NERV航空隊隊長綾波   作:浩介

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第8話 月の笑み

(今日は零号機の起動実験日か…)

一通りの調べ物を終えたコウスケは通路にいた。

(シンジはうまくやってるかな?)

二人に何があったのかまではわからないコウスケだがシンジが慌ててることだけは容易に想像できた。

「あれは…」

シンジとレイだ。

だが、レイが去っていくのがわかった。

「おーい。シンジ君。」

「あっ……コウスケさん。」

「ん? 頬が赤いぞ。」

「ちょっと……」

「……叩かれたか。」

「……ええ。」

「なにかおいたでもしたのか?」

「いえ………ただ父さんのことで……」

「……まっ、言わなくていい。まだまだチャンスはあるだろうからな。」

「……はい。」

「そういえばシンジ君。お母さんのことを覚えているか?」

「いえ。」

「顔とか…」

「わからないんです。父さんが写真とか全部捨てたと聞きました。」

「そうか……すまんな。変な質問して。」

「いえ。」

(碇司令がね…)

「今日は零号機の起動実験だろ。うまくいくといいな。」

「そうですね。」

シンジはちょっと複雑なようだ。

「見に行くのか?」

「はい。」

「じゃあ、一緒に行こう。」

そういって実験場に向かった。

・・・

 

実験場ではいそいそと零号機の起動実験が進められている。

正直重苦しい雰囲気が漂っていた。

前回の起動実験は失敗、被験者は事故に巻き込まれ重傷を負っている。

今回は失敗ができないうえ、あの碇司令まで来ているのだ。

重苦しくなってもしょうがないだろう。

というより重苦しい雰囲気の80%はゲンドウのせいだろう。

オペレーターが次々と状況を知らせてくる。

モニターにはレイが写っていた。

着々と進む実験

「ボーダーライン突破しました。零号機起動します。」

「続いて連動試験を行います。」

安堵の声が聞こえる。

突如鳴り響く呼び出し音

冬月が電話を手に取った。

「……未確認飛行物体接近中だそうだ。第五の使徒だな。」

「実験中止。総員第一種戦闘配置。初号機は?」

「380秒で準備できます。」

「レイ。起動は成功した。戻れ。」

慌ただしく走っていく職員たち

ゲンドウはシンジに一言もくれることなく持ち場に戻って行った。

(こっちもまだまだか…)

そう思いコウスケは格納庫へ急いだ。

・・・

 

「状況は?」

『目標は第三新東京市に向け進行中。』

「戦自からは?」

『攻撃しておりません。また使徒に関する情報もありません。』

「……押し付けやがったな。」

『これが目標です。』

コックピットのモニターに使徒が映し出される。

使徒は正八面体のクリスタルのように見えた。

「……使徒じゃなきゃ高く売れそうだな。」

『敵の攻撃パターンはいまだに不明です。』

「そりゃ軍隊がさぼったからだろう。」

『綾波特務二尉には偵察を要請します。』

「了解。」

といって愛機を射出口に移動させた。

「綾波……出る。」

・・・

 

「こちら綾波。目標を肉眼で確認。」

使徒は悠々と進行してきている。

「目標に変化は?」

コウスケは伊吹に使徒の反応を聞いてみた。

『ありません。』

「……やりにくいな。」

ミサトから通信が入った。

『今、EVAを出すわ。』

「おい、大丈夫か? 敵がどう出てくるかわからないんだぞ!」

『それを知るためにも出すのよ。』

「……了解。」

(決戦兵器を状況もわからずに出すか?)

コウスケは一抹の不安があった。

その不安は最悪の形で実現することになる。

『発進!』

ミサトの号令とともに射出される初号機。

するとその時を待っていたかのようにスリットに変化が起こる使徒

『目標に高エネルギー反応!』

『なんですって!』

初号機は地上に出た。

『よけて!』

使徒から光線が発射された。

『うわあああああああああああああああ!』

『シンジ君!』

「くそっ!」

コウスケは使徒の側面に回り込みミサイルを放った。

使徒は射撃をやめ、ATフィールドを展開した。

「葛城!急げ!」

『リニア戻して!』

初号機が収容された。

途端に悪寒を感じるコウスケ

「………! やばい!」

機体を急旋回させた。

すると元いたところに光線が通り過ぎた。

「こちら綾波……撤退する。」

コウスケは再度使徒に向かい合いミサイルを撃ち込んだあと、全速力で戦域を離脱した。

・・・

 

「葛城……お前はここで何してる。」

コウスケはICUの前でミサトを見つけた。

「私はシンちゃんが心配で……」

「使徒を放り出してか?」

「………」

「今、何をしなきゃいけないのか考えろ!」

「……そうよね………」

ミサトは去って行った。

「……そこに突っ立ってても何もできんぞ。」

陰からレイが出てきた。

「……碇君……」

「心配なのはわかるが、あとは医者に任せるしかない。」

「………」

「なに、死んでるわけじゃなんだ。よくなるさ。」

「……はい」

「レイも休んでおけ。レイが倒れたらシンジ君が心配するぞ。」

「……はい」

レイも去って行った。

「……俺も行くか。」

そういってコウスケは会議室に向かった。

・・・

 

会議室では使徒に対する様々なデータが送られていた。

作戦部の副部長であるコウスケもその場にいた。

「目標は一定範囲内に侵入する外敵を自動的に排除するものと推察されます。」

「目標のATフィールドを突破するには、NN航空爆雷の攻撃方法でNERV本部ごと破壊する分量が必要と出ました。」

日向がさらりと恐ろしいことを言う。

「松代のMAGI2号も同じ結果だったわ。いま日本政府と国連軍はNERV本部ごとの自爆攻撃を提唱中よ。」

リツコが資料を手にしながら、さらに重要なことをさらりと言ってのける。

「対岸の火事だと思って無茶行ってくれるわね。」

ミサトはやるべきことを理解したのか真面目モードになっていた。

「現在使徒はボーリングマシーンのようなものでジオフロントに進行中。全装甲突破までおおよそ10時間です。」

「初号機は?」

「損傷が思ったよりも軽微よ。綾波特務二尉がいなかったらもっとひどい結果になってるわね。」

「おおよそ1時間足らずで換装作業が完了します。」

「零号機は?」

「起動時自体は問題ありませんが、フィードバックに誤差が出ています。」

「実戦はまだ無理ね。」

「初号機専属パイロットの様子は?」

「身体には問題ありません。神経パルスが0.8上昇していますが許容範囲内です。」

「……状況は芳しくないわね。」

「白旗でもあげますか?」

「その前に…ちょっちやってみたいことがあるの。」

(さて、葛城作戦部長さんはどういう作戦を立てるのかな?)

・・・

 

「ヤシマ作戦か……無茶な作戦だな。赤木博士はどう思う?」

「…無茶ね。」

「なによ。残り9時間足らずで実行可能、しかも一番勝率の高い作戦よ。」

「9.1%がか?」

十回に一回成功するかしないかの確率だ。

「エネルギーはどうするんだ?」

使徒のATフィールドを貫くのに一億八千万kWのエネルギーが必要と出たのだ。

「決まってるじゃない。日本中よ。」

(スケールがでかいな。)

「…ま、やれることはやるか。」

コウスケは囮役になっていた。

エネルギーをためる間使徒の目を引き付けるのだ。

だが一歩間違えれば愛機もろとも蒸発してしまう。

しかしコウスケは与えられた役割に満足していた。

愛機の加速力と起動力なら逃げ切れるだろうと思っていたし、何より子供たちに危険が及ばないようにすることができるのだ。

そう思えば俄然やる気が出てくるというものだ。

「…そうだ。俺の機体に無誘導爆弾を積んでほしい。」

「どうして?」

「真上から攻撃してみるのさ。」

「危なくない?」

「使徒は真下には撃ってこないだろう?だから真上にも撃てないと思う。」

「……なるほどね。」

「というわけでよろしく頼む。」

「わかったわ。」

「じゃ、俺は行くな。」

コウスケは病室に向かった。

・・・

 

病室に向かう途中でレイと出会った。

「ん? どうしたこんなところで。」

「……スケジュールの伝達に来ました。」

「ああ、シンジ君にか。」

「……はい。」

「じゃ、俺もシンジ君に会ってくるよ。またな。」

「……さよなら。」

去っていくレイ。

「レイ。その答えは赤点だ。もう一度宿題のやり直しだな。」

「……わかりました。」

・・・

 

「入るぞ。」

コウスケは病室に入った。

「あっ、コウスケさん。」

「元気か?」

「おかげさまで。」

「そりゃよかった。」

「………」

「すまんな。シンジ君。」

「へ?」

「俺がもっと強くいっていれば、こんなことにはならなかったかもしれん。」

「………」

「すまん。」

頭を下げるコウスケ。

「いえ、コウスケさんのせいじゃないですし…それに僕を助けてくれたんでしょ。ありがとうございます。」

「……そういってくれるならありがたい。」

「……僕、怖いんです。情けないですよね。」

「………」

「また死ぬ目に合うんじゃないかと思うと…」

「それは情けないことじゃない。」

「でも……」

「俺だって死ぬのは怖いさ。」

「コウスケさんも?」

「当たり前だ。……人に限らず生きているものなら死に対する恐怖が必ずある。」

「………」

「だが死は避けることができない……ならそれまで精いっぱい生きようとする。それが生命の神秘ってところだろう。」

「………」

「今度の作戦で俺は囮役だ……死ぬ確率が一番高い。」

「そんな……」

「だが、俺は死ぬつもりはない。第一、こんなところで死んだら戦友たち……それと「あいつ」が納得してくれんだろう。子供たちを置いて引退かなんて言われちまう。」

「………」

「それにお前たちの未来が気になるからな。こんなところで死んでられるか。」

シンジが顔を上げる。

「確かに一番怖いところにお前たちがいる。だが、俺も含めみんながそれを少しでも和らげようとしている。いわば戦友たちがいるということを忘れないでほしい。」

「コウスケさん。」

「湿っぽい話だな。」

「そうですね。」

「じゃ、俺は行くな。愛機の調節をやっておかんといかんからな。」

「コウスケさん。ありがとうございます。」

「なあに。礼には及ばんよ。」

手を振ってコウスケは病室を後にした。

・・・

 

ヤシマ作戦の概要が伝えられていく。

「本作戦における各担当を伝達します。シンジ君。初号機で砲手を担当。レイは零号機で防御を担当して。綾波特務二尉は陽動を担当。」

その後リツコがいろいろ説明する。

重要な点は再充電に20秒かかること。

盾は17秒持ちこたえられること。

(一発勝負か……)

ミサトが顔を引き締めた。

「時間よ。」

・・・

 

コウスケは愛機のもとにいた。

「無誘導爆弾の搭載が終了しました。ただ一発のみですので。」

「わかった。」

コウスケはコックピットに乗り込む。

いつもどうり機体チェックを済ませる。

「綾波……出る。」

コウスケは大空に飛びだった。

・・・

 

着実に作戦の準備が進められている。

通信機から電力システムに異常がないことが報告される。

『第三次接続!』

『綾波特務二尉お願いするわ。』

ミサトから作戦開始の合図をもらう。

「了解。状況開始。」

コウスケは使徒に向かう。

「派手にやらせてもらう。」

ミサイルを放つ。

使徒がATフィールドで防ぎ、加粒子砲を放つ。

回避するSu-37

砲撃が止むのを待ち機銃で掃射する。

使徒、再びATフィールドで防御。

そんなやり取りを続けていた。

(狙いがどんどん正確になってやがる…)

いつ直撃を受けてもおかしくはなかった。

『最終安全装置解除。』

『撃鉄起せ。』

(……準備が終わったか。)

コウスケは最後のミサイルを放ち、逃げ回る。

『綾波特務二尉。射線上より退避してください。』

「了解。」

コウスケは射線上より退避する。

『発射!』

ミサトの号令とともにトリガーを引く初号機。

青い光線が使徒に突き刺さる。

「やった。」

作戦は成功

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のはずだった。

『目標に高エネルギー反応!』

「なに!」

『そんな、このタイミングで……』

使徒から放たれる加粒子砲。

加粒子砲は直撃を避け、初号機背後の山にぶつかった。

響き渡る悲鳴とアラート音。

『ミスった。』

通信機から漏れるミサトの声。

『第二射急いで!』

すでに再充電の準備が進んでいる。

『再び高エネルギー反応!』

『まずい!』

使徒が再び加粒子砲を放った。

その射線上に零号機が移動していた。

盾ではじかれる加粒子砲。

『あやなみ!』

『盾が持たない。』

通信機からシンジとリツコの声が聞こえた。

途端に盾がはじけ飛んだ。

加粒子砲にさらされる零号機。

「くそ!」

コウスケは急上昇し、使徒の真上にいた。

「最後の一発だ!」

無誘導爆弾を放った。

使徒は砲撃を止めATフィールドを張った。

『発射!』

その時を待っていたかのようなミサトの号令。

再びトリガーを引く初号機。

青い光線は使徒を貫通した。

燃え上がる使徒。

『パターンブルー消滅。』

通信機越しに使徒の殲滅を知らせる報告と歓喜の声が上がる。

「……零号機は?」

零号機に目をやるとひどく融解していた。

初号機は零号機のエントリープラグを引き抜き地面にそっと置いた。

シンジが救出に向かったようだ。

零号機のエントリープラグの電源はまだ生きているようだ。

『大丈夫か? あやなみ!』

『うっ……』

どうやらシンジは泣いているようだ。

『……自分には……自分にはほかに何もないって………そんなこと言うなよ。』

『………』

『別れ際にさよならなんて……悲しいこと言うなよ。』

シンジの泣き声が続く。

『……なに泣いてるの?』

『………』

『…ごめんなさい。……こういう時、どんな顔すればいいのかわからないの。』

『……笑えばいいと思うよ。』

しばらくして、零号機のエントリープラグから二人が出ていた。

(どうやら無事のようだな……)

ふと空を見ると満月が笑っていた。

コウスケにはそう見えた。

「……状況終了。綾波特務二尉、帰還する。」

そういってコウスケは愛機とともに興奮の止まない格納庫へ戻って行った。




とうとうヤシマ作戦まで進みました。
話で出てきた「あいつ」は一話で出てきた彼ではありません。
「あいつ」についてはまた後日出てきます。

今回はおまけも作りました。ただ思いついただけで書いたものです。
本編とはあまり関係ないです。(たぶん・・・)



おまけ
ヤシマ作戦の次の日放課後
加粒子砲にさらされたレイは救助後の検査で異常なしとの報告を受けた。
なので彼女も学校に登校している。
「なあ、碇。昨日は大丈夫だったのか?」
「かなり危なかったけどね。」
と言いシンジはヤシマ作戦で何があったのかを話していた。
機密じゃないのか? シンジ君
「ほえ~。綾波がな……」
「うん。綾波が居なかったら僕は死んでたかもしれない。」
「やっぱ綾波は怖いとか無いんやろな。学校でもわろうた所見たことないもんな。感情がないんとちゃうか?」
トウジ本人には悪気はない。ただ思っていることを口にしているだけだ。
「そんなことないよ! 綾波だって笑うよ! とてもきれいなんだから!」
力説するシンジ。
「碇! 綾波が笑うところ見たことあるのか!」
「う、うん。」
「なんてこった! 俺でさえ見たことないというのに!」
「やっぱ、あれとちゃいますか?」
「ずばり………」
「「愛!」」
はもるトウジとケンスケ
「そんなんじゃないよ!」
赤くなりながら否定するシンジ
そんな時シンジに声をかける者がいた。
「碇君。」
「な、なに?」
「NERV、行きましょう。」
「う、うん。じゃあね二人とも。」
NERVへと登庁する二人。
「ケンスケ……」
「ああ、綾波が誰かを誘うなんて……」
今までのレイらしからぬ行動に身動きが取れない二人であった。
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