「これが使徒か…」
コウスケはつぶやいた。
「こんなものとよく戦っているな…」
コウスケは第四使徒の解体現場にいた。
「お、葛城とシンジ君も来てたのか。」
「そうよん。使徒がどんなものか見に来たの。」
「僕はミサトさんに誘われて。」
「そうか。しかし圧巻だな。」
「ええ。常識を疑うわ。」
上にはリツコがいた。
「コア以外は原型を留めているわ。ありがたいわね。」
リツコはご満悦のようだ。
(マッドの気があるな。)
コウスケのリツコに対する評価に新しい二つ名が加わった。
・・・
モニターには601という数字が出ていた。
「何よこれ?」
「解析不能を示すコードナンバー。」
「つまりわけわかんないってこと?」
「そっ。使徒は粒子とと波、両方の性質を備える光のようなもので構成されているのよ。」
「で、動力源はあったんでしょ?」
「らしきものはね。でもその作動原理がさっぱりなのよ。」
「まだまだ未知の世界が広がってるのね。」
「とかくこの世は謎だらけよ。」
(謎だらけね……NERVにも言えるな。)
「たとえば………ほら。」
リツコがモニターに何かを映し出す。
「使徒独自の固有波形パターン。」
モニターを見る。
「……これって」
「そう構成素材には違いがあっても、信号の配置と座標は人間のそれと酷似しているのよ。99.89%ね。」
「99.89%って」
「そうあたしたちの知恵の浅はかさってものを思い知らされるわ。」
シンジが外を食い入るように見ている。
「どしたの?」
「あの……別に………」
「シンジ君。こんな時ははっきり言ったほうがいいぞ。」
「……父さんの手に火傷してるみたいなんだけど……」
「火傷?」
「どうしたのかなって……」
「リツコ何か知ってる?」
「あなたがここに来る前に……」
そういってリツコが説明した。
零号機の起動実験でレイを乗せたエントリープラグが射出され、それを助けるためにゲンドウが負ったものであったという。
(碇司令がね……ちょっときな臭いな……)
「……そういえば赤木博士。」
「何かしら。」
「使徒と人間は99.89%酷似しているのだろう?」
「ええ。」
「では、EVAはどうなんだ?」
リツコが若干強張る。
「……調べてみないとわからないわね。」
「そうか。」
(なにかあるな……)
あらためてNERVに胡散臭さを感じるコウスケであった
・・・
(レイと碇司令か……)
レイがゲンドウを見るとき、明らかに他者とは違う反応を見せている。
零号機のことを考えると納得もいく。
(だが……)
なぜ、屋内でプラグが射出されたのか?
なぜ、医療班よりもゲンドウのほうが到着が早いのか?
(それに……)
リツコがそのことを話した時の目
何か複雑な感情が見えた。
(なにかあるな……)
そう思わずにはいられないコウスケであった。
・・・
NERVに帰り自販機の並ぶ休憩室でレイと出会った。
相変わらず包帯とギプスが痛々しい。
「よう。実験か?」
「はい。今は休憩中です。」
「そうか。なら少し話せるか?」
レイは顔を縦に振った。
コウスケは自販機で紅茶を買った。
「……やっぱりまずいな。」
「?」
「いずれわかると思うよ。」
「はい。」
コウスケは椅子に座った。
「レイも立ってないで座ったらどうだ。」
「わかりました。」
レイはコウスケの隣に座った。
「レイはなぜEVAに乗るんだ? 実験で大怪我もしたんだろう?」
「……絆だから。」
「碇司令か?」
「みんなとの」
「ふーん。」
「……他には何もありませんから。」
「………他に何もないか。」
コウスケは不機嫌だった。
こんな少女を戦場に立たせることしかできない大人に
しかしそれだけではなかった。
コウスケはむしろレイに怒りを覚えた。
「じゃあ、EVAが無くなればレイはどうするんだ。」
「わかりません。」
「……考えてないんだろう。」
「………」
「つまりはファーストチルドレンという価値しかないということか。バカだな。」
「意味が分かりません。」
「綾波レイとしての価値がないということだ。」
「……私はチルドレンですが」
「それは役職だろ。」
「はい。」
「お前の名前はファーストチルドレンか?」
「いいえ。」
「だがお前はファーストチルドレンとしてしか考えてない。ただ大人の言うとおりにな。」
「………」
「それじゃ、ただの人形だ。」
レイは無表情で見つめてくる。どうやら怒っているようだった。
「……人形じゃないってか? だがやっていることは人形そのものだ。なにが違う。自分で立つことのできない人形と。」
レイは顔を顰めている。
「もう少し自分で考えてみるんだな。ファーストチルドレンじゃなく、綾波レイとしてな。」
コウスケは空になった缶を捨てた。
「すまんな。こんな話をしてそろそろ時間だろう。」
「はい。」
「じゃあな。」
「………」
レイは難しそうな表情(と言っても無表情にみえる)をしていたが、コウスケは構わずその場を離れた。
・・・
数日後
コウスケはミサトに食事に来るように勧められた。
特に断ることもなかったので御呼ばれすることにした。
ミサトの家に行くとリツコがすでにいた。
「おそいわよ。」
「はぁ~。時間指定しろって言ってるだろう。」
中に入るとシンジが料理をよそっていた。
カレーのようだ。
ミサトはカップ麺にカレーを入れていた。
「……信じられんな。」
「何言ってんのよ。これがおいしいんじゃない。」
ご満悦のミサト。
「それじゃいただくとするか。」
カレーを食べる。
すると何とも言えない味がする。
コウスケは理性を総動員して気絶するのを抑えた。
「これ作ったのミサトね……」
「わかる?」
「味でね……」
「そうだな……」
それ以外にもはや何も言えない。
「……赤木博士……これを兵器に転用できるか? 対テロ用の………」
「……難しいわね。これを作り出すことはできないわ。」
「……残念だ。新しい非殺傷兵器ができると思ったのだが……」
「何よ!」
「残念だが。葛城………不味すぎる!」
「へっ?」
「これの原料はなんだ!」
「レトルトよ。」
「バカな……レトルトだと……」
「どうして?」
「………一種の天災だな……」
「褒めなくてもいいじゃない。」
「褒めてない!」
何か倒れるような音が鳴ったのでその方向を見てみるとペンギンが倒れていた。
葛城家の同居人のペンペンである。
動物ですら気絶するカレーは避けて食べることにした。
コウスケも命が惜しいのだ。
「……そういえばこれ。」
と言ってリツコがIDカードを取り出した。
「レイのIDカード。」
それをシンジに渡す。
「更新したのだけど、レイに渡すのを忘れてたのよ。」
「ふーん。赤木博士がね……」
「何よ。私も人間よ。」
「意外な側面を見たな。」
「失礼しちゃうわ。」
「これは失礼。」
(重要な人物のIDカードを渡し忘れる? 赤木博士が?)
コウスケはまたもやきな臭さを感じた。
その後の会話はほとんど右から左に通り抜けて行った。
・・・
夜も遅いということでコウスケはリツコを送っていくことにした。
「この前言ったEVAの件はどうなった。」
「まだ調べてないわ。」
「そうか。」
………………
「なにが目的だ?」
「何のこと?」
「IDカード。」
「渡し忘れただけよ。」
「そうか。」
……………
コウスケは少しカマをかけてみることにした。
「碇司令はやたらとレイにこだわるな。」
リツコの表情が強張るのがわかる。
「……貴重なサンプルだからよ。」
「そうか。」
「あなた、レイにちょっかい出してるでしょ。」
「ダメか? 戦友のことを気にかけるのが。」
「……あまり詮索しないほうがいいわ。これは忠告。」
「二回目だな。ありがとさん。」
「じゃ、私はこれで。」
「じゃあな。」
目的地のマンションの前で別れた。
・・・
(赤木博士は何かにこだわっているな。)
コウスケは自室で物思いにふけっていた。
(レイか……碇司令か……)
嫌な三角関係が見える。
(いまだに真実は闇の中か…)
そう思いもう寝ることにした。
・・・
コウスケはNERVであてがわれた執務室で調べ物をしていた。
碇ゲンドウについてだ。
・・・
碇ゲンドウ
旧名:六分儀、入籍後碇に改名、京都大卒業、ゲヒルンの所長、NERVの総司令
1999年 碇ユイと結婚、碇に改名する
2001年 第一子碇シンジをもうける
2004年 妻:碇ユイとは死別
(妻ね…)
碇ユイ
京都大卒業、ゲヒルンの技術課長「E」計画責任者
1999年 六分儀ゲンドウと結婚
2001年 第一子碇シンジをもうける
2004年 実験により死亡
・・・
大雑把だがわかったことはこれだけだ。
そして碇ユイの写真を探す。
これはゲンドウの妻になる人がどういう人間か単に興味を持っただけだ。
だが
(出てこない…)
どんなに検索しても出てこない。
(なぜ隠したがるんだ?)
これほどの地位にいた人間の顔写真がないなど到底信じられない。
誰かが故意に消したのだろう。
(碇ユイ……想像以上に重要人物みたいだな。)
ともかくコウスケは碇ユイに関して情報を集めることにした。
・・・
この行為が後ほどどんな影響を及ぼすかコウスケにはまだわからなかった。