30話
ララバイホームでのオレの仕事は料理作ったり衣服を作ったり歌歌ったり……あと日本語とか教えていた。 リーデス曰く、「日本は言葉さえ喋れば働くことが出来るから日本語を覚えさせた方がいい」とのこと。 他には余所の施設から要請があれば手伝いに行き、子どもの引き取りなどもやっていた。
そんなこんなでララバイホームに来てから3年が経った。 子ども達の人数もここに来た当初は20人弱だったが、少し増えて30人近い人数になっていた。 3年経てばオレも現地の人間と間違われる程度の英語力になり、髪も定期的に切ってはいるがそれでも腕くらいまで伸びている。 ……オレの胸は大きくならなかったのにノンノは最近胸がキツくなったとか言っていたっけ……パルパル……
……3年経ったある日、リーデスが余所の施設からの電話を受け取った。 そしてその施設にリーデスとオレが向かうことになった。 向かっている途中、車の中でリーデスに訳を聞いた。
「何でオレも行かないといけないんだ?」
「最近子どもを保護したらしいんだが、その子どもがあちらさんじゃ手に負えないんだとよ」
「そんなにヤンチャならノンノの方がいいんじゃ……」
「キリンじゃないといけないのさ」
「あぁん、何でぇ……」
「何でもその子どもは……日本人らしいからな」
「日本人?」
電話のあった施設の人が町に出ていた時に発見したそうな。 衣服がボロボロで、持ち物の中に日本語で書かれた物があったから日本人だろうと思ったらしい。 そこで日本人であるオレがいるララバイホームに連絡したんだってさ。
「その子、旅行に来たんじゃないのか?」
「違うだろうよ、だったらあんなに
「……何だかきなくせぇな」
「そろそろ着くぞ。 ま、今回はお前に任す」
「ういうい」
目的の施設に着き、車から降りて施設の中に入る。 そこの人間とリーデスが少し話し、その後奥の部屋に案内してくれた。 施設の人曰く、ずっと俯いていて時々日本語らしき言葉をぶつぶつ呟いているとか。 おかけで他の子どもが気味悪がっているそうで。 何て話を聞いていたら目的の子どもが目に入った。 その子は黒のTシャツに白の半ズボンをはいていて、髪は手入れをしていないのか恐らく腰の位置にまで黒い髪を伸ばしている。 パッと見で判断し辛いが男の子だろう。 男の子は体操座りで下を向いている。
「あの子なんですけど……」
「了解だ、それじゃあ頼むぜキリン」
「任せろーバリバリー」
オレは男の子の前まで近づき、腰を落として目線を同じ高さにする。 そして久しぶりに日本人相手に日本語で話す。
「こ〜んにちは」
出来る限り不信感を与えないように明るく話しかける。 すると男の子はオレの挨拶に反応し顔を上げる。
「……こんにちは」
「うん、こんにちは」
男の子は日本語を話すオレに安心したのか、オレを見てくれる。
「お姉さん……僕と同じなの?」
「同じ? ……まぁ同じ日本人かな?」
「ここって……日本じゃないの?」
「うぇ? ここはアメリカの西海岸にある町だよ?」
「アメリカ……!?」
「ありゃ? ちょっと噛み合ってねぇな?」
どうやら男の子は日本だと思い込んでいた様子。 う、うーん……確かに見た目小学生くらいだけど……いくら何でも日本にこんな荒んだ場所は多くないと思うんだけどなぁ。
「……ねぇ、お姉さん何でここに来たの?」
「それはねぇ、お姉さんがキミ達の助けになりたいからだよぉ」
オレは男の子の頭に手を置き、優しく頭を撫でる。
「そういえばまだ名前を教えてなかったね、オレは村咲 輝凛。 キリンって呼んで。 キミの名前は?」
「僕……僕は霧刀、都 霧刀……」
「キリト……ずいぶんカッコいい名前だな。 ……なぁリーデス、この子をうちへ連れてかねぇか?」
オレはリーデスの方に振り返り提案する。
「構わねえぞ。 元々そのつもりで来たからな」
「よし! キリト君、うちに来ないか?」
「お姉さんの家……?」
「う〜ん、まぁそうかな? いやならいいんだけど」
「……行く、お姉さんと一緒に行く」
「決まりだな。 立てるか?」
「うん……」
オレとキリト君は立ち上がり、キリト君と手を繋いで歩く。
「つーわけでこの子はうちが責任持って預かるから、はいヨロシクゥ」
「ありがとうございます」
施設の人に見送られ、ララバイホームに帰還した。 戻る途中の車内でキリト君の話を聞いていた。
「僕ね、学校が終わってね、お家に帰ってね、友達と遊びに行こうとしたんだ。 ……そしたらね、公園に行っている途中でね、僕の前に黒い車が止まったの。 それでドアが開いて……よく知らない人に……車に乗せられて……そしたら目の前が真っ暗になって……」
「……」
「ずっと真っ暗だったの、それで僕眠くなっちゃって寝たの。 それで起きたら知らない外国人のおじさんがいて……何か急に怖くなって逃げたんだ」
「それでさっきの所に保護されていたんだね……。 ありがとう、怖いのに話してくれて」
オレは膝の上に座っているキリト君を優しく抱きしめる。
「リーデス、どう思う?」
「十中八九、ここら辺の奴らの……そうだな、お前ら風に言うとショタコンがどこかのチンピラに金払ってやらせたんだろう」
「……クソが」
「それに日本人は結構従順と伝わっているからな、昼は働かせて夜は
「ふざけやがって……YesショタNoタッチだろうが……!」
「そんなに怖い顔するな、キリトがビビっちまうだろ」
「う……」
「こういうガキの為に俺らがいるんだ。 今は安心させねぇとな」
「わぁってるよ」
オレはララバイホームに着くまでの間、後ろの座席でキリト君を抱き続けた。
ララバイホームに着くとまずキリト君を奥の部屋に連れて行き、子供たちと遊んでいたノンノを呼び、事情を話す。
「なるほどね……理解したわ」
「とりあえず俺はキリトについて調べる、一週間もあれば住所と親が分かる」
「任せるぜリーデス」
話し合いをしていたオレ達の耳に、ぐぅ〜、っとお腹のなる音が聞こえる。 オレ達が音のなった方を見るとキリト君がお腹を押されていた。
「ごめんなさいお姉さん、僕お腹空いちゃって……」
どうやらお腹がぺこぺこのようだ。 それもそのはず、恐らくここに来るまでご飯を食べる余裕はなかったのだから。 先ほどいた所でもご飯を食べなかったのだろう。
「よし! ちょっと待っててキリト君、今から何か作ってあげるから」
「手伝おうか?」
「いや、ノンノは引き続き他のガキ共の相手をしてやってくれ」
「おう」
「俺は早速調べるとするか」
「任せたぜ我らのスーパーハカー」
オレはキリト君をキッチンのイスに座らせ、自分の荷物から日本から持ってきたチンするご飯をだし電子レンジに突っ込む。 次に味噌を取り出しこの間仕入れた豆腐を切って味噌汁を作る。 あとは子供たちに人気のふりかけをだす。 チンし終わったご飯と味噌汁を小さめなお椀によそる。
「ほい、簡素だけど日本の朝食スタイルだ。 熱いから気をつけて食べろよ?」
「うん、いただきまーす」
ご飯を食べ始めるキリト君。 ハフハフ言いながら美味しそうにご飯を口に運ぶ。
「美味しいか?」
「うん! ……でもお母さんのご飯の方が美味しい!」
「そうか、お母さんの料理は美味しいの?」
「うん、いつも田舎のおばあちゃんからお米をもらってね。 それでね……お父さんはいつもご飯にふりかけをかけてね……お母さんは……お母さんは……」
気がつくといつの間にかキリト君の目に涙が溜まっていた。 知らない大人に攫われて、知らない土地に連れてこられて、それで怖いわけがない。 不安なわけがない。 両親に会いたいはずだ。 オレはキリト君を抱きしめる。
「キリト君……怖かったら……不安だったら泣いたっていいんだよ」
「お姉さん……? 僕、別に泣いたり……」
「いいんだよ、ここにはオレ以外誰もいないから……」
「……泣かないもん……グスッ……だって……」
オレは手のひらをキリト君の頭に乗せる。
「うん……」
「おとこは簡単に泣いたりしないって……グスッ……」
オレはただただ頷く。
「うん……」
「お父さんが……いってたも……う、うわぁぁぁん!!」
我慢しきれずにキリト君は泣き出す。 オレはただただ抱きしめる。 キリト君だけではない、ここにいる他の子だって不安で泣き出す子はたくさんいる。 何もキリト君だけではないのだ。 オレはキリト君が泣き止むまでずっとそばにいた。
その日から一週間後にキリト君は日本に帰った。 そしてこの一週間の間に起こった『事件』がオレとキリト君を壊した。
次回は……きっつい。 輝凛が髪の毛を結ぶ話です。 ……それの何がきついって? それは次回見て確かめてください。 ……そろそろ1話丸ごとネタ話がしたい! でも出来ない!!
今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。