御神と不破   作:しるうぃっしゅ

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第7話:運命交差

 

 

 

 

 

 

 

「日本の食べ物って凄く美味しいッスよねー」

 

 海鳴商店街の中央に位置する、世界中にあるであろうとある某有名ハンバーガーチェーン店……マックとドナルドの二階の隅っこのテーブルで三人の少女達が座っていた。その内の一人の茶色より赤に近い髪色の少女がハンバーガーを齧りながら天真爛漫な笑顔を浮かべ、残りの二人―――チンクとクアットロに語りかけていた。室内の光を反射して、頭につけている髪留めがキラリと光る。

 

 少女の前には今食べている物以外、四つも別の種類のハンバーガーが置かれていた。その細い体のどこにそんなに入るのかと不思議になるくらいの量である。チンクとクアットロの二人の前には対照的に一個のハンバーガーと飲み物とポテトのセットメニューだけだ。

 

 本来ならチンクも目の前の赤髪の少女と同等の食事の量を取るが、エネルギーを消費していなうえに夕方近くに散々食事をとったばかりのためこれだけの量でも充分であった。

 

「たかがファーストフードと思うなかれッス。他の国に比べたら全然レベルが上ッスから」

「そうねぇ。それには同感だわぁ。でもねぇ、能力も使っていないのにそんなに食べたら太るわよぉ、ウェンディちゃん」

 

 嬉しそうにモグモグと頬張る少女―――ウェンディの手が一瞬止まるものの、悩んだ表情を見せるが再び食べることを再開させる。馬の耳に念仏だったようで、忠告したクアットロはハァとため息を吐き、コーラが入った紙コップにささっているストローに口をつけた。

 

 ウェンディ―――彼女もまたと二人と同じナンバーズの数字持ちの一人。遠距離戦においては組織でも上位に位置し、破壊力、という点においてはナンバーズの序列十位の狙撃者(ヘヴィバレル)ツェーンには劣るが、正確で緻密な射撃能力を誇り、その精度の高さ故に星をも落とすのではないかと噂が広まり何時しか星穿つ射手(エリアルレイヴ)などと呼ばれるようになった少女である。

 

「それにしても情報を集めるなら大都市のほーに行った方がよかったんじゃないッスかね?」

 

 新たなるハンバーガーを齧りながら、ウェンディは素朴な疑問をクアットロにぶつけるが、返ってきたのは半眼でこちらを見返す姉の視線だった。まるで、できない生徒を見る先生のような呆れたような様子が見て取れた。その視線に耐えられなくなったのかウェンディは逃げるように次のハンバーガーにとりかかる。そんな妹にため息を一つ。クアットロが人差し指で眼鏡を押し上げ、首を振った。

 

「来る前に話したのを聞いてなかったのかしらぁ?」

「う……ごめんッス、クア姉」

「全く……お前はもっとしっかりと話を聞くべきだぞ、ウェンディ」

 

 ふふんとなぜか勝ちほこったチンクにじとーとした半眼でウェンディは見返す。

 

「チンクは理由覚えてるんッスか?」

「……」

 

 勝ち誇っていた態度が一変。チンクが痛いところをつかれたように、視線をそらす。それに呆れたウェンディが肩をすくめた。

 

「やれやれ。チンク姉だって覚えてないんじゃないんッスかー!!」

「あ、姉は色々と忙しかったから聞き逃しただけだ!!」

「理由はどうあれ聞き逃してるじゃないッスか!?」

 

 ギャーギャーと互いに罵り合う姉妹二人。

 そんな二人に、再度ははぁとため息をついて、クアットロがポテトをつまみ口の中に放り入れる。

 

「もう一度説明するからぁ……しっかり聞きなさいよぉ、二人ともぉ」

「う……すまん」

「……了解ッス。お願いするッスよ、クア姉」

 

 クアットロが少しばかり機嫌が悪くなった様子で、間延びした口調ながらも強めの語気で言い合いをしていた二人に注意した。二人は罰が悪そうにいがみ合いをやめ、姿勢を正し、クアットロへと身体を向ける。

 

「はっきり言ってこの日本という国でたった一人を、しかも情報もろくにない輩をさがしだすのはぁ、難しいわよねぇ? だからこそ場所を絞って調べたほうが効率はいいと思うのよぉ」

「しかし、場所を絞るといっても……」

「そうねぇ。彼の―――ああ、トーレ姉様曰く()らしいけどぉ、関連する場所なんか不明だからぁ、日本で強力な化け物が居る場所を重点的に調べようと思ってるのよぉ。強い力の元には強い力を持つ者が集まりやすいからぁ」

「なるほどッス。でも、こんな地方の街に化け物っていたッスか?

 

 クアットロの説明にウェンディがコーラを飲みながら首を傾げる。日本にも確かに人智を逸した化け物が複数いるが、この海鳴に現在そんな存在がいたかどうか思い出せない。

 

「居たわよぉ。しかもアンチナンバーズの一桁級(・・・)かしらねぇ」

「ぶはぁ!?」

 

 序列一桁。即ちそれ―――伝承級という単語に飲んでいたコーラを噴出すウェンディ。真正面に居たチンクが頭から霧状になったコーラを浴びせられた。最初何が起こったかわからなかった彼女だったが、状況を判断した瞬間、目元がピクピクとひきつらせた。ごほごほと咽るウェンディだったが、落ち着いた後に自分が飲んでいたコーラをチンクにぶっかけたことに気づき顔を青くする。

 

「ご、ごめんなさいッス、チンク姉!! わ、わるぎはなかったんッスよ!!」

「一日に二度も飲み物を頭からかぶせられるとは思ってもいなかったぞ……」

 

 ぷるぷると握った拳を震わせるチンクだったが、何時の間にか移動して被害をさけていたクアットロが、ハンカチでかかったコーラを拭き始める。

 

「軽く拭いてあげるけどぉ、ちゃんとお風呂で洗い流しなさいよぉ? それと、チンクちゃんもこんな場所で騒ぎ起こさないでねぇ?」

「く……」

「た、助かったッス。クア姉」

 

 この場所で暴れだされたら適わないとクアットロが先手を取って、チンクを嗜める。機先を制された彼女は後で覚えておけというように、親指で首を掻っ切る仕草をするが、ウェンディはブンブンと音がなるような勢いで横に振った。そして、誤魔化すようにクアットロに対して質問をぶつけようと口を開く。

 

「ええっと……さっき言ってたじゃないッスか、伝承級がこの街にいるって。そんな情報聞いてないッスよ!? だって、アンチナンバーズの序列一位は永久欠番。序列二位の未来視の天眼は確か東欧で確認されたんッスよね? 序列三位の執行者(・・・)は絶賛行方不明中。序列四位の魔導を極めた王は、数年前に封印されたばっかッス」  

「序列五位の鬼王(・・)は数百年近く自分の領地から出てきてないしな。序列六位の百鬼夜行(・・・・)は最近北米で確認されたはずだ。序列八位の猫神(・・)も自分の住んでいる領域から出てくることはめったにない。序列九位の魔女(・・)は引きこもりだし」 

「遭遇の可能性があるのは執行者くらいだとは思うッスけど……どう考えてもどうしようもない相手だと思うッスよぉ」

 

 次々とあげられるアンチナンバーズの一桁台。その中の一人、魔導を極めた王はあまりにも危険すぎた怪物だったため、当時のナンバーズの数字持ちとも幾度と無く激突したという。数十の街を壊滅させ、数十万以上もの人の命を奪った狂った怪人。ナンバーズに災害指定までされた曰くもある。余りにも狂気染みた行動を繰り返したため数年前に執行者と魔女。執行者を慕う数人のアンチナンバーズ二桁台の手によって封印されたという。色々と推測する二人だったが、それを尻目にクアットロはチンクの髪を一通りふき終わったようだ。だが、かけられのがコーラのため髪がベトベトするのが不快感を感じさせる。

 

「二人ともぉ、私の話をちゃんと聞きなさいよぉ。私はこう言ったわよぉ? 居たわよぉ(・・・・・)って」

「ええっと……過去形ッスか?」

「そうよぉ。三百年ほどまでにこの近くの国守山に封印された怪物。国そのものをその身一つで落とすことも可能ではないかとも言い伝えられる人外の中の人外。あらゆる獣達の王。その名を、ざから(・・・)

「―――聞いたことがないな」

「それはそうよぉ。だって、三百年前に封印された化け物よぉ? 本部の古い倉庫をあさってようやく発見した情報なのよねぇ。アンチナンバーズの一桁台はナンバーズで指定できないし、当時すでに九人の一桁がいたからナンバーズからは特例でこう呼ばれたらしいわぁ。アンチナンバーズの序列零位、国喰らい(・・・・)のざから、ってねぇ」

「そんな化け物がこの近くに封印されているんッスか!?」

「そうらしいわよぉ。そういう理由で、まずはここを選んだわけよぉ。ここで暫く様子を見てから、次は鬼王か猫神のところでも偵察に行きましょうかしらねぇ」

 

 鬼王か猫神のところに行くと聞いて頬を引きつらせたのはウェンディであった。猫神はまだ良い。彼女はどちらかといえば人類寄りだからだ。古い書物によるとかつては人間、夜の一族問わず殺戮を繰り返していたと言うが、ナンバーズにも時には手を貸したりなどいつ頃からか親人類とでもいうべき唯一のアンチナンバーズ一桁台の怪物となっていた。

 

 だが、鬼王と呼ばれる存在は決して関わってはならない禁忌であると徹底されている。アンチナンバーズの怪物たちの中でも古参も古参、最古参。時代を遡る限り千年もの昔から歴史にその名を残しているとも言われている。彼だけではなく、その配下もまた化け物ぞろいで、ナンバーズの実質トップの者から絶対に手を出すなとまで言い含められている。

 

 そんな化け物のもとまで行かなければならないのか、と気分を重くするウェンディを尻目に、話も落ち着いた三人は残されたハンバーガーを食べきろうと手を動かそうとした瞬間―――。

 

「「「……!?」」」」

 

 世界全体が地震を起こしたように、揺れた。慌てて周囲を見回すが、それに気づいたのはチンク達三人だけらしい。だが、確かに揺れたのだ。錯覚であるはずがない。

 

 ここから少しばかり離れた場所で―――立ち昇るように感じ取れる圧倒的な威圧感。自分達に向けられたわけでもないのに、許しを請いたくなるほどの恐怖が足元からじわじわと這い寄ってくる。

 

 逃げろ―――三人の戦闘経験からくる直感が同時に三人の頭に響いた。だが、これで逃げることが出来たらどれだけ楽だろうか。彼女ら三人は人類最後の砦。ナンバーズの数字持ち。異端を狩る異端。この異常な事態の原因を放置して逃亡することは許されない。三人は互いに頷き、絶対的な気配を振りまく存在が居る方向へと、駆けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 両者の対峙は、短くも濃密に凝縮された一瞬であった。逃げ惑う人々の悲鳴をバックコーラスに、数メートルの間合いを取って、二つの人影が対峙する。

 

 一人は短く切られた黒髪。黒尽くめの青年。まだ若く―――だが、どこか風格を漂わせる雰囲気を醸し出している。自然体でその場にゆったりと立っていた。向かい合う(アヤネ)を窺う瞳には、喜びと驚きがないまぜになったような感情が渦巻いている。

 もう一人は女性。漆黒の腰近くまで伸びた髪を紐で軽く結んでいる。黒い上下のジャージという色気も何もない格好だが、それでも見るものを惹きつける魅力があった。地面に激突した影響で額から赤い雫が零れ落ちる。それを手の甲で拭う。その表情は嬉々としていながらも、明らかに凶悪で狂悪。ある種の狂喜を漂わせていた。

 

 その光景は時間を止めてしまえば美しい絵画にしか見えなかっただろう。だが、周囲に満ちる殺気だけはどのような画家でも再現は不可能に違いない。二人の身体から放たれる―――常人でも視覚できそうなほどの極限にまで高められた圧力。嵐の後の川のように、激しく、濁流となって、周囲を覆い始める。物理的な力を放つではないのかと錯覚さえさせる、超絶的な二人の気配。その二人を囲うように粉塵はいまだ舞っている。

 溢れんばかりに迸る二人の殺気。これが前哨戦だといわんばかりに、巨大で、強大で、絶対的で、圧倒的。粉塵が舞うその場所は確かにただの駅前広場だったはずだ。だというのに、その場所は幻想的な世界へと様相をかえた。どくんどくんどくん、と普段では考えられないほどに心臓が高鳴る。緊張したような、期待に胸を膨らませるような、そんな喜びで。

 

あの時(・・・)から十一年。俺のことを覚えているか、水無月殺音」

「覚えているよ、不破恭也。一日たりとも忘れるものか。忘れてやるものか」

「俺もだ、殺音。お前を夢見、幾千の夜を過ごした」

 

 恭也が問いかけ、殺音が答える。

 そして、恭也の言葉に殺音の背筋をゾクゾクした快感が駆け巡った。

 これまでの長い人生で一度も感じたことがない。言葉に表現できない陶酔感。 

 

「分かるよ、恭也。キミがどれだけ強くなったか」

「ああ。だからこそ俺も分かる。お前がどれほど桁外れの化け物なのかが」

「そうかな?でも、負けるつもりはないんでしょう?」

「無論だ。戦えば勝つ――ーそれが不破恭也の在り方だ」

 

 一言一言が両者に巨石のような重みをのしかけてくる。だが、二人ともお互いのプレッシャーを弾き返すように淀みなく応じていく。二人の間ではそれだけで十分だった。十一年ぶりだというのに、二人は互いの全てを不思議と理解することが出来ていた。だからこそもはや、これ以上語ることは無し。いや、後ほんの僅かだけあった。互いの万感の想いを言葉に乗せ―――。

 

「俺のこれまでの修練は―――」

「私のこれまでの人生は―――」

 

「「―――お前(キミ)のためにあった!!」」

 

 何が開幕を告げるファンファーレになったのか分からない。二人は同時にカッと目を大きく見開き、地面を強く蹴りつけた。その衝撃で二人が蹴り付けた地面が抉り削られる。強く踏み込んだ足が、大地を揺らす。

 

 殺音の拳が恭也の顔に放たれた。その速度はまさに雷光。人の認識できるスピードをゆうに超えていた。その拳を認識した瞬間に避けようとしたら恭也の顔面は打ち抜かれていただろう。恭也はそれよりも早く―――それこそ殺音が拳を打ち出す直前に回避に転じていた。その行動を取れたのは、殺音の一挙手一投足を集中し、把握し、理解(・・)していたからであろう。見える。見えるのだ。恭也には筋肉の微細な動きまで。極限にまで集中した恭也にはそれこそ血管の動きまで観察できるような別世界の領域に足を踏み入れていた。

 

 だが恭也の見切りをもってしてもその一撃は間一髪であった。何千回何万回も戦ったイメージの殺音など相手にもならぬ疾風怒濤。自分が考えられる限りの上限で想定していた殺音のイメージをも置き去りにする殺音に、不思議と感謝の気持ちしかなかった。

 

 その場で足を止めるようにして、向かい合う。殺音が放つは槍のような鋭い拳の連打。それをひたすらに避け、一撃たりともまともに当てることを許さない。その連打の合間。隙ともいえぬ隙。数十分の一秒の世界にて、死角となる角度から恭也の蹴りが爆ぜる。

 

 恭也の蹴りは鋭く速く、そして死角のためワンテンポだけ反応が遅れた。避けれないと判断した殺音は腕を縮め、その蹴りを受け止める。防いだ腕を素通りするように、身体の中を言いようのない衝撃が浸透し、ぐらりと殺音の身体が泳いだ。カハッと空気が肺から漏れ出でる。それは本来ならばありえないことだ。ただの人間の蹴り一撃がここまでのインパクトを与えるはずがない。少なくとも自分以外ならばこの蹴りだけでも戦闘不能になってもおかしくはないほどの威力だ。あまりの破壊力に身を震わせながらもそれでも彼女の嬉々とした表情に変化はない。

 

 追撃をかけようとする恭也を嘲笑うかの如く、身体が泳ぎ不安定な状態から高々と振り上げられた拳が、恭也が追撃するよりも早く振り下ろされた。圧倒的な破壊力だけ求めた拳が振りおとされるのと、恭也が全力で回避を試みるのとは、ほぼ同時のことであった。間一髪で、殺音の拳が無人となった地面を打ち砕く。轟音とともに、打ち砕かれたアスファルトの破片と粉塵が再度舞いとぶ。ただ殴りつけただけでありながら、道路に巨大な風穴を波状に作り出す。あまりに馬鹿げた威力、破壊力。

 

 難を逃れた恭也は、相変わらず感じる殺音の気配を全身に浴びながら地面を転がり、体勢をたてなおす。間合いをあけ、身構えなおした。その時、さらに深く鋭くなった殺気が周囲に満ち始めた。猛烈な危機感が全身を襲う。

 

 殺音の瞳が赤く怪しく光った。足の爪先が地面に深くめり込むほどに、両脚に力を込める。どれだけの力をこめているのかわからない。想像もつかないほどの踏み切りで、殺音はその身を翻す。人を遥かに超越した、圧倒的な人外の挙動。生物がたてたとは思えない、破裂音とも聞き間違えるような、地面を蹴りつけた音だった。

 

 恭也が反応する。だが、僅かに襲い。その一瞬の差が殺音にとっては十分だった。左腕が閃光のように繰り出される。風を引き裂き、殺音の姿が稲光のような一筋の光となった。光拳一閃。彼女の拳が恭也の顔に直撃する刹那、無理には避けようとせず、恭也は殺音の迫ってくる拳を防ぐように片手の掌を受け止めようとした。誰がどう見てもそれは愚行でしかなかった。圧倒的な破壊力を秘めた拳をたかが人間の力で受け止めれるはずがない。

 

 殺音の拳が恭也の掌に着弾。その手ごと恭也を吹き飛ばす―――はずだった。柔らかい羽毛のような触感を拳に残し、殺音の視界は反転する。グルリと一回転したのだろうか。視界には星々が煌く夜天が見える。強かに打ち据える背中。痛みよりも、驚いたことは自分の爆発的な破壊力と突進力の拳を完全に殺されて、投げられたことだ。

 

 だが、それも当然のことだと思えてしまう自分に苦笑しかできない。驚きもすぐに消え、殺音の視界一杯に迫る恭也の踵。殺人的な凶悪さを示しながら落とされた。無理矢理に横に転がり、その踵落としをやり過ごし、掴んでいた恭也の手を力で切ると、後方へと飛びさがりながら殺音は、恭也との間合いを取った。

 再び対峙する二人。今度はそう易々とお互いの間合いに侵入することができない。力任せに攻撃してくる殺音だったが、それを鼻で笑うことはできない。正確で緻密な攻撃の方が恭也にとっては読みやすいからだ。殺音は、圧倒的な力と絶対的な速度で敵を圧殺する。故に恐ろしい。どの状態からでも殺音の一撃は必殺と成り得る。

 

 ―――高揚している?

 

 こんな場所で戦っているというのに。何時人目についても可笑しくはないというのに。たった一撃で殺されるかもしれないというのに。確かに、恭也は殺音と戦うことに高揚感を抱いている。幼い時の恭也では、殺音の渇き理解できなかった。だが―――今ならばできる。

 

 両者の戦闘意欲はとどまるところを知らずに、逆に膨れ上がっていく。特に殺音の様子は顕著であった。爛々と瞳を輝かせ、獰猛に口角が上がっている。ただただ、戦える喜びで表情は狂気で染まっていっていた。正気ではない。歓喜、悦楽、快楽、愉悦、もはや喜のみの感情で全身を高ぶらせている殺音は、十年という年月を待ち望んでいた彼女は、ただただ暴走していた。ズンっと音をあげて地を駆けるだした化け物が恭也へと襲い掛かろうとしたその時、彼女の背後から三人の男性が飛び出してきた。

 

 貪狼が殺音の右腕と肩を、廉貞が左腕と肩を、巨門が背中を捕まえると大地へと勢いよく叩きつけるようにして押さえつけた。三人が三人とも全力で抑えているのは明らかで、それぞれが歯を食いしばり顔つきは険しい。

 

「落ち着いてくれよ、姐さん!!」

「正気をとりもどすネ」

「冷静に、冷静になって下さい、破軍!!」

 

 三人の必死の呼びかけに、ぶるりっと身体を震わせる殺音。

 そして、首を曲げ真紅に染まった獣の眼光を向けてくる。

 

 じゃ、ま、だ。

 

 口から吐き出されたのは、数多の死地を乗り越えてきた北斗のメンバーすらも凍えさせる絶対零度の憤怒。全力で抑えつけているというのに、殺音はまるで幼児を振りほどくかのように軽々と身体を捻って勢いよく起き上がる。衝撃で吹き飛ばされた巨門めがけて腕に取り付いている貪狼と廉貞の二人を投げ飛ばした。空中で体勢を整える間もなく、二人は巨門に激突し転がっていった。

 

 三人には目もくれず、恭也へと視線を戻した殺音の眼前に突きつけられていた小剣と槍。文曲と禄存がそれぞれの得物の切っ先を向けていた。

 

「お許しください、破軍。しかし、今の貴女を止めることこそ本来の貴女の望みであると判断します」

「……」

 

 尊敬すべき人物に刃を向けることに心を痛めつつ、油断なく殺音の行動を見逃すまいと意識を尖らせ―――気がついたときには、それぞれの武器の間合いを突破され二人の身体は地面に叩き伏せられていた。文曲と禄存が認識するよりもなお早いその動き、あまりの衝撃に呼吸が止まる。その刹那激しい打撃音を響かせて、冥が何の手加減もせずに刀の峰で殺音の後頭部を殴りつけた。そのあまりの威力に破軍の身体はこの場から数メートルも弾き飛ばされる、が―――吹き飛びながらも即座に立ち上がり臨戦態勢となる。後頭部を金属の塊で強打されたというのに平然としている姉の姿を視界に留めながら、長く深い呼吸を一度。

 

「静まれ、破軍。高ぶるのも、喜ぶのもわかる。だが、今はこれ以上は駄目だ。こんな目立つ場所で暴れるな」

 

 自分の愛刀を正眼に構えながら、言葉を紡ぐ。

 なれど、殺音の戦意は微塵も揺らぐことはない。決して引かぬ、退かぬ、という強烈な想いのみが迸っていた。彼女の気配、重圧を一心に浴びる冥。自分を見る目が仲間でもなく、妹でもないことに声が震えそうになるのを必死に堪える。だが、絶対にこちらこそ絶対に引いてやるものかという強固な意志を柱に目の前の化け物の前に立ち塞がり続ける。

 

「もう一度言う。こんな人目のつくところでこれ以上は許さない。これ以上は日と場所を改めろ」

「……」

「なぁ、破軍。お前……全力を出せないこの青年を倒して嬉しいのか? 満たされるのか?」

 

 ちらりと後ろを振り返り、恭也を確認する冥。対して恭也は突然始まった仲間内の大喧嘩にどう対処すればいいかわからず、沈黙を保っている。

 

「この少年は……青年は、御神流(・・・)の使い手だろう? 二刀の小太刀を持って初めてその真価を発揮するという」

 

 十年以上前に裏の世界で散々名がとおっていた御神流。

 それを習得しているであろう、したであろう恭也の気配を背中で感じながら冥は続ける。

 

「これは死合だ。お前とあの青年とのね。十年前から決まっていたことだ。約束であり、盟約だ。だから私が茶々をいれるのはお門違いだろうさ。でもね、全力をだせない青年を倒して―――お前の渇きは癒えるのか?」

「っ……」

 

 あれほど表情に変化一つなかった殺音の顔色が僅かに動いた。

 それに可能性を見た冥は、淡々と―――だが、心と身体を熱く燃やしながら訴えかけていく。

 

「もし、それでも……それでも続けるというのならば、僕が相手をしよう(・・・・・・・・)

 

 ズズズっと何かが音を立てる。いや、聞こえたのは幻聴だ。それでも確かに悲鳴をあげたのだ、空気が、世界が、次元そのものが。ばさりっと揺れるのは、水無月冥の臀部から生えゆらゆらと左右に靡く猫の尻尾。ピョコっと自己主張をする頭の左右から生える猫の耳。

 

「僕はこの青年に、不破恭也に尊敬の念を抱いている。あの幼かった彼が、弱かった彼が、死んだと思っていた彼が―――これほどの高みに昇ったんだ。ああ、なんと素晴らしきことだ。見事というしかない。どれだけの死地を、修練を、死線を超えてきたのか僕では予想もできないよ。そんな彼が、全力でお前と戦えないなどあってたまるものか。認めてやるものか」

 

 小さな肉体。それは十年以上前に見たときと一切変わっていなかった。

 だが、その身体は殺音を前にしても堂々としている。破軍の圧力を浴びつつも一切気後れしていない。そして幼い頃に感じた自分の直感は間違っていなかった。この少女もまた、人外にして人外を外れたモノ。

 

「戦闘を続行するというならば、もはや僕も自分を抑えない。全力全身、全てを賭けてお前を止める。さぁ、水無月殺音(・・・・・)―――僕の屍を越えて行け」

 

 正眼だった構えを変化。体勢を低く、低く、さらに低く。

 地面に張り付きそうなほどに低く、刃は己の背中に隠し、奇妙な構えを取った武曲が宣言どおり一歩も引くものかという気概を持って破軍の前に立ち塞がる。

 十秒、二十秒、三十秒……息詰まる静寂と緊張。姉妹の対峙した時間は、それこそ永遠にも感じられた。それでもその対峙には終わりがやってくる。

 

 

「……しょぼーん」

 

 

 心底がっかりしたと言わんばかりに肩を落とし、その場にうずくまると荒れ果てた道路に()の字を書き始めた。殺音の瞳は赤から普段の色へともどっており、あれほど荒ぶっていた気配は、別人を思わせるほどにおさまっていた。そんな姉の姿に安堵の息を漏らした冥もまた、抜き身の刀を鞘に納める。

 

 御飯を前に待てをされた犬のように、目に見えて落ち込む殺音には先程までの暴走状態の名残はもはやない。それを見て安心した冥はとりあえず殺音を落ちつかせることが出来たと胸を撫で下ろす。例え全力を出したとしても、言葉に出したとおり自分では絶対に姉に勝つことは出来なかっただろう。

 

 周囲を見渡せば粉塵も治まりつつあり、いくら野次馬も今は居ないとはいえ、恐らくそのうち怖いもの見たさで戻ってくるのは簡単に予想できる。早めに撤収せねば、と心に決めた冥は未だ落ち込んでいる姉の元へと歩み寄っていった。

 

「……一旦帰るぞ、破軍。なに、あの青年はこの街に住んでいるようだし。また日を改めてやりあえばいいだろう?」

「っ!!」

 

 キュピーンと目を光らせて、立ち上がった殺音が恭也に視線を向ける。 

 期待に胸を膨らませ、恭也を窺っているが……コクリと頷いたのを確認すると、両手をグッと握り締めガッツポーズを取った。

 

「次逢うときは―――全力のキミを見せてよ、恭也」

「ああ、見せよう。お前に俺の全てを。なぁ、殺音……お前は俺を(・・・・・)―――」

 

 いや、と途中で口を閉ざすと恭也は首を振った。最後まで恭也は述べることなく、首を縦に振ることによって肯定とする。そんな姿に多少の疑問を残しつつも本当に嬉しそうな笑顔で、殺音はその場から霞むように姿を消した。

 

 殺音が姿を消したのは武曲に説得されたのが大きいだろうが、それ以外にもう一つある。武曲に止められるまで殺音の精神状態は大炎状態にあったといっていい。極限にまで燃え上がった獄炎。されど武曲に止められたことによって心の炎は通常状態にまで鎮火されてしまった。恭也が全力をだせないと気づいたのもそれに拍車をかけていただろう。再び先程までの域に精神状態をもっていくのは至難。それ故に、殺音は今回は身を引いたのだろう。残りの北斗五人も、姿を消した殺音を追っていった。その際に全員が全員恭也の方を見ており、何か言いた気にしていたが、猶予がないのかそのまま去って行った。残ったのは武曲―――水無月冥ただ一人。

  

「……キミは覚えていないかもしれないが、僕とキミは一度会っている」

「覚えている。あの時、水無月殺音と一緒にいた―――北斗の一員」

「そう、良く覚えていたね。たいしたものだ。まだ幼かったあの時の少年が立派になった……本当にね」

 

 武曲は恭也を遠い目で見る。遥か昔のあの日。十一年前。運命の日を思い出す。あの時の少年が今はこれほど大きく、強くなって眼の前に立っていることが信じられない。

 

「強くなった。本当に、本当に強くなった。向かい合っただけで理解できるよ―――あの殺音と渡り合えるほどにキミは強い。僕を含む北斗のメンバーでは相手にもならないほどの世界にキミは辿り着いた」

「……」

「人はこれほどまでに強くなれるのか。正直にそう思った。キミならばあいつの―――飢えを満たすことが出来るかもしれないね」

 

 武曲は恭也に背を向けると、正反対の方向へと足を進める。殺音たちが姿を消した方向へと、彼女もまた足を進めていく。

 

「僕の名前は水無月冥。北斗が一員。武曲」

 

 顔だけを僅かに後方の恭也に向けて―――憂いをおびた表情で口元をかすかに緩めた。

 

「殺音との約束を守ったキミに―――最大限の称賛と尊敬をこめて。それを持って感謝とする」

 

 殺音に続くように冥もまた、その場から離脱する。

 これ以上ここに留まって、警察のご厄介になるのも困るので、恭也も海鳴駅から離れようと動き出した。すでに粉塵はおさまっており、周囲の視界は開けてしまっていたが、幸運なことに野次馬は殺音と恭也の爆発的な殺気に自然と恐れをなして周辺から逃げだしていたようで、あたりには人っ子一人いない。後先考えずに突っ走るものではないと少しだけ反省する恭也だった。

 

 その場から恭也と北斗が姿を消し、やがて人が何が起こったのか確認しようと集まってくる。夜も遅くなっているというのに集まってくる人の数はとどまるところを知らない。怖いものみたさという奴だろう。夜の世界にパトカーの音が響き渡る。誰かが警察に連絡したのか、直ぐに何台ものパトカーが現れて、現場を封鎖していく。

 

 その光景を遠くから見ていた三つの人影があった。クアットロとチンク、そしてウェンディだ。三人の体勢はそれぞれだった。クアットロは何かを考えるように顎に手をあてている。チンクは恭也の消えていった方向を静かに見つめていた。対してウェンディは、現場から背を向けるようにして体育座りをしている。

 

「やべーッスよ。なんであんな化け物がいるんッスか。報告書で散々見たことがある、超大物じゃないッスか」

「……ここ十年は碌な動きをしていなかったのにどうしたのかしらねぇ、突然」

「水無月姉妹含む北斗のフルメンバーッスよ、間違いなく。北斗五人だけなら何とか出来るかも知れないッスけど、水無月姉妹のほうは無理ゲーッス。私たち三人じゃどーしようもないッスよ。トーレ姉あたり連れてこないと勝負の土俵にもあがれないッス」

「そうねぇ。ドゥーエ姉様とトーレ姉様に連絡を取ってから動いたほうが懸命ねぇ」

 

 ぶつぶつと両者は独り言のように呟くが、きっちり二人ともそれが返答となっている。はぁっと深い深い絶望のため息をつくウェンディだったが、全く反応をしないチンクに首を傾げた。

 

「チンク姉どうかしたッスか?」

「……いや、なんでもない」

 

 ウェンディに気にするなと返し、首を振る。実を言うと三人が到着したのは今さっきであり、恭也と殺音の戦いを見ていたわけではない。丁度冥と殺音が対峙していた時に到着したのだ。だからこそ、チンクを除く二人は恭也に対してそれほどの注意を払わなかった。水無月姉妹にばかり注意を取られてしまっていたのだ。しかし、チンクだけは違った。昼に恭也に一度会っていた故に、その異常性に気づけた。

 

 ―――平然としている? あの水無月殺音(・・・・・)と対峙して?

 

 ごくりと唾を飲み込んだ。その音がやけに大きく響いたように聞こえた。ぼろぼろになった駅前の広場を見る限り、恐らくは戦いがあったはずだ。恭也と殺音の。あの水無月殺音と戦い、怪我一つ負っていない。そんな馬鹿なことがありえるのだろうか。ナンバーズの数字持ちでさえ、一騎打ちなら勝算など皆無に等しいあの化け物を相手にして。アンチナンバーズの序列十四位(・・・)―――猫神の後継者(・・・・・・)。ここ十年殆ど動きがないに関わらず序列十四位に座する絶対強者。その実力はかの頂点に比肩するとも言われている日ノ本でも五指に入る夜の一族。それを、その化け物を相手取って、無傷で済ます。それは人の為せる所業をこえている。

 

「……お前は一体、何者なんだ……」

 

 呆然と呟いたチンクの言葉は―――夜の闇へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はぁ……」

 

 自然とため息をつく美由希。晶が作ってくれたお弁当に入っていたウィンナーに箸をプツリと刺し、口に運ぶ。子供も大喜びのタコさんウィンナーだが、残念なことに美由希はもう喜ぶような年ではないのだ。

 

 入学式からすでに一週間が経過していた。ある程度仲の良いグループというものが出来上がってしまい、美由希はそのどれにも入ることは無く、一人寂しく昼食を取っていたところであった。現在は昼休みで、机で食べても良かったのだがなんとなく居づらいため態々屋上まできてお弁当を食べていたのだ。

 別に恭也や晶、レンと一緒に学食で食べてもよかったのだが―――というか普段はそうしているのだけど―――珍しく本日は皆の都合が悪く屋上で一人ぼっちという状況である。

 

 ぽかぽかとした陽気がやけに気持ちいい。それが一人ぼっちなことに拍車をかける。屋上を見回してみるが、カップルらしき男女が何人かいるくらいだ。わざわざ屋上にまで昼御飯を食べに来る生徒も珍しいだろう。元々この学校には立派な食堂があるわけなのだから。

 

 昼休みが終わりに近づくにつれて、屋上から人が減っていく。美由希もお弁当を仕舞うと、屋上と校舎を繋ぐ扉へと向かおうとするが、その途中で綺麗な刺繍がされたハンカチが落ちているのに気づいた。

 

「落し物かな?」

 

 ハンカチを拾うと拾得物として職員室に持っていこうと決めた美由希が今度こそ階下へ戻ろうと扉を開けた瞬間。

 

「あいたっ!?」

 

 ゴンという音と短い悲鳴が聞こえ、押した扉に軽い衝撃が伝わった。扉の向こうには、一人の少女がおでこをおさえながら蹲っている。どうやら美由希が扉をあけたタイミングで近づいていたためドアにぶつけてしまったのだろう。

 

「す、すみません。大丈夫ですか?」

「い、いえ。こちらこそ前方不注意でご迷惑を……」

 

 額を赤くさせながらも人の良い笑顔で答える少女。胸元には赤いリボン。どうやら美由希より一個上の風芽丘学園の二年なのだろう。自然な茶色が入った長い髪。どことなく人を安心させるような柔和な雰囲気を持った少女だった。

 

「お手数をおかけいたしました……」

 

 少女は一礼すると扉から屋上にでると、何かを探し回るように視線をあちらこちらに向ける。暫く探していたが見つからなかったのか、しょんぼりという様子が相応しい感じで屋上からでてきた。

 

「あの―――何かお探しですか?」

「え、あ、はい。こんな形のハンカチを探しているんですけど……」

 

 美由希に声をかけられると思っていなかったのか少女は驚き、空中に両手でハンカチのような絵をかく。ちなみにこれでは形しか分からないが。

 

「あ、もしかしてこれですか?」

 

 それに思い当たった美由希が先程拾ったばかりにハンカチを少女に見せると、それにぱぁっと表情を明るくする少女。どうやらこのハンカチが探していたもののようで、少女は美由希から受け取ると何度も頭を下げた。

 

「本当に有難うございます。おかげさまで助かりました」

「いえ、こちらこそ。おでこ大丈夫ですか?」

「大丈夫です。私おっちょこちょいなところがあって……よく転んで打ってしまうので、慣れてるんです」

 

 恥ずかしそうに俯く少女に、どことなく親近感がわく美由希だった。基本的に戦闘に関しては美由希は突出しているが、日常生活ではドジなところがあり、よく恭也に呆れられることがあるためだ。彼女の気持ちは痛いほどよくわかる。その時校舎に鐘の音が鳴り響く。授業が始まる五分前になる予鈴だ。慌てて二人揃って階下へとおりる。美由希は一年のため三階だが、少女は二年なのでもう一階下になる。そこで別れることになるのだが、そのまま別れを告げるのは何故か憚れた。

 

「あ、あのー私……神咲那美といいます。今度時間があるときに改めて御礼をさせてください」

 

 少女の名前は神咲那美。高町美由希の生涯の友となる少女との―――運命の出会いであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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あれが(・・・)御神(・・)か……」

「ん……御神美由希(・・・・・)。上の情報によると間違いないみたい」

 

 

 神咲那美と美由希が互いに自己紹介などしている階段前の廊下。その廊下には教室に戻ろうとする生徒で混雑しており、屋上からも残っていた生徒たちが降りてきていた。そんな中、まるでその二人の男女のことは誰も気がついていないかの様子であった。不思議であった。おかしくもあった。何故ならば、屋上から降りていく階段の途中(・・・・・)の壁に背を預けて二人の少年少女はいたのだから。ただの生徒ならばある意味気づかないのは当然だ。だが、あの美由希すら二人の前の階段を降りたというのに―――その存在に気づかなかった。それは神咲那美と話していたからか? ……そんなわけはない。その程度で気づかない筈がない。

 

「たいしたもんだな、ありゃ。俺たちとほぼ同年代で、あそこまでの高みに昇ってやがるか。永全不動八門(・・・・・・)の黄金世代にも比肩するんじゃねーのか?」

「それは言いすぎ。確かに強い。強いけど……精々が自分達(・・・)程度でしょ? 一対一でやりあっても多分負けない」

 

 野性味あふれる獣。しかも肉食獣を思わせる短髪赤髪の少年の評価に、茶髪のサイドテールにしている少女が若干厳しめの返答をする。彼女の表情に変化はなく、本心から言っていることが自ずとわかった。それなりに長い付き合いである少年にとって、彼女の言葉は美由希を過小評価しているわけでもなく、過大評価でもない。本当に公平な目で見て、自分とほぼ同等―――いや、わずかに下であると評価を下したのだと知っていた。

 

「そうか? 多分だけど、アイツは強ぇぜ。感じられる力量のもう一個上あたりを予想しといたほうがいいと思うけどな」

 

 だが、赤髪の少年の評価は少女とは異なっていた。

 違和感がある。異質感がある。どこが、と問われれば言葉にすることはできない。あやふやなのだ、美由希の存在感が。掴める様でいまいち彼女の芯を把握することができない。

 

「なに? 葛葉(・・)はさぁ……やけに御神美由希のこと買ってるよね。なんで?」

 

 訝しげな少女の問い掛けに、葛葉と呼ばれた赤髪の少年はしばらく考え込むように目を瞑るが、それも数秒だ。

 

「なんとなく、なんとなくとしか言えねぇんだよなぁ。直感、第六感、本能……そんなアレが反応してんだよ、小金井(・・・)

「ふーん。まぁ、どうでもいいけどね」

 

 自分から話題を振っておきながら、どうでもいいと言い切った小金井は眠たげに、くはぁと欠伸をかみ殺す。教室に戻った美由希達を確認すると、そろそろ自分たちも戻らなければ、と壁際から離れる二人。

 

「おおっと。あんたたちー。早く戻らないと怒られちゃうぞぃ」

 

 そのタイミングを狙ってか、一人の小さな少女―――否、風芽丘学園教師であるスーツ姿の鬼頭水面がピシっと二人に向かって指を指しながら近づいてくる。

 

「わーってるって。今から戻るとこだっつーの」

「……すみません」

 

 対照的な二人の返事に気を悪くすることもなく、満面の笑顔を向けたまま―――。

 

「で、あんたたち二人から見て御神美由希ってどーなのさ?」

 

 早くもどれ、と言ったわりに話を繋げて来る鬼頭に若干の面倒くささを感じつつ先程二人で話していた内容をそのまま告げる。うんうん、と頷きながら聞いていた鬼頭だったが、なるほどねぇ、と短く呟いた。

 

「わたし的には葛葉の意見寄りかねぇ。なんていうか、底が見えるようで、見えないって感じがするんだよね。凄い嫌な、感じ。あーいう相手って、必ずこっちの思惑を超えてくるところがあるんさー」

 

 まぁ、でも……と前置きを置いて。

 

「そんでも、今の段階なら葛葉と小金井には勝てないと踏むけどねー。まぁ、知らんけど」

 

 鬼頭水面は、己が感じたままを口に出す。

 内容的に軽く聞こえるかもしれないが、この女がそういうのならばきっと彼女の予想通りの結果に辿り着くのだろうと二人ともがそう思った。

 

「ああ、そういえばアイツってどーすんだ? ほれ、御神にやけに熱い視線を送ってた奴いただろ?」

「アイツ? ……ああ、山田なんちゃらってやつー?」

「……山田太郎。それくらい覚えたら、鬼頭先生(・・・・)

「わっはっはっはー。いやぁーごめんねごめんねー」

 

 小金井の軽い嫌味にも、鬼頭は平然と笑って流す。山田太郎かー、と腕を組みながらウンウンと唸り始めるも数秒。

 

「放置、でいいんじゃない?」

「まぁ、そうだな。別に俺たちは御神の味方ってわけでもねーし。好きにさせておけばいいだろ」

「……そうだね。アレに負けるようなら所詮そこまでだったということで」

 

 三人ともがあっさりと山田太郎を放置することに決めるとと同時に、チャイムの音が校舎に鳴り響いた。それに今度こそ慌てて三人ともが各教室へと向かっていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 高町美由希の帰宅は他の高町家の住人に比べ随分と早い。

 晶は実はクラス委員のため、その仕事上意外と帰宅が遅くなる場合も多い。レンは授業が終わった後に夕食の買出しに行くことが多く、帰りが遅い。もしくは、一旦家に帰った後にいく場合もあるため結局美由希が家に着くころには居ないことが多々ある。

 桃子とフィアッセはいわずもがな。恭也も盆栽の本や刀剣専門店の井関に寄って帰ることもあり、美由希よりも遅い。そういうこともあり、本日は高町家には美由希となのはの二人しかいなかった。

 

 ソファーに美由希が座り、その横にちょこんと置きもののようになのはが座っている。テレビを二人で見ていたが、時間も時間のため、あまり興味のひかれる番組もやってはいなかった。どのチャンネルでもニュース番組ばかりで、美由希はともかくなのはの興味をひくような番組とはいえない。

 

「ね、なのは。公園にちょっと遊びに行こうか?」

「え?おねーちゃん、剣の練習はしなくてもいいの?」

「うーん。どうせ夜に死ぬほどしごかれるだろうし、それまではゆっくりしておこうかなーってね」

「おねーちゃんが迷惑じゃなかったら……行きたいです」

 

 もじもじと美由希に気を使ったようななのはの様子に苦笑しかできない。

 なのはは基本的に我侭をいわない。小学二年生だというのにあまりにも物分りが良すぎる。家族である美由希や恭也にでも気を使ってしまう。性格といえばそれまでだが、そんななのはにはもっと甘えて欲しい姉心を持つ美由希であった。

 

 家の戸締りをするとなのはと美由希は手をつないで海鳴臨海公園へと散歩に向かう。なのはのペースにあわせてゆっくりと。なのはは美由希と外出できるのが嬉しいのか、一目でわかるほどの上機嫌だ。そんななのはの機嫌にひかれるように、美由希の気分もよくなる一方である。

 

 海鳴臨海公園とは、旅行ガイド曰く、海鳴に来たカップルは一度でいいから通うべき場所らしい。お勧め度は星三つレベルというのを昔雑誌で見た記憶が美由希にはあった。公園に足を踏み入れると潮の香りが美由希となのはの鼻をくすぐった。海鳴臨海公園はその名の通り、海に面している。随分と長い柵と段差が海と公園を分け隔てていた。

 

 夜になるとライトアップされて、観光するカップルは良い雰囲気になるとか。美由希とて何度か夜間にきたことはあるが、思わず感心するほど素晴らしい景色であったのは間違いなかった。生憎恭也と一緒に鍛錬の途中に寄っただけなので色気のある話ではない。二人は連れ立って公園の中を突っ切るように歩いていく。途中幾度か、カップルらしき男女とすれ違う。楽しそうに語らいながら腕を組んでる。  

 

 そんなカップルを自分と恭也に置き換えて想像してみる美由希だったが、自分で妄想しておいて恥ずかしくなったのか、赤くなった顔を片手でおさえながら、もう一方の片手で想像を消すようにぶんぶんと中空を振りまわす。

 

 大人のデートスポットではあるが、全体がそうかといわれればそうではない。そこまで広いというわけではないが、公園の一画にはきちんと子供が遊ぶための遊具がおかれた空間も存在する。ブランコや滑り台といった懐かしい気持ちにさせる遊具が沢山あるが、なのははまだしも美由希が使用するには恥ずかしいので、なのはが遊ぶ傍らベンチに座ってその様子を見ることにした。

 

 ベンチに座ってなのはが楽しそうに遊ぶ光景を見るだけで心が暖かくなってくる。なのははどちらかというとインドアの遊びを好む。ゲームなどは美由希では百戦百敗レベルの強者だが、やはりこういった外で子供らしく遊ぶのも楽しそうである。微笑ましい光景を見ていた美由希だったが、くぅとお腹が鳴った。幸いなことに誰にも聞かれなかったのが良かったが、もし恭也に聞かれていたら散々からかわれただろう。

 

「なのはー。鯛焼き買ってくるけど餡子かクリームかどっちがいいー?」

「んーと……」

 

 どちらにするか悩むなのは。どちらにするか決めきれないようで、考え込む。

 

「それじゃあ、餡子とクリームを一個ずつ買ってくるから私と半分個ずつにしようか?」

 

 満面の笑顔で頷いたなのはを置いて、鯛焼きを買いにベンチから腰をあげる。なのはを一人にするのは気が引けるが、まだ夕陽が差し込む時間帯なので危険は無いだろうと判断して、屋台へと向かう。それほど遠くない場所に屋台を開いており、海鳴公園のちょっとした名物となっている。

 

 屋台にはメニューが書かれた看板が吊り下げられており、餡子、クリームは百二十円。それ以外にもカレーとピザ、チーズなども注文すればでてくるという怪しい店として別の意味で有名だ。ちなみに売り上げの九十九パーセントが餡子とクリームで、残りの一パーセントが変わり物の具材だという。その一パーセントの購入者が恭也を含んでいたりする。

 

「おお、お嬢ちゃん。毎度。今日は何にするんだい?」

「こんにちは、おじさん。えっとですね……餡子とクリームを一つずつでもいいですか?」

「ちょっとまっててな」

 

 何度も何度も購入しているうちに常連さんとなってしまった美由希。今では顔を覚えて貰っており、世間話までする仲になっていた。丁度出来上がったばかりの鯛焼きを合計二個入れてもらった袋と引き換えに小銭を渡す。お礼を告げて屋台から踵をかえす。離れる背に、屋台のおじさんの有難うという声がかけられた。

 

 遊具がおいてある一画まで戻ってきた美由希だったが、そこになのはの姿は無かった。不思議に思い、なのはーと大きな声で呼びかけてみるも返事はない。もしかしてトイレかと考え、少し離れた場所にある公衆トイレの中を窺ってみるも使用している人が居るようには見えない。悪戯で隠れているのかとも思ったが、なのははそういうことをする性格でもない。ドクンと嫌な予感が全身を襲い、心臓が高鳴る。

 

「なのはー!? なのはー!! どこにいるのー!?」

 

 焦りを隠せずに、美由希はなのはの名前を叫びながら走り回る。そのうちに、屋台に買いに行く前に美由希が座っていたベンチに手紙が置いてあるのに気づいた。行く前まではなかった。それは確信できる。買いに行って戻ってくるまでに手紙は置かれたのだろう。その手紙を震える手で開き、中に書かれていた文を読む。

 

 内容は簡単なものだった。僅か一文と書いた人物の名前しか、書かれていなかったのだから。手紙の文を理解した美由希は、グシャリとその紙を握りつぶすと、公園から全力で駆け出していった。

 

『君の妹は預からせていただきました。つきましては街外れの廃墟ビルまできていただければ幸いです。山田太郎』

 

 危険な男なのは分かっていた。だというのにこの一週間は特にちょっかいをかけてくるわけでもなかったので、油断していなかったと問われれば質問に窮するだろう。美由希本人を狙うのならばまだ良い。恭也やレン、晶ならば戦う者の覚悟とやらも持ち合わせている。

 

 だが、なのはと桃子は完全な一般人だ。覚悟もなにもない、ただ日々を笑って過ごすだけの―――。ボゥッと美由希の心の中に火が灯った気がした。ただの赤い炎ではない。それは、どこまでも黒い、漆黒の灯火。ガリっと唇を強く噛み、ポケットにいれていた携帯電話を取り出すと恭也へと電話をかける。 

 

『どうした?こんな時間に何かあったか』

 

 二、三度のコール音の後に恭也がでてくれたことに安堵しつつ、状況を伝える。最初は普段通りの恭也だったが、なのはが浚われたという件になると、凄まじいまでの声の冷たさになっていた。美由希に怒気をぶつけているわけでもないというのに、電話越しでさえ、押しつぶされそうになる。

 

『俺も今すぐにでる。今どれだけの武器を所有している?』

「飛針と鋼糸を少し。小太刀は持ってないよ」

『分かった。無理はするな、俺が行くまで時間を稼ぐだけでも良い。だが―――なのはは必ず助けるぞ』

「―――うん、わかった」

 

 電話を切ると美由希は速度を一段階あげる。普段の鍛錬のときと同等以上の速度で、疾風の如き一陣の風となって駆け抜ける。今さっきまでは綺麗に見えた夕陽が憎らしく見えた。

 

 すれ違った人々が何事かと振り返るが、その時にはすでに美由希は人々の視界から消えている。駆けて、駆けて、駆けて―――すれ違う人も減り、家も減り、海鳴でも人気の無い一画に辿りつく。元々でかいマンションを建てる予定だったらしいが、数年前からある事情で開発が中断している地域らしい。残されているのは、崩れかかったビルや、多くの建物。一般の人間ならば間違いなく近づかない場所だ。

 

 廃墟ビルといってもこの地域は広く、相手が指定してきたビルは正確にはどこかわからない。それに舌打ちをする美由希望だったが、それは杞憂に終わったようだ。どうやら隠れる気は無いらしく、不吉な気配を漂わせ、自分はここにいると美由希を挑発していたのだから。

 

 山田太郎が居るビルの前まで到着すると足をとめ上を見上げる。ざっと見た感じでは五階建て。何時崩れても可笑しくは無いほどにぼろぼろである。あれだけ長い間全力疾走したというのに美由希の息に乱れは無い。休むことよりもなのはの安全を優先して、何の恐れも躊躇いもなく、ビルへと足を踏み入れた。

 

 一階には誰も居ないことは気配でわかるので二階へ。三階、四階と階段を上がっていき……ついに五階へのぼりついた。扉一枚を隔てて感じる異様な存在。確かに居る。この先に、なのはを浚った男が。山田太郎が。覚悟を決め、扉をあける。鍵はかかっておらず、あっさりと開いたことに若干拍子抜けした。

 

 扉をあけた先―――巨大な部屋の窓際に太郎は居た。古臭いベッドに腰掛けて、太郎は文庫本をよんでいる。夕陽が沈みつつあり、電気も通っていないビルのため、字が読みにくいのか目を細めて本を読んでいた。そのベッドにはなのはが身動き一つとらず、仰向けに寝かされている。部屋をあけた美由希に気づいた太郎は、にこりと人懐っこい笑みを浮かべて、文庫本をおくと立ち上がった。

 

「ようこそ、高町美由希さん。一日千秋の思いでまってたよ」

 

 緊迫したこの場に相応しくない、太陽のような笑みだった。

 それだけに、不気味だ。何を考えているのか分からない。嫌な悪寒が全身を包む。

 

「なのはは、無事なんですか?」

「うん?ああ、勿論さ。ちょっと眠って貰ってるだけだから。怪我は無いから安心してよ」

「……そう」

 

 本当かどうかはわからないが、遠目で見た感じたしかに怪我は無いようだ。

 胸の上下が確認できるため、呼吸はしている。これで心配事の一つは減った。

 

「一つ聞きたいのですけど……」

「うん、なんだい?なんでも答えちゃうよ。今日の僕は機嫌がいいしね」

「何故、なのはを浚ったのですか?」

 

 率直な質問を太郎にぶつける。

 それに対して、太郎は頬を人差し指でかきながら答える。

 

「いやー実はさ、僕は君と潰しあいたかったんだけど……どうすれば本気の君と戦えるのかな、て思ったわけなんだよ。君みたいなタイプは自分が狙われるより、周囲の人間に危機が迫った時の方が力を発揮できそうだしー」

 

 けらけらと笑いながら理由を述べる太郎に氷点下の視線を向ける。

 下らない。下らなさすぎる。そんなどうでもいい理由でなのはを浚ったのか。

 凍えていく。美由希の心が。固まっていく。美由希の覚悟が。

 

「もう、いいです。これ以上貴方の下らない話は聞きたくないですから」

「え、いやいや。まだこれか―――」

 

 太郎の台詞は途中で切れた。いや、強制的にそれ以上の台詞を発することが出来なくなってしまったのだ。得意げに話をしていた太郎の眼前に、美由希が踏み込んでいたのだから。たまりにたまったダムの水門を取り払ったような、桁違いの圧力。爆発的に膨れ上がる気配。質量を持っているのではないかと勘違いするほどの威圧感。表情を引き攣らせ、踏み込んだ美由希に蹴りを放とうとした瞬間―――。

 

「がぁぁ!?」

 

 その蹴りを遥かに上回る速度で左拳が太郎の右脇腹を打ち抜く。

 脇腹から波状に広がっていく衝撃。未だかつて受けたことの無い一撃に、衝撃以上に、驚愕を全身が襲った。右脇腹を抑えて、崩れ落ちそうになる太郎だったが、それを美由希が許すはずも無い。

 

「貴方の敗因は一つだけ―――」

 

 美由希の囁きが太郎の耳を打つ。そして、閃光のように蹴り上げられた美由希の爪先が、太郎の顎を弾き上げた。脳が揺れる。太郎は後方の壁へと叩きつけられ、ドスンと床に倒れ付す。

 

「―――なのはを浚うという愚行を犯した。ただ、それだけです」

 

 高町美由希。現在風芽丘学園の一年生。弱冠十五歳の女子高生。なれどその力はとどまるところを知らず―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――あらゆる敵を一蹴する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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