オレを知っているやつに会いに行く   作:ほったいもいづんな

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話がシリアスだから前書きでもふざけられないこんな世の中じゃpoison。

書くことないのでタイトルの意味でも。

Suddenlyとは突然とかいきなりとか、急に何かが起こる時に使う単語です。 それと今回が何の関係があるのかは……ぶっちゃけ私にも分かりません。


31話 Suddenly

 31話

 

 

 

 

 キリト君が来てから2日が経った。 日本語をちょくちょく教えていたおかけで子供たちはすぐに打ち解けた。 ノンノもキリト君を気に入ったらしく、やけに気にかけてくれた。 オレはそんな状況に喜びながらリーデスと話していた。

 

「んでさぁ、キリト君ってばめちゃんこ可愛いのよ! 何着さしても似合いすぎて鼻血でそう!!」

「……興奮しすぎだぞ」

「グヘヘ、悪い悪い」

「まったく……そろそろこっちの話をしてもいいか?」

「お、おおう」

 

 リーデスは元々医者だったそうだ。 かつては紛争地域で負傷した兵士達を治療していた、しかしとある事がキッカケで医者を止めてこの孤児院を始めたんだと。 本人曰く、「子どもを助ける事が出来なければ医者ではない」との事。 そんなリーデスが話し出す。

 

「キリトの住所とか親とか分かったぞ」

「おお! 流石はリーデス!」

「だがキリトはビザとかパスポートは作っていない、つまり密入国状態だ。 だがら偽のパスポートとかを作るから帰れるのは3日後だな」

「親御さんには連絡したのか?」

「連絡済みだよ。 つーわけでキリトにも伝えてくれ」

「ういうい」

 

 話が終わった直後に部屋の扉が勢いよく開き、身体から血を流している男性を抱えながらノンノが入ってくる。

 

「リーデス! 急患だ! すぐに治療してやってくれ!」

「う……っ……」

「おいおい……何だその血だらけの奴は……そこのベッドに転がしてくれ」

「どこで見つけたんだよノンノ?」

「ウチの目の前さ、子供たちと遊んでいたら血だらけでこっちに向かってきたから子ども達がびびっちまってる。 キリン、相手をしてやってくれ」

「よし来た!」

「ノンノ手伝え、こっちもちゃっちゃかやるぞ」

「ああ!」

 

 オレが外に出る時、男性が一言もらした。

 

ジャガー(・・・・)が……あいつらが……」

『!?』

「……?」

 

 オレには何のことか分からなかった。 でもこの時の二人には驚きを隠せない様子だった。 オレは表にでている子ども達の相手をし、不安を和らげる。 その間は中に入れずに外にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 外はもう真っ暗になり、子どもたちはすでに寝ている。 男は一命を取り留め、疲れ切ったリーデスとノンノにジャガーについて聞いた。

 

「なぁ、ジャガー……ってのは何なんだ?」

「……聞きたいか?」

 

 質問を質問で返されたが、リーデスの表情にはいつもとは違う、グラサンをかけていても伝わる迫力を感じた。

 

「聞きたいか……胸糞が悪くなるレベルじゃないクソったれな男、『ジャガー』の事を……」

「……ああ」

「なら心して聞け。 この町に……『バトリブラ』に住んでいた『野獣』の話を」

 

 リーデスはグラサンを上げて話し出す。

 

「この町にはかつて、『ジャガー』という最悪の犯罪者がいた。 ジャガーは盗みや窃盗、強姦や殺し……反吐の出る行為全てを行ったアメリカ史上稀に見る『極悪人』だ」

「犯罪者……」

「しかもジャガーは異常性壁者……『ペドフェリア』だ。 ……どうしてここ『バトリブラ』にある民家の半分が空き家になっていると思う?」

「……」

「それはジャガーが子どもたちを襲うからだ。 襲われた子どもは死ぬまでジャガーに犯され……最後には廃人になってジャガーに殺される……だからここに子どもがいる大人はいないのさ」

 

 この話を聞いていたオレは心底不愉快な顔をしていただろう。

 

「警察は仕事してねぇのかよ?」

「したさ、ジャガーは7年前にアメリカ最大の刑務所に入れられた。 ……その際の被害者は50人以上だつたかな」

「じゃああの男が何でジャガーの名前を言っていたんだよ?」

 

 リーデスは思い出すように、どこか遠いところを見ている。

 

「今から5年前……お前さんが来る2年前だな。 ジャガーが刑務所から脱獄したという事件が発生した」

「!?」

「脱獄の際、ジャガーは同じ刑務所に入れられていた重犯罪者を数人連れて、看守……そして残りの囚人を全員殺して」

 

 リーデスは机に置いてあるパソコンを操作し、一つの記事をオレに見せる。

 

「この記事だ。 脱獄したジャガーとその仲間は全員クソッタレなペドフェリアだ」

 

 オレはその記事を見る。 そこには凶悪な顔をした男達の写真が何枚も載っていた。

 

「脱獄したジャガー達をいつしか『脱走した野獣達(ケージ・ブレイク・ジャガーズ)』と呼ぶようになった」

 

 記事を見ていたオレの顔は汗をびっしょりとかいていた。

 

「こいつらはしばらく何のニュースにもでなかった。 ……しかしどうやら戻ってきやがったらしい……!」

「……ッ」

 

 あまりにも想像を絶する男、ジャガーの経緯に思わず動揺してしまった。 そんなオレにノンノが何かを話し出す。

 

「……あたしはかつてこいつに出会ったことがある」

 

 ノンノは服を脱ぎながら言葉を続ける。

 

「その時にこいつにやられたキズがこれだ……!」

 

 ノンノは上着を脱ぎ、上半身を下着だけにする。 そしてノンノの右の脇腹には無数のラインが入っていて、その中心にはそこにナニカが通ったであろう小さな丸の跡が痛々しく残っていた。

 

「これ以外にも耳を切り落とされたり……指も幾つか切り落とされた……すぐに医者の所に運ばれたからくっついたけどな……! ……あたしはガキの頃に親父にレイプされたり、大人になって入れられた刑務所の看守にレイプされたりもした。 だがあの男ほど恐ろしい存在は他にはいない。 あれほどの恐怖を感じたことはなかった……!」

 

 ノンノはそれだけ話すと服を着直す。

 

「やつがこの町にいる、ならしばらくは外にガキ共をだしちゃいけねぇ。 買い物もできる限り控えるぞ。 ……運がよけりゃおまわりが何とかしてくらるはずだ……」

 

 オレの常識の遥か向こう側にいる話を聞き、オレはただただ唖然とするだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事件の始まりは次の日に起こった。

 

「……買い物が終わったのはいいけど……やっぱ人いねぇな」

 

 買い物に出たオレはジャガーの影響を見て感じる。 町にいた人が恐ろしいくらいに外にでていない。 店もほとんど閉まっていた。

 

「オレもさっさと帰りますか」

 

 今日は歩きで来たのでさっさと戻ろうとした……その時。

 

「こんな所で一人で歩いている女発見……見ねえ顔だな」

「あ?」

 

 現れた一人の男。 腕に動物の刺青をしていた。

 

「暇だか散歩していたんだが……ちょうどいいところに暇を潰さそうな女がいるじゃねえか」

「……」

 

 オレは無視して去ろうとする。 が、男が進路に立ちふさがる。

 

「つれないねぇ。 ……イイコトしようぜ?」

「……てめぇジャガーの仲間、脱走した野獣達(ケージ・ブレイク・ジャガーズ)か」

「ん? 古い古い。 今の俺たちは規則や法律に縛られない……縛られぬ野獣達(ケージ・スルー・ジャガーズ)さ!」

 

 男は何が面白いのか、歪な笑顔を見せてくる。

 

「何がスルーだ、無法者の間違いだろ」

「生意気だねぇ……そうだ、久しく使っていなかった(・・・・・・・・)からお前でヤらせてもらうぜ!」

 

 男が懐からナイフを取り出して向かってくる。 オレは荷物をその場に置き、路地裏に向かって走る。

 

「おいおい、追いかけっこかぁ?」

 

 オレは路地裏に入り、男を待つ。

 

「ここでヤりたいのかい? ムードがねぇな?」

「てめぇみてぇなクズにムードなんざ必要ねぇんだよ!」

「ほざけ!」

 

 男がナイフを構えてオレに向かってきた。 きっと男はそこそこの手練れなのだろう。 オレは油断せずに男に拳をカウンターで叩き込む。

 

「はっ!」

「!?」

 

 男の顔面にオレの右拳がささる。 そして……何かヌメッとした感触を感じて拳を引っ込める。

 

「うへへへ……ずいぶん強気な女だな。 ……久々に滾って来たぜ!」

 

 男は舌をだして笑っていた。 あの感触は男の舌の感触だったのだ。

 

「汚ねぇ奴だな!」

「そりゃどうも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこから何度も男に拳や蹴りを浴びせたが、男は怯まない。 その様子からオレは焦りと恐怖を少しずつ感じていた。

 

「この体力馬鹿め……ッ!」

「もういいかい、そろそろこっちのターンだ」

 

 男はまた懐に手を入れる。 そして黒く光る物体を取り出し、それをオレに向ける。

 

「あんまり使いたくねぇが……まぁいいだろう」

「なっ!?」

 

 それは拳銃だった。 そう認識した時には乾いた音、そして右足に穴が開きそこから血がでていた。

 

「な……っ……!?」

「驚いて悲鳴を上げなかったな? それならもう一丁」

 

 再び聞こえる乾いた音。 放たれた銃弾は左腕に穴を開ける。

 

「あああああぁ!!」

「お、いいねぇ〜! そういう悲鳴がすごくそそられるんだ」

 

 オレは痛みに耐え切れず、その場に崩れる。 悶絶しているオレに男が近づいてくる。

 

「オレは本来ならガキにしか興味ねぇんだが、久しぶりのシャバだ。 一回ヤらせてもらうぜ」

 

 男はベルトを外し、チャックを下ろしてオレに迫る。

 

「い、いや……いや……ッ!」

 

 オレは完全に恐怖に支配されていた。 そんなオレに男は覆いかぶさる。

 

「さて……と、それじゃあいい声で鳴いてくれよ?」

 

 オレは涙を流しながら何かないか、右手で辺りを探る。 するとコツンっと何か硬いものに触れた感覚がした。 それは男が覆いかぶさる時には置いた拳銃だった。

 

「よく見れば中々綺麗な肌してんな……すんげぇ綺麗だ」

 

 男がオレの衣服を破る。 オレは右手に触れた拳銃を掴むとそれを男に向けーー

 

「……あ?」

 

 ーー引き金を引いた。 銃口から煙が出ていた気がした。

 

「て、てめぇ……何しやがる」

「あ……っ……あぁ……!!」

 

 まだ息がある男を確認すると、再び引き金を引いた。 男の頭に銃弾が刺さり、頭の中身がぶちまけられる。

 

「 」

「はぁ……はぁ……はぁ……ッ!」

 

 男は白目を向いて、もう喋ることはなかった。

 

「あぁ……お……オレが……オレが……オレがッ!」

 

 目の前に転がる血まみれの肉塊。 これを作り出したのは自分なのだと理解してしまった。

 

「うっ! おえぇ……ッ!」

 

 思わず胃の中身を吐き出す。 余りの不快感に目の前がグニャリと揺らぎ始める。

 

「あ……ぅ……うあああああああああああ!!」

 

 耐えきれずオレは走り去る。 どこに向かっているのかなんてこの時のオレには分からない。 ただただこの場から離れたい一心だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気がついたらララバイホームに戻っていた。 傷口もリーデスが治療してくれていた。 オレは部屋で一人だった、正直誰とも会いたくなかった。

 

「……オレが」

 

 オレは両手を見る。

 

「オレが……殺した……ッ」

 

 両手が血に染まっているように見えた。 ドス黒く、それでいて鮮やかな色をした血が。

 

「う……うぅ……」

 

 あんな事が起こる事は予想出来ていた筈なのに、頭では理解出来ていたのに、いざ起こってみればこのザマだ。 ノンノやリーデスにはきっと覚悟が出来ていたはずだ、誰かに手をかけてでも子供たちを守る覚悟が。 オレは出来ていなかった。 地に汚れた手で子ども達に触れてはいけないと、そんな甘い覚悟をしていたんだ。

 

「オレ……オレは……オレは何なんだ……」

 

 一人で頭を抱えていた。

 

「お姉さん?」

 

 そんなオレに声を掛けてくれたのはノンノやリーデスではなく、キリト君だった。

 

「お姉さん……大丈夫? 酷いことされたってノンノお姉さんが言ってたけど……」

「……大丈夫だよ」

 

 心配して見に来てくれたキリト君。 そんな彼にオレは生返事を返すことしか出来なかった。

 

「……」

 

 そんなオレの様子を見てキリト君はこちらに歩み寄ってきた。

 

「キリト君?」

 

 オレの側まで来たキリト君はオレを、その小さな体で抱きしめる。

 

「キリト君……どうしたの?」

「……」

 

 オレはこの時、どうして抱きしめられたのか分からなかった。 キリト君はただ優しく、あの時のオレの様に話しだす。

 

「お姉さんがボクを抱きしめてくれた時、ボクは不安で怖くて……どうにかなっちゃいそうだったんだ。 でもお姉さんが抱きしめてくれたから、ボクはもう大丈夫なんだよ」

 

 キリト君は抱きしめたまま続ける。

 

「お姉さんはボクと同じなんだ。 だから今度はボクがギュッっとする番」

「キリト……く……」

「お姉さん言ってたでしょ?」

「キリト君……オレはだいじょーー」

「『不安だったら……怖かったら泣いたっていいんだよ』……?」

「ちがッ……オレは……ぁ……ぁあ……ッ……あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 オレは泣いた。 涙を流し、大きな嗚咽を撒き散らしながら。 その間キリト君の小さな体がオレを受け止めてくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 全てを吐き出した次の日。 何か朝からノンノとリーデスがこそこそ話しをしていた。

 

(おいノンノ、何か声かけてやれ)

(何であたし何だよ! ここは年長者であるあんたが行けよ!)

(ふざけろ! 泣き明かした女の対応なんざ知らねえよ!)

 

 そんな二人に部屋からでて話しかける。

 

「なぁ〜に話してんのあんたら」

「キリン!? お、お前……もう……いいのか? その……」

「気色悪い顔してんじゃないよノンノ。 それに一体何の話?」

「キリン……お前……」

「ノンノ、どうやら俺たちの心配は杞憂みたいだな」

「……ああ」

 

 きっと二人は心配してくれていたんだ。 心底二人はいい奴らだと思う。

 

「ところで……その()はどうした?」

 

 安心したリーデスがオレの頭を指差して聞いてきた。

 

「これか? これは……気合入れた証? みたいな?」

 

 オレは伸びた髪を後ろで束ねた。 この日から気合を入れる時はポニーテールにする事にしたんだ。

 

「それが噂のサムライヘアーで有名なチョンマゲってやつか?」

「違う、これはポニーテールだ」

 

 ここからは何時ものオレたち。 子供たちと元気に過ごすオレたちに戻る。

 

(……もう覚悟は決めた)

 

 キリト君が全てを受け止めてくれた。 もうオレは迷わない。

 

(例え何が起ころうと……ガキ共はオレが守る! ジャガーでも何でも来やがれ!!)

 

 覚悟を決めたこの日。 終わりの始まりはこの日だったなんてこの時のオレは思いもよらなかった。




次回で過去編ラストになると思われます。 もうしばらくお付き合いお願いします。

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。
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