唐突だが、『人』の定義について。貴方はどう考える?
思考することが出来ることか? 誰かと協調することか? はたまた――――既にそうある存在だからか?
どれをとっても正解であり、不正解なのかもしれない。
ちなみに俺にとっての『人』の定義は、「好きでいられること」だと思っている。
これは別に人間だけとは限らない。世の中には人より無機物などを愛する人もいるだろう。
俺個人で言えば、「何かを好きでいられる奴は、理由はどうあれ『人』なのだろう」というものだ。
その点で言えば、俺はあまりにも人間離れしていた。
人を好きになることが出来ない。
否、人に限らず。モノや動物。自然の風景すらも、俺には真っ白なキャンバスに見えてくる。
何も描かれていない、まっさらな大地が何処までも続くだけの世界。
地獄、そう評する者も中にはいるだろう。
多少ならこういった風景も趣があって良いのかもしれない。
だがそれが延々と続いていくのであれば、次第に飽きが来て、次に倦怠と疲労が襲い、最後は苦痛や絶望となるだろう。
けれども。俺にはそれがない。
なんだろうか。多少飽きてきた、とは思うがこれが苦痛にはなりえなかった。
以前までの『俺』だったら、おそらく泣き喚いていたのだろう。
いや。違うな。
きっと。以前までの『俺』だったら――――――
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
とある少年、■■■■は家族とちょっとした旅行に行っていた。
ようやく訪れた長期の休暇。
父親も仕事が休みで、家族サービスだと笑って車を回した。
行き先は、■■が行きたがっていた最近出来たばかりの複合アミューズメントパーク。
それはまるで、関東の某所に存在する夢の国のようだった。
■■は目一杯楽しんだ。
ジェットコースターに乗り、一緒に乗った父親のほうが楽しんでいた。
マスコットキャラクターと一緒に写真を撮った。
昼食は園内のレストランで、お子様ランチを頼んだ。旗を集めるのが、当時の■■の趣味であったからだ。旗は日の丸だった。
日が暮れてきた頃、段々と雲行きが怪しくなってきた。
父親が、そろそろ帰ろうと提案するが、まだ幼い■■は非常に嫌がった。
まだ居たい。もっと遊びたい、と。
だが雨がポツリポツリと降ってきたのを見ると、渋々とだが車に乗った。
車の中、父親が■■に言う。
『じゃあ明日は何処に行こうか?』
おそらくそれは、子供である■■を気遣った言葉。
助手席に乗る母親が、■■の好きな場所を挙げていく。
最初は物凄く名残惜しげだった■■も、その言葉を聞くと嬉々としてその中の一つを言った。
そして、子供ながらの念押しをした。
『絶対! 絶対だよ!!』
無論、まだ休暇はある。
車内ラジオの天気予報だと、明日は普通に晴れるという予報が出ていた。
両親は、笑顔でこう答えた。
『ああ。勿論だとも』
『ママたちが■■に嘘ついたことなんてあったかしら?』
父親は力強く頷き、母親がちょっとした冗談を言う。
雨が強くなりながらも、車内は笑顔だった。
そう。誰もが変わらない明日が来ると信じていた。疑わなかった。
誰よりも家族を大事にする父親が、こんな悪天候に車のスピードを上げるといったことはしなかった。
むしろ、いくら雨の日だからといっても遅すぎるくらいだった。
それなのに――――
車がカーブに差しかかろうとしたところで、後部座席に座っていた■■はふと。背後を見た。
大きさは15センチくらいの小さな人形程度のもの。
だが、その風貌はまるで――――悪魔のようだった。
幼い■■は恐ろしくなり、すぐさま顔を前に向ける。
そのときだった。
車のスピードが急に上がったのは。
そうした車がガードレールを突き破り、崖下へ落ちていくのにはそう時間がかからなかった。
普通なら即死。良くても、このまま助けが来なければどの道死ぬのだろう。
そして、薄れいく意識の中。■■は思った。
――――ああ。きっとアレの仕業だ、と。
それと同時に、見た。
自分を見下ろし、手を差し伸べてくれた誰かのことを。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――――ほう。
……なんだ。急に来て。
――――いやなに。君がまだ
……執着じゃない。ただ、目の前で命が失われるのが嫌なだけだ。特に、悪魔が原因だとな。
――――…………
…………一応聞いておくが。お前の差し金とかじゃねえだろうな。アレ。
――――やれやれ。随分と私に対する君の信用は低いようだ。
むしろ全幅の信頼を置いていると、そう思っていたのか?
――――まさか。さて。質問の返答だが、私ではない。そも、アレはそういうものだろう?
……そういやそうだったな。すまなかった。
――――長い年月の中。少し呆けてきたのではないのかね?
試すか?
――――………………否。今はまだそのときではない。
永劫こねーよ。馬鹿。
――――少なくとも、私は君との約定を守るとも。これでも約束を守るということには定評があるのだよ。
黙れ詐欺師。テメェの場合、「本人の望む形じゃない」が前提じゃねえか。
――――結果的に叶うのならば問題あるまい?
約束を「意訳」する奴がこの世のどこにいる。んなことばっかしてると、いつか後ろから刺されるぞ。
――――それはそれで見て見たい「未知」ではあるな。だが、私を殺せるのは「彼女」以外におらんよ。
はいはい。というわけだ。さっさと■に戻ってろ。
――――言われずともそうする。此処に来たのは一応の義理立てに過ぎん。
……そっちはそっちで始まるんだな。
――――今までで一番だ。故、ここにはもう来ないだろう。ああ。安心し給え。最後の最後で約定を違える、なんてことはしないとも。
何に誓う?
――――「女神」に誓って。
…………そうかい。なら安心かな。こんなこと言うのは変だが――――元気でな。
――――ではさらばだ。「この世の果てまで人の未来を見守る」と決めた、我が
……………………。
…………。
……。
ああ。じゃあな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
駒王町。
日本に存在する、極普通の町。
田舎、というわけではなく。それなりに発展している。
だが、完全に都会というわけでもない。
そこかしこに緑豊かな場所が残されて、休日には多くの人がジョギングなどをするコースになっている。
駒王町は、日本の中でもかなり学力平均が高い町でも知られている。
この私立駒王学園は、その中でもトップクラスだろう。
生徒たちの平均学力も高く、品行方正な生徒たちばかり――――――
「くそっ! 見つかった! プランBだ!」
「んなもんねえよ! こっちに逃げるぞ!」
「ちなみにプランBのBはボインのBな!」
「どうでもいいわ!!」
…………品行方正な、生徒。
「チィッ! 逃がしたわ! そっちに行ったわよ!!」
「今日は絶対に逃がさない!」
「ヤロォォォォォブッコロシャアァァァァァァ!!」
「ちょっと待ってそれは女子が発していい言葉ではないし、声も変よアンタ!?」
……訂正。
何事にも例外というのは存在する。
廊下をドタドタと走るのは、二人の男子生徒と。それを追いかける多数の女子生徒。
追われる男子二人は、まるでプレデターがエイリアンにでも出くわしたかのような表情の中に、一瞬の悦楽を得た、といったなんとも形容しがたい表情をして逃げていた。
一方で、追う立場の女子たち。
皆、一様に見目麗しい美少女だというのが分かる。
あと数年もすれば、引く手数多の女性になるというほどに。
……もっとも。それらの美貌が今、二人の男子を追いかけるということに夢中になりすぎて野獣のそれに変貌しているが。
実はこの駒王学園。近年までは女子高だったのだ。
だが、少子高齢化の影響を受け、数年前に共学になった。
必然、ここに来る男子の中には女子を目当てに来るものもいる。
現在追われている松田・元浜両男子生徒もそうだ。
といっても、彼らの場合。行動力がありすぎるのが問題視されてはいるが。
二人が「廊下は走らないように」という張り紙を全力で無視して走っていると、目の前に一人の男子が現れた。
髪は染めてはないのだろうが、それでも目立つ尖った茶髪。
学校指定のブレザーはともかくYシャツまで全開にして、中に着ている赤いインナーが見えている。
その男子も二人に気づくと、またか、といった感じに頭を抱える。
即座に二人はその男子生徒の後ろに隠れる。
それに追随する形で、女子生徒は男子生徒の前で止まった。
「兵藤君そこどいて! そいつ等殺せない!!」
「随分と大胆な殺害予告…………というか殺害前提になるって、お前ら今度は何をしたんだよ」
呆れたように二人を見る、兵藤と呼ばれた生徒。
松田・元浜は口を揃えて言う。
「「何もしていない!! ただ松田(元浜)と賭けをしていただけだ!!」」
「……内容言ってみ」
「ほら。さっき女子体育だったじゃん?」
「んで。着替えてたろ?」
「「その中の何割がセットの下着を着ているかが賭けの内容だ」」
「いっぺん地獄に行って鬼に頭かち割ってもらえ。そうすりゃ多少は中身がマシになるだろ」
いやきっと鬼もコイツら拒否するだろうなあ、と兵藤は思いながら女子軍団を見る。
先ほどよりかは表情が落ち着いているが、以前、眼光が衰えていない。
「あー……まあお前らが怒るのも無理はない。俺でもキレるだろうし」
「えっ?! 兵藤君もコイツらに覗かれるの!?」
「男×男の禁断の世界が実際にあったとは……」
「下種男に視姦されるなんて、定番じゃないのよ!」
「人の話を聞けよお前ら」
頭をかち割る対象が増えて鬼も泣きそうだな。
ため息をつきながら、兵藤は言う。
「でもお前らさ。次の授業の準備、しなくていいのか? そろそろ休み時間終わるぞ」
そういうと、全員がサーッと青い顔になる。
「ヤバッ! 次現国だった!」
「体育終わってから写させてもらおうと思ったのに!」
「それもこれも全部松田と元浜って奴らのせいなんだ!!」
「「はいはい俺らのせい俺らのせい」」
『実際アンタらのせいでしょうが!!』
と、様々に二人を罵ったり中指を立てながら、女子軍団は去っていった。
ふぅ、と二人は兵藤の背後から出てくる。
「いやー。今回はマジで死ぬかと思った……」
「割と全力だったよなアイツだ」
「お前らも懲りないな。いい加減にしとかないと退学喰らうぞ」
「「退学が怖くて覗きが出来るか!!」」
「いやそこは普通退学のほうが怖いだろ……」
それだけ言うと、兵藤はトイレ行ってくるといってその場を去った。
ふと、窓の外を見る。
天気は快晴。穏やかな町並みが広がっている。
だが、それには目もくれず、窓に映った自分を見た。
それは、能面でもかけているのかと思わんばかりの無表情だった。
「……駄目、だなぁ」
それだけ呟くと、兵藤はその場を去る。
この後、彼――――兵藤一誠は悪魔の戦いに手を出したり、世界崩壊の危機を救ったりするために奔走するのだが、それを知るのはまだ先の話だ。
どうもKoyです。
見てのとおりのHSDDの二次創作です。
内容としましては、一誠や一部原作キャラの改変。オリジナル主人公。などです。
実のところ私はHSDDを見たことがありません。漫画でアーシアが出てくるあたりまでは見てたのですが。
これを本格的に載せるとなったらおそらく原作完全無視のオリジナルストーリーになるでしょう。
原作に沿うのは最初だけかな。
それでは。