どうも皆様、例大祭参加で東方熱をオーバーチャージしてきた
萃夢想天です! いやはや、まっこと東方とは良き文明なりや!
そして久しぶりに某神アニメ『うたわれるもの』を見直して涙を
流し果たしました。泣くって、泣けるって、素晴らしいことなんですね。
さて、前回は中途半端なところで終わらせてしまいましたが、今回は
妖夢との剣での試合に決着を着けさせます。ええ、その予定です!
今の私が何を宣言しても成しえる自信が皆無なので、ハイ!
それでは、どうぞ!
「やああっ!」
冥界は白玉楼、音の無い静謐の空下にて、両手に異なる長さの刀を握った妖夢が声を上げる。
闘気を十全に含んだ音が薄暗い中に響き、真っ向から対峙している縁に本気であると伝えた。
『白楼剣と楼観剣、本来の力を以て挑むか…………受けよう』
それまではダランと力なく切っ先を地に向けていた構え方だった縁は、刀を握る右手に力を
込め直し、魂魄妖夢の本領が発揮されるであろう二振りの刀に向けて警戒心を押し出した。
右手に長刀の楼観剣、左手に短刀(と呼ぶには少し長いが)の白楼剣を携えた彼女は、自身の身体の
前方へ横向きにした左の刀を突き出すようにして駆け出し、彼我の間にある距離を詰めていく。
駆ける一歩一歩にかかる力も先程以上のものがあり、駆け足というよりもそれはもはや、短距離を
連続して跳躍しているような移動方法だった。瞬く間に縁との間を縮め、構える彼に刀を振るう。
「はあぁッ‼」
縁の持つ六色の射程範囲限界の距離まで詰め寄った妖夢は、その直前に左手の白楼剣を振るい、
一撃を受けようと構えを解かざるを得ない状況に相手を誘導する。直後、右の一振りが追い討ちを
しかけるようにたたみかけ、右斜め下からの鋭い一閃を放つものの、彼は顔を上に背け回避する。
ならばと振り抜いた右手を素早く返し、顔ではなく首を狙って軌道を滑らせた。けれど縁はその
攻撃が回避不能と見てすぐ、白楼剣を受けていた六色を引いて、妖夢の右腕めがけて振り上げる。
勢いよく横へ軌道を描く右腕を止められない彼女は、抵抗が無くなった左の刀をすかさず相手の
刀の軌道上へと割り込ませて防ぎ、一瞬の膠着を利用して刀を持たない左半身へと回り込んだ。
『くっ………』
「たあッ!」
妖夢が一振りで挑んできた時よりも、攻勢の波が激しいように感じた縁は苦悶の声を漏らしたが、
彼女は止まるはずがなく、迎撃をすぐさま打てない左側から一気呵成に、二振りの剣を振るう。
左が右斜め上から斬り、一秒以上の間隔を開けずに続けて、右が先程の左とほぼ同じ軌道を描き、
それら二回の攻撃がすんでのところで躱されたとみた直後、返す刀が真逆の軌道を滑り上がった。
一振り目は避けられたがその次が間に合わず、六色を無造作に大振りで薙ぐことで攻めを断とうと
した縁だったが、わずかに腰を落とした妖夢が剣の軌道を変え、やや下段からの斬りを繰り出す。
柄頭を押し出すようにして加速する剣を前に、体勢を崩して回避も迎撃もままならない縁は、
この場は敢えて受け止めようと考える。ただ受け止めるだけなら、現状であっても十分可能だと
踏んでの判断だったのだが、妖夢の腕が二本とも同じ軌道を奔る光景を見て、失策を確信した。
『なに_______________っく!』
ほぼ同じタイミングで振るわれる刀、つまりそれまでの一振りごとの連続攻撃とは違って、
一撃で二つの刀を振るう攻撃を放つという事。その威力は、先程のものとは比べるに能わず。
流れるような動作で、かつ前傾姿勢で重心と勢いを乗せた妖夢の攻撃は、六色を慌てて横に
向けて構えている縁の上段から的確に繰り出され、痛いほどの静寂に包まれた空気を揺らした。
『ぐ、おお………』
「________ふうぅ……。まさか、一太刀も与えることなく終わるとは」
甲高い金属同士の衝突音の後、顔が触れ合うほどの距離で鍔迫り合いつつ言葉を交える二人。
けれど先の打ち合いとは立場が逆転したように、妖夢の二振りが縁の一振りを押しこんでおり、
時折両者の間からこぼれるピキリという音が、どちらの刀に傷を負わせているかを黙して語る。
しばらくの間、六色が白楼剣と楼観剣を相手に一進一退を繰り返し、両者の思惑を裏切った。
妖夢としてはこの一連の動きは、自身の持ち得る本気を出したうえでさらに調子が良いと
言って然るべきものだった。そう確信したものだったというのに、その全ては防がれて終わり。
無論驚愕に値するものだったが、それ以上に彼女としては思いに陰りが芽生え始めていた。
逆に縁としても、魂魄 妖夢という少女の本気がここまでのものであるとは予想し切れて
いなかったために、手酷い反撃を受けて驚嘆にシステムの大多数を埋め尽くされていたのだ。
兵器である自分が、戦闘行動において他人に後れを取ることなど、想定しているはずがなく、
ましてや控えめに言って脅威とすら感じていなかった相手に、一方的に圧倒されるなどとは。
さらに言えば、自身が警戒を最大限にしても追いつけないほどの速度での斬撃を受けて、
このままでは近いうちに、反応速度を超えて迫る斬撃に切り伏せられる未来がくると悟った。
二人は互いの刀を押し合いながら、"次"を仕掛けるための機会を探る。
『まず、い…………これほどの速度は、想定外だ』
「まだ足りない、もっと、もっと速く!」
『私の上をいくつもりか? 思い上がったな、魂魄 妖夢‼』
じりじりと迫る切っ先、速度に焦る妖夢と焦りを見せる彼女に激昂を露にする縁。
ほとんど近い時間で機会を見出した二人は、反発する磁石のように逆方向へ距離を開けて、
少しだけ上がった息を整えながら、次に斬り込んだ時にどうすべきかを瞬時に脳内で練る。
妖夢の二刀流が想定以上のものであることに驚く縁は、自分を統括している中枢とも呼べる
部分に自ら指令を出し、反射神経と動体視力の二点に力を送って集中するように仕向けた。
けれどそれで彼は気を抜いたりせず、目の前で二刀流の基本中の基本の構えを取る妖夢に、
寸分の隙も見出せないと困り果て、次に打つ手をどうすべきかを必死に絞り出している。
ここにきて縁は、ようやく"本気"を出すことにためらいを捨てることができた。
『………だが、このままではジリ貧。ともすれば私の敗北も、可能性上では在り得る』
「縁、さん?」
『不本意だが、仕方がない。
布で隠した視線が自分を見つめていることを感じた妖夢だったが、そこには先程まであった
はずの驚愕の色が見当たらず、何事かと却って身構えていると、彼が細々と呟き出した。
何が起こるのかまでは分からないにしろ、警戒するに越したことはないと二刀流独特の
構えで全方位に目を向ける彼女に、正眼の構えに近い野良構えをしていた縁が左手をかざす。
『能力限定解放、並びに空間座標固定…………再連結開始』
虚空に左手を伸ばしていた彼が何かを呟き終えると、何事も無かったかのように左手を
右手に持つ六色の柄に握らせ、両手でしかと握り直した刀を、腰溜めに低く座らせた。
傍から見れば"鞘に納めない居合い斬り"の構えに見えるのだが、妖夢は警戒心を揺り起こす。
自身が半人前である以上、いくら剣の腕が素人であろうと、戦士としては一流であることに
間違いはない相手が剣で語るというのだから慢心するな。そう言い聞かせて彼の剣の先を見る。
「__________え?」
すると、彼女が見つめる六色の剣先がブレ、分裂したように見え始めた。
目の錯覚か何かだと判断した妖夢だが、何度見つめ直しても六色の剣先が間違いなく二つ、
どころかさらに増えているように見えるのだ。これには動揺を隠すことなどできないだろう。
突然の怪現象に妖夢の気が散らされた瞬間、六色を真っ直ぐ構えていた縁が足を踏み出した。
(来る!)
ありとあらゆる動作の基盤である一歩目が出されたのを目視した妖夢は、すぐに迫るであろう
彼からの攻撃に反撃する魂胆で待ち構えていた。ところが、またしても彼女の予想は裏切られた。
「え________________」
真っ直ぐに、頭上へと昇っていく切っ先を目で追いかけた瞬間、彼女の視界の端で冥界の空を
漂う人魂の淡い白が反射した光が見え、即座にそちらへ視線を向けるとそこに、刀が見えた。
あり得るはずのない光景に一瞬思考が停止しかけるが、持ち直した妖夢は改めて現実を認識する。
注意深く見るまでもなく、彼女の前にいる縁は、今まさに振り下ろさんと六色を掲げていた。
確かに彼は剣を頭上に持ち上げているのだが、その彼の腰の左側にはまだ、六色が残っている。
つまり、そこには一振りしかないはずの六色が、確かに二振りあるのだ。
「なに、が」
起きているのだ、と言葉を漏らしかけた妖夢は、再び眼前の彼に違和感を覚えて注視してみると、
先程までそこに確実に無かったはずの刀が一振り、彼の右肩の辺りでこちらに向けられていた。
理解が追い付かない。なぜ、どうして一振りだけの刀が何本も目の前にあるのだろうか。
それ以前に、まるで彼の身体から生えているように伸びる全く別の腕は、いったい何なのか。
考えれば考えるほどに混乱していく彼女は、最初に掲げられた正面頭上の六色が最高到達点に
たどり着いたのを目視し、呆けている場合ではないと意識を集中させ、二つの刀を握り直す。
『驚くのも無理はない。お前には確かに、私とは違う私の腕と私の刀が見えているはずだ。
だが、それでいい。ソレが正常だ。確かに今この場には、一振りのみの六色が三振りある』
「いったい、なにを」
『なに、他愛ない話だ。私の能力はあらゆるものを結げる能力、それを応用しただけに過ぎん。
私が剣を構えた瞬間を軸として固定し、そこを起点に別の時間を渡るはずだった私と現在の私を
結げただけのこと。端的に言えば、一部限定で過去の私が現在の私に干渉して動いているだけだ』
何でもないように淡々と事務的に告げた縁の左右で、まったく同じボロボロの刀が光を返す。
人魂の淡い白を反射して幽玄にきらめく刀を見やり、妖夢は彼の成そうとしていることが何か、
今更ながらに理解するに至った。
「それはつまり、過去と現在の三人のあなたが、"同時に襲ってくる"わけですね?」
『理解が早いな、正解だ』
妖夢が到達した答えは、縁が設定した一つの起点を始め、現在に干渉した過去が襲い来ること。
難しい説明は省くが、簡単に言えば過去にいる自分を限定的に未来に引っ張り戦わせる戦法だ。
そのため、同じ座標にいる自分自身に悪影響が出ないよう、完璧な演算を組んである。
しかし、そんなことを知らない妖夢からすれば、いきなり三人の縁と戦えと言われたような、
訳の分からない状況に他ならない。そうしている間に、縁の準備は完ぺきに整ってしまった。
『では_______________さらばだ』
「っ‼」
上から、左から、右から、それぞれ異なる方向から同タイミングで六色が繰り出されてきた。
一振りしかないはずのその刀は、妖夢の目から見ても確かに自分の前に存在しているのだから
彼の言葉に嘘などあるわけがない。問題は、迫りくる三つもの斬撃をどう生き残るについて。
「せああああっ‼」
まず一番上から振り下ろされる六色は、マトモに受けたなら力の差で押し負けることなど
火を見るよりも明らかであるため、受け流すことを最優先に考え、二振りの刀を横に構える。
直後に上段からすさまじい勢いを乗せた六色が振り下ろされてきたが、妖夢はこれを
白楼剣のみでなく楼観剣も合わせることで、どうにか弾ける程度には持たせることができた。
続けざまに左腰からの横薙いだ鋭い一閃が放たれたが、それも同じように弾き防いで見せる。
しかし、最後の一振りを防ごうと二振りの剣を構え直した瞬間、そこに縁の姿は無かった。
『____________隙を見せたな』
「ッ⁉」
視界から消えた縁の声が耳元で響いたと認識した直後、反射的に楼観剣を持つ右手を振るい、
姿を確認することなく一撃を与えようとするも、手応えを感じえずに刀は虚空を裂いた。
どこに消えたのかと周囲をひたすら警戒し始めたその時、ほんのわずかな殺気を察知した。
「そこですか!」
『流石だが、遅いな_____________私の勝利だ』
再び響いた声に反応すると同時に楼観剣を振るおうとした彼女。しかし、視界の中で既に
攻撃に移行している縁を見て、彼我の状況から防いでも間に合わないと瞬時に理解した。
さらに、彼が今まさに振るわんとしている六色の状態を見て、妖夢は抵抗の意思を消した。
『はぁっ‼』
「が、はッッ‼」
何故か抵抗の意思を直前で窄ませた妖夢は、縁の振るった六色が後頭部と側頭部の間に
直撃した影響で、激しく脳を揺さぶられてしまい、瞳から光を消して力なく倒れこむ。
石灯籠が無言で立ち並ぶ冷たい石畳の道に、前のめりに倒れていく妖夢は、完全に地面へ
倒れこむ寸前、薄れかけていく意識をどうにかつないで、力を振り絞って言葉を紡いだ。
「忠義に厚く、腕も熟達している貴方のような人が、何故こんな……………」
言葉を最後まで言い切ることなく、妖夢はそこで限界を迎えて無機質な石畳へと倒れる。
『……………………』
倒れ伏して動かない妖夢を見つめ、彼女を斬る直前に刃を内側へ、峰を外側へ持ち替えて
いた自分の行いをまじまじと思い返しながら、縁は感情のこもらない声で淡々と答えた。
『私には最初から、"心"というようなものなど在りはしないのだ。これも忠義ではなく、
私という道具に与えられた命令に、道具らしく従っていただけに過ぎないのだ』
返事が返ることなど望んでいなかった彼だったが、それでも伏して動かないままの彼女を
放置するわけにもいかず、鮮やかな峰打ちで気絶させた少女を仰向けにして横にする。
その行動はまるで敗者を讃える勝者の、人間の在り方のようで少しだけ心躍ったのだが、
それ自体が何を意味するものなのか、それを理解するだけの余裕は今の彼にはなかった。
『さて、残るは彼女のみか』
妖夢を真剣勝負の末に下した縁は、ここに来た本来の目的を果たそうと石灯籠の小道を
歩んで進み、また白玉楼の門前へと戻ってきた。しかしそこで、彼の足は止まってしまう。
「妖夢を倒したのね。すごいわ、縁」
『…………西行寺 幽々子様』
門前で彼を待っていたかのように立ち尽くす女性、幽々子はどこか儚げな笑みを一瞬
浮かべた後、すぐに元の表情に立ち戻り、普段とはまた違った雰囲気をまとわせ告げる。
「さぁ、あがってらっしゃい。積もる話は、この白玉楼でゆっくり聞かせて」
いかがだったでしょうか?(半睡
本当に五千文字逝くのがやっとなうえに、文章自体も歪極まる。
なんともまぁ低クオリティが低品質になるなんて、目も当てられねぇや。
それでは次回、東方紅緑譚
第八十一話「亡霊の姫、心なきモノ」
ご意見ご感想、並びに質問や批評も大募集しております!