24話
突然なのはちゃんとフェイトちゃんを襲った雷、助けに来たのは我らがヒーロー、拳君とメアリーの兄の一喜君だった。 安心するも、いつの間にか全てのジュエルシードが消失。 一喜君曰く、メアリーの仕業だろう、との事。 何がどうなっているのか分からないが、ひとまずアースラに戻る事にした。
「大丈夫だったかいフェイト!?」
「大丈夫だよ、霧刀が守ってくれたし」
アルフさんとユーノ君と合流する。 アルフさんはフェイトちゃんが心配だったのか、抱きついて離れようとしない。
「なのはも無事そうだね」
「うん、拳君が守ってくれたから……〜ッ!」
心配するユーノ君をよそになのはちゃんはついさっきの事を思い出し悶絶している。 ……だんだんこの子図太くなってきたな。
「エイミィさーん、転送オナシャスゥ〜!」
……あり? 返事がない……何かあったのかな?
「おーい! ……どっかしたんかな〜」
「エイミィさん、返事がないね……」
オレとなのはちゃんがどうかしたのかと思っていると、エイミィさんと通信が取れる。 しかし、エイミィさんは焦っているのかいつもとは違う様子で話しかけてくる。
『みんな無事!?』
「あ、はい。 大丈夫ですけど……」
『緊急事態なの、アースラに戻ったら至急ブリッジまで来てくれる!?』
「あ、え? あ、はい」
『それじゃあ転送するね!』
通信を終えるとすぐに転送の魔方陣が出現する。 何かあったのかな? 急いでいたと言うか……混乱していたと言うか……とにかくいつもとは様子が違う。 話をしていたなのはちゃんも腑に落ちない様子。
「……もしかして何かあったのかな?」
「ジュエルシードも無くなったし……何か分かったのかも」
「にしちゃあ変な感じだもんなぁ……」
『う〜ん……』
考えても分からん。 って言うか考えていたら転送終わってた。 何にせよ急いでブリッジに向かうか。
「あ、そう言えばブリッジには男の人いるけど大丈夫? 今さら何だけど」
走りながらフェイトちゃんに質問をする。 急いでいたから忘れていたけど、フェイトちゃんにとっては重要な問題だ。
「大丈夫、目を合わせるのはまだダメだけど……近くにいる位なら平気になったんだ」
「あら、そうなの。 そう言えばユーノ君とか拳君いるけど大丈夫みたいだね」
大丈夫になったのならオレのこの体のことバラしてもいいのかな? 今スパッツ履いているからまだ女の子認定みたいだけど。
「ま、ダメだったらアルフさんの胸に飛び込めばいいから」
「何で?」
「男も女もオッパイ大好きだからね、バブミを感じて精神を落ち着かせて、どうぞ」
「バブミって何だい……?」
バブミはバブミ何だよーーっとと、もうそこがブリッジだ。
「ただいまー! 一体何かあったん……で……す……っ……か……」
勢いよくブリッジに突入したオレの勢いはブリッジの大きなモニターに映し出されているある映像によって失われる。
『!?』
オレ達全員動揺し困惑する。 そこに映っているのは灰色の髪を長く伸ばし、嫌に色っぽい服を着ている女性が魔法によって拘束されている姿であった。
「あ? あ……あ?」
言葉がでない。 と言うかそもそも意味が分からない。 よく見ると女性はあちこちにすり傷や打撲痕が見られる。 まるで誰かに嬲られたように。 何故こんな映像が映し出されているのか? リンディさん達がこんなことしたとは考えにくい。 そもそもリンディさん達の表情を見るに、これは明らかに異常事態。 アースラの方々でさえ予想外なのだろう。
「か、母さん……?」
『母さん!?』
か、母さんって……フェイトちゃんのお母さんって事!
「めっちゃ美人やん!」
《マスター……着眼点が違います》
「そうだそうだ、何でフェイトちゃんのお母さんが……あぁ〜こんな姿になってるんだ?」
「分からない……でもこの女はそこらの魔導師なんかとはレベルが違う。 こんな姿にされるなんて……よほどの
「……いるな、一人」
「はい……います。 たった一人だけ」
一喜君はモニターに向かって叫ぶ。
「翔次ぃ! 聞いているんだろぉ! 姿を現せぇ!」
一喜君は叫ぶ、規格外の名前を。
〔おやおや……ボクの名前を知っている人間がいるかと思えば、兄貴じゃあないか〕
画面の右端から男の子が現れる。 こいつの事なんかとっくにご存知だ。
「こいつが……」
「霧刀らと同じ転生者……」
「そしてフェイトちゃんにひどい事をした人……!」
木村君、クロノ君、なのはちゃんがそれぞれ言葉をもらす。 フェイトちゃんと両手で自分を抱き震えている。 それに気づいたアルフさんがフェイトちゃんを抱きしめ、野郎を睨む。
「とうとう会えたな……朱澤メアリーさんよぉぉぉぉ!!」
野郎ーーメアリーはこちらを嫌ったらしい笑みを浮かべながら見ている。
「朱澤メアリー、貴様プレシア・テスタロッサに何をした」
〔これはこれは、管理会の方じゃあありませんか〕
「質問に答えろ……」
〔おっと怖い怖い……〕
……何だこいつ。 大物ぶってんのか? さっきからカンに触るってレベルじゃねぇぞ。
〔ボクがさぁ、プレシアにお願いをしたんだよ。 ……二人に攻撃しろって。 そしたらそこのお前……都 霧刀だったっけ? そいつに分かるように攻撃しやがってさぁ……。 だからお仕置きをしているんだ……♪〕
「な……何てひどい事を……」
「それだけのことで……!」
リンディさんとエイミィさんは絶句している。 なるほどね、あの時魔方陣が見えたのはオレ達に気づかせる為だったんだな。
「……んなことより、攻撃させただぁ? 人妻に命令するとか、お前何様だよ」
〔もちろん、転生者様だ〕
こいつ……! ーーん?
〔フェイト……〕
とても弱々しい声でフェイトちゃんのお母さんがフェイトちゃんの名前を呟く。
「母さん! 大丈夫なの!?」
〔フェイト……この男に関わってはダメ……。 この男は……この私が手も足も出ないまま地に伏せられてしまったわ……〕
「そんな!?」
フェイトちゃんとアルフさんは信じられないと言った表情をしている。 もしかしてフェイトちゃんのお母さんは強いのか?
「……魔導師にはランクがある。僕やなのは、フェイトはAAAランククラス。 その上にSランクが存在し、Sランクが最大だ。 ……プレシア・テスタロッサは条件付きとは言えその最上級ランクのSSランクだった。 その彼女が手も足もでないだと……!? 」
……そんなにヤバイのか。
〔僕の力をわざわざ説明してくれてありがとうプレシア……でもね〕
メアリーの野郎……魔法か何かで鞭を作ってーーまさか。
〔誰が勝手に喋っていいって言ったオラァ!〕
〔アアァッ!!〕
『!?』
な、何人様を鞭でしばいてんだコラ! 止めろ!
「止めて! 母さんにひどい事しないで!?」
〔アア? 散々プレシアに同じことされていただろお前もよぉ? こんな風に!〕
〔アァッ!〕
「止めて!」
〔そのプレシアが今お前と同じ目にあっているんだ。 少しは喜んだらどうた……?〕
「な、何言っているのこの人……」
あまりに常軌を逸した言動になのはちゃんは思わず一歩下がる。 メアリーの行動を許せなくなった一喜君はメアリーに向かって叫ぶ。
「いい加減にしろ! 人を傷付けてお前は何か得られるのか!?」
〔ああ、もちろん〕
「何……?」
〔兄貴ぃ、転生前の僕は酷かったよなぁ。 学校に行けば虐められ、教師も見て見ぬ振りをする。 誰もボクを助けてくれなかったよなぁ〕
「俺は何度だってお前の為にーー」
〔助けてくれたらここにはいないんだよ!〕
「っ!」
気圧される一喜君。 メアリーは続ける。
〔……だがまぁ、あいつらのやっている事は正しかった〕
あ? イジメのどこが正しいんだよ。
〔転生して、力を得て、ようやく理解した〕
メアリーは笑う。
〔以前の僕は何度も世界を呪った。 何故こんな目に遭わなければならないのかと。 でも力を得て僕は気づいた、世界は最初から正しい。 弱き者が虐げられ、強き者が笑う。 これこそこの世の真理なのだと!〕
メアリーはわらう。
〔力があるから他人を傷つけられる、他人を跪かせる事が出来る……!〕
メアリーは嗤う。
〔こんな風に誰かを殴っても!〕
〔ウッ!〕
〔こんな風に痛めつけても!〕
〔ウゥッ!〕
〔……僕は痛くない……ッ……!〕
『……ッ!?』
メアリーは……わらう。
〔誰かを傷つけたって人の心は痛まない。 これこそが正しい人の姿なのだと!〕
メアリーは笑う、狂気に満ちた笑顔で。
〔……まぁ、そういう点では僕とプレシアは同じだよな〕
〔……〕
〔グフ……ククク……〕
メアリーはフェイトちゃんのお母さんの髪の毛を掴んで叫ぶ。
〔なぁあんたら、知っているかぁ!? こいつが自分の娘にしてきたことをさぁ!?〕
〔……! 止めてちょうだい……!〕
静止の声を無視してメアリーは続ける。
〔こいつの娘はとっくの昔に死んでいるんだ〕
『……え?』
〔凄いんだぜ? この雌……自分の娘を生き返らせるために娘のクローンを作ってコキ使ってんだからよぉ!!〕
『!?』
「……え?」
く、クローン……だと……? 思わずフェイトちゃんを見る、その場にいる全員が見る。
〔しかも作ったクローンが娘と違うことをしたら痛めつけるんだもんなぁ! こいつも僕と同じ、痛めつける存在なんだよ!〕
「嘘だ……」
〔嘘なんかじぁない、思い出してみろ……お前の記憶にはこいつが一度でもお前の名前を呼んだことがあるか? いや無い!〕
「嘘……だ……」
「フェイトォ!」
徐々に眼から光が失われていくフェイトちゃん、アルフさんの呼びかけにも反応しない。
〔話には聞いていたが、実際目撃してみると中々酷いものだぜ? あんたらには想像出来ないかもしれないが〕
「やめてよ……」
〔出来損ないだの役に立たないだの喚き散らしながら痛ぶる様は、流石のボクも少し引いたよ〕
「やめて!」
なのはちゃんは叫ぶ、フェイトちゃんを思ってか、それとも聞くに堪えないからか。
〔やめてだぁ? やなこった。 どうしてキミの命令を聞かないといけないの?〕
「もうやめて! どうしてこんなにひどい事が出来るの!?」
〔はいはい、キミは後で相手をしてあげる〕
なのはちゃんの言葉にメアリーは聞く耳を持たない。 こいつはいい、今はフェイトちゃんだ。
「え……だって……私はちゃんと覚えているのに……。 あれも……作り物……じゃあ……アリシアって……」
「しっかりしてよフェイトォ!」
虚ろな目で言葉をつぶやき続けるフェイトちゃん。 オレは何て声をかければいいんだ……
「全部嘘……ウソ……うそ……笑ってくれた母さんも……優しかった母さんも全部……」
「フェイトちゃん……」
「全部うそ……全部全部……霧刀のことも……………………霧刀?」
フェイトちゃんは虚ろな目でオレを見る。
「霧刀……記憶がないって……何にもない……………………同じ……」
「フェイトちゃん?」
「私と同じ……何にもない……ないのに……どうして? どうして笑顔だったの? 縋るものもないのに……何も頼るものもないのに……どうして笑顔なの……?」
少しずつハッキリとしてくるフェイトちゃんの言葉。
「どうして私に笑いかけてくれたの? どうして……私を笑顔にしてくれたの? 本当の自分すら分からないのに……どうして……?」
フェイトちゃんの眼に少しずつ光が戻る。
「私だけ満たされて行くのに……どうしてあなたには何も戻らないの……どうしてあなただけが空っぽのままなの?」
フェイトちゃんの言葉に確かな意思を感じる。
「返さなきゃ……私の心を満たしてくれた温かいモノを霧刀に……!」
そう言うとフェイトちゃんはメアリーに向き合う。
「私がどんな風に生まれたって関係無い!」
〔アン?〕
「私はフェイト・テスタロッサ! これだけは何があったも変わらない!!」
フェイトちゃんは強い意思を持って宣言する。 ……どうやらフェイトちゃんはとっくにトラウマを乗り越えていたみたいだーー
〔ちっ……何だよ。 心が壊れた所を再調教してやろうと思ったのに……〕
ーーブチリ、とオレの何が切れる。
〔まぁいい、後で全員調教してやればボクのハーレムの完成だ〕
「翔次! お前、そんなふざけた事を……!」
〔ふざけていないさ、男として当然の思考だ。 女なんか奴隷位の扱いで十分なんだよ〕
ーーブチリッ、とオレのナニかが切れる。
「こんなに歪んだ転生者がいるなんてねぇ……」
〔所詮は作られた世界、何しようが転生者の勝手だ。 そこで誰を殺そうが犯そうが誰も咎める者なんていないんだよ!〕
ーーブチリッ!、とオレのナニカがキレル。
〔男は皆殺しにして……女はみんな雌奴隷にしてやるよ。 ありがたく思ってくれよ……!〕
ーーブチリッ!!、と……オレノナニカガキレル。
「何て身勝手なの……!」
〔クハッ! コレだけの上玉が一気に手に入るのか、タマンねぇなぁオイ!〕
「…………もういい」
〔何かいっ「黙れ」たーーって何だって〕
「黙れ」
〔何で黙らないといけーー〕
「ーー黙れ」
『ゾクッ!』
もういい……もう……いい。 もう、我慢の限界だ。
「黙れ」
静かに、そして嫌に落ち着いた様子で放たれた霧刀の言葉。 霧刀の表情には何も出ていない、怒りすら現れていないのに……全員、そしてモニター越しのプレシアとメアリーも霧刀の言葉に気圧される。
「せっかくてめぇに会うまで取っておこうと思っていたのに……しょうがねぇ奴だな」
メアリーを見つめる霧刀。 メアリーは霧刀の態度が気にくわないのか、霧刀に突っ掛かる。
〔このボクに黙れとは……一体何様だお前〕
しかし、今の霧刀には……いや、
〔お前も転生者みたいだけど大した力なんて持ってーー〕
ーーだ ま れ 。
〔!?〕
メアリーは霧刀の言葉に気圧される。 たった3文字の言葉なのに怖気づいてしまう。 そしてメアリーは一瞬、霧刀の姿が別人に見えた。 黒い髪を後ろで束ねた大人の姿が映った。 もしやこれが霧刀の本当の姿なのか? しかし、今この疑問を解く人間は
〔誰だ……お前……!〕
「オレは怒ったぞ……」
霧刀の体に稲妻が走る。
「オレは怒ったぞ……ッ」
全身を包むように雷が放出されていき、眩いオーラが噴出する。
「オレはーー怒ったぞッ!」
怒りを解放していくと、霧刀の脳裏にある名前が浮かび上がる。 聞いた事のない名前。 しかし、霧刀は瞬時に判断する。 それは間違いなく霧刀の本当の名前だと。
「オレの名前はーー」
さぁ! 今こそ高らかに名乗り、物語にエントリーせよ!
「オレの名前は
これで役者は全て揃った。 いざ、物語の最終章へ。
ようやく本名が確定しました。 でも今さら名前が変わっても皆様に覚えてもらえるかどうか……。 頑張って覚えていってください!
今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。