Koyの短編集   作:Koy

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兄デレマス3

ここで少し、郊外のほうに目を向けてみよう。

都心から離れたこの場所は、閑静な住宅街が立ち並ぶ場所だ。

 

その中に一つ。一際大きな建物が存在していた。

 

二階建てではあるが、普通の一軒家よりも大きくあり。内部に多くの部屋があることが伺える。

というか既に一階から普通の一軒家よりも大きい。

幅はおよそ50メートル。奥行きは30メートルといったところだろうか。

 

そこはとあるファッションデザイナーのグループの仕事場。

周りの人たちからは「作業場」と呼ばれているが、デザイナーチームのメンバーたちはそれぞれ違った呼び方をする。

 

ある者は「アトリエ」

 

ある者は「クラスルーム」

 

ある者は「研究室」

 

様々な呼ばれ方をしているこの建造物。

その中には、一つだけ、完全防音の部屋が存在していた。

 

その部屋の中に、現在四人の男女がいた。

四人はそれぞれ正方形を作る形でお互いを見やる。

そして、その内の一人が呼吸を整える。

 

歳はまだ大学生くらいだろう。

黒髪は短く。精悍で、しかし何処か無邪気さを感じさせるような風貌の青年だった。

 

「……行くぜ」

『応とも』

 

青年が一声かけると、四人は一斉に深く息を吸った。

そして…………

 

 

 

「シィイィィンフォギアアアアアアアアァァァァァ!!」

「真っ赤な誓いいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

「ここからいなくなれえええええええええええええ!!」

「ハルトオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

 

叫んだ。

一斉に叫びだした。

ぶっちゃけ。まだ若いとはいえ男女がこうして向かい合いながら絶叫するという光景はシュールを超えて軽く恐怖を感じるものだ。

次の瞬間。

 

「アンタらまたここにいたんか!! いいからとっとと仕事に行くわよあとうっさいわ馬鹿共!!」

 

部屋に入ってきた女性のハリセンによって青年主催の「叫び声を出してストレス解消しようZE」会は終了した。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「全く。ってかリーダーたるアンタが率先して何馬鹿やってんのよ」

「いやー。ほら。三徹続いてて眠れたけどどうにもスッキリしなくてな。それでアレをしてたんだよ」

「その無駄にある肺活量をもっと別なことに向けなさいよ」

「ビルの屋上で叫んでいい?」

「死ね」

 

そんな言い合いをしながら乗ってきた車を降りる二人。

目の前には自分たちの作業場所よりも巨大な建物が聳え立っていた。

 

346プロダクション。

近年。アイドル部門を立ち上げ、更なる急成長を遂げた複合芸能プロダクション。

複合芸能という名の通り、アイドル部門だけでなく。様々な芸能部門が存在しており、内部にはそれこそ一流の設備・人材が揃っている。

そこにやってきた彼らもまた、芸能という部門の一端を担う仕事をしている。

尤も、彼ら自身が346に所属しているというわけではないのだが。

 

二人はそのまま受付に進む。

 

「すいません。本日仕事で来ました『Three Clovers』ですが」

「あ、はい。少々お待ちください」

 

受付嬢はそのままPCを操作し、アポイントメントの確認をする。

しばらくして、ゲスト登録の証明書を貰う二人。

 

「それでは三階の左手のお部屋になります」

「ありがとうございます」

 

証明書を首から提げつつ、エレベーターに乗り言われた場所まで行く二人。

 

「そういえばさ」

「ん?」

 

ふと、エレベーター内で女性が青年に話しかける。

 

「アンタの妹、ってか従妹ちゃん? ここにいるんでしょ」

「まあな。受かったー、って言って喜んでたし」

「シスコンめ――――――それから。愛梨もね」

「おう」

 

愛梨、という名に青年と女性は懐かしむような表情になる。

 

十時愛梨。

現在、この346プロダクションのアイドル部門にて高い人気を誇っているアイドルの一人。

 

歳は青年たちと同じ歳ではあるが、その天然具合と愛らしい仕草や表情から時折年下に見られることもあり、そのギャップがいいとファンの間では評判だ。

そして。実はこの二人。十時愛梨とは旧知の仲である。

特に青年のほうは幼馴染であり、幼少の頃からの十時愛梨を知っている。

 

「いやー。驚いたわよ。まさかアイドルやりたいなんて言い出すから」

「俺が一番びっくりしたわ。何の前触れも無く『私アイドルになるからー』で始まって『オーディション受かってアイドルになったよー』で終わったからな。途中の説明完全に省きやがった」

「ああ……愛梨。昔からそういうところあったからねぇ」

「今でもあの調子だったらどうするよ」

 

無言の返答。

正直、ありえそうなヴィジョンなだけに迂闊な返答が出来なかった。

そのうち、二人はこの話題に触れるのは辞めた。

 

そうこうしている内に。目的の部屋についた。

ノックをすると、中からかなりこの高身長で強面の男性が出てきた。

 

「……」

「どうも。『Three Clovers』の九野木周平です。こっちは金平文です」

「あ、どうも。『シンデレラプロジェクト』の担当プロデューサーです。本日はよろしくお願いします」

 

はい、といって青年――九野木周平と担当プロデューサーは握手をする。

遅れて女性――金平文もお辞儀をしつつ握手を交わす。

 

「えー……と、とりあえず話は聞いておりますが。なんでもバックダンサーの衣装チェンジだとか」

「はい」

 

最初の男性の印象がまだ尾を引いているのか若干混乱しているが、仕事の話にシフトさせることで自分を落ち着かせる。

 

プロデューサーに聞くと。今度のライブに出演するアイドル、城ヶ崎美嘉のバックダンサーにトラブルがあり、当日参加できなくなったという。

そこで白羽の矢が立ったのが、最近出来たばかりのこの『シンデレラプロジェクト』のメンバー三人だという。

だが、やはり最初のメンバーとの体格などが違うためサイズの変更もしなければならない。

ならばいっそ、最初から彼女たちに合わせつつ、城ヶ崎美嘉とのイメージにも合うものに仕上げようということになったらしい。

 

「成るほど。そこで我々に委託を」

「はい。本来なら346の方で解決するはずだったのですが……生憎。今はどの部署も多忙で時間がとれず……」

「そこで今世間で噂になっている我々に頼もうと?」

「……はい。そういうことになります」

 

ソファで対面しながら話し合う姿は、先ほどまで作業場で馬鹿騒ぎ(絶叫)をやっていた人物とは思えないほど真面目だった。

 

この青年。九野木周平は周りが認めるほどの天才である。

 

若干18歳にしてファッションデザインの世界に飛び入り、見事入賞を果たす。

当時から一緒に構想を練り上げたりしていた仲間達と共にデザイングループ『Three Clovers』を結成。

最年少でのファッションデザインということもあり世間は大いに取り上げた。

彼らの生み出す服飾は現代に取り入りつつ、未来を見ている。という評価を受けるほど。

10代から20代前半の若者をターゲットにしつつ、お年寄りなどにもファッションを楽しんでもらいたいという思いもあり、いまや全年齢層に大人気のブランドである。

 

無論。こうした委託を受けることも珍しくない。

特筆すべきはその作業スピード。

他の企業が三日かけてやる工程を僅か一日で完遂させる。当然、仕事に粗は無く完璧な仕上がりである。

……その裏では、メンバー全員が徹夜を強いられている現状がある。

 

「成程成程。了解です。お引き受けしましょう」

「ありがとうございます」

「じゃあ早速。その期待の新人さんのところに行きますか」

「はい。こちらです」

 

そういって、案内された部屋。

それなりに広く、シックな感じのお洒落な部屋だった。

そこには数人の少女たちがいた。

 

プロデューサーが、おそらくそのバックダンサーの三人であろう名前の少女を呼ぶ。

 

「こちらが。今回城ヶ崎美嘉さんのバックダンサーを務める。島村卯月さん。渋谷凛さん。本田未央さんの三人です」

「「「よ、よろしくお願いします!」」」

「『Three Clovers』の九野木周平。よろしく」

「同じく。金平文。凄いじゃない。まだ入って間もないのに美嘉ちゃんのバックダンサーに選ばれるなんて」

「私としては、もう少し時期を置いたほうが良かったと思いましたが……」

「いやあ。いいんじゃないですかね。何事も挑戦が大事ですよ」

 

そういうと、プロデューサーは城ヶ崎さんを呼んできますので、といって部屋を出る。

さて。と、周平が呟くと、腰の辺りに軽い衝撃が来た。

見ると、まだ小学生くらいの少女が周平に抱きついていた。

その少女は、周平を見上げるとニコニコしながら、

 

「お兄ちゃんいらっしゃい!!」

 

と元気よく言った。

 

「おー。みりあはここの部署だったのか」

「うん!」

 

みりあと呼ばれた子は周平に会えて嬉しいのか、ぴょんぴょんと跳ねてはしゃいでいる。

その様子を見ていたほかの子達の反応は……

 

『みりあちゃんのお兄さん!?』

「あー。まあそうなるわよね……」

 

驚愕の反応に、文は苦笑と共に頭を掻く。

 

……まあ。兄って言っても直接的な血の繋がりは無いんだけどね。

 

ふと横に居る自分のグループリーダーを見ると、従妹を持ち上げぐるぐる回っていた。

とりあえずそれを強制終了させるために、的確に周平に対しアイアンクローをかけることにした。

 

「ぐおおおおおおぉぉぉ!? あ、文テメェ何しやがる!!」

「別に。シスコン馬鹿を仕事に引き戻しただけよ」

「いいだろうが別に! みりあ可愛いじゃねえか! お前だってこんな可愛い子妹にいたら溺愛するだろうが!!」

「否定はしないけど……でもアンタみたいには絶ッ対にならんわ」

「シスコン発症させて何が悪い!」

「ついでにロリコンも発症させて捕まってしまえ」

 

そういうと、文はアイドルたちに向き直る。

 

「ごめんなさいね。あと言っておくと、みりあちゃんとうちのリーダーに直接の血縁は無いのよ。所謂従兄妹ね」

「あ、そ、そうなんですかぁ」

「そっ。まあ、みりあちゃんはコイツによく懐いているし、普通に昔からお兄ちゃん呼びだったから」

「こっち来た当初はみりあの家にお世話になったりもしたしな」

「ねえねえ! お兄ちゃんまたお家に来てくれる?」

「おー行くぞー。お菓子持って行くぞー」

 

やったー、と喜ぶみりあとそれを抱きかかえる周平。

傍から見たら仲のいい兄妹に見える。

その様子を見ていた全員は何処と無く微笑ましい気持ちに包まれていた。

 

「へえ。みりあちゃんのお兄さんかー」

「確か『Three Clovers』って、今結構話題になってるファッションチームだよね」

「ということは。みりあちゃんの服もひょっとして…………?」

「ええそうね。全部ってわけじゃないけど。あの子の持ってる服の半分くらいはアイツが自作したものよ」

 

未央の疑問に答える文。

実際。みりあの今着ている服ですらも周平が作ったものだ。

さて、とみりあを降ろした周平に文が近づく。

 

「そろそろアンタは出て行きなさい。これから採寸するんだから」

「あーはいはい――――暴走すんなよ」

「善処するわ」

「それはやる気の無い政治家が使う常套句だよ馬鹿……ッ」

 

周平は文の後ろの三人を見ながら心底同情するかのように言う。

 

「……ゴメン」

「え、い、いや何がですか? あ、ちょっとその両手を合わせるポーズなんですか!?」

「というかその、金平さんの――――」

「文、でいいわよ卯月ちゃん」

「あ、はい。文さんのなんと言いますか……呼吸が若干荒いんですけど……」

「ああうん――――ソイツ。別に同性愛者って訳じゃないんだけど。うん。まあ、ゴメン」

 

それを聞いて真っ先に出口に向かおうとしたのが凛。

だが、先に文に捕まり未央、卯月らと共に連行されていった。

 

周平はそのまま静かに扉を閉め、直後。中から、

 

『……おおっ! 卯月ちゃんいい体してるじゃなぁい。ほらほら。ここら辺とかさ!』

『ひゃう!? や、そ、そんなと、こぉ……』

『ふむふむ。凛ちゃんも……おお、腰周りエッロい』

『やっ、ちょ、こ、の人。手付きが……ッ!』

『ほほう。未央ちゃんは見かけによらずナイスバディ!』

『だ、誰かヘルプ! みくにゃんヘルプ!』

『……無理。私には無理』

 

といった悲鳴が聞こえてきた。

その後。採寸が終わったのか、文が満足げに出てきた。

中を覗くと、服は着ているが何か大事なものをなくしたかのような顔をしている三人と、顔の赤い(子供は除く)メンバーがいた。

 

周平は、文に向き直る。

 

「……遺言はあるか?」

「超・満足☆」

「Judgement」

 

必殺のコブラツイスト。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「今度は新田ちゃんを採寸したいな」

「いっぺん地獄に落ちろやテメェ」

 

あの後。プロデューサーが城ヶ崎美嘉をつれてきて、衣装に関する打ち合わせは終わった。

一先ず、周平は三人に対して土下座をせん勢いで謝り倒していた。

 

『いや本当にゴメン。アイツ、あんな性格だけどうちの経理担当で滅茶苦茶正確な採寸するから手放せなくて……』

『い、いえいえ! 大丈夫ですから!』

『……まあ、ちょっとびっくりした』

『あのー……素朴な疑問なんですけど。お仕事、大丈夫ですか?』

『うん。まあ、ね――――――大体はここに来る前に締め上げるんだけど、今日は油断してた』

 

一先ず謝罪もし終わり、後はライブ衣装を作るだけである。

 

「お前マジであの三人に謝っとけよ。あと死ね」

「分かってるわよ。あとお前も死ね」

 

そんな風に言い争いをしている二人が受付に証明書を返し、正面玄関から帰ろうとすると、見知った顔がそこにはあった。

 

「あれって……」

「愛梨ね」

 

そう。そこには十時愛梨がいた。

仕事が終わったのだろうか。隣には同じアイドルの川島瑞樹がいて、仲良さそうに話していた。

文は一瞬、どうすべきかで迷い立ち止まるが。周平はいつものペースですたすたと歩いていく。

慌てて周平の後を追う文だが、当然。十時愛梨とはすれ違う形になる。

案の定。愛梨は二人に気づいた。

 

文と同じく、一瞬立ち止まる愛梨。

それでも周平の歩くスピードは変わらない。

 

(……まあ、今の愛梨はアイドルだからねえ)

 

ただでさえ人気の高いアイドルである愛梨。

そこに今話題のファッションデザイナーである周平が仲良さそうに話しこんだとなれば、社内で噂も立つだろう。

下手をしたら下世話な噂を立たせ、目の前の少女を傷つけてしまうかもしれない。

 

そんな考えが文の頭をよぎる。

愛梨のほうは相変わらず立ち尽くしたまま。

隣にいる川島瑞樹が呼びかけても上の空の返事。

 

そして、二人がすれ違おうとした瞬間、周平の左手が愛梨の頭に置かれた。

 

 

 

「しっかりやれよ――――十時(じゅうじ)

 

 

 

そうはっきりと聞こえた。

その言葉を聞いて、文は脱力する。

 

……コイツ。単純に照れてただけかい!

 

つまりは自分の予想していた難しい思考は全くしておらず、ただ単に久しぶりに再開する幼馴染に対して照れが入っていただけだった。

その証拠に、

 

……愛梨のことよく「じゅうじ」って言ってからかってたっけ。

 

そんなことを思いながら周平の後を追いかけると後ろから愛梨の声が聞こえた。

 

「だーかーらー! 私の名前は「ととき」だってばー!」

 

その声に周平は手をひらひらと振りながら返事をする。

二人はそのまま346を出る。

 

車を停めてあるスペースに向かい、ふと文は周平に疑問を投げる。

 

「ねえ。良かったの? もうちょい話してもよさそうだったけど」

「いいんだよ。アイツはアイツで忙しいし。俺らのことを覚えていることが分かってよかった。それだけでいい」

「……あっそ」

 

車に乗り、文がキーを回す。

 

「まあそれでもさ。良かったじゃん」

「あ? 何が」

「アンタが最後に贈った服。未だに着てもらえてるんだから」

「……まあな」

 

照れくさそうに笑う。

彼――――九野木周平率いるファッションデザインチーム『Three Clovers』

それは。元々一人の少女を影から支えるために作られたものであるということは、誰も知らない。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「ねえ愛梨ちゃん。今の彼って『Three Clovers』の九野木周平君よね」

「え、ああ。はい。そうですよ」

「ふーん……で?」

「へっ?」

「彼とはどういった関係なのかしら?」

「ど、どうと言われましても……」

「ひょっとして――――元カレ?」

「ッ、ち、ちちち違いますよ! しゅうく…………じゃない九野木君はただの幼馴染ですよ!」

「フフフ。そう――――まあそれはこれから美嘉ちゃんたちを交えてゆっくり聞きましょうか」

「え、ええぇぇ!?」

 




どうもKoyです。

デレマス……しまむー。ようやく本音を言ってくれたよ。
置いてかれるのが怖いのと、自分には何も無いことが怖かったんですかね。卯月は。
何も無いなんて言わないでくれよ……その笑顔に救われた人がいるんだから……

あ、ちなみに携帯変えたらFate/GOやら黒猫やらの引継ぎデータとって無くて全部消えましたちくしょう。

ひとまずこれでデレマスは終わりですね。
次回投稿はかなり間が空きます。
何を投稿しようかな。劣等生もいいけどHSDDもいい。

あとGOD EATERって面白いんですかね。今度PS4でも出るみたいですけど。

それでは。





??「みりあちゃん……フヒヒ★」
??「お姉ちゃんがまた気持ち悪くなってる」
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