今回で過去編最後となります。 お気付きの方がいるかも知れませんが、過去編のサブタイトルは全てONE OK ROCK の曲からとっています。 これから先、過去編にまつわる回があれば、それもワンオクからサブタイトルが付くでしょう。
それから、ダイジェストみたいになっているのは、どれだけ描写しても、結果はすでに回想で決まっているからです。 結果は変わりません、14話であった撃たれた結果は……
32話
これはいつか見た夢の続き。
「よくもやってくれたな! このクソアマが!!」
そこはどこかの倉庫。 地に伏したオレと負傷しながらも立ちながらオレに向かって怒声をぶつける男。
「だがテメェのヒーローごっこもそこまでだ! 今からテメェ最高のショーを見せてやる!!」
男の声がかかると、周りにもいた、負傷した他の男が銃を構える。 銃口の先には子どもたちがいて、キリト君もいた。
「ふざけんな!! ガキ共は関係ないだろ!!」
地に伏したオレは叫んでいた。 しかし、男たちはそれを気にもしない。
「これからこのガキ共を順番に殺す! テメェはそこで見てな!!」
「ふざけんな!! 殺すならオレだけを殺せ!!」
どうしてこうなったんだって? それなら話してやるよ、ここに辿り着くまでの経緯を……
それは決意を固めた日の朝、子供たちの相手をしたいたオレ達の所に5、6人の男達がやって来た。 その男達はそれぞれ顔や頭、腕や胸元に小さい『ジャガー』の形をした刺青をしていた。 オレは直感で分かった、こいつらはジャガーの一味だと。
そいつらに連れられ町のはずれにある廃墟になった倉庫に行った。 その際に子どもたちに手を出されないようにすぐにララバイホームから出た。 ノンノとリーデスが心配していたが、ララバイホームをでて目的地を聞いた後、一つのメモを届けるよう男達の一人に言った。 それには今日日本語教える際に使う本のページと記したと言って納得させた。
そのまま連れられジャガーとご対面。 ジャガー曰く『ウチのモンが迷惑をかけたから、その
オレはもちろん応戦した。 一対多の戦闘訓練はしたことあったし、何より『殺す覚悟』はすでにあったからだ。 しかし、ここでまさかの事態が発生した。
オレの事を心配してか、キリト君を含む5人の子ども達が隠れて後をつけていたのだ。 それを男の一人が気づき、人質として拘束されてしまう。 オレは抵抗することが出来ず、男達にいい様に痛めつけられた。
そして時は戻る……
「安心しろよ、テメェのお気に入りは最後に殺してやるよぉ!」
オレは立ち上がろうとした。 しかし一人の男が頭に銃口を押し当ててきたので動くに動けなくなる。 例えこいつを対処しても、その間に子どもが撃たれてしまう。 オレは動いても動かなくても変わらない状況だも察する。
「まず一人……♪」
「助けてお姉ちゃーー」
響く銃声。 しかし硝煙は男達の持っている銃口からはでていない。
「ーーーー!?」
子どもに銃口を向けていた男のこめかみの部分に赤い穴が空いていて、そこから鮮やかな血が流れ出ていた。 その場にいた全員が固まる、もちろんオレも。 そして男は自らが作り上げた血の池に倒れる。
「ーーはっ! うだらぁ!」
「グフッ!?」
オレは正気に戻り、この状況をチャンスと捉えてすぐ側にいた男を蹴り飛ばす。 蹴り飛ばした男の首は180度回転しており、冷静に見て絶命しただろう。
「誰だ……誰が来やがった!!」
激昂するジャガー。 それに呼応するかの様に物陰から現れた人物が油断をしていた一人を締め上げる。
「テメェは……!」
「お前は……ノンノ!」
突如現れて、男を締め上げたのはノンノだった。 ノンノは男が白目を向き、泡を吹いたところで男を地面に捨てる。
「先に言っておくが……そいつを撃ったのはあたしじゃないぞ」
言い終わるとまた一人、別の男の頭に穴が空く。 そしてノンノの後ろから現れたのは、何とライフルを構えたリーデスだった。
「リーデス!」
「これでも紛争地域にいたんだ。 あそこじゃあ医者だって銃を携帯していたぜ」
「このクソッカス共が……!」
あっという間にジャガーらは3人に減り、これで互角の人数になった。
「何故この場所が分かった!」
ジャガーから発せられる当然の疑問。 倉庫に連れられたとは知らなかったはず、なのに何故この場所が分かったのか? それはオレの書いたメモのおかげだった。
「このメモのおかけだ」
リーデスはオレが書いたメモをだして続ける。
「このメモには俺たちにしか分からない暗号が記してある。 その暗号を解くとこの場所の名前がでてきたわけだ」
メモには本のページ数、そして行数が書いてあり、最後に頭と書いてあった。 例えば25ページの5行目の頭文字、96ページの1行目の頭文字等……それぞれの頭文字をとって順番に並べるとこの倉庫の名前がでてくる寸法だ。
「俺たちはキリンから日本語を教わっていてな、日本語も分からないお前らじゃ気付きもしなかったみたいだかな」
「クソッタレがぁぁぁぁ!」
「ノンノ、子ども達を誘導しろ」
「OKよ」
「キリン、二人俺が撃つ。 ジャガーは任せたぞ」
「ああ!」
言うや否や、リーデスはジャガーを除いた二人の男の眉間に鉛玉を打ち込む。 たじろぐジャガーを横目にノンノは子ども達を外へ連れて行こうとする。 するとキリト君だけがこちらに寄ってきた。
「お姉さん……」
「心配しなくてもいいよ、ここで待っててね」
「お姉さん……うん」
「いい子だ」
オレは心配そうに見つめてくるキリト君の頭を撫で、ジャガーに向かっていく。
「ジャガー……お前自身に対した恨みはない。 ない……が! 子ども達に……キリト君にその銃を向けたことは許さん!」
「調子に乗ってんじゃあねぇぞ! このリーチなら撃つより俺の拳の方が早いぜ!!」
銃を後ろに捨て、拳を固めながら急接近してくるジャガー。 オレは攻撃を見切り、拳が届く前にジャガーの腹、胸、顔面に一回ずつ蹴りを放つ。
「はぁ!!」
「!?」
放たれた連続の攻撃にジャガーは一瞬怯む。 オレはその隙に回転しながら飛び上がり、再び顔面に蹴りを放つ。
「ふっ……飛べ!!」
「がぁぁぁ!」
ここは元倉庫だ。 当然廃材や壊れた重機や置いてある。オレはその方向にジャガーを蹴り飛ばす。
「がふっ!」
ジャガーとの接触により発生する衝撃は、積み重なった資材や壊れた重機のバランスを崩すには十分だった。
「因果応報……たっぷりと味わいな」
「うわああぁぁぁぁ!!」
崩れる廃材や重機、鳴り響く騒音、目の前に広がる凄惨なる現状をオレはただ見ていた。
「……」
音もなくなり、舞った土けむりも晴れる。
「……やり過ぎたかな?」
「いや……ジャガーは車に撥ねられても死ななかった話がある。 これくらいの方がいい」
「二人共! 子ども達を外にだしたぞ!」
「分かった。 キリン、キリトを連れ出して外に行ってろ。 オレはジャガーを確認してくる」
子ども達を外にだしたノンノが戻ってくる。 オレはジャガーの生死の確認をリーデスに任せてキリト君を連れて外に行こうとする。
「ーーーーうが、ががが……がぁっ!」
突然、悲鳴をあげながら血だらけになったジャガーが這いずりながら積み重なった鉄くずの山からでてくる。
「はっ! 逃げんなよテメェら! 今からぶっ殺してやる……!」
「ジャガー……」
オレは、オレ達はジャガーを見る。……哀れむように。
「諦めろジャガー……」
「黙れぇ……その生意気な首を切り落としてやる……!」
ジャガーは這いつくばったままにじり寄る。
「気づかないのかジャガー」
「あぁん?」
「……自分の右足をよく見てみな」
「右足がどうしたってーーーーッ!?」
ジャガーは気づいた。 自分の右足が、膝から下が千切れて無くなっていることに。
「俺の……俺……の……」
「もう何もするな。 その出血じゃあそのうち死ぬ」
「ふざけ……ふざけるなぁ!!」
激しくのたうち回るジャガー。
「行こうか、キリト君」
オレは何も言い放つことが出来ず、その場を去ろうとする。
ーーーー今思えば。
「やりやがったなクソが!」
ーーーー今思えばこの時に。
「いつの間に仲間なんざ呼びやがって……!」
ーーーー今思えばこの時にちゃんと……
「ただじゃあ死なねぇ! そのガキも道連れだぁ!」
ーーーーちゃんととどめを刺しておけばよかったんだ。
響く銃声。 ジャガーは捨てた銃を拾って引き金を引いていた。 撃たれたのはオレではなかった。
「お姉ーーーー 」
撃たれたのはキリト君だった。
「ーーーーーーーーえ?」
オレは固まる。 頭から血を流しているキリト君をただただ見ていた。
「ハハッ! ざまぁねぇな!」
「キリト……君?」
「俺達全員仕留めても結局結果は変わらねえ!」
「キリト君? キリト君?」
オレはしゃがんでキリト君を手を伸ばす。
「 」
キリト君は答えない。
「キリト君」
「 」
キリト君は答えない。
「キリト君……」
「 」
キリト君は答えない。
「キリト……く……」
「 」
キリト君は……こたえない。
「クハハッ! 結局テメェじゃあ……なぁんにも守れねぇんだよッ!!」
「あぁ……ぁああ……うあああああああああ!!」
オレは認めた……この現実を。 オレはキリト君を抱えながら泣き叫ぶ。
「このッ……死に損ないが!」
リーデスが多分ジャガーを撃ったんだと思う。 オレは何も覚えていないからよく分からないけど。
「ーーーークハ」
「おいおい……この距離で額にぶち込んで生きてんのかよーーーー何ッ!?」
リーデスが何かに気づき、オレの方によってくる。
「キリン! よく聞け! まだキリトは助かる!」
「ーーーーーーーーえ?」
「この距離でジャガーが死んでないってことは銃弾が頭蓋骨で止まっているってことだ。 ならキリト君も頭蓋骨で銃弾が止まっているかもしれねぇ!」
「それって……!」
「今からデカイ病院……いや、知り合いの医者に頼んでヘリを呼ぶぞ!」
リーデスは携帯を取り出し、誰かと連絡をとる。 オレは何も出来ずにキリト君に話しかけることしか出来なかった。
「キリト君……キリト君……」
「キリン……」
ノンノはオレの肩に手を置き、側にずっといた。
そして数十分後、ヘリが来てキリト君とリーデスは大きな病院に行った。 残ったオレ達は子ども達とホームに帰った。 ジャガーはこの後に死亡し、新聞で大きく取り上げられた。
それから数日後知ったのだが、キリト君は日本の病院に移動して、無事手術は成功したらしい。 でも脳に少し弾丸か届いていたようで、記憶を失ってしまった。 それでも家族の事は覚えていたようで、数ヶ月後に退院し、普通の生活に戻ったとリーデスから聞いた。
オレはあの一件以来、嫌に無気力だった。 自分が招いた事件、無力さと無知さを知ったオレは自分に自身が持てなくなっていた。 一年後、オレはノンノとリーデスの勧めで一度日本に帰った。 心を落ち着かせるために故郷に戻り、あわよくばキリト君の顔を見ようと思った。
住所はリーデスから聞いていたので、その町に向かった。
その町でオレを待ち受けていたのは……キリト君の死だった。
キリト君はトラックで轢かれそうになった見知らぬ子どもを助ける為に身を投げ出し……子どもを守って死んだと聞いた。 生前は記憶を失っても、時々英語を話したり、見知らぬ女性事を『お姉さん……お姉ちゃん……どっちだっけ?』と呟く事があったそうだ。
オレは、心にポッカリと穴が空いたような感じがした。 オレは毎日死んだように生き続け、ララバイホームに戻らずに日本中を彷徨い続けた。
そして……これが最後の記憶。 気がつけば実家に戻っていたオレは心配する親を無視して、かつて自分の部屋があった場所に行き、ベッドに落ちる。
きっと……そうきっと夢を見ていたんだろう。 目を閉じて暗闇の中にいると、どこからか声が聞こえてきたんだ。
『これは……ボクの恩返し』
オレはこの時気づかなかったんだ。
『でも今のお姉さん……お姉ちゃん? お姉ちゃんでいいや。 お姉ちゃんじゃあきっと心が壊れちゃう』
オレは何故黙って聞いていたんだろう?
『記憶を少しだけボクが持っているね。 ……そしていつもの、かっこいいお姉ちゃんに戻ったら記憶を返すよ。 だからそれまで……
この声はキリト君の声なのに……どうして気づかなかったんだろう?
「んぅ……」
……目の前にあるのは天井。 どうやら目を覚ましたようだ。
《マスター、起きたんですね。 実は報告したいことが……》
「おはようミョルニル。 ……キリト君が来たんだろ?」
《え!? 何故それを……!?》
「早え話が……全部思い出した。 ……いや、全部返してもらったんだ、キリト君から」
《全部……記憶が……》
ミョルニルに事情を話し、オレはベッドから降りる。 オレは今まで起こった事を思い出しながら目を閉じる。
「……」
《マスター……大丈夫ですか? その……記憶が戻って》
オレを心配するミョルニル。 オレはミョルニルを手にして心配ないと告げる。
「……みんなに話さなきゃ」
《皆さん……アリサ様やすずか様にもですか?》
「……そうだな。 約束したもんな」
オレはこんがらがった頭を整理し、まず成すべきことを確認する。
「一喜君とメアリー……翔次だったか。 彼らは大丈夫だろうか」
オレは部屋をでて二人を探し出す。
「それからだな……全部話すのは」
これまでのオレ、そしてここにたどり着くまでのオレをみんなに話さなければ。 オレはそう考えながら二人を探し始めた。
次回は一喜君と翔次君の話です。 次回も時間がかかるかも知れません。 お待ちの間に私の活動報告等をご覧になって待っていてください。
今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。