と言うか今回2話に分ければいいのに一つにまとめた結果無駄に多くなりました。 要反省ですね……いつもより長いと皆様も困惑するでしょうし。
21話
車を追いかけ15分、何とか車が置いてある廃墟の前にたどり着く。 車にはもう誰も残っておらず、見張りもいない。 はっきり言ってガバガバだ。 オレは声を潜め、念話でミョルニルと会話する。
《ここからどうしますマスター? セットアップして一気に制圧しますか?》
(何その物騒な解決方法……)
《だって色々考えても最後は「この手に限る」って言って物理で解決するんでしょ?》
(いやいや、普通に警察とか呼べばええんとちゃうか?)
《その前に何かあったらどうするんですか?》
(それもそうだけどよぉ……)
《ならさっさとーーマスター! 誰か来ます!》
「んお?」
不意に後ろから足音が聞こえたので後ろを振り向く。 そこには……
「お前……霧刀か!?」
「恭也さん!?」
何故に恭也さんがここに?
「走っていた車からすずかちゃんとアリサちゃんの姿が見えてな……忍に連絡したらまだ帰っていないと言っていた。 だからもしかしたら何か事件に巻き込まれたんじゃないかと思って車を追ってきたんだ」
「オレも似たようなもんです」
「そうか……ならお前はもう帰れ。 ここは俺に任せろ」
任せられるなら恭也さんに任せたい。 しかし相手の人数も分からないし目的も分からないんじゃあ恭也さんでも危険だ。
「オレだって少しは役に立ちます。 迷惑はかけません」
「……確かにお前には普通の子どもにはない強い意思がある。 だが今回の相手は人間だ、勇気だけではどうにもならない」
「分かっています。 でも二人は友達なんです! ここは引けません!」
オレは真っ直ぐ恭也さんを見つめる。 すると恭也さんは諦めたように息を吐く。
「……わかった。 お前なら相手を油断させたり出来るかもな」
「よし、それなら行きましょう!」
「よし、それなら静かに行くぞ」
オレは恭也さんのあとに続いて静かに廃墟に入る。 移動している中、ミョルニルが念話をオレにしてくる。
《マスター、もうこの方に任せて帰りましょうよ》
(お前はさっきの会話聞いていなかったのか?)
《だってこの方の戦闘能力、栽培マンより高そうですよ? マスターの戦闘能力はハトに負けるくらい低いんですから》
(うぐ……い、いざとなったらお前に頼るからいいんだよ!)
《はぁ……せいぜい怪我はしないでくださいね》
(うい)
ミョルニルとの念話を切る。 すると恭也さんが何かを見つけたのか、扉の前に立ち止まり息をひそめる。 オレも扉の前に立つ、すると部屋の中から誰かの声が聞こえる。
「ふざけっーーーーどうなるかーーーー!」
この声は間違いなくアリサちゃんだ! 誘拐されている臭いのに元気な子だ。 恭也さんも聞こえたのか、一度目を細めると扉から離れる。 オレも扉から離れれ、恭也さんと作戦を立てる。
「さて、中には足音からしてざっと三人くらいいるな。 どれも固まっているから制圧するのは簡単だ」
恭也さんからの状況説明を聞く。 この人化け物じゃね? 足音でどれくらいいるのか、どこにいるのか分かるってやばくね?
「ここは結構崩壊している所が多いみたいだ。 あの部屋の壁は壊れているだろう。 音の反響の仕方が違う。 恐らく別の部屋からすぐに乗り込めるはずだ」
あ、この人グラップラーだ。 オレは詳しいから知っているんだ。
「ここで重要なのは、どれだけ相手の意識から二人を遠ざけるか、だ。 何か相手の注意を引くもの……それでいて全員の気をそらす事が出来るものだ。 何か案はあるか?」
注意を引く……そうだ。 オレはミョルニルを触りミョルニルに念話をしてくるよう小声で頼む。
《はいはい、どうかしましたか?》
(あのさ、お前ってーーーーーーーーって出来る?)
《いや、出来ますけど……まさかそれで気をそらせるつもりですか?》
(ああ! まさかこんな所で起こるとは思わんだろ?)
《……それで死にかけても私助けませんよ?》
オレはミョルニルの念話を切って恭也さんにオレが考えた作戦を伝える。
「……ってことなんですけど」
「いや、まぁ……相変わらず常識外れだなお前……」
「褒め言葉と解釈しときますね」
「だがお前、ここは廃墟だぞ? 電気だって通っていないのに……」
「そこは何とかなりますんで、大丈夫っす」
「なら……キッカリ2分後だ。 それ以上は二人の身に何か起こるかもしれん」
「それなら2分後、ツッコミは終わってからで」
恭也さんは壁の抜けた部屋を探しに行く。 俺の方もミョルニルを起動し
暗い部屋の中、アリサは自分と親友を誘拐した三人組を睨みながら唸る。
「ガルル!」
「生意気なガキめ……」
「でもボス、バニングスの令嬢ですよ? きっと金をたんまり要求出来ますよ!」
「それにこのくらいの年頃の娘はソッチ向けの金持ちに高く売れます。 拾い物としては上等でしょう」
「それもそうだな……。 当初は月村の娘をどこぞの研究所に売ろうと画作してはや2週間、まさかこんなオマケが付いてくるとは思わなんだ!」
ボスと呼ばれた小柄な男は大きな笑い声を上げる。 側に立つ二人、片方も小柄な男性、もう片方は背の高い女性だ。 アリサは三人の会話を聞き、ますます怒りを高める。
「こいつら……!」
「……ごめんねアリサちゃん。 私のせいで……」
「なに言ってんのよ、悪いのはこいつらよ!」
再び三人組を睨むアリサ。
「ふざけんじゃないわよあんたら! どうなるか分かっているのかしら!?」
「さっきからうるさい娘だ、誘拐されている自覚があるのか?」
「グルル!」
「生意気な娘め〜! 黙らせてやる!」
男が取り出したのは一丁の拳銃。 その銃口をアリサから少し外して構える。
「そんな脅し……!」
「脅しなんかじゃないぞ!」
音は小さかった、しかしその銃口からは確実に鉛の塊が発射され、アリサのすぐ側に着弾する。 一発の銃弾は確実にアリサとすずかに恐怖を植え付ける。
「まったく、ガキのくせに生意気な」
アリサはもう喋ることは出来なかった。 すずかは恐怖のせいだろうか震えている。
「ボス、もう少ししたら出発しましょう」
「そうだな、ここが安全だと保証はされていないからな」
三人組はこの後の作戦を確認している。 その近くでアリサとすずかはただ恐怖に飲まれる。 二人は心の内で自分達を助けてくれた一人のヒーローの名前を呟く。
(助けて……拳君!)
(さっさと来てよ……拳!)
二人は祈り続ける。 恐怖に飲まれながら必死にヒーローに祈り続ける。 ……その祈りが通じたのだろうか、彼女らがいる部屋の扉が静かに開く。
三人組は扉が開くのを見るとそちらに注意を引く。 誰か来たのか、警察がもう来たのか、様々な思考を繰り返す。 ……しかし扉から現れた少年にはその思考も無意味であった……。
《〜〜♪》
「な、なんだこの音楽は!?」
突如鳴り響くBGM、彼らには聞き覚えのない音楽、しかし
《当たり前〜♪ 当たり前〜♪ 当たり前体操〜♪》
『!?』
聞いたことのない歌、そして扉から現れた少年は音楽に合わせてリズムをとる。 余りに異質な状況、三人組は銃に手をつけることすら出来ずにいる。 そんな彼らを置き去りにし、歌は流れ続ける。
《右足をだして〜左足をだすと〜〜 歩ける〜♪》
歌詞に合わせて少年は動く。 歌詞通り右足、左足を一歩ずつだし、最後に数歩歩く。 そしてこのーー
「ドヤッ!」
ーードヤ顔である。 何を誇っているのか皆目見当もつかないがとにかくウザい。 その一言に尽きる。
《当たり前体操〜〜♪》
そしてBGMが止まり辺りは静かになる。 しかし静かになっても彼らの思考は止まることなく続いている。
アリサとすずかは思った。 何故こんな奴に少しでも期待してしまったのか、もはや白いを通り越して無色の眼差しを少年に向ける。
三人組は思った。 一体これは何なのだ? 一体どうすればいいのだ? 余りにも意味不明な状況に脳はついてこれず機能を失う。 辺りには冷たい風が吹き、耳をすませばカラスでも鳴いているのかもしれない。
しかし、当たり前体操によって生まれた決定的な隙をーー
「……! グエ!」
「まず一人……!」
ーー高町恭也は見逃さない。
「な!?」
突然地に伏した仲間、それに驚く女性は恭也の存在を認知するも、反応する前に恭也が動く。
「ガッ!?」
「もう一人……!」
相手が女性だからだろうか、打撃ではなく投げで相手の意識を刈り取る。 その光景を見ていたボスと呼ばれた男は驚き困惑する。 当然その隙も見逃すことなくーー
「フン!」
「ギャッ!?」
ーー相手の急所に掌底を打ち込む。 人体の急所、みぞおちが受けた衝撃は身体の自由を奪い、身体はそのまま崩れるように地に落ちる。
「え、え?」
「あれ、あ、え?」
この間3分にもみたない僅かな時間で少女誘拐事件は幕を下ろした。
「やったぜ、成し遂げたぜ」(ドヤ顔)
《そのドヤ顔ウザいんで止めてくれません?》
「……ふぅ」
一息付くと倒れている連中から武器を奪い、連中が持っていたロープを使って縛り上げる。 恭也さんマジグラップラー、あんなの刃牙でしか見たことないよ。 何て考えながら二人を縛っていたロープを解く。
「二人共無事かな? 無事だと嬉しいんだけど」
『……』
「?」
あれ、反応がない。 どったの?
「あのさぁ……これドッキリか何か?」
「私達霧刀君に何かしたっけ?」
「いやいや、こんな大掛かりなドッキリはしないって普通」
「はぁ……そうよねぇ……」
「……?」
一体何でそんなに残念そうなのかオレにはさっぱが分からん。
「そらお前、あんな意味不明な方法で助けられたらそうなるだろ」
「……あ、何? 拳君に来て欲しかったの? それは贅沢言い過ぎだぜ」
「そうじゃなくて……それもあるけど……」
「その……もう少し方法を考えて欲しかったと言うか……。 もう少し期待が持てる登場をして欲しかったと言うか……」
「ま、助かったからええやん」
『はぁ……』
申し訳ないがシリアスはNG! オレの当たり前体操のおかげで二人に嫌な思いはしなかっただろうし。
「すずか!」
「お嬢様!」
お、忍さんとノエルさんが来たみたいだ。 あーあ、すずかちゃん、二人にもみくちゃにされてーら。 ま、家族を大切にするのは当たり前だし、多少はね?
「何でうちの鮫島は来ないのよ……」
「お、アリサちゃんったら少し寂しいのかい?」
「その顔腹立つ!」(腹パン)
「何故に!?」
イテテ……思いの外元気じゃないか。 それに二人も慌てていたし連絡し忘れていた可能性が微レ存……?
「……くっ、くそう……もう少しで大金が手に入ったのに……!」
ボスっぽい奴が目を覚ます。 ねぇねぇ今どんな気持ち? もう少しで大金持ちになれたのに小学生に全部オジャンにされてどんな気持ち?
「ひ!? つ、月村忍!? 何故ここに!?」
「決まっているじゃない、私の大切な妹に手をだしてタダで済むと思っているわけ?」
忍さんは男に近づく。 ありゃ恐ろしい……
「ひ! ち、近づくな“化け物”!!」
そりゃ今の忍さんは確かに恐ろしいくらい怖いからな……ん?
「おぞましい化け物姉妹め! それ以上近づくなぁ!」
「貴様……!」
恭也さんが怒る。 何故怒っているのかは分からんが、大変なのはオレも怒りそうってことだ。 今ここで怒ったらまぁたバチバチしてしまう。 そうするとオレの正体をみんなに説明しなければならなくなっちまう。 それはめんどーー大変だからこの怒りが電気として出る前に発散しよう。
「お前! その化け物の味方をしているのか? なら止めておけ、そいつは人にあだ名す化け物だ!」
「貴様……いい度胸だ。 俺の目の前で忍を貶すとはな……!」
二人が何か物騒な会話をしているけど、オレは手頃な武器を探す。 そして恭也さんがあいつらから奪った拳銃を手に持ち、未だにわめいている男の前に立つ。
「何だガキ? ……思えば貴様が来たせいで計画が狂ったんだぞ!!」
「……霧刀?」
オレは二人の間に立ち、銃身を持ち、グリップを下にしたまま銃を上に上げる。
「何で恭也さんが怒っているのか、テメェが言う“化け物”ってのが何なのかはオレには分からん。 分からん……が!」
狙いを定めオレは怒りを発散する。
「人の友達とその姉に向かって化け物呼ばわりしてんじゃねぇぞ童貞!」
オレはグリップを思いっきり男の頭に打ち付ける。
「ガッ!?」
子どもの腕力でも、脳天に食らえばタダでは済まない。 男は目線の標準が合わなくなり、頭を左右に動かしている。
「お、俺は……童貞……なんかじゃ……な……い……」
「お前の断末魔はそれでいいのか? これだからロリコンは……」
「……」
男は意識を失い、何の反応も出来ない。 オレの怒りは完全に沈み、バチバチ言わなかった。
「さ、恭也さん、続きをどうぞ」
「……いや、いい。 俺の分はお前がやってくれた」
「そうっすか? ならこいつの額に肉でも書こうっと」
「歪みねぇな……お前」
持っていた油性のペンで肉を書く。 うん、ぼく満足!
「……ってあ! 忍さんの分もとっちった!」
「ふふ、私のはもういいわ。 ありがとうね、霧刀君」
「あ、そうっすか。ならそれでいいっす」
ふぅ……終わった終わった。 あとはもう帰りましょうねぇ〜
「待ってくれないかしら?」
「うい?」
「あなたとアリサちゃん、あなた達に話しておきたいことがあるの」
「お、お姉ちゃん!?」
「すずか、いつかはわかる事なの。 今話さずにいてもいずればれてしまうのよ。 なら、今日話しましょう。 二人はあなたの親友なんでしょ?」
「……うん」
え、ちょっと待って。 何か勝手に話し進んでない? オレもう帰りたいんだけど。
「二人共、私達の家に来てくれない。 とても大切な話があるの」
「……分かりました。 ほら、あんたも来なさい」
ぅえ!? アリサちゃん何勝手に決めてんの!? 明日でええやん!
「つべこべ言わずに黙って頷きなさい!」
あ、ハイ。
「所でこの三バカはどうするんすか?」
「警察に連絡しましたのであとは任せましょう」
「さすがノエルさん、出来るメイドだぁ」(感心)
かくして、オレたちは月村邸で話を聞く事になった。 そこでまさかの話を聞くことになるとは……
注意! 夜の一族とか吸血鬼の説明は他の方の作品で詳しく説明してあったり、ぶっちゃけウィキペディアを見れば分かることなので説明はカットします。 そんなに重要でもないのですいません! 許して下さい! (霧刀君が)何でもしますから!
一つの部屋に集まったオレ達、そこで月村姉妹が“夜の一族”、いわゆる吸血鬼と呼ばれる一族の末裔であることを聞かされる。 恭也さんはすでに知っており、知った上で忍さんのことを愛しているようだ。 すっごい主人公してる。
「はぇー、吸血鬼ねぇ……」
「何だか夢物語みたい……」
オレとアリサちゃんは小学生並の感想しかでてこない。 そら、色々思うけど言葉に何か出来ないわな。
「目的は恐らくどこかの研究所にでも売り飛ばそうと考えていたのでしょうね……腹立たしいけど」
「……そっか」
オレは部屋の中にいた寝ているネコを抱きかかえながら話を聞く。 すずかちゃんは少し離れた所でファリンさんと一緒にいる。
「……吸血鬼だもんなぁ、そら色々弄りたいやつは山ほどいるよなぁ……」
あの小憎たらしい三人組、そんなくだんねぇことをしようとしていたのか……
「眉間に鉛玉ぶち込んでおけば良かったかーーーー!」
バチッ!!
「ミャー!?」
「ファッ!?」
『!?』
やっべ、つい怒って電気が発生しちまった! 抱いていたニャンコが驚いて逃げちまった!
「フー!」
「ニャンコぉ、済まなかったって。 ついバチバチしちまっただけだって、驚かせてゴメンよぉ〜」
オレは逃げたネコを捕まえて抱きしめる。 ゴメンよぉ〜。
「き、霧刀……あんた……い……今……?」
「静電気……? いや、もっとハッキリした……」
「あ……」
みんなが訝しげな顔をしてオレを見る。 そりゃあそうか。
「霧刀君……?」
「あ、あぁ〜……今のバッチリ見た……よね?」
『うん』
「そんな声を揃えなくても……。 まぁ……しょうがないか」
オレは元の位置に座り、みんなの顔を見る。
「すずかちゃん達の話を聞いて、オレだけ何も言わないのはアレだし。 ……今分かるだけのオレの話をしようか」
「あんたの話……?」
「へへ、みんなおったまげるなよ?」
『ゴクッ!』
みんなの生つばゴクリンコの音が聞こえる。 取り敢えずは……まぁ……
「まだ記憶は全部戻ってないんだけど……オレは都 霧刀じゃないから」
『……はっ?』
みんなの肉のカーテンを崩すところから始めますか。
「……以上が今分かるだけのオレの情報だ。 ……みんな息してる?」
『……』
「ダメみたいですね」(他人事)
みんなうんうん唸っている。 アリサちゃんとすずかちゃんなんて目ぇ回してんぞ。
「ちょっと整理させろ。 ……四月以前の霧刀は転生者と呼ばれる特殊な人間だったんだよな」
「そうみたいっすね」
「それで四月以降のお前は霧刀の体に……乗り移ったとでも言うのか……とにかく霧刀とは全く異なる人間の意識が入っているんだな?」
「そうっす、それでいて記憶喪失っす」
「頭が痛い……」
恭也さんによる状況解説も分かりやすくなった分、みんなの頭を唸らせてしまっているようだ。
「……思考回路がショートしそうです」
「わ、私もですぅ……」
「まさか私達以上に人間離れしている人がいるなんて……」
流石にノエルさんも忍さんも訳わかめって感じだな。 ……やっぱやめときゃよかったか?
《今更ですよマスター》
ですよね〜
「……ん? じゃあ何? 始業式の時にはもう……あ!」
アリサちゃんが何かに気づく。 すずかちゃんも気づいたのか恐る恐るオレに質問をする。
「バスの時点でもう……!」
「へ? あ、うん。 みんながめっちゃ見ていた前からオレだよ?」
「それじゃあ私……!」
ん? このパターンはあれだな? ゴメンなさいまで行くやつだな?
「謝らないでくれ」
『な、何で!?』
「だって……しょうがないじゃん? 霧刀君がやった事だけど……彼にも色々あったし」
「……踏み台ってやつ?」
「あぁ、だから……いつかこの体を霧刀君に返して、オレも元の体に戻ったら……彼と一緒に謝るつもりだ」
「霧刀君……」
謝るのはオレたちの方だ。 霧刀君はひどい事しちゃって、オレはみんなに嘘をついた。 謝るのはオレたち何だ。
「オレの事はこれくらいでいいだろう。 今大切なのは……すずかちゃんの事だ」
オレはすずかちゃんを真っ直ぐに見据える。
「オレはすずかちゃんの気持ちなんて全部分からない。 記憶がないからかも知れないが……オレはそういうの気にしないからな」
正直に思っている事をすずかちゃんに伝える。
「でも……なんつうか……伝わってくるもんはあるんだ。 怖いだとか……不安だとか……そういう気持ちが、さ」
でも傷つけないように言葉を選ぶ。
「でも……オレと君は違う。 キチンと自分を誇れることが出来るからだ」
「誇れる……?」
「ああ、今のすずかちゃんは自分のことを誇ったり出来ないかもしれない。 でも忍さん……お姉さんの事を誇りに思っているかい?」
「それはもちろんだけど……」
「家族の事を誇りに思うなら、いつか自分の血を誇りに思えるはずだ。 そしたら……必ず自分の事を誇りに思える」
オレはすずかちゃんを励ます言葉を送る。 しかしすずかちゃんの表情は浮かばれない。
「そんなこと……私には出来ないよ」
「出来るさぁ」
「……どうして言い切れるの?」
すずかちゃんは少しむっとした顔でオレを見る。 が、オレは少し自虐しながら言葉を返す。
「そらだって、オレと君は違う。 君は自分が何なのか分かる、でもオレは何も分からない」
「……?」
「そもそもだ、オレってば男なのか女なのか……人間なのかすら分からない。 悪人なのか善人なのか……そもそも存在している人間なのかも」
「あ……」
「オレが記憶を全部取り戻したら……もしかしたら今までのオレが死んじまうのかもしれない」
すずかちゃんはオレの言葉を聞いて表情を曇らせる。 話を聞いていた忍さんが呟く。
「そっか……彼には自分を決める基準が存在しないのね。 私達は吸血鬼と分かっている、でも彼には自分を決定付けるモノが何も存在しない……」
アリサちゃんも忍さんの呟きを聞いて表情を曇らせる。
「だからそんなに悲観そうにしないでよ、君はオレと違ってキチンと自分と決着を付けれる。 それに……」
オレは素直な気持ちをすずかちゃんに伝える。
「君の世界は確かにオレたちとは違う。 でも君が笑っている世界はみんなと同じ世界なんだ。 君はひとりぼっちなんかじゃあない」
「霧刀君……!」
「アリサちゃんだってすずかちゃんと笑っているだろ? ならアリサちゃんも君と同じ世界にいるんだ、そうでしょ?」
オレはアリサちゃんの方を向く。 釣られてすずかちゃんも見る、そこにはさっきまでの悲しげな表情はなく、ただただ優しそうな表情をしたアリサちゃんがいる。
「当たり前よ! あんたとは親友との年期が違うんだから」
「アリサちゃん……!」
「あんたの事情には驚いたけど……それでも私の親友には変わりないんだから」
「ありがとう……二人共」
ようやくすずかちゃんが笑ってくれた。 これならきっと自分からなのはちゃんに話すことが出来るだろう。
「あ、でも助けるのは今日みたいな時だけだからね?」
「何で?」
「すずかちゃんだって拳君に助けてもらいたいでしょ?」
「……うん」
「告白も一人で頑張って、どうぞ」
「ファッ!?」
「あらすずか、抜け駆けは許さないわよ?」
「こ、これだけは流石に譲れないよ?」
……そうそう、このくらいでいいんだ。 オレたちはふざけあっているのがちょうどいい。 無駄に重い話は余りいらない。
「……何か忘れているな」
「どうかしたのか?」
うーん? うーん……あ。
「晩飯まだだった……」
「お前……欲望に忠実だな……」
「でへへ、照れますよ」
「照れるな……」
「よかったら一緒に晩御飯食べない?」
「いいんすか? ならご馳走になります!」
そうだそうだ、晩飯を忘れていた。 今日はご馳走になろう。 きっとノエルさんの料理だから美味しいだろうなぁ。
《ちょっと待ってください》
ん? ミョルニル、念話なんかしてどうした?
《今回文字数アホほどあるのに私のセリフ少なすぎませんか!? しかも活躍したのって大音量で当たり前体操流しただけですし!?》
知らんがな、っていうか大活躍だろ。 それで満足しとけ。
《待ってください! しかもオチを考えるのが面倒になったからって私をオチに使わないでください!!》
うるさいミョルニルさんはしまっちゃおうねぇ〜
《待って! もっと私に出番をぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!》
きょうのばんごはんはとてもおいしかったです。(適当)
どうしてこんなに長くなった……今までのなかで結構長いと思います。 一万字超えた話もありますが……
今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。