さて。
アイドル戦国時代な世の中ではあるが。無論、アイドルだけが芸能関係の主役というわけではない。
俳優。女優。お笑い芸人。他にも色々と芸能関係の仕事をしている人はたくさん居る。
そして、別方面の有名人というのも必ずいる。
例を挙げると書籍関係――――つまりは作家だ。
ここに、都内でも大型の書店が存在する。
そこでは本日発売の、とある恋愛小説作家の最新作が発売されていた。
その作家の書く少年少女の恋愛模様は10代から20代の女性を中心に爆発的な人気を誇っており、即日完売も珍しくないというほど。
特に女子高生に人気で、一ヶ月ほど前から予約で埋まるほど。
さらに言うと、今日はサイン会というものが開かれており、その作家が一人一人に最新作の本にサインをしていくというもの。
当然、長蛇の列が瞬時に出来上がり。店員が列整理という普段の業務とは違う作業で少々苦戦しているようだ。
「押さないでくださーい! ちゃんと順番は来ますから押さないでください! ――――押すなっての私より胸デカいからって押し付けようとするな嫌味かコラ!!」
店員さんも中々ハードな環境にいるようだ。
ともあれ。
そんなハードな日も、終わりを迎えようとしていた。
最後の客が出払い、本も完売。
椅子に座っていた作家の人も、今は担当編集の人が買ってきたコーヒーを飲みながら今後の作品についての話をしていた。
「――――いやー。それにしてもやっぱり先生は凄いですね!」
「その先生、っていうの止めて下さいよ。俺なんてまだまだなんですから」
「いやいや。即日完売の作家なんて中々いませんて。しかもまだ22歳じゃないですか」
「若さと勢いだけで売れてる気がしますけどねー」
そんな風に話すは、長身の男性。
山吹色の髪をやや長めに、しかし決して不潔さを思わせない具合に伸ばし。立ち話をするその姿は様になっていた。
手に持つコーヒーを飲み終え、ゴミ箱を探していると、ふと。少し離れたところからなにやら喧騒が聞こえる。
それは、自分が先ほどまでサイン会をしていた本屋のカウンターだった。
見ると、学生服を着た。おそらく中学生くらいの少女だろう。
「――――――ですので。そういうのはちょっと……」
「えー、そんなぁ……」
何やら店員が説明をすると、少女のほうが項垂れてしまっている。
そして、そのレジには自身が執筆し。本日発売されている恋愛小説があった。
(…………ふむ)
自分の書いた本絡みとなると流石に見過ごせなく、用意していたサングラスをかけて近くに行き、話を聞いてみることにした。
「あの、何かありましたか?」
「え……あっ、い、いえ! この子が予約していた本なのですが……」
「お金、忘れちゃって……」
聞けばこの少女。まだ中学生だという。
今日は授業が早く終わり、サイン会が行われるというこの書店までやってきた。
……のだが。財布に入れてあるはずの購入代金を、今日に限って家に置いて来てしまったという。
そこで少女は、サインだけ貰って再びレジへと本を預ける。その間に家から代金を持ってきて払う、ということを店員に提案したらしい。
だがそんなことを罷り通らせてしまうのは出来ず、店としても個人としても許可は出来ないので、こうして先ほどから一歩も譲らずにいるというわけだ。
それを聞き終えると、青年は少女に問いかける。
「君は、本が好きかい?」
少女は、一瞬だけ戸惑ったような表情を浮かべた後。答える。
「本、っていうか。この人の書く物語が好きなの」
「……ふむ」
「最初はね。お姉ちゃんのを借りて読んでたんだけど。今日はサイン会あるし、これからは自分で買おうって思って……お母さんのお手伝いとかもいっぱい頑張って……」
でも、
「サイン会。終わっちゃったから……」
サイン会は午後2時から4時半までの間。
書く速さには自信があるので、何人居ても問題はない。が、やはり次回作の構想を練ったりしなければならないし。実を言えばこの後、ラジオ出演も控えている。
ちら、と時計を見るともうすぐ午後5時になりそうだ。
目の前の少女は項垂れていたが、やがて諦めがついたのか店員に。また来るから確保していて欲しいという旨を伝える。
そしてそのまま書店を出ようとした。
……が。
「あー、すいません。その本、俺買いますわ。んで。この子に差し上げます」
『えっ!?』
と、店員と少女の両方が驚いていた。
青年は即座に財布からカードを取り出すと店員に渡す。
店員も、一瞬反応が遅れたが、慌てて受け取る。
「……よろしいのですか?」
「ああ。構いませんよ」
「あ、あの! わ、私なら大丈夫ですから!」
少女のほうも慌てて言うが、青年はにこやかに少女の頭を撫でた。
店員が払いを済ませ青年にカードを渡す。
そして、本を袋に入れようとする店員を止める。
そのまま青年は本を手に取り、最初の一ページの無地の部分を開く。
「……いい、の?」
「勿論。それに――――――俺は、自分の書いた本を一人でも多くの人に読んでもらいたいからね」
「自分の、書いた……って…………え、えぇ!?」
青年がサングラスを外し、少女を見る。
少女も、作家である青年の顔は知っていたようで驚きの声を上げた。
が、すぐに青年が指を口に当て「静かに」と示す。
「君、名前は?」
「えっ?」
「折角だからね」
そういうと、青年は悪戯っぽく笑う。
少女は自分の名を告げる。
「り、莉嘉! 城ヶ崎莉嘉、です!」
「OK……って。城ヶ崎?」
「あ、お姉ちゃん……えと。城ヶ崎美嘉は私の姉です」
「おー。凄いね。なら将来はアイドルかな?」
「はい! 私、お姉ちゃんみたいなアイドルになりたいんです!」
「あっはは。そりゃあいい……っと。はいこれ」
そういって、青年はサインの終わった本を少女に渡す。
そこには、『Dear Rika Jogasaki Thank you』という綺麗な筆記体の文字の後に青年のペンネーム「四葉カメリア」が書かれていた。
普通なら、個人の名前を入れたりはしない。が……
「今回は特別。ここまでわざわざ来てくれた女の子へのプレゼントってところかな」
「ッ、あ、ありがとうございます!! 私、絶っ対宝物にします!!」
「ふふ。ありがと。さっ。あまり遅くならないうちに帰りなさい」
「はい! ありがとうございました!!」
そういってお辞儀をし、少女――城ヶ崎莉嘉は帰っていった。
「いいんですか? あんなことして」
後ろを見ると、いつの間にか背後に立っていた担当の女性がそんなことを言った。
青年は笑う。
「いいんですよ。それに、俺は読者を大切にしますから。ましてや電車に乗ってわざわざここまで来てくれたんですよ? ああしなきゃ俺が俺を許せなくなる」
「…………やっぱり。あなたは天才ですね」
「そりゃどうも……ん?」
ふと、ポケットの中のスマートフォンが鳴動していた。
確認すると、そこには「杏」だけ記されていた。
「もしもし杏か?」
『……にーちゃーん』
「なんだどうした?」
『…………やっぱアイドル辞めていい? ものすごい面倒なオーラがひしひしと感じる』
電話の向こうの声は、少女のようだ。
だが、その声の様子は限りなくだるそうだ。
青年は苦笑すると、電話の向こうの少女に話す。
「まあなんだ。ちょっとだけやってみればいいさ。それで本当に向かないと思ったら辞めな。そのときは俺も手伝うからさ」
『………………うん』
「今日の晩飯は何がいい?」
『エビグラタン』
「まーた作るのが面倒なものを……了解」
それだけ言うと、電話は切れる。
「妹さんですか?」
「ええ。さて。じゃあ次の現場行きますか!」
「はい! 次は――――」
こうして、二人は書店を後にした。
青年――――双葉椿は作家である。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お姉ちゃん! これ見て!」
「んー? なにこ………………これ四葉カメリアの新作!? しかも直筆サイン入り!? それもなんで莉嘉の名前が!?」
「えっへへー。実はね――――――」
「あ、あんたはなんて羨ましいことを…………というか何で私にメールしないのよ!!」
「だってお姉ちゃん今日仕事だって言ってたじゃん」
「私の現場このすぐ近くだったのよ!? ああもう今日が発売日だってのをすっかり忘れてたわ。しかもサイン会まであったなんて…………もういい! 莉嘉それ渡しなさい! 「R」の部分を「M」に変えれば私のになるし!」
「ならないよっていうか落ち着いてよお姉ちゃん!!」
どうもKoyです。
デレステ起動エラーで遊べない不幸……
もういいし! Fate/Grand Orderがあるし! アタランテ引けたからいいし!(ヤケ
ちなみに設定としては346のみならず765もほぼ全員が読者という。
女の子だからね! 仕方ないね!
多分、しぶりんも隠れてこっそり恋愛小説読んでそう。
765だとおそらくりっちゃんも見てそう。マッコマコリーンは確実にファン。
それでは。