仰向けに転がる友人の所へ、清仁はゆっくりと近付いた
恐る恐る、といった風情だった
雨粒が二人の体を湿らせる
もう少しで本降りになるかと思われた、その時
青島が口を開いた
「・・・なんでだよ・・・」
ぎょっとして青島の方を凝視する
青島も、清仁の方を、憎たらしげに睨み付けていた
「どうしてお前みたいな屑が・・・そんな力を持ってんだよ」
青島の声が、怒りを含んだものに変わっていく
「勉強もできねえくせに!女にもモテねえくせに!運動もできねえくせに!面白い話もできねえくせに!」
理解できないことへの苛立ちがにじみ出ている
「どうして俺がお前に負けんだよ!おかしいだろ、俺の方がテメェの何倍も優秀なのによ?なんでだよ!」
罵倒の声は収まる様子を見せない
青島は寝転がったまま、口角から泡を飛ばして清仁に叫び続けた
「いつもお前の陰口のネタ探してんのに調子づいて馴れ馴れしくしちゃってバカじゃねえの!?誰がテメェと友達付き合いするかよ!」
整った顔は表情のせいで崩れ、ただただ醜い
「死ねよ糞!死ね!クラスの害悪!消えろ!死んで俺達に償えよ!お前がいると学校が辛気くせぇんだよ!」
ここに、清仁は友人と思っていた唯一の男の正体を知った
姿を変えた
手近にあったものを拾い上げる
「お・・・おいテメェ、志田・・・何するつもりだ、糞野郎の分際で俺を・・・」
もう何も聞きたくはなかった
青島広人の胸部へ、何かが突っ込まれた
彼自身が戦闘中に切断した、交通標識である
鋭い角度の切断面は、容易く心臓を貫いた
パクパクと口を開閉した後、友人でも何でもなかった男は、動かなくなった
唐突にその体が爆発した
もうもうと立ち上る煙
火も少しあったが、雨があっという間に消してくれるだろう
志田清仁にも家族はいた
学生の癖に努力しない彼を毎日なじる家族が
そんな人間の庇護下にあって、清仁にはストレスが溜まっていた
いつも何かする度に小言を言ってくる家族を、清仁はもっとも身近な敵と認識していた
学校に行っても、彼を侮辱する人間ばかり
唯一の友人と思った男は、本当は友人とも言えないような男だった
もっとも、あっさりと青島を殺害した辺り、清仁自身、深層心理では奴を認めてはいなかった
教師でさえ、彼の成績に見切りを付けていた
清仁が進級できたことが、彼らの教師生活の最大の疑問とすら裏で言われる
アウトドアな方ではない清仁に、外で知り合いを作る術もなく
親戚とは、そもそも喋らない
そうだ
志田清仁は、一人ぼっちだった
黒い異形は歩き去った
次に殺すのは、たった一人