東方紅緑譚   作:萃夢想天

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最近pcが反抗期に入ってしまいまして、
ディケイドの最新話を投稿した瞬間に内容が
ドジャァ~~~ンするふざけたバグが発生する
ようになりました………なんてこった(汗



言い訳みたいですが、以上がこの回の投稿が
遅れてしまった理由ですハイ。



長くなりましたが、それでは、どうぞ


第十壱話「緑の道、幽雅の桜と眠る胡蝶」

 

 

 

八雲 縁は、戸惑っていた。

 

今彼がいるのは、冥界の白玉楼の客間の一室。

室内に上がって数分後、妖夢に出された茶を受け取った縁だったが

何よりも目の前の光景に対して、どうしていいか分からずに今に至るのだった。

 

 

「ん~~♪ やっぱり美味しいわ~!」

 

「…………………」

 

 

机を挟んで正面に座って団子を頬張っているのは、

この白玉楼の管理者であり、西行寺家の霊嬢。

名を『西行寺 幽々子(さいぎょうじゆゆこ)』と言った。

既に机の上にある皿には、数えきれない程の串が乗せられていた。

その様子を見ていた妖夢が、恐る恐るといった体で話しかける。

 

「あ、あの……幽々子様?もうその位にして……」

 

「え~~?まだ100本ぽっちじゃな~い。これからが本番なのよ~」

 

「まだ⁉ 三時のおやつの度を越しています‼ もう充分でしょう‼」

 

 

そう言って妖夢は、残りの団子の皿を持って(ふすま)の向こうへ消えた。

両手に持った串を激しく振り回して、幽々子が抗議する。

 

 

 

「あぁ~~ん‼ 私のおやつがぁ~~…………」

 

「……………あの、幽々子様」

 

 

耐え切れなくなった縁は、妖夢がいなくなった後で語りかける。

気付いた幽々子は縁の方へと向き直って、改めて話し始める。

 

「そうだわ、君の事忘れちゃってたわ。ごめんなさいね?」

「いえ、お気になさらず……。それよりも幽々子様」

 

「なぁに?_________あ、もしかして……お団子、欲しかった?」

 

「…………………いえ」

 

「あら、そうなの?美味しいのに………で、何だったかしら?」

 

 

的外れな幽々子の冗談を受け流し、縁が続ける。

 

「…私は、紫様のご命令でこちらに来るようにと。

ですが、何をすれば良いのかを命じられておらず…」

 

「なるほど、困っちゃったわけね」

 

「ハイ。ですので、私はここで何を……」

 

「ん~、何をって言われても……あら?」

 

 

話をしている二人の真横に、突然現れた『スキマ』。

これを使う人物は、此処に居る者は皆知っている。

そしてその予想通りに、スキマの中から見知った顔がひょっこりと出てきた。

 

「紫じゃな~い、久しぶりね~」

「ええ、久しぶりね幽々子。縁もいるのね、丁度いいわ」

 

「紫様?何故こちらに……?」

 

 

 

縁のその問いに応えずに、紫は持っていた扇子をスッと横薙ぎに振るった。

すると、彼女のいるスキマとは別のスキマが出現した。

その中から現れたのは、全身に傷を負った彼女の式神_____八雲 藍だった。

 

「ら、藍さん‼ 一体どうしたんですか⁉」

 

「………………あらあら」

 

「……紫様、これはどういう……」

 

 

紫はただ藍を上から見下ろしながら、微動だにしない。

縁は藍の状態を見るが、明らかに無抵抗のまま受けた傷が多かった。

『九尾の妖狐』と恐れられた彼女が、これほどまでの深手を負うなど、

攻撃を避ける事自体を禁じられでもしなければ、ありえないだろう。

 

妖夢はすぐさま応急処置の出来そうな物を持ってこようとしたが、

紫が無言で振り上げた扇子から生じたスキマに阻まれる。

その様子を、幽々子はただ黙って見届けていた。

 

 

「別に。ただ私の命令に背いた不出来な式に、少しお灸を据えただけよ」

 

「……命令に、背いた? 八雲 藍が………?」

 

「そうよ、だからこうなったの。自業自得よ」

 

 

冷徹に言い放った紫。

納得のいかないような縁に、彼女は続けて言った。

 

「とにかく、こちらへ来なさい」

 

「………ハイ」

 

紫に言われるままに彼女のいるスキマの真下へ行く縁。

すると彼女は、再び扇子を振るって新たなスキマを二つ作った。

妖夢と幽々子は、隅に移動して何が起こるのかを傍観している。

縁と藍を交互に見やった後、紫が口を開く。

 

 

「藍の規反もそうだけど…。縁、貴方も貴方よ」

 

「………と、言いますと?」

 

「分からないならいいわ。とにかく、今一度二人には罰を与えるわ」

 

状況が飲み込めない縁。

妖夢は何が起こっているのか見当もつかずに、幽々子もまた旧友の意図を

読み取ろうとするが、余りに不可解な行動に理解が出来なかった。

 

 

(紫は何がしたいの……?脈絡が無さ過ぎるじゃない…)

 

 

「今から、私が『いい』と言うまで、ここから出てきてはダメよ……。

これは私への忠義を再度確認する意味も込めての罰よ。………何も言わず受けなさい」

 

 

 

 

紫は有無を言わせぬ鋭い眼光で二人を________特に藍を睨む。

縁は黙ってスキマに入ろうとしたが、内部を見て体が強張った。

 

 

 

 

 

 

 

_____________電流が、流されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どういう原理なのかは一切分からないが、何故かこの

スキマには電気が至る所に流されているのが縁には見えた。

 

この中に入れば、まず無事では済まない。

だが、それは隣でヨロヨロと立ち上がる藍もまた同じだろう。

 

 

「藍、縁。用意はいいかしら?」

 

「………ハイ」

「うっ、ぐっ………は、ハイ」

 

「いい返事ね。___________行きなさい」

 

 

 

縁が先に入り、藍も後に続く形でスキマに入る。

 

 

 

 

瞬間、鳴り響く『雷鳴』。

 

 

 

「ひっ‼⁉」

「危ないわ妖夢、あまり近付いては駄目よ」

 

「は、はい幽々子様……」

 

 

妖夢を後ろへ下がらせた幽々子は、紫の表情に憂いがあるのを見逃さなかった。

先程とは真逆の表情を浮かべる旧友に、幽々子は内心驚いていた。

 

絶え間無く聞こえてくる電気独特の通電音。

それが聞こえ始めてから、もうすぐ十分が経とうとしていた。

幽々子は紫の真意を突き止める為にも、声を掛けた。

 

 

「ねぇ紫。そろそろいい頃合いじゃない?」

 

「え……。そうね、もう『いい』かもしれないわね_________ッ‼ 幽々子」

 

「ウフッ♪ 引っ掛かった~~♪」

 

 

紫の口から漏れ出た『許可の言葉』を聞いたスキマは、

自動的に閉じ始めた。そして中に居た者を排出して、空間から消えた。

 

 

 

「………ん?なんだ、外……か?」

 

 

先に言葉を発したのは、藍だった。

彼女はよろめきながら立ち上がり、紫を見つめて問う。

 

 

 

「あの、紫様。これは一体どういう……」

 

 

 

現状を把握しきれていない様子の藍を見て、

紫と幽々子の二人は、すぐに違和感に気付いた。

すぐさま紫が、藍に問い掛ける。

 

 

 

「藍、貴女……なんでどこも焼けていないの(・・・・・・・)?」

「………え?それは、どういう意味ですか紫様…?」

 

 

紫は一瞬だけ考え、すぐに結論に辿り着いた。

彼女はすぐにスキマの奥に入って消えてしまった。

妖夢と藍はしきりに首を傾げていると、今度は幽々子が藍に問い掛けてきた。

 

 

「……ねぇ狐さん。あのスキマの中で、何をしていたの?」

 

「幽々子様……いえ、特に何もしては……。あの、一体何が?」

 

「………なるほどねぇ。そういう事ね」

 

 

 

一人で納得する幽々子に、何があったのかを聞こうとした

藍だったが、それは叶わなかった。

紫がスキマを開いてやって来たからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______黒焦げの縁を抱きかかえて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「‼‼⁉」」

 

「あらあら……これは酷いわ」

 

 

 

肉が焦げる匂いを立ち上らせて、ゆっくりこちらに歩み寄って来る紫。

妖夢は嗅いだ事の無い臭いに、鼻をおさえてえづく。

幽々子は扇子を広げて顔を覆い隠し、藍は驚愕に目を見開く。

 

 

「な……なんだ、コレは……」

 

「藍、これで貴女もいい加減分かったでしょう」

 

「え……?」

 

「この子の『内側』。貴女の代わりにスキマの中の電流を受けたのよ」

 

 

信じ難い事実に、藍の鋭い眼光は弱弱しく翳り迫力が無くなっている。

全く分からなかった、目の前にいる黒焦げの少年だった死体が

一体何がしたかったのか、何故自分を庇ったりしたのか。

 

ただ、これだけは理解出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

この少年は、『八雲 縁』は____________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(私と同じく、紫様にお仕えする眷族だった……なのに、私は‼)

 

 

 

 

 

たった一人の人間に、嫉妬していた醜い自分。

見つめ直した現実が、これほどまでに汚れていたなんて。

少なくともこの人間は、紫様が連れて来る程の人間だった。

それを、私の愚かな私情で、死なせてしまった。

その変えることの出来ない事実に、藍は後悔の涙を浮かべた。

 

 

 

「…………紫、様……。私は、どうすれば……」

 

「…………………」

 

「藍さん………」

 

 

幽々子は再び押し黙り、妖夢は藍を心配して声を掛ける。

しかし、事実は変わりはしない。変えられもしない。

藍は顔を上げることが出来なかった。

自分の主人に何を言われるか分からないが、それよりももっと

大事な『何か』を自分の行動によって壊してしまった、そんな気がしていた。

 

 

「藍、貴女はどうしたいの?」

 

「………………私は……」

 

 

 

諭すように紫が呟き、藍はその返答につまづく。

どうしたいか、などと聞かれても答えは見つからない。

償いの方法など、彼女には分からなかったから。

 

しかし、紫は藍に再度問い掛ける。

 

 

 

「藍、貴女は………どうしたらいいと思うの?」

 

「………………」

 

 

二度目の問い。

だが、その問いの意味は先程とは違っていた。

 

 

 

________何をしたいか、何をすべきか。

 

 

 

 

藍は、ただ焦げて黒い炭塊と化した縁に膝を付き

両目に大粒の涙を浮かべながらに謝罪した。

醜い自分を卑下して、妖怪としての自負も何もかもを捨てて。

 

 

 

「______済まなかった……‼ 私は、私は………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「問題ない。貴女が謝る必要は無いぞ、八雲 藍」

 

 

 

 

「「‼‼‼⁉」」

 

 

紫に抱えられていた縁の死体が喋った。

いや、死体だと思っていたものが喋ったのだ。

藍は驚いて顔を上げ、幽々子は目を薄く開きクスクスと薄く笑い、

妖夢は完全に白目を向いて倒れかけている。

 

 

「やっぱり生きてたのね~。紫も冗談が過ぎるわよ」

 

「あら、気付いてたのね幽々子。………妖夢が死にそうだけど」

 

「怖がりだからね~妖夢は。でも、何で生きてるのかは気になるわ~?」

 

「え……?ええ、え⁉」

 

藍は幽々子と紫の会話から察した。

『ああ、また嵌められたんだ』と。

だが幽々子の言ったように、何故彼が生きているのかは確かに不思議だった。

幽々子の投げかけた疑問に、紫が答える。

 

 

「この子が生きている理由?簡単よ、ただこの子の能力を使っただけ」

 

「縁の能力?そう言えば聞いてなかったわ」

 

「私は知っていますが……それが一体なんで……」

 

「縁の『全てを結ぐ程度の能力』で、私の不老不死をこの子の魂と結げたのよ」

 

「へぇ~。便利な能力なのね、縁」

 

「融通は利きませんので、便利とは言えません」

 

先程とは打って変わって明るい雰囲気に包まれる。

縁は起き上がって紫に一礼した後で、藍に駆け寄った。

 

 

「八雲 藍。貴女は私の為に涙を流したのか?」

 

「ッ‼‼ ち、違う‼ 断じて違うぞ‼‼」

 

「あらあら、顔が真っ赤よ~?」

「幽々子様‼ お止めください‼」

 

「藍、素直になることって大切なのよ?」

 

「紫様がそれを言いますか⁉ ~~~~あぁもう‼」

 

「うう……ん、みょん…?」

 

 

今やっと目が覚めた妖夢。

顔を赤くして慌てふためく藍。

その藍を弄る幽々子と茶化す紫。

そしてそれをただ傍観する縁。

 

 

「紫様、私は『結界』の様子を見てきますので‼」

 

耐え切れなくなった藍は、怒鳴りながらも転身の妖術を使って消えた。

 

 

 

(…………行っちゃった)

 

(………逃げたわね)

 

(アレ、藍さんは………。ああ、お仕事ですか)

(何故最後に私の方を見たのか……分からない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、紫と幽々子が二人だけで話したいと言って

席を外したため、今客間にいるのは妖夢と縁だけになってしまっていた。

縁が黙って主人の帰りを待っていると、妖夢が声を掛けてきた。

 

 

 

「あの、縁さん。先程はその……突然斬りかかって済みませんでした」

 

「気にするな。あの程度で憤慨などしない。私こそ済まなかった」

 

「え…………?」

 

「君は剣を使っての勝負を望んでいただろう。だが、私の都合でそれを……」

 

「い、いえ! あなたが謝る事なんて!」

 

「いや、私は分かっていながら勝負をしなかった。謝るべきは私の方だ」

 

「いえいえ私が」

 

「いや、私だ」

 

「いつまで夫婦漫才するつもりかしら~?」

 

「みょん⁉ め、めおと……って幽々子様‼」

 

 

突然会話に混ざって来た幽々子に驚く妖夢。

しかしその後ろにいる紫を見た瞬間凍り付いた。

 

 

「あ、あの……幽々子様。紫様が……」

 

「ん~?紫がどうかし___________あらぁ」

 

「誰と誰が夫婦ですって?」

 

「………紫と縁の二人の事よぉ、天地神明に誓うわ」

 

「ならいいのよ」

 

(あんな顔した紫、月面戦争の時でも見なかったのに……怖いわねぇ、恋って)

 

 

 

冷や汗を額から流している幽々子。

しかし、その口元には隠せない笑みがこぼれていた。

紫はため息を一つつくと、縁に向かって言った。

 

 

 

「縁、次の命令を貴方に与えるわ」

 

「ハイ、何なりと」

 

「良い返事よ。____________次の命令は」

 

 

 

 

 

 

「ここで二週間を過ごすことよぉ♪」

 

「……………ええ⁉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________________同時刻、某所

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………あなたは、ずっとそばにいてくれる?』

 

『もちろん。僕はいつでも君のそばにいてあげられるよ』

 

『本当……?本当に、ほんとう…?』

 

『えぇ、必ず…。約束しますよ』

 

『約束…………なら、破っちゃダメよ』

 

『分かってますとも……。いえ、分かりました、お嬢様』

 

『……お嬢様?わたしが?』

 

『ハイ、約束ですお嬢様。_______この命尽きようとも』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私の心は、フランお嬢様に永遠の忠誠を誓います』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『十六夜 紅夜の名に誓って……』






やっと書けました。

パソコンの不調で、書き途中で投稿を
余儀なくされましたが、これでこの回は完成です。
いつも見てくれている皆様、申し訳ありません。



それでは次回、東方紅緑譚



第十弐話「緑の道、交わす剣先と交わる思い」
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