで自己紹介くらい自分でしろ。」

「さ、サードチルドレンの……い、碇シンジです。」

すこしどもっていた。

コウスケは思わず笑いそうになるが、ぐっとこらえる。

「……いかり?」

「そう、碇司令の息子だ。」

「……そう。」

(おや?)

碇司令という言葉に反応したように見えた。

(綾波レイと碇司令の関係か…)

かなり危ない考えをしたが、それはないなと切り捨てる。

臆病者であるがゆえに他者の領域に自分から踏み込むなど考えられないからだ。

もし他人の領域に踏み込んで拒絶などされたら再起不能になるだろう。

コウスケはそう評価していた。

ちなみに冬月の評価は似非紳士である。

「なにか食うか?果物くらいならいいと医者も言っていた。」

「……かまいません。」

「なにがいい?」

「………」

「………」

レイは果物をじっと見つめている。

(拒絶ではないな…この感じは……何がいいかわからないのか?)

「とりあえずりんごにするか。シンジ君。」

「はい。」

コウスケはシンジの耳の近くでささやく。

「君が剥いてやれ。」

「ええ!」

「こういう時は男を見せてやるときだぞ。」

と言って果物ナイフをシンジに渡した。

「わ、わかりました。」

ちょっと赤い。

「じゃ、俺は外で待ってるからな。」

「え!」

「何かあったら呼んでくれ。」

「ちょっ、コウスケさん!」

シンジが止めるがお構いなしに外に出るコウスケ

病室にはシンジとレイのみになった。

(さて、シンジ君はどうするかな?)

とりあえず果物できっかけを作ったが、それが途切れればシンジは逃げてくるだろう。

そうコウスケは推測した。

(15分くらい待ってみるか。)

そう思い喫煙所に向かうことにした。

・・・

 

「入るぞ」

病室に入ると相変わらず無関心のように見えるレイとどうすればいいか困惑しているシンジの姿が見えた。

(予想どうりだな。)

などと意地の悪いことを考える。

「りんごは食べたか?」

「……はい。」

「どうだった。」

「……わかりません。」

「……うまかったか、まずかったか?」

「……わかりません。」

「…………嫌だったか?」

「……いいえ。」

「そうか。」

そういってやさしく微笑むコウスケ

「あとどのくらいで退院できる?」

「……五日と聞きました。」

「わかった。」

(退院できても包帯とギプスは外れんか。)

「じゃそろそろ行くな。シンジ君行くぞ。」

「あっ……はい。」

「またな。」

「……」

「……綾波」

「……なに?」

「また来ていいかな?」

「……別にかまわない。」

「うん、じゃあまた来るよ。」

「さよなら。」

「おいおい、今生の別れじゃないんだから。」

「………」

「シンジ君、おまえならどう答える?」

「え! ……またねですかね。」

「だな。ほら言ってみろ。」

「……またね。」

「うん。」

「………」

「よし! 行くぞシンジ君。」

「はい。」

そういって二人は出ていった。

一人残されたレイはまたもや複雑な心境になったのだが、残念ながら表情に出ることはなかった。

・・・

 

「とうだった?」

「なんか人形のように見えました。」

「それを言ったら怒られたよ。」

「え! 誰にですか?」

「レイに」

「………」

「人形じゃない! …てな」

「………」

うつむくシンジ

「…おそらくレイはほかの物事に無関心なんだと思う。」

「無関心?」

「そうだ。じゃなきゃ知らないかだ。」

「知らないって、そんな…」

「あくまで憶測に過ぎないがな。」

「………」

「人はわからないことに対しては反応できないからな。誰が育てたかはわからないが酷いことをする。」

「………」

「あれでは虐待だな。」

「虐待ですか…」

「……レイを救えるのはシンジ君かもしれん。」

「僕がですか?」

「ああ、俺もできることは全力でするが、いかんせん歳が離れているからな。」

「僕なんか……」

「無断で悪いがシンジ君の経歴もある程度知っている。いい環境とは言えないな。」

「………」

「だが、傷つけられた人は痛みがわかる分他人にも優しくできる。」

「………」

「まぁ、あまり思いつめるな。時間はあるんだ。退院すれば学校で会えるだろうし、NERVでもそうだろう。ゆっくり考えればいい。俺も相談くらい乗ってやれるからな。」

「わかりました。」

「そう、ゆっくりでいい。焦ってもいい結果は出ないからな。」

(今はこれでいいか…)

途端にコウスケの顔が変わる。

「でっ、レイはどうだった?」

「へっ? どういう意味ですか?」

今、言いましたよねと言いたげだ。

「女の子としてだよ。」

「えっ……それは…その………」

「ふーん。」

「いや……あの………」

「かわいかったか。」

「……はい」

シンジはたいへん小さく答えた。

「そうか、そうか!」

「………」

「いつの間にか綾波と呼んでたし、また来ていいかと聞いてたしな。」

シンジは真っ赤だ。

「レイのことよろしくな。パイロット同士としてもそうだが、人としてもな。」

「わかりました。」

「うむ、それでよろしい。」

(とりあえずマイナスでないようだからな。)

「っと葛城にも報告しとくか。」

「へっ?」

「シンジ君はレイのことがお気に入りってな。」

「ちょっ…コウスケさん!」

「ははは……」

「もう!」

(からかいがいのあるやつだな。)

「じゃ、俺はこれからいくところがあるから。」

「はい。」

「じゃあな。」

手を振ってコウスケは病院を後にした。

・・・

 

「というわけで綾波レイについて教えてくれ。」

コウスケはリツコに会っていた。

「資料にあるのがすべてよ。」

「嘘だな。」

「あら心外ね。」

「どうやったらあんな子になる。」

「どうって過去の経歴は抹消されているからわからないわ。」

(教える気はないってことか…)

「どうしても知りたいなら碇司令のところに行けば?」

「………」

「じゃなきゃあまり深く入り込まないことね。」

「どういう意味だ?」

「そのままよ。」

「……わかった。」

(収穫はあったな…)

「すまないな。忙しいのに。」

「そうね。」

「じゃあな。」

「ええ。」

コウスケは部屋を後にする。

「思ったより彼は危険ね…」

・・・

 

「以上が綾波コウスケに関する資料です。」

「………」

「彼は危険分子と判断できます。スパイの線は有りませんが下手をすれば…」

「……今は保留とする。」

「いいのか? 碇。」

「問題ない。」

「だが…」

「あの推理力、洞察力は今後の使徒戦で有意義になるだろう。」

「………」

「しょせん一人だ。すべてが終われば処分すればいい。」

「……わかった。」

「そういうわけだ。赤木博士。」

「わかりました。」

そういうとリツコは出ていく。

(すべてが終わるまでか……その時に厄介なことになっていなければいいがな。)

冬月は一抹の不安を覚えるのであった。

・・・

 

コウスケはシュミレーターで第三使徒との戦闘を行った。

無論勝てるわけがないのだが、使徒に対して有意義な戦闘を行えるようにするのが目的であった。

主力はあくまでもEVAであり、決定的なダメージを負わせることはなくてもどうサポートするのか、それをシュミレートしていた。

時刻は5時

(そろそろ行くか。)

コウスケはNERVを後にした。

・・・

 

(………後ろに3人か。)

帰路についたコウスケは黒服の気配を感じていた。

長年戦場にいた為、気配を察知できるのは当然だろう。

無論黒服もスペシャリストだがプロにはプロの雰囲気がある。

(こっちに危害を加えるつもりはないみたいだな。)

おそらくは碇司令だろうとおおよその見当をつけるコウスケ

(まっいいか。)

とりあえず無視することにした。

・・・

 

「はぁー……」

コウスケは髪の毛を拾いながらため息をつく。

玄関にはいつも自分の髪の毛を人知れずはさんであるのだ。

それが落ちていたということは誰かが中に侵入したということだ。

これもコウスケの習慣の一つだ。

(昨日より多いな。)

無論「目」と「耳」のことだ。

コウスケは念入りに部屋を調べ「目」と「耳」を破壊した後燃えないゴミの袋に無造作に突っ込んだ。

(ここまで来るとNERVを信用するのは危険だな。)

碇司令の姿が目に浮かぶ。

(無茶をするのは趣味じゃないが……)

生き残るため、何より「約束」のためにはやるしかない。

(敵だらけだな…)

ファーストチルドレン 綾波レイ

その一つだけでもNERVは何か隠している。

(正義の味方というよりは悪の組織のほうがお似合いだな…)

(司令があんなんじゃしょうがないか…)

(ともかく情報がなければ動けないな。)

すでにMAGIへのハッキングを考えるコウスケ

しかし下手をすればこっちの身が危ない。

(協力者が必要だな…)

などと思い、いつものトレーニングを開始するコウスケ

時刻は6時半

2時間かけトレーニングを終えたコウスケはシャワーを浴び夕食にした。

レトルトなどではなくちゃんと調理する。

食事が終わるとすでに9時半

テレビをつけ情報収集

無論煙草も忘れない。

テレビを消すと10時半を回ったころになった。

リビングを消灯し寝室に向かう。

戦士というのは休めるときに休む。

こうしてコウスケの一日が過ぎていった。




ついに第4話まで投稿しました。
私のPCには12話までありますが、投稿してここ間違えたなんて無いように推敲に推敲をしています。
もうお気づきだろうと思いますが、この話は基本的に主人公視点で進みます。なので少しわかりづらいかもしれませんが、ここをこうしたらいいなどのご指摘がありましたらお願いします。
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