23話
フェイトちゃんのお陰で色々魔法を使えるようになった。 特に空を飛ぶのはとても楽しい、何かこう、全裸になった時と同じ解放感があるっつうか、兎に角楽しい。
そのフェイトちゃんは今なのはちゃんと対決している。 お互いのジュエルシードを全てかけて戦っている。 その様子をオレと木村君、アースラの方々はアースラのブリッジで見ている。 拳君は非常事態に備えて何かしているらしい。 どこ行ったんだろ?
「……にしても二人ともさっきからすんごい攻防だな」
「まだここからモニターで見ているけど、それでも凄い迫力だねぇ」
やべぇよ、もう二人の魔法の光で目がチカチカするもん。 魔法少女って何だよ、オレに新しい哲学を生ませないでくれ。
「お、フェイトちゃんがドでかいのをぶっ放したな」
「凄まじいな……」
なのはちゃんに直撃したなぁ……めっちゃ煙舞ってますやん。
《何でそんな他人事何ですか》
「何かアレだよ、サッカー観戦している気分?」
《おっさんですか……》
やかましいぞミョルニル。 そういやお前、初めて木村君に会った時、《新手の変態ですね!?》って言ってたよなぁ? お前の口を縫い直すぞ?
《心配とかしないんですか?》
「しないよ。 だって……」
モニターに映っていた煙が晴れていく。 そこにはーー
「なのはちゃんはあれくらいじゃ折れないよ」
ーー凛とした表情でレイジングハートを構えているなのはちゃんがいた。
「受け止めたのか……」
「さっすがはなのはちゃん!」
感心しているクロノ君と喜ぶエイミィさん。
「ここからが高町の反撃だな」
木村君が言うやいなや、フェイトちゃんの腕や足に鎖のような物が纏わりつく。 あれはバインドだっけな? 拘束するための魔法だ。 なのはちゃんはレイジングハートを構え、その先端に桜色の光を集める。
「あれは……」
「収束砲だ! まさかあの位置から!?」
「収束砲って何ぞ? クロノ君」
「簡単に言えば……戦闘によって周囲に散らばった魔力を集めて撃ち出す魔法のことだ。 今までの激戦によってかなりの魔力が周囲に散らばっている。 それを束ねて撃ち出すんだ、途轍もない威力になるぞ!」
凄そう。(小並感) あ、撃った。 モニターにはとんでも無い威力の光がフェイトちゃんに直撃する。 ……生きてっかなフェイトちゃん。
「な、なんつーバカ魔力……」
「なあなあ木村君、決着ついたんかな?」
「恐らくはね」
「そっかぁ……」
オレはリンディさんに呼びかける。
「リンディさん、行ってもいいっすか?」
「そうねぇ……いいわよ」
「ウッス!」
オレはミョルニルを手に持ち転送装置まで走る。
「心悟は行かなくていいのか?」
「僕は魔法は使えないんでね。 ……それに痛いのはゴメンさ」
「?」
後ろで木村君とクロノ君が何か話していたけど知らん。 オレはセットアップして転送装置に乗る。
「座標はユーノ君の所にしているからねぇ〜」
「はーい!」
一瞬景色が変わったと思ったら空中に放り出される。 オレは魔法を使い空を飛ぶ。 なのはちゃんほど上手く飛べないがそれでも十分だ。
「あ、霧刀さん!」
「お、ユーノ君と……アルフさん? アルフさんもこ↑こ↓にいたんすか?」
「ああ、あんたはここから来ると思っていたからね」
ん? アルフさんフェイトちゃんの所に行かなくていいの?
「……あんたが行っておやり」
「あぁん、なんでえ?」
確かにフェイトちゃんはもう立ち直してなのはちゃんとお話ししているから大丈夫だと思うけど。 何て考えていたらアルフさんが話しかけてくる。
「……あんたには感謝しているんだ」
「はいぃ?」
「フェイトは元々静かな子でさ、母親は母親でフェイトに酷いことするし……」
「え……?」
「極め付けはあのメアリーって野郎だ。 あいつのせいでフェイトから笑顔は消えちまった……そう思っていたんだ」
オレとユーノ君は静かにアルフさんの告白を聞いている。
「でも……あんたと出会ってから、フェイトは少しずつ笑うようになったんだ。 ……この間あんたが魔法の特訓をしていたあの日、フェイトはあんたの前で笑ったんだ。 心の底から……」
アルフさんは思い出したのか、優しく笑う。 そしてオレに向き直す。
「あんた達だって知っているだろ? フェイトは男が駄目だったんだ。 でも……キリトのお陰でそれも少しずつ改善されてってさ。 あんたは女だけどフェイトのボロボロだった心を癒してくれたんだ。 その証拠に、今ここにフェレットもどきが居てもフェイトは平気なんだ。 あんたがフェイトの心を治してくれたんだ」
そうか……確かにこの前バスに乗った時も大した異常はなかったな。
「だからさ……その……礼を言わせてくれ。 ……ありがとう」
アルフさんは恥ずかしそうにオレに礼を言う。
「……どういたしまして」
オレはその言葉を素直に受け止めた。 ここで変に拒否しても意味がない。
「ほら、行ってやりな。 友達なんだろ?」
「お、そうっすね!」
オレはお先に二人の所へ向かう。 二人は手を取り合い、握手を交わしている。
「おーい! なのはちゃん、フェイトちゃん!」
「霧刀く……ちゃん!」
「霧刀!」
オレは手を振りながら二人に近づく。 二人ともいい笑顔です……。(TKUT並感)
「仲良くしてんねぇ、オレも混ぜて《マスター! 魔力反応です! 彼女達の真上です!》 ーーくれ……何ッ!?」
ミョルニルの呼びかけに反応し、二人の上空に目をやる。 そこには何かの魔法陣はいつの間にか展開されている。
《マズイです! 攻撃タイプの魔法が放たれます!》
「マズイ! 二人共、そこから離れろぉ!」
「え?」
「何?」
くっ! 二人共気づいていないのか!? もしかして転生者のデバイスだから気づけたのか!? 何にせよ急がなくっちゃーー!?
「ラッキー! オレはフェイトちゃんだ!」
オレは思いっきり叫び全速力でフェイトちゃんに近づきフェイトちゃんを抱きかかえる。 真上の魔法陣からは紫色の電撃が降り注ぐ。 オレはフェイトちゃんを庇うように電撃に背を向ける。
……え? 何? なのはちゃんはいいのかって? だってなのはちゃんにはーー
パキィィィィィィィィィン!!
突如鳴り響いたのは雷の落ちる音でも、雷鳴でもない。 まるでガラスを叩き割るような音が鳴り響く。 さっきまで焼付くほど光っていた雷は消えている、どうやら助かったようだ。
「いやぁ……ナイスタイミングだぜーー流石は拳君。 みんなのヒーローだぜ!」
ーーなのはちゃんには
「今回は俺ではない。 ……念のため彼女を庇ったがな」
そう言う拳君はなのはちゃんを庇うように抱きかかえている。 ヒュー!
「……ん? 拳君じゃない? 一体誰が……」
オレは首を動かし第三者の存在を探す。 するとすぐそばに名前の知らない男の子が右腕を突き出しながら魔法陣のある方向を見ていた。
「……君は……?」
「紹介してなかったな、彼は朱澤 一喜。 朱澤メアリーの兄だ」
「あ、兄ぃ!?」
か、彼が噂の……? 彼はこちらに振り返り挨拶を始める。
「初めまして、あなたはお久しぶりです。 覚えてますか?」
「え……あ? ……あ! あの時の親切な少年!」
「はい、あの時は名前を言いそびれてましたね」
短い髪と言うよりはスポーツ刈りのようにバリカンで剃ったような頭、背丈はオレと変わらない程度、格好は半袖半ズボン、まるで絵に描いたようなスポーツ少年だぁ。(小並感)
「もしかして……君が助けてくれたのかい?」
「はい、あなた方も持っている転生者の特典で」
「ほーん、なぁ〜るぅ〜」
彼はつい最近転生したんだっけ? 確かメアリーを止めるまで特別に転生してもらったとか拳君が言っていたな……。 ーーうん? どったのフェイトちゃん?
「き、霧刀? もう大丈夫だから……」
「け、拳君? わ、私ももう……大丈夫だから……その……」
ん? せやな、もう大丈夫やろ。 離したろ。
「にしても今のは攻撃は……」
「あの魔法……まさか……」
《大変です! 我々のジュエルシードが全てなくなっております!》
「ば、バルディッシュ、本当!?」
《私達のジュエルシードもなくなっています!》
「どういう事レイジングハート!?」
ど、どういう事だ? どうして二人のジュエルシードが全部なくなっているんだ!?
「……俺の弟の仕業です、恐らくは……!」
「何だって……!?」
「やはり仕掛けてきたか……」
突然メアリーに奪われた全てのジュエルシード。 俺たちはその場に呆然と立ち尽くしていた。
ここは海鳴市にある一つの喫茶店、翠屋。 今店の扉を開けて一人の男性が中に入る。 それに気づいた店主、高町士郎は客の顔を見て嬉しそうな声を上げる。
「いらっしゃいませ……おお! お久しぶりです、
「お久しぶりです、高町さん」
「もしや今日は休暇が取れたんですか?」
「いやいや、たまたまこちらに寄る用事がありまして、少し時間が余ったのでこちらによった訳です」
「そうですか、それならこちらにどうぞ。 桃子、少し店番を頼むぞ」
「はいはい……あら! 都さん、いらっしゃいませ。 どうぞごゆっくり」
店の奥から出てきた桃子に挨拶をする。 それにしても、まるで長年の親友のように話す士郎と都と呼ばれる男。 士郎は都を奥の席に案内し、ブラックコーヒーを用意して隣に座る。
「どうぞ、いつものブラックです」
「おお、すいません」
都はコーヒーの香りを楽しみ、その後少し口に含み味を楽しんでから飲む。
「うーん、この味です。 やはりここのコーヒーが一番だ」
「ありがとうございます。……そう言えば息子さんーー
「ほぅ、霧刀がですか……そうですか……」
霧刀の名前が出ると都は視線を上げ、何かを思い出すようにどこかを見ている。
「今でも思い出せますよ、あの日の事を……」
「僕もです。 あの日、まだ赤ん坊だった霧刀君を見つけた時を……」
それはまだなのはが産まれて間もない日、退院した桃子と赤ん坊のなのはを迎えに行った士郎とたまたま一緒にいた都は帰り道で一人の赤ん坊とその側に立つ中学生くらいの男の子を見つける。 何事かと近づく彼らに男の子は一人話し出す。
『あなた方にお願いがあります。 この赤ん坊を育ててくれませんか?』
事情を話さなかった少年だったが、少年からは何かのっぴきならない事情があるのだと士郎らは感じた。 そしてこの赤ん坊を受け取ったのは都だった。 都は結婚をしているが、子どもには恵まれなかった。 反対に子どもが三人もいる高町家を羨ましく思っていた。 少年は都に一つだけ約束することをお願いした。
『この子はとても変わった子です。 急に乱暴者になったら、急に中身が違う人間になってしまうでしょう。 それでもこの子を愛してくれますか?』
都は約束を守ると告げる。 すると少年から光が放たれ全員目を伏せる。 光が収まったと思って目を開けると少年は消えていて赤ん坊が元気に泣いていた。 都は決意する、何が起ころうともこの赤ん坊を愛する、と。
「今思い出しても夢のような出来事です。 でも霧刀が元気にしているなら、きっとあの日の出来事は夢ではなかったのでしょう」
「ええ……。 でも、まさか大きくなった霧刀君からあんな事を聞くなんて思いもしませんでしたよ、僕は」
霧刀が6歳になった日、霧刀は都夫妻と高町夫妻を集めて自分が転生者であること、そしてこの町の人達に酷いことをしてしまうこと、そして自分は小学三年生になったら別の人間になってしまうことを話した。
「あの時は意味が分かりませんでしたが……今の霧刀君を見て納得がつきましたよ」
「……私も半信半疑でしたが……それでも約束しましたから。 必ず愛する、と」
「僕はそんなあなたを知っているから心配はしませんでしたよ」
「ふふ、これは照れますな」
コーヒーを飲み干し都は立ち上がる。
「おや、もう行かれるのですか?」
「ええ、今から仕事なもので」
士郎は都を出入り口まで見送る。
「霧刀君に会わなくてよろしいんですか?」
「大丈夫です。 学校での話も聞いていますし、なのはちゃんを助けた話も聞きました。 それだけで私は満足です」
「そうですか……それではまたのご来店をお待ちしております」
店から出て行く都を士郎と桃子は深く頭を下げながら見送った。
「……ふふ、私と同じ、か」
店から出て都は嬉しそうに先ほど士郎が言った言葉を思い出す。
「血は繋がってなくても、全くの別人でも、愛があれば繋がっている。 そうだろ? 霧刀」
この男の名前は
何かおっさん同士の会話を書くのが楽しいです。
今回は批評酷評バッチ来いな回なので一段とツッコミを厳し目にお願いします!!