あ、あと今回でてくる町は架空の町です。 実際の地名、事件、団体などには一切関係ありませんので。 架空の町とだけ認識してください。
29話
オレの家族は3人、親父にお袋、んでオレ。 オレは一人っ子だった。 親父やミュージシャン、お袋は洋服を仕立てる仕事をしていた。 二人は仲がいいと思う、だって少なくともオレが家を出るまで毎朝いってらっしゃいのキスをしていたから。 そんな二人はよくボランティアに参加していた。 ちなみに二人が出会ったのもボランティアに参加している時だったらしい。
オレは小さい頃よくアニメを見ていたんだ。 好きなアニメの女の子が悪役を殴って蹴っている姿が堪らなく好きだった。 そんなオレは親父達に頼んで空手を習いに行った。 空手をやりたいことを話すと親父達は少し驚いた顔をしていたが、好きなことをやらせよう、と言って毎週空手に通わせてくれた。
小学校の頃、オレは毎日お袋が作った洋服を着て学校に通っていた。 お袋が作る服はいつも可愛らしい物ばかりで、いつも周りの子から羨ましがれた。 オレはお袋の影響で可愛い物が大好きになった。
中学校に上がってもオレは空手を続けていた。 中学校の制服はちょっと可愛くなかったからいつもすぐに家に帰って着替えて遊びにいった。
そして中学2年の時、違うクラスの男子に告白された。 どうやらいつも勇ましく、私服は可愛いオレに惚れたらしい。 でも当時のオレは男の心というものを知らなかった。 オレはその告白を断った。 しかし、どうやら断った男子はそこそこイケメンな子だったらしく、友達からは何で断ったのか、と驚かれた。
親父やお袋に男心を聞いても、オレにはよく分からなかった。 というか途中でイチャつきだすからオレが諦めた。 オレの家にはパソコンがあった。 お袋から許可をもらい、オレはネットで男心について調べた。 調べたワードは、「男」、「男心」、「感情」、『告白』、『好き』、etc……。 調べていくうちに一つの動画に出会ったそれがーーーーーーーー『淫夢』だ。
淫夢に出会ったオレはホモビの世界観に興味を持ち、淫夢語録を調べ、瞬く間に淫夢厨になった。 オレは男心というものを理解した、そしてそれを友達の女の子にも教えた。 するとまるでウイルスのようにクラスの女子に淫夢が伝染していった。 のちに『パンデモ淫夢事件』と呼ばれるんだが……まぁいいや。
高校に入ってら色んな格闘技に手を出してみた。 巷でストリートファイターとか呼ばれていたらしい。 しかし、意外と充実はしていなかった。 何故なら将来のことなんて何も考えていなかったからだ。 親父のようにミュージシャンになるのも、お袋のように洋服の仕立て屋になるのも自分にあってないと思っていた。
そんなことを考えていたら高校2年になっていた。 そしてここがオレの人生の転換期だった。 オレは親父達に誘われ海外のボランティアに参加した。 内容は身寄りのない子どものいる施設に訪問し、歌を歌ったり一緒に遊んだりしただけだが。 その時に、子ども達の笑顔を見た。 こんなオレに、どこの誰とも知れないオレに笑顔を向けてくれたんだ。 一切の噓いつわりのない笑顔を……。 子ども達の為に何かしたいと強く思った。
そこからオレは子ども達の為に役立つと思う知識や技術を学び始めた。 親父から音楽を、お袋からは家事、高校の先生から外国語をいくつか教えてもらった。 そんなオレに親父がある海外の団体について教えてもらった。 その団体の名前は『ララバイホーム』。 海外に拠点を置き、身寄りのない子どもを引き取って共に生活し、勉強を教えたり子ども達の心のケアをしたりしているらしい。 ……今思えば慈善団体と呼べるのかこれ?
オレは親父のすすめもあり、この団体に電話をして高校卒業後そこで働かせてもらえないか聞いてみた。 電話にでたのは男性、自らを『リーデス』と名乗った。 習いたての英語だったので不安ながらこちらの用件を伝えると、リーデスはOKと言ってくれた。 熱意さえあれば来るもの拒まずとのこと。 オレは自分の名前を伝え、その場は電話を終えた。
高校を卒業し、オレは家族や友人、先生達に礼と別れを告げ一人海外に飛び立った。 着いた先はアメリカの西海岸の田舎、『バトリブラ』。 そこは西海岸の中でもかなりの田舎で車がなければ買い物にも出かけることが出来ないらしい。 もちろんそこに行くにもタクシー等を使わなければいけない。 バトリブラにある小さな教会にララバイホームの従業員の一人が食事の支援にでているそうなのでそれを手伝い、ララバイホームに向かえ、とのこと。
日本をでてからロサンゼルスに着き、そこで一泊してから朝早くからタクシーでバトリブラに向かった。 タクシーの運ちゃんが料金を誤魔化そうとしたから顔面に一発入れといた、日本人舐めるんじゃねぇよ。
目的地の教会に着くと、そこにシスターとは格好が違う一人の女性がいた。
「……あん? あんた誰よ?」
女性は膝まで伸びた薄いピンク色の長髪を頭の両端で束ねている、いわゆるツインテール。 身長はオレと同じくらいデカく、憎むべきことにオレより胸がデカイ。 ボインボインだ……妬ましい。
「リーデスって人から聞いていなかったのか? オレは日本から来た……」
「あぁ、はいはい。 リーデスが言ってた日本人ね。 ……日本人にしては中々高い身長してるわね。 ……一部分は日本人らしいけどね 」
カッチーン!
「あんたこそ……何? そのはっきりしない髪の色は? ピンクならはっきりピンクにしなさいよ、この……淫乱ピンク!」
「誰が淫乱だコラァ! 残念そうな胸しやがって!」
「残念じゃありません〜、82㎝ありますぅ〜!」
「あたしは95ですぅ〜! あんたとはレベルが違うのよ!」
「んだとぉ!?」
「やんのかぁ!?」
……今思えば中々最悪な出会いだったな。 ……ケンカしているオレ達にシスターと数人の子ども達が近づいてきた。
「あの……『ノンノ』さん? そろそろ子ども達がお腹をすかしておりますので……」
「……お腹すいたよぉ……」
自らの空腹を訴える子ども達。 オレ達はすぐに切り替えて子ども達に笑顔を向ける。
「ふふ、ごめんねぇ〜今用意するから。 ……おい日本人! そっちに食器とコップあるから人数分だしな! あたしは向こうから温めた鍋持ってくっからよ!」
「転けて全部零すなよ! って言うかその前に手ぇ洗わせてくるわ!」
オレ達は子どもには笑顔を向け、それ以外は怒鳴りながら子ども達に食事を振る舞った。 一通り終えたオレは名前も知らなかった女と話す。
「ふぅ……あんた、中々やるじゃないか」
「熱意とアドリブ力は負けねぇよ」
「にしても、ずいぶんと流暢に英語を話すな」
「にしし、英語なんて勢いで何とかなるんだよ。 勉強はしたけどな」
ついさっきまで怒鳴りあっていたオレ達は笑顔で会話をしていた。
「そういや、まだ名乗ってなかったな。あたしは『ノンノ』、『ノンノ・プレゼントスター』だ。 ノンノって呼んでくれ」
「オレは輝凛、村咲 輝凛だ。 輝凛って呼んでくれ」
「キリンか……よろしくな!」
「よろしくな、ノンノ!」
オレ達は会って30分後に挨拶と握手を交わした。
日が暮れる前にノンノの運転する車に乗り、ララバイホームに向かった。 その途中でこれまでの経緯をノンノに説明した。
「ほーん、親の勧めでねぇ……」
「そ、オレにあっているとか何とか言っていたけど」
「確かに、ウチには訳ありな連中ばっかりだ。子どもも大人もな。 キリンみたいにサバサバしている奴も必要かもな」
そしてオレはこの時、ララバイホームの子ども達とそこにいる大人達の話も聞いた。 ……聞いたと言ってもノンノとリーデスの二人しか大人がいないらしかった。 ……本当にここおかしいな。
およそ30分くらいでララバイホームに到着した。 見た目は少し大きめな家、ところどころ壊れているところはあるが、それでも周りの崩壊した建物に比べれば小綺麗な方だろう。 オレはノンノの案内でリーデスの元に向かう。 リーデスは机に向かい、パソコンを操作していた。 オレ達の到着に気づき、椅子から立ち上がって挨拶をした。 スキンヘッドでサングラスをかけ腹がでていて、趣味の悪そうな黒いシャツを着ているリーデスはいわゆるぽっちゃり体型だった。
「お前さんがキリン・ムラサキだな?」
初めて会った時は結構面食らった。 スキンヘッドでグラサンかけていたら誰でもビビると思うけど。
「そういや電話ではフルで名乗っていなかったな。 オレは『ポッチャ・リーデス』だ。 自由に呼んでくれ」
「ぽ、ぽっちゃりー……です……ぶふっ!」
オレはリーデスのフルネームを聞いた時思わず吹いた。 いや無理でしょ耐えるの、だってポッチャリですって言われたんだもん。 体型もポッチャリそのものだし。
「どうしたキリン、何か面白いとこあったか?」
吹き出すオレを見て不思議に思ったノンノに理由を話すとノンノも笑い出した。
「ブハッ! ははは! なるほど、ポッチャリね! 昔日本に行った時聞いたことあったけど……なるほどなるほど。
「お前ら笑いすぎだ!」
「悪かったってポッチャリ」
「……俺のことはリーデスと呼べ」
リーデスには悪かったが……初対面でポッチャリです、はきつい。 笑い終えたオレはリーデスに改めて挨拶をした。
「あーおっかし……知っていると思うけどオレは村咲 輝凛。 キリンって呼んでくれ」
「了解したぜキリン」
「それじゃあ改めて……」
二人がオレの方に向く。 そしてーー
『
「……ああ!」
ーー笑顔で歓迎してくれた。 ここから始まったオレの新たな生活。 そして……訪れる運命の日。
次回も過去話です。 興味ない方やどうでもいい方もいらっしゃると思いますが、どうかお付き合いしてください。
今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。