10話
ここは月村家の敷地内にある森、立派な木々の間を走り抜ける子供が三人いる。
「おい、もっと早く走れ」
「無理を言わないでくれ、僕らは君と違ってそこまで鍛えていないんだ」
「ま、待っちくり〜〜!」
先頭を走るのはこの中で一番身体能力が高い拳、次に左目に眼帯を付けている最近醜女が好きだと判明した心悟。 そして二人から離れたところに必死の形相で二人を追いかけるメイド服を着た霧刀(仮)。
彼らは森の中に消えてったフェレットもどきのユーノ、それを追いかけて行った猫を追って走っている。 ちなみに彼らの遥か後方には同じ目的を持った少女、なのはも走っているが彼女はお世辞にも足が速いとは言えない……
「む、見つけたぞ」
二匹の小動物を発見したのは先頭を走っていた拳だった。 彼は近くで止まり後ろの二人の到着を待つ、程なくして心悟が到着する。
「はぁ、はぁ、僕は君ほど動ける訳ではないから少しは速度を落としてもらいたかったな……」
そんな事を言っている心悟も小学三年生にしてはかなりの足の速さだった。 彼が本気で走れば小学生の記録など簡単に更新できてしまうだろう。 そんな彼が追いつけない拳の足の速さが異常なのだ。
そしてしばらくして霧刀(仮)が到着する。
「はぁ、はぁ、ふ、二人共、はぁ、速スギィ……はぁ、はぁ、はぁぁぁぁぁーー」
霧刀(仮)は二人とは違い汗を流し、息を上げ、髪も乱れ、ほんの少し着崩れしている。 その艶やかな姿に、もし今の彼を初対面の人間がみたらきっと女の子だと思い込んでしまうだろう。 ……だがこのメイド服を着た子供は確実に男である。 一応ここに記しておこう。
「おお、ユーノ君とにゃん子見っけ」
その声に反応する小動物が二匹。
「み゛、み゛な゛ざーーん!!」
「なぁーう?」
そのうちの一匹、フェレットもどきのユーノは三人に向かって走り出す。 ユーノの顔は涙と鼻水でグシャグシャだ。
「やれやれ、そろそろかわいそうだから助けてあげるとしよう」
そんなユーノの姿を見て可哀想だと思った心悟は向かってくるユーノを受け止め、自分の頭に乗せる。 ちなみに心悟とユーノは互いの正体を既に明かしてあるのでユーノが喋っていることに何ら疑問はわかない。
「これで大丈夫かな?」
「は、はいぃぃ」
ユーノ・スクライア、九死に一生を得る。
「……にゃう?」
「お前はこっちだ」
残った猫を両手で抱えあげるのは霧刀(仮)。
「……にゃ」
「にゃんにゃん♪」
猫の鳴き声に霧刀(仮)も同じ言葉で返す。 猫とメイド、とても微笑ましい光景だが、このメイド服を着た子供は男である。 生物学的にも男であると念を押しておこう。
「はぁ……はぁ……さっ……三人とも……はぁ……はぁ……速すぎ……はぁ……はぁ……」
遅れて最後尾のなのはが到着。 彼女は霧刀(仮)よりも息を切らし、脇腹を抑え何とか合流する。
ちなみに三人が速いと言うか三人がちょっとしたショートカットをしたため彼女よりも早く到着出来たのだ。 もっとも霧刀(仮)がショートカットした際に着地に失敗しなければもっと早く到着出来たのだが……
「さて、そろそろ帰っぺ。 オレ腹減ったぞ〜〜ーーーーどうした木村君?」
なのはも落ちいたところで帰ろうとした霧刀(仮)。 しかし心悟が目の前にある大きな木、この月村家の敷地内で最も高い木の頂上を見つめる事に気付く。
「なんだ? そこにもジュエルシードでもあんのか?」
猫が持っていたジュエルシードは今ユーノが持っている。 彼の功績だ、彼が大事そうに抱えている。
「それならいいんだが……」
心悟は眼帯を外し、左目に宿る『心を覗く能力』を使い見つめる。
その場にいる全員が疑問に思う、『何故人がいない方向で能力を使うのだろうか?』
その疑問を持つのは間違ってはいない。 何故ならこれは心悟自身も最近気づいた能力の使い方なのだから。
心悟はかつて言った、この能力は人を見てしまえば強制的に発動してしまう、と。 裏を返せば誰もいない所で発動してしまったらそこに誰かいる事になる。
今心悟は一際大きな木の天辺を見つめている。 もし誰か入れば自分の能力に引っかかる筈だ。 そしてーーーー
「……見つけたぞ、誰かこの木の天辺に入るぞ……!」
ーーーー見つける、一人の人間を。
「おいおい、こんなデカイ木に誰が登るってんだよ。 それにここって警備体制ってやつが凄いんだろ?」
霧刀(仮)の疑問は最もだ。 木に登るどころかこの敷地内に入る事だって不可能に近い。 もしその不可能を可能にする方法があるとすればーーーー
「恐らく……空だ」
「空?」
「ああ、それもかなりの高度からだ。 いくら警備体制が万全でも空から人間が降りてきたら反応できない」
ーーーー空からの来訪。 普通の人間には不可能な方法、しかし彼らは一つ思い当たる。
「ユーノ君、もしかして……」
「うん、間違いないと思う。 『魔法』だ!!」
人ならざる力、魔法。 その力なら空から現れる事も容易だと考える。
「ってことはアレか? 『魔導師』ってやつなのか?」
「はい、もしかしたら敵の可能性も……」
ユーノの発言に全員に緊張が走る。 そもそもジュエルシードが巨大な力の塊、それを欲しがる者が現れてもなんらおかしくない。 しかしジュエルシード自体ユーノが発掘し、それを安全に保管する役目がある。 少なくともジュエルシードを欲しがる者が現れれば、敵対することになるのはユーノは分かっていた。
しかしユーノに協力している少女、なのはは違う。 彼女はこれまでジュエルシードの影響を受けた生物を相手にしてきた。 しかしここへきて初めて『人間』に出くわす。
なのはは思わず怖気付く。 彼女は人間相手に魔法を使うことになるなんて露ほど思っていなかったのだ。
しかし、この男共は……
「空かぁ〜どうする?」
「僕は空なんて飛べないし、この距離じゃ深くまで心を覗けない。 君も能力を剥奪されているんだろ?」
「う〜ん、拳君なら余裕べ?」
「断る、過度は接触は世界のバランスを崩す」
「でも転生者かもよ?」
「だが転生者でなかったらどうする」
「んもぅ、頑固なんだから〜」
怖気付くどころか木の上にいる人物に接触するき満々である、拳は違うが。 思わずなのはは彼らに聞く。
「えっと……逃げないの?」
手を出される前にここから離れる、なのはの思考は正常に機能している。 だがこの二人の転生者は……
「えぇー、もしかしたらオレを知っている奴かもしれへんし」
「こんな所にいるんだ、どんな人物なのか気になるじゃないか」
きっと正常な思考をしているはず、その上でのこの発言。 ……怖いもの知らずにも程がある。
「えぇ……」
「ここはなのはの言う通り離れた方がいいですよ!」
呆れるなのは、熟考した結果逃げた方がいいと提案するユーノ。 しかし食い下がる二人。 『気になる』の一点張りに拳は業を煮やし、とうとう行動する。
「分かった、俺が上まで送ってやろう」
「まじで!? やったぜ」
「にゃぁぁ……」
喜ぶ霧刀(仮)とつられて声を上げるメイドが持っている猫。 しかしそれとは裏腹に拳の表情には青筋が浮かび上がっている。
「ああ、お前らが余りにもしつこいから、な!」
「サンクス拳君!」
「なぅ?」
怒りを露わにしている拳、そんな事に気づかない霧刀(仮)にさらに怒りを高める。
「……ならこっちに来い」
拳は準備する、この
「お、何するんだ?」
猫を両手で抱えながら呑気な声を上げ拳に近づく霧刀(仮)。 拳は大木を背にするように立ち、霧刀(仮)の服と腕を掴む。
「え、何してんーーーー」
ーー巴投げと言う技をご存知だろうか?
巴投げは背負投とともに、柔道未経験者にも広く知られている技である。 相手を前に崩し、真後ろに身を捨てつつ、片足の裏を相手の腿の付け根に当てて、押し上げるように頭越しに投げる。 この技は相手を自分の後ろに投げる技である。 ……もし超人並の力があるのなら、相手を上に投げる事も理論上は可能である。 ……理論上は。
霧刀(仮)最初自分が何をされたのか分からなかった。 突如変わる景色に思考が追いつかないのだ。 そして自分が遥か上空に投げ飛ばされた事に気付くのは3秒後であった。
「ーーーーーーーーぅぅぅぉぉぉぉぉおおおお!?」
三秒後に響く絶叫、拳の周りにいた心悟、なのは、ユーノはそれを聞いてようやく反応する。
「ーーーーええぇぇぇ!? き、霧刀君が飛んだ!?」
「ま、マズイよ! 霧刀さんは飛べないのに!」
投げ飛ばされたメイドを心配する一人と一匹、しかし投げた本人は……
「ふむ、よく飛んだな」
あっけからんとしていた……投げた相手を微塵にも心配していない。
「……君も面白い事をするねぇ」
流石の心悟もこれに呆れる。 しかし飛ばされるのが自分でなくて良かったとひっそり安堵していた。
時間は少し戻り、ここは霧刀(仮)らの目の前にある大木の頂上。 そこには全身を黒で染め軽装な装備を固め、金髪のツインテールを揺らす少女がいた。
少女の目にはユーノが回収した『石』のみ映っていた。 少女の目的はユーノと同じ『青い宝石』を集める事、もちろん少女はユーノ達が気付く前からここを見張っていた。
辛抱強く耐え、ようやく訪れたチャンス。 しかしそこには得体の知れない子供が四人、間違いなく誰かは自分と同じ『魔導師』だと確信していた。
一体どうやってあの四人を出し抜き『石』を奪い取ろうか考えていた。 そこにーーーー
「ーーーーーーーーぅぅぅぉぉぉぉぉおおおお!?」
ーーーー突如響き渡る叫び声。 ここで時間軸は元に戻る。
少女は思わず眼を見張る。 何故急にメイド服を着た子供が猫を抱えたまま下から飛び出してくるのか、いくら考えても分からない。 ……よもや巴投げされてここまで飛んで来たとは思うまい。
(え……なに!? 女の子が下から来た!?)
少女は目の前の子供を女の子だと思う。 ……しかしこのメイド服を着た子供は男の子だ。
下から飛び出して来た子供、霧刀(仮)は木の天辺に落ちる。
「むきゅ!」
「にゃおぉん」
小さな悲鳴が二つ上がる、霧刀(仮)と猫は奇跡的に木にしがみつくことができ、近くに足場もあったので落ちずに済む。
「おぉぉぉぉ……心臓が飛び出るかと思ったぁぁぉぁぁ……。 大丈夫かにゃんこ?」
「うにゃ」
「よしよし、それならこっちこ〜い」
「にゃぁぁぁ……」
再び猫を抱き抱える霧刀(仮)。 抱き抱えた時、自分の目の前にいる少女の存在に初めて気付く。
「…………」
「…………」
「……………………にゃ?」
沈黙、どちらも言葉を発せない。 それもそのはず、二人はこの数秒で起きた事が意味不明すぎて混乱しているのだ。 何故か下から飛び出して来たメイドと猫、何故か木の上にいる少女、互いに頭の中を整理しなければならない。
少女は目の前に現れたメイドを観察する。
それぞれ色が異なるオッドアイ、後ろでくくられた白髪、そして整った顔立ち、そして身に付けているメイド服。
(この女の子は一体どうやってここに……? と言うか綺麗な子だなぁ……お化粧とかしているのかな?)
少女の疑問は無駄に整った顔をしているメイドのせいで何処かへ行ってしまう。 ……このメイドは(ry
霧刀(仮)は考える、どうやってここから降りようかと。
(ちょっと……え? 拳君何してくれちゃってんの?! てっきりオレを上まで連れて行ってくれると思ってたのに! 投げるって何!? オレどうすりゃいいの!?)
心の中で疑問を叫ぶ霧刀(仮)は思わずその疑問を目の前の少女にぶつける。
「どうすりゃいいの!?」
「へ!? え……さぁ……?」
当然少女にとってなんの事か分からない。 むしろどうなっているのかこちらが知りたいところなのだ。
「…………」
再び沈黙が訪れる。 その沈黙を破ったのは霧刀(仮)だった。
「そういや こ↑こ↓ で何してんの?」
イントネーションがおかしいが、少女にはしっかり伝わったようす。
「(こ↑こ↓……?) ……あなた達の持っている『石』を渡して欲しい」
「石? ああジュエルシードね。 ……でもよ、アレはほらユーノ君が責任持って回収してんのよねぇ」
「……渡して」
「やなこった」
少女の目的がジュエルシードだと分かると霧刀(仮)は鋭い目つきで少女を睨む。 少女も霧刀(仮)を睨み返す、そしてある『提案』をする。
「渡してくれるならここから下まで運んであげる」
「ぬ?」
少女の提案は実際この木から降りる事のできない霧刀(仮)にとって魅力的だ。 しかしここで断れば少女に突き落とされる可能性も十分にある。 しかし霧刀(仮)はーーーー
「降ろしてくれるってよ、どうする?」
「にゃ?」
「どうします? 大将、いや女将か?」
「にゃぁぁぁ」
「ふむふむ」
ーーーー何故か猫と話している、当然言葉は互いに分からない。 この子供は呑気も呑気、一瞬訪れたシリアスな空気は文字通り一瞬で消える。
「にゃおぉん」
「にゃんにゃん?」
「にゃん」
「了解したぜ兄貴!」
余りにも自由なメイド、少女も目の前で展開されるよく分からない雰囲気に飲み込まれ、思わず全身の力を抜く。 そんな少女に猫との会議(意味不明)の結果を伝える。
「うちの姉さんがよぉ、イヤだってよ」
「さっき兄貴って言ってなかったけ……」
そもそも最初は大将、女将と呼んでいた。 少しづつ年齢が下がっている気がするが気のせいだ。
「バカ野郎、昔偉くない学者が言ったんだよ。 『ホモはレズ、レズはホモ、つまり男と女は表裏一体なんだ』ってね! つまりこの猫はオスでありメスなんだよ!」(ガバガバ理論)
「え……何それはーーじゃなくて! 降りれなくていいの!?」
何とかして目の前のメイドにツッコミを入れる少女。 しかし何故かメイドは不敵な笑みを浮かべていた。
「知らんのかお嬢ちゃん、猫はなぁ、高いビルから落ちても着地できるんだよ!」
「…………それで?」
「つまり! 猫が下になるように持ったまま飛び降りればモーマンタイってことなんだよ!」
「 」
少女は驚愕する、こんなにも……こんなにも頭の悪い人間がいるなんて! このバカのガバガバ理論に少女は的確なツッコミを入れる。
「それだと猫が貴女の体重を支えきれなくて死んじゃうんじゃ……」
「な、何ですと!?」
「え、本気で言ってたの……?」
本気である。 少女は思わず頭を抱える、激しい頭痛が少女を襲っているのだ。 ……ちなみに『あなた』の漢字が違う気がするが、少女にとっては間違いではない。 少女の名誉の為に言っておこう
「やっべやっべ(素)、どうしやしょう若!」
「うにゃ?」
再び猫に話しかけるメイドに少女の頭痛がマッハで痛い。 『石』集めで一番の苦痛なのではないか、少女は思わず考えてしまう。 そんな少女に目もくれず、頭痛の種はさらに彼女を悩ませる。
「分かりゃした坊っちゃん! 救援の踊りですね!(錯乱)」
「何で踊っているの!?」
いよいよ踊りまで始める始末、しかし、その踊りのお陰でこの意味不明な空気が壊れる
「にゃんにゃん! にゃんにゃん!」
「ーーーーあ! こんな足場の少ないところでそんなことしたら!!」
「にゃんにゃん!にゃんにゃーーーーお?(ズルっ!)」
Q. 足場のない木の上で踊ったらどうなりますか?
A.落ちる(無慈悲)
「ぉぉぅわああああぁぁぁぁぉーーーー」
「やっぱり落ちたぁ!!」
当然と言えば当然、急に踊り始めた霧刀(仮)が悪いのだ。 霧刀(仮)は両手で猫を抱き締めながら叫ぶ
「いやぁぁぁぁぁ! 神様仏様GO様ー! 哀れなこの私めとにゃんこをお助けください〜〜!!」
だが無慈悲にも落下速度はドンドン上がっていく。 しかし、捨てる神がいれば拾う神もいる。
「やれやれ、仕方のない奴だ」
面倒くさそうに呟く彼、しかしこの惨事の元凶は投げ飛ばした彼なのだと忘れてはいけない。
霧刀(仮)は目をギュッと瞑り、猫を抱き締める力を強くする。
(くっそぉぉぉ! 頼むから奇跡でも小数点以下の可能性でもいいから助けて〜〜!!)
心の中で叫ぶ、すると願いが通じたのか、さっきまでの浮遊感がなくなっている。 それに気付いたのはおよそ5秒後。
(……あれ? 止まった……?)
「にゃふ」
「ん……にゃんこお前も無事なのか」
鳴き声につられ目を開ける、どうやらどちらも無事のようだ。
「おい……そろそろ降りたらどうだ」
安堵する霧刀(仮)の上から聞き慣れた声が聞こえる。 霧刀(仮)がそちらに目を向けると……
「まったく、降りるなら合図の一つでもよこさんか」
「拳君! さっすが拳君だぜ! これは男でも惚れますわ!!」
「止めろ、気色悪い」
拳の顔が近くにある、どうやら落ちてきた霧刀(仮)を受け止めたのは拳だった。 ちなみにお姫様抱っこの状態である。
彼らから少し離れた所にいるなのはは人差し指を口元にあて、お姫様抱っこされている霧刀(仮)を羨ましそうに眺めていた。 その隣で心悟と彼の頭に乗っているユーノはホッと胸を撫で下ろす。 彼らは友人の無残な姿を見ずに済んだようだ。
そんな彼らを監視するものが……
「あの子は無事みたいだよ『フェイト』」
「そっか……良かった……」
フェイトと呼ばれる少女と念話で会話している女性。 腰まで伸びた毛先の整ったオレンジ色の髪。 すらっと伸びた健康的で綺麗な足。 年はおおよそ16といったところか。 その女性は監視対象から目を離し、フェイトと呼ばれる少女との念話に集中する。
「まったく、『アルフ』がもっと早く教えてくれれば良かったのに……」
「いやぁ、まさかあたしも急に空に飛んでいくもんだから驚いちまって……」
「……まぁしょうがないか」
「ごめんよ『フェイト』」
どうやらこの女性は名はアルフと言うようだ。 そして相手のフェイトと呼ばれる少女は先ほど霧刀(仮)に出くわしてしまった少女。 どうやら彼女らはコンビで活動しているようだ。
「アルフ、魔導師が誰か分かった?」
「うーん、それがさっぱりやんだよねぇ。 落ちてきた女の子を受け止めた奴は魔法を使った素振りは無かったしねぇ」
「魔法を使わずに受け止めたの!?」
「もしかしたら既に肉体強化の魔法をかけていたのかもしれないけどね、でも奴らはデバイスを持っているような気配はないし」
魔導師が誰なのか模索する二人、だがアルフもメイドのことを女の子と勘違いしている。 ……もはや何も言うまい。
「そっか、ならアルフは監視を続けて。 ジュエルシードを奪えるチャンスがあったらよろしくね」
「了解、と言っても奴らあの屋敷に戻るかもしれない」
現在アルフが身を隠している方向は霧刀(仮)達の帰り道である。 もしこのまま彼らが戻るならアルフと出くわすだろう。
「今彼女達は何しているの?」
「ちょっと待って、奴らは今ーーーーーーーーなっ!?」
「どうしたのアルフ?」
思わず飛び出すアルフ、それもそのはずさっきまで監視していた子供らがほんの少し目を離しただけで彼女の視界から消えてしまったのだから。
「奴らが消えた……!」
「えっ!? どうやって……!」
「…………いや待てよ、匂いの感じからまだそれほど離れちゃいない筈……くそっ! どこ行きやがった!」
「落ち着いてアルフーーーーえ?」
苛立つアルフを落ち着かせようとするフェイト、しかしその彼女の異変のせいでアルフは更に混乱する。
「きゃあああぁぁぁぁぁ!!」
「フェイトッ!?」
驚いたアルフは念話を切り、フェイトを探すために空に飛び出す。 大木の周りを飛びながら少女を捜索する。 少女は直ぐに見つかった、しかし何故か少女は先ほどのメイド服を着た子供に抱き着かれながら真っ逆さまに落下している。
「なっ……! フェイトォォォォォ!!」
名前を呼ばれた少女は目の前にいる霧刀(仮)を睨んでる、そんな彼女に話しかける霧刀(仮)。
「さあ! 早く飛ばないとこのまま仲良くミンチ行きだぜ!」
「…………!!」
何故このような事になっているのか、皆様の為に時間を巻き戻し、視点を彼らに戻しましょう……
アルフが目を離している時、彼らは作戦会議を行っていた。
「上にいたのは女の子だった、多分魔導師って奴だ。 目的はジュエルシードだとよ」
「やっぱり……」
「都、この女の子は黒い服を着ていなかったか?」
「お、ご明察。 年はオレらと変わらないと思う」
「私達と同い年……」
「転生者はいたか?」
「いや、あの女の子だけだった」
霧刀(仮)の報告にそれぞれ思案する。 ユーノは魔導師だと確信し、心悟は自分の中の答えを確認し、なのはは相手が自分と同じ子供だとしり何か考える、拳は転生者の存在が気になる様子。
「取り敢えずどうするユーノ君? 正直こっちで戦えるのってなのはちゃんか拳君くらいだし」
「そうですね……やはりここは一度戻ったほうがいいかと」
「だよねぇ〜」
ユーノと話し、一度引いた方が良いと考える彼ら。 しかし意外な所から否定の声が上がる。
「待って!」
「どしたのなのはちゃん?」
皆を止めるなのは、先程まで怯えていた少女は彼らにお願いする。
「私……その子に会ってみたい」
「……会ってどうするん?」
「その子に聞いてみたい……どうしてジュエルシードを集めているのか!」
「でも危ないよなのは!」
「それにジュエルシードが奪われる可能性もあるからねぇ」
「それでも……それでも……!」
なのはの意志は固い、それはあの日の夜と同じくらいの決意だ。 なのはは知りたかった、何故危険な真似ををその少女はしているのか……知らなければならないと思った。
「……それならあの子をここまで引きずり下ろさないといけないな」
「き、霧刀さん!? まさかもう一度接触するつもりですか!」
「ふふん、オレにいい考えがある!」
『あ、これ駄目な奴だ』
霧刀(仮)に不安を抱くなのはとユーノ、霧刀(仮)は全員に作戦を話す。
ーーーーそれから直ぐにそれは実行された。
全員は走って木の反対側まで行く。 そして拳が再び霧刀(仮)を掴む。
「本当に構わんのだな?」
「おう! 頼むぜ!」
その言葉を聞き、拳はさっきと同じ様に霧刀(仮)を上へ投げ飛ばす。
木の上まで一気に上昇する霧刀(仮)、そして先程出会った少女は何かに夢中になっているのか、背後から接近する存在に気付けなかった。 霧刀(仮)すぐに少女を補足しーー
「きゃあああぁぁぁぁ!!」
抱き締めそのまま落下する、そして話しかける。
「さあ! 早く飛ばないとこのまま仲良くミンチ行きだぜ!」
ここから時間は元に戻る。
「このままだとあと数秒かな? 地面さんと熱いキスを交わす羽目になるぜ!」
「くっ…………!」
少女は飛行を始める、しかし霧刀(仮)に抱き着かれているため上手く飛ぶ事が出来ない。
「おお! 本当に空飛んでる!」
「……っ! 離して!」
「うわ! 落ちる落ちる!」
そんな二人を下にいる三人と一匹は見つける。
「あの子が……」
「記憶違いではなかったな」
「……やはり投げん方が良かったな」
「なのはと同じくらいの魔導師……!」
それぞれ感想を上げるが、それは二人には聞こえない。 二人は未だ空中で暴れている。
「離して……!」
「わぁぁ! バカ、落ちる!」
「んっ……やっ!」
とうとう少女から突き飛ばされる霧刀(仮)、そのまま落下する。
「またか〜い!!」
それを見ていたなのは達は……
「大変! 助けなきゃ!」
「俺はもう助けんぞ、助けるなら君が助けてやれ」
「ええ!? 私が!?」
「障壁の硬度を調節すればいいはずだ、君のデバイスに頼めばいい」
「で、出来る『レイジングハート』!?」
『Of course(もちろんです)』
「じゃあお願い! レイジングハート!」
なのはの体が輝きだす、すると白いワンピースの様な衣装に変わり、身体を宙へ投げだす。 それに内心驚きつつも落下している友人を助けるため空を翔ける。
「おお〜〜ーーーーおよ?」
霧刀(仮)の体を桃色の障壁がクッションのように受け止める。 その側になのはが近づく。
「大丈夫霧刀君?」
「うお!? なのはちゃんが魔法少女になってる!」
「あ、そっか……霧刀は見たことなかったね」
「おぉぉ、可愛い服着てんな。 オレにも着させてくれよ!」
「うーん、無理じゃないかなぁ……」
霧刀(仮)はクッションになってくれた障壁の上に立ち、少女を見つめる。
なのはも少女を見つめる、自分と同じくらいの女の子が何故ジュエルシードを集めているのかを知りたかったから。 少女に話しかけようとしたーーーーしかし二人はある違和感を感じる。
「ーーーーーーーーっ!」
「あ、あの〜……」
「……こいつどこ見てやがる……(怯えている?)」
少女は怯えた目で地面に立っている心悟と拳を見る。 少女は怯えて後ずさる。
「おい、どうした?」
「あの……大丈夫……?」
二人の呼び掛けは少女には届かない、少女を支配しているのは恐怖。 目に映る男の子……男……雄……。 少女の頭の中にある人物とのやり取りがフラッシュバックする。
『おら! さっさと行け! 転生者様に逆らうつもりか?』
自らを転生者と名乗る男の子に暴力を振るわれた記憶。
『お前はオレとプレシアの為に働けばいいんだよ!』
少女は忌まわしい記憶を振り払うように叫ぶ。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「どうしたの!?」
「何だなんだ!?」
いきなり叫び散らす少女にその場にいた全員が驚き、困惑する。 そんな中一人の女性が少女に駆け寄る。
「フェイト! しっかりして!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「フェイト…………やっぱり男は駄目なんだね…………きっ!」
女性は霧刀(仮)らを睨む。
「今日の所はこれで勘弁しといてあげる!」
そう言うと女性は青い石を一つ見せる。 遠くで心悟の頭に乗っていたユーノが「な、無くなっている! いつの間に!?」と叫んでいる。 どうやらユーノが勇気を持って回収したジュエルシードはいつの間にか彼女に奪われてしまったようだ。
「あんた達! 次会ったら容赦しないよ!!」
女性はそう言って何処かへ去る。 叫び声を上げ、酷く怯えていた少女を追いかける事は誰にも出来なかった……
いやぁ〜酷い原作レイプですね……。 これも全部転生者ってやつがいけないんだ! 誤解を与えるつもりはありませんが、私のスタイルは変わりません。 ごめんねフェイト……
今回も誤字脱字等のミスがありましたらコメントにてお教えください。