NERV航空隊隊長綾波   作:浩介

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第6話 家出

平穏な日々

世界では一人また一人と命を落としているものがいるだろうが、コウスケの住む日本では平穏な日々を送っていた。

NERVもそれにもれることはなかった。

(軍人が暇なのはよいことだ。)

生真面目な軍人が聞けば怒り狂うだろうことを思いつつコウスケは休憩室にいた。

NERV本部は地下に造られているため煙草を吸える場所は限られてた。

その数少ない場所でコウスケは何本目かわからない煙草を口にしていた。

PPPPPP

携帯電話が鳴る。

「もしもし、綾波ですが……はぁ!? シンジ君が家出した!? お前は何やってんだよ! ……わかった。諜報部が見張ってるんだな。じゃ。」

(監督日誌を見られたか……ずぼらすぎるぞ。)

などと上司の悪態をつく。

(家出から三日か…)

ここ三日間シンジに会っていないことを思い出す。

(ちょっと行ってくるか…)

「もしもし…」

・・・

 

(ここにいるのか。)

コウスケは山の中腹にいた。

そこにはテントが一つ立っていた。

テントに近づくと眼鏡をかけ、迷彩服を着た一人の少年が立っていた。

「たしか君は…」

「NERVの方ですね。先日はお騒がせしました。」

「ああ、あの時の……」

「相田ケンスケです。」

「俺は綾波コウスケだ。」

「あやなみ?」

「ああ。」

「あの……綾波レイとはどういう関係で?」

「よく聞かれるな。上司に当たるが血のつながりはない。」

「そうですか。」

「ところで碇シンジ君はいるか?」

「碇なら……」

「ケンスケ、誰かいるの?」

シンジが出てきた。

「コウスケさん………」

「よっ、元気か?」

「……連れ戻しに来たんですね。」

「おいおい、そのつもりなら一人で来ないよ。」

「そうですか………」

「ケンスケ君、ちょっとシンジ君と話がしたいから二人きりにさせてくれないか?」

「はい。」

ケンスケはテントに戻った。

「どうしたんだ? 家出なんてして。」

「………」

「まあ、座れ。」

「はい。」

「子供の前で悪いが一服するぞ。」

コウスケは煙草に火をつけた。

「……煙草吸うんですね。」

「ああ、なるべく子供の前では吸わないようにしているがな。」

「………」

「監督日誌のことか?」

「はい。」

「……裏切られたと思ってるんだろう。」

「! ……どうして」

「どうしてわかるかって?」

「はい。」

「簡単だ。君の性格と正確な情報があればな。」

「………」

「シンジ君は優しすぎるな。ゆえに傷ついた時の傷も大きい。」

「………」

「だが、もう少し考えなきゃいけないな。」

「どういうことですか?」

「なに、表面だけで判断するなということだ。」

「………」

「葛城があんなことをしたいと思うか? ずぼらな彼女だぞ。シンジ君ならわかるだろう。」

「………」

「だが、シンジ君といるために監督日誌をつけることを義務化されてんだろう。もしそれをさぼればシンジ君は葛城のもとにいられないだろう。」

「それって……」

「そういうことだ。」

「………」

「人は完全には分かり合えない。だが、わずかでもその穴を埋めるために会話というものがあるんだろう。」

「……そうですね。」

「………」

「コウスケさんはすごいですね。」

「別にすごくはない。」

「すごいですよ。それに比べ僕は……」

「おっとそこまでだ。あのとき俺が言ったこと覚えているか?」

「……物事を悪い方向に考えるのは美徳ではない……ですか?」

「そうだ。シンジ君は14歳だろう? 失敗なんてたくさんするものだ。」

「………」

「これもその一つさ。そしてその経験を次に生かせばいいだろう。」

「そうですね。」

「わかればよろし。」

「……ミサトさんと話してみます。」

「戻るのか?」

「はい。」

「そうか……ケンスケ君にちゃんとお礼を言わないとな。」

「はい。」

「ところで……」

「?」

コウスケの顔が変わった。

「レイとはどうだ?」

「なっ……」

「なめてもらっちゃ困る。いろいろ聞いてるからな。」

「………」

「……難しいだろう。」

「はい。」

「……レイの保護者は碇司令だった。」

「父さんが?」

「シンジ君にはつらいだろうが事実だ。」

「父さんが……」

シンジはつらそうな表情だった。

「………」

「……でも表面だけで判断しちゃいけないですよね。」

「お、俺の言ったこと覚えてるな。」

「当たり前ですよ。」

「うれしいこと言ってくれるね。」

「……父さんともちゃんと向き合ってみます。」

「難しいだろうが、頑張れよ。」

「はい。」

シンジは明るく答えた。

「じゃ、俺は行くな。」

「コウスケさん……ありがとうございます。」

「なに、礼には及ばんよ。」

コウスケはNERVへ戻って行った。

・・・

 

NERVに戻るとレイと出会った。

どことなく不安そうに見えた。

「……どうしたレイ。」

「……碇君……最近会わないので………」

「シンジの奴なら大丈夫だ。今日中に戻るだろう。」

「……そうですか。」

(ほう、こんな表情ができるようになったか。)

相変わらずの無表情だが、コウスケには安堵しているように見えた。

(父VS息子か……こりゃ面白い……)

かなり不謹慎な想像だろう。

「明日から会えるから心配するな。」

「?」

レイはきょとんとしていた。

(わかってないのか…)

「今のレイの気持ちを心配するというんだ。」

「………」

「詳しい意味は辞典でも調べてみろ。まあ、感情なんてものは辞典じゃわからないがな。」

「……そうしてみます。」

「じゃあな。」

「……またね。」

「………………」

「どうしました?」

「またねという言葉は年長者には使わないんだ。」

「………」

「宿題な。年長者と別れるときはどういえばいいのか。」

「わかりました。」

「じゃ。」

コウスケは去って行った。

・・・

 

翌日

「もしもし綾波ですが……なんだ葛城か。何の用だ?」

………………

「別に特別なことはしてないよ。ただアドバイスしただけだ。」

…………

「こんどお前のおごりで手を打とう。」

…………

「じゃあな。」

携帯電話の電源を切る。

「雨降って地固まるか…」

煙草を取り出す。

「さて、仕事するか…」

・・・

 

今日もNERVでは平穏な日々が続きそうだ。

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