「あ~・・・こりゃダメだな・・・」
そう呟きながらNERVの通路を歩くのはNERV作戦本部副部長であるコウスケだ。
いつもはさっさと歩いていくのに今日はどことなくふらついていた。
「風邪だな、こりゃ・・・」
今日の彼は朝、起きたときから妙な気怠さを感じていた。
レイを見送りいつも通りにNERVに登庁したが、やはり体の気怠さには勝てなかった。
軍人であるためコンディションを常に維持するように努めているが、それでも完璧とはいかない。
「赤木に何かもらうか・・・」
この時のコウスケはそれが最善だと思っていた。
いつ使徒が来るのかわからない状況でこんなコンディションなどコウスケにとっては最悪であった。
一刻も早く回復する必要がある。
そう思いコウスケはふらつく足に鞭を入れながらリツコの研究室に向かった。
・・・
「あら、コウスケ君。どうしたの?」
リツコが椅子を回しながらコウスケを見た。
「すまん・・・どうも風邪をひいたらしくてな・・・」
「珍しいわね。」
「俺でもそう思うよ。」
「作者の悪戯かしら?」
「あるいは何か目的があるんだろ。」
私は事実無根である。
ただやりたかっただけとか、面白そうだからとか、リツコはマッドサイエンティストとかそんなことは考えていない。
「あなたね・・・まぁ、いいわ。そこに茶色い瓶があるでしょ?疲労回復剤よ。持って行きなさい。」
「すまん、恩に着るよ。」
「別に構わないわ。」
リツコは慌ててPCに向かう。
そんなリツコを横目に先ほど指さされた場所にコウスケは向かった。
棚に透明の瓶が並んでいたが、一つだけ茶色い瓶があった。
「それじゃ、もらっていくな。」
コウスケは瓶を持って研究室を後にした。
この時コウスケとリツコは気付かなかった。
コウスケが手にした瓶の後ろにもう一つ茶色い瓶があり、疲労回復剤と書かれていたのを・・・
ここまで書いておきながらベタだななんて思ってしまう私であった。
・・・
「ダメだ・・・しんどい・・・」
コウスケはリツコの研究室でもらった瓶を一気に飲み干した。
かなり苦い味がした。
「む~・・良薬は口に苦し・・・まさにこのことだな・・・」
瓶を近くにあったゴミ箱に入れるとコウスケは再び歩き出した。
(今日は早退させてもらうか・・・)
そう思うとコウスケは自分の執務室に向かう。
荷物を持って家に帰るためだ。
曲がり角に差し掛かった時、誰かとぶつかった。
普段なら人の気配を感じて相手が通るのをやり過ごすのだが、風邪で察知できなかったようだ。
さらにうまくバランスを取れなかったようでコウスケはそのまま後頭部を通路にぶつけてしまった。
意識が遠のいていく
・・・
(・・・ん?)
コウスケの意識は回復した。
(この匂いは・・・病院か?)
鼻から感じるアルコールと精密機械から発する電子のにおいからコウスケはそう判断した。
(ふぅ・・軍人が体調不良で倒れるなんて・・・)
とはいっても人である以上そんなこともあるだろうとコウスケは考えるのであった。
どうやらリツコからもらった薬は思ったより効いたみたいで、朝の気怠さが嘘のようになくなっていた。
目を開けると病院特有の白い天井が見えた。
「やれやれ・・・」
とつぶやくと近くに人の気配を感じた。
(これは・・・)
その方に顔を向けると空色をした髪と紅い瞳が飛び込んできた。
コウスケの被保護者である綾波レイだ。
「大丈夫?」
レイが心配そうにのぞき込んでくる。
(レイに心配かけるなんて・・・ダメだな。)
「もう大丈夫だよ。レイ。」
そんな自分の声に違和感を感じた。
普段に比べてだいぶ声が高いように聞こえた。
(どうやら本調子ではないようだな。)
ふとレイの方を見ると何故か赤くなっていた。
「どうしたんだ?」
「・・・また呼んでほしい。」
「何を?」
「・・・名前・・・」
コウスケはおかしく思った。
普段コウスケはレイと名前で呼んでいるのだ。
それが今更名前で呼んで恥ずかしがるなんて
それも自分の恋人に言われたなんて顔をされても困る。
「どうしたんだ?レイ。」
するとレイはさらに赤くなりながら顔を背けてしまった。
「碇君が・・・・」
などとつぶやいている。
後半はよく聞き取れなかった。
「それにしてもなんで病院にいるんだ?」
誰かが倒れた自分を発見してくれたのだろうか
だとしたらお礼を言わなくてはならない
そうコウスケは考えた。
「覚えてないの?碇君は特務一尉とぶつかって気を失っていたのよ。」
とレイはまだ赤くなっている顔を向けて言った。
(・・・はぁ?シンジが俺とぶつかった?)
そう思うと確かに気を失う前に誰かとぶつかった感触があった。
だが、それよりも気になることがある。
「誰が誰にぶつかったんだ?」
「碇君が特務一尉にぶつかったのよ。」
コウスケは違和感を感じる。
普通この場合
特務一尉が碇君にぶつかった
そう表現するのが正しいだろう。
だが、レイがそんな間違いをするとは思えない。
「どうしたの?碇君。」
(碇君って・・・俺のことを言ってるのか?)
「誰とぶつかったんだ?」
「特務一尉とよ。・・碇君、大丈夫?」
(俺が俺とぶつかった?何を言ってるんだ?)
自分に自分がぶつかるなんて一生かかってもあり得ないことだ。
だが、レイがそんな嘘を言うとも思えない。
そしてさっきからレイはコウスケのことを碇君と呼んでいる。
ここから示される事実とは・・・
とっさにコウスケは病室に設置されている鏡を見た。
そこに映っているのは・・・
「そんなバカな!!」
中性的な顔立ちに黒い短髪、優しそうな目つき・・・
どう見ても碇シンジであった。
よくよく考えると自分が発する声もシンジのものとかわりがなかった。
コウスケは自分が来ている服を上半身だけ脱いだ。
いつも見えていた体の傷がなかった。
ふと視線を感じる。
レイがじっと見つめていたのだ。
それはもう真っ赤と言うほかなかった。
「・・・はっ!」
コウスケはとっさに体を隠した。
レイは少し残念そうにしていた。
(まてよ・・・)
信じたくないが自分は今、シンジになっている。
と言うことは・・・
コウスケは急いで服を着なおすと病室を後にした。
「碇君?!」とレイの声が聞こえたがそんなことは気にも止めずに走った。
・・・
「はぁ、はぁ、・・・・」
コウスケは完全に息が切れていた。
病室の名札を見ると
綾波コウスケ
と書いてあった。
(そうさ、夢なんだ・・・夢なんだよな・・・)
このドアを開ければ夢が覚めるんだ
そう思いコウスケは病室のドアを開けた。
・・・
目の前には
ベットの上に上半身を起こしている
自分がいた
夢落ちで終わらせるなんてそうは問屋が卸さないのだ。
・・・
「あれ?僕が目の前にいる・・・」
自分の形をした男がそう言っていた。
「夢だよね・・・そうだ、夢なんだ・・・」
「・・・もしかしてシンジ君か?」
「僕が僕に語り掛けてる・・・うまい、うますぎる。」
「十万・・・て、危ない危ない。・・・取りあえず鏡を見ろ。」
コウスケがそう言うと男が鏡を見た。
「・・・・へ?!コウスケさん?!」
男はひどく間抜け面をしていた。
「・・一つ確認しよう。君は誰だ?」
「碇シンジです・・・でも、体はコウスケさん・・・」
「俺は綾波コウスケ・・でも、体がシンジ君・・・」
「「入れ替わった?!」」
それはなかなかのユニゾンだった。
「なんで僕がコウスケさんに?」
「それは俺が聞きたい。」
と言うとコウスケは一つ思い当たることがあった。
「・・・シンジ君、動けるか?」
「はい、何とか・・・」
「行くぞ。」
・・・
「あら、コウスケ君にシンジ君じゃない。」
二人はリツコの研究室に来ていた。
「もう体は大丈夫なの?コウスケ君。」
とリツコはコウスケの体をしたシンジに向かって言った。
(シンジの体をしたコウスケをコウスケ、コウスケの体をしたシンジをシンジと表記します。)
「それはわからん。どうなんだ?」
「どうと言われても・・大丈夫ですけど・・・」
「どうしたの二人とも。シンジ君の言い方・・コウスケ君みたいね。それにコウスケ君もなんだかシンジ君・・・」
そこまで言ってリツコは考え込んだ。
「・・あなた、昨日は何をしていたのかしら?」
リツコがシンジに言った。
「僕ですか?・・学校に行ってNERVでテストをしていましたけど・・・」
「あなたは?」
今度はコウスケに向けて言った。
「俺は朝、レイを見送った後NERVにいたぞ。ただ、体調がよくなかったから赤木に薬をもらった。そこの棚にあった薬だ。」
再びリツコは考え込んだ。
するとリツコはコウスケが差した棚に向かって行った。
「あなた、もしかして・・・」
「なんだ?」
「これと間違えたのね。」
リツコは疲労回復剤を取り出していた。
「赤木の言うとおり茶色い瓶を持って行ったぞ。」
するとリツコは汗をかき始めた。
「・・・とんでもないことになったわ。」
「なんだよ。」
リツコは席に戻り煙草を吸い始めた。
「状況を整理するわね。」
コウスケが持って行った薬は実験の過程で生まれた失敗作であること
その薬でシンジとコウスケは入れ替わってしまったこと
「こんな所ね。」
「・・・どうするんだよ!」
「そうですよ!リツコさん!」
「どうしましょうか・・・」
さすがのリツコもお手上げのようだ。
「こんな状態で使徒が来たら・・・俺、EVAに乗るのか?」
「僕は戦闘機に乗るんですか?」
「シンジ君はどうにかなるわ。でもコウスケ君はそうなるわね。」
「シンクロできるのか?」
最もな疑問である。
シンクロできなければEVAに乗っても意味がない。
もしそんなことになれば大変不利な状況になってしまう。
「・・・とにかくもう一度同じ薬を作ってみるわ。」
「ああ、頼む。」
「僕はどうすればいいでしょうか?」
シンジが困ったように言う。
「シンジ君は療養と言うことで何とかなるわね。」
「正直嫌だが、それがいいな。」
「そうですか。」
「でも、コウスケ君は・・・」
リツコが言い淀む。
「なんだ?俺も同じでいいじゃないか。」
「ダメなのよ。」
「何故だ?」
「・・碇司令から学業を優先するようにってお達しが来てるのよ。」
「なら碇司令に・・・」
「それもダメ!」
なかなかの剣幕でリツコが叫ぶ。
「こんなことがばれたら私はどうなるの?」
「知らんよ!」
「・・そう。」
リツコが急に悲しそうな雰囲気を醸し出し始めた。
「独房で済めばいいけど・・・」
そんなリツコにさすがのコウスケも強くは言えなかった。
もとはと言えばコウスケがちゃんと確認を取らずに持って行ったのが原因でもある。
大本はそんなものを作ったリツコであるがそこまで考えが回らない。
「・・わかったよ。シンジ君のフリをすればいいんだな。」
「ごめんなさい・・・一日でも早く薬を作るから・・・」
「とにかく今日は病室で大人しくしてよう。」
・・・
翌日
コウスケはNERVの病院からそのまま学校へと向かう。
シンジが病院に担ぎ込まれたとき学校の制服だったのでその制服を着ることにした。
ちゃんとクリーニングされている。
右手にはシンジの学生鞄をぶら下げている。
「この年になって中学校か・・・」
何とも奇妙だなとコウスケは考える。
コウスケが中学校に登校するのはもう15年ほど前の話である。
「なるようにしかならんか・・・」
ともあれ久しぶりの学生生活である。
それはそれで楽しみでもあった。
・・・
コウスケは2-Aと書かれた札がぶら下がっている教室の前にいた。
何となく緊張するのだ。
コウスケはドアを開け教室に入った。
「せんせ!」
「碇!大丈夫か?」
トウジとケンスケが真っ先に反応した。
「うん、もう大丈夫だよ。」
(確かこんな口調だったよな。)
するとアスカが声をかけてきた。
「シンジ!」
「アスカ。」
「まったくだらしないんだから。」
その言葉にムッとするが我慢する。
「ごめん。」
「もう少し鍛えたらどうなの?」
「そうだね。」
とそう答えるしかなかった。
「ほら、愛しのレイがお待ちかねよ。」
と言いつつアスカはニヤニヤしていた。
(レイ?・・・ああ!レイのこと忘れてた!)
「碇君・・・」
レイが昨日と同じく心配そうな顔で見てくる。
「れ・・綾波、昨日はありがとう。」
レイと言いそうなのをこらえてコウスケは言いなおした。
するとレイは不満そうな顔を向けてくる。
頬が3㎜膨らんでいた。
「どうしたの?」
「・・・レイ。」
「へ?」
「昨日はレイって呼んでくれた。」
レイの言葉に教室が騒ぎ出す。
「碇君、綾波さんのことを名前で呼んでるの?」
「しかも呼び捨て・・・」
「とうとうそういう関係になったのか・・・」
「遅すぎるだろ。婚約者なのに・・・」
(シンジ・・・すまん。)
コウスケはそういう風に謝ることしかできなかった。
「な、何言ってるんだよ。綾波。」
レイを綾波と呼ぶことに違和感を感じるが、今はシンジなのだ。
ここでばれるわけにはいかない。
「レイ・・・・・・」
レイがものすごく悲しそうに見つめてくる。
「綾波さんかわいそう。」
「碇の奴なんてひどいんだ。」
「紳士の風上にも置けないな。」
だんだんシンジの心証が悪くなっていった。
(どうすればいいんだよ!)
このままではシンジが復帰したときにとんでもないことが起こるだろう。
コウスケは必死に打開策を探した。
「・・・それは二人きりの時だけね。」
何とも歯がゆい思いをした。
何故レイにこんなことを言わなければならないのか
だが、これしかないとコウスケは思ったのだ。
私も一度くらいは言ってみたいものだ。
「きゃ~、二人きりですって!」
「碇の奴やるな。」
「くそぅ、碇の奴め。」
なんかやっかみも聞こえた。
レイはと言うとコウスケの言葉で真っ赤になっていた。
(うう、レイに悪いことしてる・・・)
もはやコウスケは泣きたくなった。
そうしているうちにチャイムが鳴った。
・・・
コウスケは黙々と授業をこなしている。
中学校の授業などコウスケにとっては簡単すぎるのだ。
ふとアスカを見るとつまらなそうにしている。
アスカも大学を卒業しているのだ。
そう考えるとアスカの心情も少しは理解ができた。
すると誰かの視線を感じる。
その方向に顔を向けるとレイがこっちを見ていた。
レイはコウスケの視線を感じると不意に顔を背けた。
(・・・シンジ、いつもこんななのか?)
「この問題を・・・碇、やってみろ。」
急に当てられたのでコウスケは少し驚いた。
「は、はい。」
黒板に出て見るとどうやら数学のようだ。
(ふむ、連立方程式か・・・となると・・・)
コウスケは黒板に式をかきながら答えを導き出していく。
(yを移動してxを出す・・・この式をもう一つの式に当てはめれば・・・)
コウスケは式を解くのに夢中になっていた。
(よし、yが出たから・・・)
「出来ました。」
パンパンとコウスケは手についた粉を払った。
(ん?どうしたんだ?)
教室が妙な雰囲気にのまれていた。
「碇、戻ってよろしい。」
と言われたのでコウスケは席に戻る。
するとチャットに書き込みがあった。
「今のどうやってやったの?」
すかさずコウスケは返す。
「代入法だよ。」
「それってまだ習ってないよね。」
コウスケははっとする。
連立方程式は二つの解き方がある。
コウスケはすでに知っているので無意識のうちに楽な方を選んでいたのだ。
すかさず教科書を確認するとまだ加減法しか習ってなかった。
(まずい・・・)
「先に予習してたんだよ。」
「へぇ~そうなんだ。」
なんとか逃れたようだった。
しかしそんなコウスケを見つめる一つの視線があった。
・・・
次は英語だった。
国連軍にいたコウスケに取って英語など日常会話で使っていたくらいなので何ら問題はない。
「では、ここを・・・碇、読んでみろ。」
こういう時に限って当ててくる。
コウスケは少々うんざりしながらも席を立った。
「You're a member of the family.・・・・」
コウスケはただ普通に読んだ。
しつこく言うが、コウスケは国連軍にいたため英語が日常会話であった。
無論日本にいるときは日本語であるが・・・
ともかくそんなコウスケが普通に英語を読むとどうなるのか。
コウスケは教科書を読み終えて席に座る。
ふと周りがおかしいことに気づいた。
皆が唖然としていた。
あのアスカでさえ唖然としているのだ。
(何か変なことをしたか?)
コウスケは普通に読んだだけだ。
だが、一般の日本の中学生にはそれが普通だろうか?
「碇、よく読んだ。皆も碇を見習うように。」
当然ながら教師から絶賛された。
クラスメイトが唖然としてコウスケを眺める中、一人だけ違う視線を送っている者がいた。
・・・
時間は過ぎていき放課後になった。
シンジはどうやら週番らしく皆よりも下校が遅くなっていた。
コウスケはここまで何とかシンジのフリをつづけることができた。
昼休みにケンスケがSu-37について語った時は自分も語りそうになりなかなか危なかったが・・・
とにかく教師に言いつけられたことを終え、教室に戻って行った。
教室に戻るとレイが日誌を書き終えていた。
「綾波、終わった?」
レイはゆっくりと頷いた。
「じゃあ、帰ろうか。」
今日はNERVでのテストがないためそのまま帰宅することが許されている。
「・・・碇君、約束。」
レイが不意にそう尋ねてきた。
「約束?」
「そう・・・覚えてないの?」
(約束だと?!いったい何の事だ?)
昨日シンジから聞いた話ではそんなことは無かったはずだ。
だが、レイが嘘を言うとも思えない。
(シンジ、重要なことを言い忘れたのか?)
コウスケは必死に考える。
レイとシンジがするような約束とは一体何かを
するとレイが立ち上がった。
「やっぱり・・・」
レイは何かを確信するようにつぶやいた。
「・・・あなた、誰?」
コウスケは背筋が凍るような感覚に襲われた。
(まさか・・約束なんて無かったのか!)
つまりレイにしてやられたということだ。
「誰って、何言ってるんだよ。綾波。」
「碇君はそんな風に私を呼ばない。」
(くそっ、シンジに関しては敏感だな。)
おそらくコウスケの微妙なイントネーションを感じ取ったのだろう。
レイが訝し気に見つめてくる。
(どうする・・・)
コウスケは必死に打開策を練っていた。
「・・・もしかして、使徒?」
「はぁ?」
「そうなのね・・・」
そうつぶやくとレイはコウスケと距離を取った。
「碇君を返して。」
レイにしては強い口調であった。
「ちょ、ちょっと・・・」
(不味い!攻撃予兆・・・本気か?!)
傍から見ればレイはただ立っているだけである。
だが、コウスケには見えていた。
(右のストレート・・いや、本命は・・・)
レイが踏み込んでストレートを放つ。
と思いきや左手を手刀に変えコウスケの首を狙ってきた。
コウスケはそれを左に受け流して距離を取った。
「やっぱり・・・碇君にそんな動きはできない。」
レイの目が一層きつくなった。
(やばい、本気だ。)
じりじりとレイが距離を詰めてくる。
(・・キックの後に回し蹴り・・・)
コウスケがそう読むとレイは右足でハイキックを繰り出してきた。
コウスケはしゃがんで回避する。
レイは空ぶった足を床に置き軸にすると、そのまま左足で後ろ回し蹴りを放つ。
コウスケはしゃがんだ状態で右に飛び、側転をした。
机があらゆる方向になぎ飛ばされていた。
コウスケはすぐ立ち上がる。
(レイを何とかしないとどうしようもないな。)
このまま説得しようにもレイは聞いてくれないだろう。
(・・!右か!)
レイが素早く踏み込んできて左手でストレートを放つ。
それをコウスケはつかみ取った。
(レイにはこれが効くだろう。)
「いいのか?このままだとシンジを殺すことになるぞ。」
その言葉にレイが一瞬動揺する。
それを見逃さずコウスケはレイの足を払った。
「くっ・・・」
レイは受け身を取ることもできず床に倒れこむ。
すかさずコウスケはマウントポジションを取りレイの腕をつかんだ。
「卑怯・・・」
「卑怯だろうが何だろうが勝てればいい。」
レイはコウスケの拘束を振り解こうともがく。
途端にレイはもがくのを止めた。
どうすることもできないと知って諦めたのであろう。
「碇君・・ごめんなさい。」
レイが悔しそうにつぶやいた。
僅かながら目が潤んでいる。
そんなレイを想像して私の罪悪感はひとしおだ。
・・・それでも書き続ける。
(あ~・・俺はいったい何やってんだ?)
「よく聞いてくれ。ありのまま起こったことを話すぞ。俺はコウスケだ。シンジ君の体だが、中は綾波コウスケだ。」
「何を言ってるの?」
「何を言っているのか分からんと思うが俺もよく分からん。だが、本当だ。」
レイはキッと睨んでくる。
こんな有利な状況で精神的に追い詰めようとしていると思われたのだろう。
(レイと俺にしかわからないことを言えば信じてもらえるかな?)
「・・・お前さんの生徒手帳にはプラグスーツのシンジ君の写真がある。お前さんの一番のお気に入りだ。」
そう言うとレイは驚きで目を見開いていた。
「どうしてあなたが知ってるの?それは私と特務一尉しか・・・」
「その特務一尉本人だから知ってるんだろ。」
この事はシンジは知らない。
知っていたら平然としていられないだろう。
何故そんなものをレイが持っているのかと言うと、コウスケにもらったからである。
ゲンドウも持っていない貴重な写真なのだ。
ちなみにその写真はとある三尉に頼んで撮ってもらったのである。
別にコウスケが欲しくて撮ってもらったわけではない。
レイが写真を一枚も持っていないのでコウスケがちょっとしたプレゼントであげたものなのだ。
どの三尉が撮ったのかはご想像にお任せする。
「本当に特務一尉?」
「そうだよ。」
「何故碇君の体に?」
そう言われたときコウスケは迷った。
(赤木にばれないようにしてくれって言われてるしな・・・って、別に碇司令にばれなきゃいいのか。)
「そのことはNERVで話す。それでいいか?」
レイはゆっくりと頷いた。
(やれやれ・・・)
コウスケはため息をついた。
その時教室のドアが開く。
「宿題を忘れるなんて・・・」
そう言って入ってきたのは洞木ヒカリであった。
やっぱりこういう時はヒカリ以外いないと私は思う。
・・・ベタだな
コウスケとヒカリの目がぶつかり合う。
「碇君に綾波さん・・いったい何をしてるの?」
ヒカリの目は信じられないものを見たという目になっていた。
「何って・・・」
コウスケは今、自分がどういう状況なのかを整理した。
机は派手に飛び散っておりその真ん中にレイと自分がいる。
レイは自分の下にいて、格闘をしたためか息が少し荒かった。
そして自分はレイの腕をつかんでレイの上に乗っている。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
どう見ても押し倒しているようにしか見えなかった。
「いくら婚約者だからって・・・」
「洞木さん、これは・・・」
「不潔よ~!!!!」
ヒカリはどこかへ走り去ってしまった。
「なんてことだ・・・」
コウスケはどうやってシンジに謝罪しようか本気で思案する。
一方レイはよくわからないのかきょとんとしていた。
・・・
「碇君なのに特務一尉・・・特務一尉なのに碇君・・・」
コウスケとレイはシンジの病室に来ていた。
シンジは病衣を纏い、ベットに腰を掛けていた。
レイはコウスケとシンジを何度も見回していた。
シンジがレイに声をかける。
「綾波・・・」
「これは・・・碇君!」
そう言ってレイはシンジに駆け寄りそのまま抱き付いた。
「ごめん。綾波に心配をかけちゃったね。」
「いいの。碇君が無事なら・・・」
コウスケはその様子を見ながら一安心するが・・・
「二人ともそこまでだ。」
傍から見ればコウスケとレイがシンジの目の前で抱き合っているようにしか見えない。
大変危険な状況だろう。
特にゲンドウに知られたら・・・
「その後は俺たちが戻ってからやってくれ。」
「まったくそのとおりね。」
いつの間にかリツコが病室にいた。
「赤木じゃないか。もしかして・・・」
「出来たわ。」
そう言ってリツコは怪しげな瓶を取り出した。
「やった!これで元に戻る!」
「ええ、それを飲んだ後にもう一度ぶつかれば戻るはずよ。」
「恩に着る。」
そう言ってコウスケは瓶を受け取り、一気に飲み干した。
「よし!シンジ君、行くぞ。」
「はい。」
コウスケとシンジは走りながらぶつかる。
(ぐっ!)
かなりの苦痛が走るのを最後に意識が飛んで行った。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「むっ・・・」
コウスケは起き上がる。
そして鏡を確認した。
「・・・俺だ。」
鏡にはコウスケが映っていた。
「・・・よかった。」
「碇君、碇君!」
横を見るとレイが必死にシンジを起こしていた。
「うん・・・」
「碇君?!」
「綾波・・・」
「よかった・・・」
レイはシンジに抱き付いた。
シンジは優しくレイの頭を撫でていた。
「何がともあれ一件落着だな。」
「そうね、よかったわ。」
リツコも安心したようだ。
「それじゃ、私は行くわね。」
と言ってリツコがそそくさと出ていこうとする。
「待って。」
レイがそれを止めた。
「碇君にひどいことをした。」
「れ、レイ?」
「・・・許さない。」
レイの背中から青白い炎のようなものが見えた。
・・・
結局この事件はゲンドウに知られることになった。
なんとかリツコは逃げることに成功したが、レイがゲンドウに告げ口をしたのだ。
リツコは故意にやったことではなかったため減俸で済まされた。
「もうあんなことは二度とごめんだ。」
コウスケは自分の執務室で仕事をしていた。
休憩とばかりに煙草を取り出す。
「うん、やっぱこれがないと。」
煙草に火をつける。
そうすることで自分が元に戻ったというのを痛感する。
「そう言えば何かを忘れているような・・・」
しばらく考え込むが思い出せない。
忘れたということはそれほど重要なことではないとコウスケは思い出すのを止めた。
すると執務室のドアが開いた。
「コウスケさん!」
シンジが血相を変えて中に入ってくる。
「どうしたんだ?まだ学校だろ?」
時刻を見るとまだ昼前であり学校が終わっているはずがなかった。
また、午前中にはNERVのテストは行わないことになっておるのでこんな時間にシンジがNERVにいるのはどう考えてもおかしかった。
「綾波を押し倒したってどういうことですか?!」
「レイを押し倒した・・・・あ!」
元に戻れた嬉しさのあまりコウスケはすっかり忘れていた。
「どういうことか説明してください!」
シンジが詰め寄ってくる。
それはゲンドウにも劣らぬ気迫だった。
(もう、赤木の薬は嫌だ!!)
コウスケはそう思わずにいられなかった。
綾波「よう、俺は綾波コウスケ。」
綾波「・・・綾波レイ。」
綾波「ってこれじゃ、どっちだかわからねえだろ。何考えてんだよ!」
綾波「私は碇でいいのに・・・」
綾波「いや、ダメだろ・・・と言うわけで修正。」
綾波「や~」
・・・
綾波「・・・」
渚「・・・」
綾波「レイだけじゃないか!しかも渚って・・・」
渚「・・・怒」
綾波「作者!早く変更しろ!LCLに還りたいのか!」
渚「・・・そう、還りたいのね。」
・・・
コウスケ(以下コ)「修正完了。」
レイ(以下レ)「碇でよかったのに・・・」
コ「少なくともあと4年は待て。・・・こりゃ、とんでもないものを書いたな。」
レ「特務一尉と碇君が入れ替わる・・・私と碇君ならいいのに・・・」
コ「それはそれで問題あるぞ。」
レ「でも、どうしてこんなものができたのかしら?」
コ「作者が一か月前ほどに考えたものらしいな。」
レ「何故今になって?」
コ「・・・書きたくなったらしい。」
レ「・・・それだけ?」
コ「それだけだ。」
レ「・・・」
コ「ついでにこの後書きも作者がやってみたかっただけだそうだ。」
レ「この作者、気まぐれ・・・」
コ「そんなことを言うもんじゃないぞ。レイ。」
レ「どうしてですか?」
コ「ある意味この小説は作者にかかってるんだ。」
レ「はい。」
コ「と言うことは俺たちがどうなるかも作者次第だ。」
レ「作者次第・・・」
コ「あまり作者のひどいことを言うとどんな目に遭わされるか・・・」
レ「例えば?」
コ「使徒に食われるとか・・・」
レ「!」
コ「使徒とともに自爆とか・・・」
レ「!!」
コ「もしかしたら巨大化なんてことも・・・」
レ「でも0話で私がいました。」
コ「解らんぞ。もしかしたら三人目かもしれないし・・・」
レ「どうしてそう言うこと言うの?」
コ「そこまで嫌がられてもな・・さっき言った三つは本編でお前さんが経験していることだろ。」
レ「ここでも私はそんな目に合うの?」
コ「それは作者に任せるしかないな。」
PPPPPPP
コ「はい、綾波です。・・・わかった。」
レ「どうしました?」
コ「作者がお前さんの設定を使ってよからぬことを考えていると監視に出していた零課職員から報告があった。」
レ「私の代わりの体はもうありませんが・・・」
コ「俺にも分からん。神ならぬ作者だけが知っているだろう。」
レ「・・・いったい何をするつもりなの?」
コ「まあいい。・・・この話は28話の後みたいだな。」
レ「何故わかるのですか?」
コ「婚約者って出てるだろ?それがクラスに知れ渡ったのは28話だからな。」
レ「婚約者・・・」
コ「だが、投稿する時期が遅くなったんでEXとつけた・・・そんなところだろ。」
レ「碇君・・・結婚は・・・」
コ「妄想モードに入ったか・・・」
レ「子供は・・・」
コ「・・・まぁ、こんな感じで時々EXを書くかもしれないが、今後もよろしく頼むよ。」
レ「碇君・・・私はいつでも・・・」
ぎゅむ!
レ「いひゃい・・・」
コ「それ以上は家に帰ってからにしろ。」