「お願い! 美しく神聖で強い、私だけの使い魔……来て!」
爆音。相も変わらず、私の行使する魔法はことごとく失敗に終わる。
泣きたくなる、私は誇り高きウ゛ァリエール公爵家の三女なのに。貴族なら使えて当然の魔法がどうして使えないの? 基本となるコモンスペルすら失敗する貴族なんて、貴族の風上にもおけない。私を嘲笑う学友達に囲まれて、私を気遣うコルベール先生に後一度だけとチャンスを願う。
少しだけ困ったような顔をして、あと一度だけの正真正銘最後のチャンスを掴む。もうこうなったらヤケクソだと、私は通常使われるのとは違う、私の思いを載せたスペルで召喚を試みた。
しかし結果はまたもや爆音。やはり私には無理なのだろうかと、半ば諦めかけたその時。徐々に晴れてゆく煙の中に影が見えた。遂に召喚出来た、とうっすら涙を滲ませて煙が晴れるのを待てばーーー
「に、人間……?」
赤い髪に白を基調とした服とマント、武器の類も杖も見当たらない……平民? 何よそれ! こんなにも苦労に苦労を重ねて、私が召喚したのは平民だって言うの!? 始祖プリミルは私がそんなに憎いの!? あぁぁぁぁもう!
「み、ミス・ウ゛ァリエール! 落ち着いてください! いくらなんでも殺すのは駄目です! 貴女のやるせない気持ちも充分理解できますが……!」
「じゃ、じゃあやり直しを要求しますコルベール先生! ウ゛ァリエール公爵家の娘が人間を使い魔にするだなんて前代未聞の恥です!」
でも「これも伝統で~」「早くコントラクト・サーウ゛ァントを~」などと押し切られ、結局なし崩し的に契約させられる羽目に。もうっ……家事は出来そうだけど、戦闘にも調達にも使えなさそうじゃない。はぁ……感謝しなさいよ? 貴族にこんなことされるなんて有り得ないんだから。貴女が男だったらどうにかしてた所よ……ちょっ、暴れないでよ。
「ъшеиХρξΣヰΠ※←◆■!?」
ずいぶんと田舎から来たのかしら? 言葉が全然通じないわね、まぁ契約すれば幻獣とだって意思疎通が出来るんだからたぶん大丈夫でしょ。んっ……ふぅ、終わり。まぁ予想外の事態だったけど、私付きの専属召し使いが出来たとでもポジティブに解釈しておこう。そりゃあ使い魔やら平民やらでまたどうこう言われるだろうけど、召喚出来ただけマシよ。なにせ初めての魔法成功なんだもの、喜びも一塩ね。
「い、痛っ!」
「あら、ルーンの効果かしら。言葉、通じてるわよね貴女?」
「えっ……あ、はい」
うーん。かの憎きツェルプストーにも勝る勢いの凶器が二つか……敵ね。見た目的に、性格はツェルプストーの対極に位置してそうな感じではあるけど。まっ、一応こんなでも生涯のパートナーな訳だし。平民とはいえ優しくしてあげようかしら?
「あ、あの~……?」
「ほぅ、これは珍しいルーンですな。すみませんが、宜しければスケッチさせていただいても?」
「え? えぇと、はい」
「ーーーよし。それでは皆さん、各々校舎に戻ってください! ミス・ヴァリエールとそちらの方は後でオールド・オスマンのところへ来てください!」
……あれ? この平民、マントしてる……?
「……ふぅ、疲れたわね。あぁ、貴女も座っていいわよ」
そう促されて、彼女の部屋にあった椅子に深く座り込む。余程の高級品なのか、軍学校にあったものより坐り心地は良い。それとも単に精神的疲労がそう感じさせているだけなのか、それは今の私には判断がつかない。
今日は訳の分からない事が起きた。
初めは召還術の暴発、普段の私ならしないような有り得ないミス。そしてそれに巻き込まれ、目を開けばそこは見知らぬ世界。どうやら何らかの要因により私の方がこちらの世界へ召還されてしまったらしい、しかしこれは未だ推測の域を出ない。まだマトモに目の前の少女と会話を交わしていないため、これから判断していくとしよう。
「まぁ、まずは自己紹介から初めましょうか。私はここトリステインのウ゛ァリエール公爵家3女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ウ゛ァリエール。あなたは?」
「あっ、貴族の方ですか。私はアティと言います。元・軍人でしたが、今は家庭教師をやっていますね」
「ふーん。女で軍属なんて珍しいわね、という事はそれなりには強いのかしら?」
「えーと……アハハ。まぁ、それなりには……」
どうやって説明しましょうか。あぁ、大変。そもそも召喚術が使えるのかな……? 前途は多難だなぁ。
未だに疑問なこと
結局、ウィスタリアスはディエルゴ倒した後どうなったのか?
私、イスラとソノラしか攻略してないんですよね。あとカルマ
2013年5月9日17時43分、ルイズがマントに気付く描写に変更
コルベールから呼び出される文章を追加