東方紅緑譚   作:萃夢想天

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どうも皆様、先日在庫処分セールで最後の一台となっていた中型TVを
通常価格から大幅に下がった値段で買い取れてホクホクな萃夢想天です!
これでやっと、二月に買ったまま放置していたPS4で遊べるぞぉ!

ただ、これから忙しくなるので遊ぶ時間そのものが減りそうですが。


さて、前回は縁とこころちーが弾幕ごっこをして、クライマックスの直前で
終わったんでしたね。今回はその続きからになります。
さぁ、ようやく私が思い描いていた縁編の折り返しに辿り着きました。
ここからまだ結構書かねばならないと思うと、まぁ、気が重くなります。

それでも待っていてくださっている読者の方々の為、頑張ります‼


それでは、どうぞ!





第八十四話「緑の道、愛裏切り哀救う」

 

 

 

 

「御覧あれ! 我らが舞にて踊り奏でるは、心を喪い面を失くした男の、その末路也!」

 

 

相も変わらずの無表情のままではあるが、普段の倍ほどに張った高めの声でそう叫んだ彼女、

ラストスペルを今こそ勝機と捉え宣言した妖怪、秦 こころが茫然自失で動かぬ縁を見やる。

途端、彼女の周りを旋回していた三つの面がどこかへと消え、代わりに縁を取り囲むようにして

浮遊している御面たちが、空虚で豊かな表情を浮かべたまま、一斉に彼のいる場所へ殺到した。

 

数を数えることすら叶わぬ、まさに無数の御面の奔流が縁へと情け容赦なく襲い掛かっていき、

新たに九つの御面を周囲にまとわせたこころが、中空へと放り出された縁へ追撃をたたみかける。

 

 

そこからはまさに、演劇の演目を演じているかのような、流麗で迫力に満ちた舞踊の一人舞台。

 

 

カンッ、と拍子木を打ち鳴らすような音が一拍鳴り響き、それと同時にこころが一撃を加える。

最初の甲高い一拍目を皮切りに続く二拍目からは、間隔が徐々に狭まって連続で音を鳴らしだす。

 

まずは一拍目に、閉じた状態の扇子による突き押しを、おかめの面をつけたまま鋭く繰り出し、

二拍目で回転しつつ跳躍し、悲嘆に暮れる老爺の御面を被った彼女は開いた扇子で斬りつけた。

続けた三拍目に、先程両手で持っていた扇子を片手に重ね持ち、気が付けばまたおかめの面で

跳躍からの落下の流れをうまく利用した斬撃を真上から狙い、四拍目には身を瞬時に翻して

下から上へと斬り上げるようにして開いたままの扇子を、般若の面の"怒り"とともに繰り出した。

 

五拍目には鬼蜘蛛の面で、扇子ではなく取り出した身の丈以上の薙刀で胴体を鋭く一突き。

六拍目で再び開いた扇子を両手に持ち、おかめの面を被ってから流れる動作で斬りつけて、

七拍目はそのまま下段へと薙ぎ払い、またも変わった瞬間が分からぬ般若面が縁を見つめる。

次なる八拍目は、目を大きく見開いた驚きに近い表情を現しているおかめの面を被り、

下段へ一気に切り伏せ、九拍目になると何故か獅子舞の頭を被って斜め後ろへ大きく跳躍した。

 

彼我の距離を少し開けた十拍目、角を生やした赤い鬼蜘蛛面を被った彼女は薙刀を上段に構え、

そして一際大きな音を響かせた十一拍目。仮面を被らず、こころは薙刀を大振りに一挙振るう。

 

 

一拍の音が鳴り響く度に面と武器を変えながら、怒涛の十一連撃を成す術も無く叩きこまれた

縁は、そのまま一切の抵抗も打開案の発動も無いまま、ただ無気力に里の地面へと落とされる。

立ち上がる事すら億劫なように、落下したまま倒れこみ、縁は全く微動だにしない。

 

 

『_______________________________』

 

 

自らの存在意義は、存在理由は、その総てが偉大なる主人の為にこそあり。それが縁であった。

しかしそんな彼は今、初めて戦ったとはいえ遥か格下と思しき相手に醜態を晒し、無様な姿で

小振りな雲が所々に浮かぶ青空を見上げている。もはや己が強者であると驕ることも能わず。

最強無敗、仁者無敗、全戦全勝を謳い誇り続けていた。否、そう在り続けねばならなかった

道具として生きてきたはずの自分が、一度ならず二度までも敗北を喫した事に打ちひしがれる。

仰向けに倒れたまま起き上がる気力すら浮かばず、ただ漠然と視界に広がる青が体内にぽっかり

空いた穴に染み渡るような、言葉では表現し難い感覚に浸る縁は、上空の彼女の言葉を思い出す。

 

『………………………私には、理解出来(わから)ない』

 

 

それまでの自分の生き方を思い返し、先程の彼女の言葉と照らし合わせても、欠片も合致しない。

道具として、そう在れかしと役目を押し付けられていただけの彼には、分かるはずもなかった。

本来の八雲 縁という存在には、心などという人間染みたものなど備わっていなかったし、彼自身

必要とは思っていなかった。主人の意志のままに動き、使われるだけの、そんな道具だった故に。

 

個としての感情や心が、どのような作用をもたらすのか。心が人を形作るものだと知る由もない。

今の彼は単なる道具でしかなかったかつてとは違い、『影』が入り込んで人間を構成するあらゆる

要素を「模倣」することが、辛うじて出来ているという状態である。その程度でしかない彼には、

こころが何気なく語っていた、それでも的を射ていた言葉の意味など、理解できるはずもない。

 

 

『私は、私は、我々(わたし)を………………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地表にて縁が重くのしかかる敗北に打ちひしがれていた頃、上空にいたこころはというと、

久方ぶりの弾幕ごっこに初見の敵と戦い勝利を収め、無表情で歓喜の感情を振りまいていた。

 

握り拳を空へと突き出す、所謂ガッツポーズを三回グルリと回って青空へと伸ばしている

彼女は、満面の笑みを浮かべている爺の御面を頭に被り、無言で自らの心境を伝えていた。

こころは自らの独特のポーズや言動を表情で表すことこそ叶わないが、人一倍素直であることを

彼女の周囲の者は知っている。よってこころは今、縁に何と声を掛けるべきか悩んでいた。

 

 

「………ん? アレは………」

 

 

落下したまま何の反応も示さないまま倒れている彼から視線を逸らすと、遠くの方から何かが

それなりの速度で接近してくるのが目視できた。額に手をやり無表情のままに眼を凝らすと、

それらが人であることが分かり、さらに自分と面識のある人物であることも判明した。

 

箒に跨り空を駆ける、白黒の魔法使いこと霧雨 魔理沙に、守矢の巫女こと東風谷 早苗の

両名を確認したこころは、珍しい組み合わせに何事かと思ったが、不意に視界の端が歪んだ。

急に自分の手前に空間の裂け目__________スキマが現れたことに火男の面を被って驚きの感情を

表してみる。しかし、そこから現れた二人の人物は、こころに目もくれずに視線を足下へ下げた。

 

 

「紫様! あそこに!」

 

「縁………!」

 

 

無数の瞳が蠢く境界線から出現した紫とその式たる藍は、未だに虚空を見上げたまま微動だに

していない縁を発見し、わずかに警戒したものの、その持ち前の頭脳によって現状を把握した。

 

「どうやら一悶着あったようですね」

 

「そうでなければ、私たちがあの子を見つけることなど出来なかったでしょう」

 

「しかし、いったい何故自分から居場所を晒すような真似を?」

 

「罠か、あるいは…………いえ、今はそんな事どうでもいいわ」

 

 

ポカンとしたままのこころを一瞥して現状を理解した藍は、今まで巧妙に自分たちの追跡から

隠れていた彼が、こんなにあっさりと発見されたことに違和感を感じていた。だが、主人である

紫はそのことを全く意に介すことなく、四肢を放って倒れている縁を注意深く観察している。

 

そこにいる面霊気、御面の集合霊であるこころと何かしらの接触の後、対立したことなど紫は

既に察していた。問題は、今の彼は何故、自分たちが来たにも関わらず動かないのかということ。

自分を追跡するものが現れたというのに、身じろぎ一つしない彼の様子に、紫は不安を募らせる。

しかし、幻想郷の管理者としての彼女は、動きを見せない彼の姿を見てすぐに思考を巡らせて、

今こそが今回の不気味で不可解な『異変』の元凶を仕留める好機であると、そう結論付けた。

 

(こんな事はしたくない……………けど、私には責任がある。だから、今はそうしなくては!)

 

 

今すぐ駆け寄って彼を抱き留め、共に自分たちの住処に帰りたいという八雲 紫としての願望を

無理やり封じ込めて、妖怪の賢者として成さねばならぬことを優先し、冷徹な仮面を被り直す。

 

 

「藍、今が、今こそが好機よ。縁を捕らえてその中にいる何かを、今回の元凶を引きずり出す」

 

「承知!」

 

「魔理沙、それに守矢の巫女。貴女たちにも協力してもらうわよ」

 

「いきなり言われてもなぁ。アタシはただ、里で弾幕ごっこなんか珍しいこともあるもんだと

思って、ちょっくら覗きに来ただけだったんだけど。まぁ、無視して帰る事も出来なさそうだ」

 

「わ、私はもとより縁さんを捕まえるために来ました! 神奈子様に何をしたのかを聞くまで、

諏訪子様がお怒りを鎮めることはありませんので! ですから、私もやってやりますよ‼」

 

「頼もしいことですわ」

 

 

式神の藍に命令を下し、すぐさま同時に現場へ到着した魔理沙と早苗にも協力を要請する。

それとない感じで了承した魔理沙と、自身が崇拝する一柱たる神の異変の謎を知る為に快諾した

早苗を戦列に加え、紫は四人での同時攻撃を提唱した。それに賛同した三人は、行動を開始する。

 

九尾の妖狐としての力を解放した藍と、先手必勝を是とする魔理沙が、近距離から大威力の攻撃を

確実に当てようと我先にと飛び出していき、その場に残る早苗と紫が援護射撃を担当する布陣だ。

 

 

「っしゃいくぜーー‼」

 

「悔しいが、貴様がいないと紫様が悲しまれる…………だから‼」

 

「縁さん、神奈子様に、神奈子様に何をしたんですか‼」

 

「……………………………………‼」

 

 

九尾の妖力を注ぎ込んだ豪爪を、眩い星屑が溢れ出る魔法陣を、霊力を編み込んだ特製の御札を、

そして彼女だけが持つ唯一無二の境界線を、それぞれ展開した彼女たちの一斉放火が降り注ぐ。

それらが目指すところは唯一つ。仰向けになったままで動かない、今回の『異変』の元凶。

迫りくる彼女たちの攻撃が着弾するその寸前、縁の体の下__________影がぞろぞろと蠢いた。

 

 

『__________‼ _____________‼ _______________‼』

 

 

彼女たちは知る由もないが、それまで縁と彼の中にいた影たちは、彼の能力によってごく自然に

結げられていた為に、暴走することも人を襲うこともなかった。しかし、今は状況が変わった。

縁はこころとの一戦によって自己の定義と意義を見失い、能力による強固な結びつきもかなり

あやふやに緩んでしまっていた。故に、そもただの妖怪であった影が暴走するのは必然である。

 

無数の触手のようなものを縁の影の中から突き出し、藍の豪爪と魔理沙の魔法攻撃を弾いた。

いきなりの迎撃に多少の驚きはあったものの、藍も魔理沙も取り乱すことなく攻撃を繰り出す

べき時を見計らう。上空でそれを見ていた早苗と紫は、触手を動かすべく援護射撃を厚くした。

 

 

『________________‼ ______________________‼』

 

 

それでも影は休まることなく、放たれるレーザーや爆発する御札の悉くから縁の体を守り通す。

あくまで現在の本体は彼であるからか、と紫は攻撃の手を緩めることないままに思考を巡らせ、

藍と魔理沙の接近戦に強い両者のための隙を作るべく、多方向からの面制圧へと方針を変えた。

 

影の触手は蠢き暴れ狂いながらも縁を守っているが、それでも戦力差が圧倒的なのは変わらず。

単純に物量差で攻め続けることが出来る彼女らとは違い、影は攻勢に転じる暇がどこにもない。

このままではいずれ、相手の猛攻に対処しきれなくなりいずれは、という時に変化は訪れた。

 

 

『___________‼ ___________、_____________』

 

 

それまでは吹き荒ぶ暴風雨のようにやたらめったら蠢いていた触手が、唐突に動きを止めた。

何事かと四人が攻撃の手を一瞬だけ停止したその瞬間、数本の触手が縁の体を持ち上げ始め、

ふらふらとおぼつかない足取りも数秒の後、顔を覆い隠した青年は、自らの足で大地に立つ。

 

縁の復活を目の当たりにした紫は、それまでの暴れるままの単調な攻撃が終わりを迎え、

代わりに統制の取れた戦略的な攻撃が始まる事を察し、援護射撃を止めて一目散に急降下する。

 

「縁‼」

 

 

それまでは、彼の中に潜む何かによる必死の防戦だったために、彼女は堪えていられたのだ。

しかし、彼が、縁が目覚めたとなってはもう、彼を愛する者としては心を抑えられなかった。

 

自らの役目も、義務も、責任すらもかなぐり捨てた紫は、亡霊のように立つ彼へと接近する。

彼女の式神である藍が何やら叫んでいるようだが、やけにその声が遠くに聞こえてきている

せいで、何を言っているのかが分からなかった。ただ、もう彼女は眼前の青年のことだけしか

頭に入っていなかったため、何を言っても無駄になっているのだが、誰もそれに気付けない。

 

そしてついに、紫の細く白い手が、腕が、彼を抱き留めて確保する直前、声が響いた。

 

 

『_____________征け』

 

 

紫が彼の、ひいては彼の足元の変化に気づくより速く、縁の影から五人の人影が飛び出した。

それぞれ背格好もまるで異なり統一性が無い。だが、そのどれもが一つの共通点を持っている。

八雲 縁と同じく、顔を達筆で一文字が書かれた布で覆い隠している、異様な出で立ちだ。

 

 

「アレは、あの時の……!」

 

「紫様!」

 

「おいおいおい、何だよアレ。アタシあんなの聞いてないぜ?」

 

「神奈子様………‼」

 

 

突然現れた刺客から主君を庇い、そのまま凄まじい速度で離脱していく藍と抱えられた紫は、

ずるずると這い出るようにして彼の周囲に現れた五人の人影の、その中の一人を睨みつける。

背中に巨大な注連縄と御柱を背負う『柱』の女性ではなく、巨大な荷物袋を背負う『河』の

少女でもない。獣のような耳と尻尾を携えた『響』の少女でもなければ、背に生やした三対の

薄氷で宙に浮く小柄な『氷』の少女でもない。彼女らの視線が射貫くのは、残る最後の一人。

 

両側頭部から角を生やし、鎖を掻き鳴らしながら瓢箪を煽る、『酔』と刻まれた少女だった。

 

 

「萃香…………やはり貴女」

 

 

藍の腕から抜け出て宙に立つ紫は、こちらを見上げて腕をグルグル回すその人影を見やり、

どうして彼女が自分と敵対しているのかを考えないようにしながら、再び戦意を滾らせる。

紫が戻ってきたことで状況が整い、魔理沙も早苗も臨戦態勢を取り、自分の相手を見定めた。

 

 

「神奈子様、私が必ず、必ずお救いしてみせます!」

 

「あれはチルノとにとりだよな…………何が何だかさっぱりだけど、アレは何かヤバそうだぜ」

 

「紫様、如何いたしますか?」

 

「…………貴女はあそこの山彦妖怪と、可能なら萃香を同時に相手取って足止めをしなさい」

 

「………我が全身全霊を以て」

 

 

早苗は本来の目的である神奈子の救済を、魔理沙はよく遊んだりしているチルノやにとりの

二人から感じる異様な雰囲気に警戒し、藍は紫からの命令を受諾して萃香と響子を見据える。

そして残る紫は、彼女ら五人の刺客たちを召喚した縁だけを見つめ、意を決した。

 

 

『…………………この場は、任せた』

 

 

しかし対する縁は戦闘行動を起こすことなく、敵対する意思も無いようで、この混沌とした

現状を呼び出した影たちに押し付け、自らは空間を結げて別のどこかへ離脱を企んでいた。

それを見逃す紫ではない。すぐさま攻撃を仕掛けながら接近するが、彼女の放った攻撃は

その総てがどこからか湧いて出た霧によって、文字通りに霧散させられてしまう。

 

 

「私の邪魔をするのね。いえ、そうまでしてあの子を守るのね、萃香?」

 

『…………………』

 

視線を縁から彼の前に陣取った『酔』の少女へと移すが、相手は瓢箪の酒を呷り呑むだけ。

藍が紫の援護に向かおうとするが、そうはさせまいと『響』の少女が行く手を遮ってしまう。

早苗と魔理沙は自分が相対すると定めた相手の目前へ赴き、一触即発の空気を醸し出す。

 

それぞれが対応にこまねいている中で、縁は空間に裂け目を生み出し、そこへ身を投じる。

 

 

「縁! 待って、待ちなさい‼」

 

『…………………………やれ』

 

 

ただ一言だけを残して縁は姿を消し、その一言を皮切りに、人里の上空で戦の火花が散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『う、くっ…………あった。ここが、我々たちの』

 

 

受けたダメージが予想外に大きいのか、胸を片手で押さえてふらつきながら歩く縁は、

人里からさほど離れてはいない、されど人の気配が微塵も無い寂れた洞穴に辿り着いていた。

 

周囲には鬱葱と茂った木々が太陽の光を遮り、昼間にも関わらず夜と見紛うほどの陰鬱さを

醸し出している。さらにはその木々すらも、葉が茂っているのに幹が枯れているような外見を

している為、傍から見ても不気味以外の何物でもない。まず人が寄り付かない場所であった。

 

そんな木々にひっそりと、誰かの眼かを欺くために隠しているようにしていたそこには、

荒い岩肌が露出した、何の変哲も無い洞穴があったのだ。無論、周囲の雰囲気の影響もあり、

ただのと言うには少々不気味加減が増しているのだが、彼にってそんなことは関係がない。

 

 

『この辺りに、きっと……………』

 

 

よろめく体で足を踏み出し、茂みに隠された洞穴へと近づいていく縁。彼は忙しなく周囲を

何度も何度も、まるで何かを探しているように見やる。その視線は、常に下を向いていた。

暗く恐ろし気な木々の根元を見て、そこには望むものが無いと知ってまた視線を別のところへ

向けていく。そんな作業を数分続けていた彼は、洞窟へ少し入った場所でふとその足を止める。

彼の布越しの視線が一点を捉えて動かない。彼の視線の先には、探し求めたものがあったのだ。

 

 

『__________________此処に居たのか』

 

 

縁が返事を求めずに言葉を掛けた先にあったものは、一部が白骨化した人間の死体であった。

 

全体的な大きさから見ても、その死体は子供のものであり、死んでから少なくとも数か月は

経過していることが分かる。もはや人としての原型すら留めていないその亡骸に、語り掛ける。

 

 

『随分と探したぞ。ああ、やっと見つけた』

 

 

着ていたであろう衣服は、あちこちがズタボロになってもはや破れた布の欠片にしか見えず、

それらの空いた隙間から覗く亡骸は、骨となった部分以外では明らかに異常な欠損が見て取れた。

死体の状態を見た縁は、思考回路を巡らせて回答を導き出す。その子供のことを、その末路を。

 

 

『妖怪に襲われて、命からがら此処へ逃げ延び、そして死んで喰われたのか…………』

 

 

悲惨、ただただ悲惨な結末であった。この幻想郷では想像に難くない、人外による捕食殺害。

まだ年端もいかない幼子に課せられた非道な運命を、彼には嘆くことなど出来なかったが、

それでも彼の中に何かが渦巻いていることだけは感じられた。その猛りを、昂ぶりを口にする。

 

 

 

 

 

『ようやく、ようやく見つけたよ………………そうだ、もう"遊び"はお終いにしよう。

これでお前は、お前たちは元の場所へと帰る事が出来るはずだ。さぁ、みんなで帰ろうな』

 

 





いかがだったでしょうか?

謎が謎を呼ぶ縁編、いよいよこれから後半戦へと突入いたします!
問題はそれがどれぐらいになるかなんですけどねぇ…………ええ、不明です。
予定ではあと二十話以内に縁編を完結させるつもりで入るんですが、
どうなるかは分かりません。二十週となると、ああ、九月頃ですかね。


それでは次回、東方紅緑譚


第八十五話「緑の道、紅との邂逅」


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