彩花/妖怪と魔法の物語   作:khiro

1 / 11
1話 不幸

中沢祐樹。4人家族の末っ子として生まれた。

 

生まれた時の名前は斎藤祐樹だった。

幼稚園のときから一緒だった、僕の初めての友達、荒川大輔。

俺はいつまでも家族と、友達と一緒に入られると思ってた。

 

しかし最初の不幸は4歳の時

 

祐樹「お父さん、行かないで・・・。」

 

父「お父さんも男なんだよ。」

 

父は浮気相手と駆け落ちした。

お母さんに慰謝料と養育費を払って離婚、家を出て行った。

 

このとき名字が斎藤から中沢に変わった。

それからは母と4つ年上の姉と3人暮らし。

それに親友の荒川君も励ましてくれた。

 

しかし母の転勤で、その小学校2年生の終わりに転校。荒川君とは離れ離れになった。

そりゃ寂しかったけど、いつかきっと会えると思っていた。

 

いろいろなことがあった。小学校4年生の春。

俺と同い年の女の子が白血病になったとき、母がドナーになった。

母は20歳のとき骨髄バンクに登録していた。

 

「ありがとうございました。あなたは娘の命の恩人です。」

 

母はその子の両親から感謝されてとても嬉しそうだった。

 

人生2度目の不幸は11歳、小学校5年生の終わりだった。

 

その日俺はクラスメートの一条楽と喧嘩をした。

生まれて初めての殴り合いの喧嘩だった。止めてくれた友達に「なんで止めるんだ」と八つ当たりするほどだった。

 

結局喧嘩は決着がつかず引き分けにおわり、授業が始まるころには先生にばれなくてよかったな、と思ってた。

しかしそのあと校内アナウンスで俺だけ職員室に呼ばれた。

喧嘩のことが先生にばれて怒られるんだと思い最悪だなと思ったのと、なぜ俺だけなんだ、一条はなんで呼び出されないんだと不満に思いながら職員室に行った。

職員室で待ってたのは深刻な顔をしたお姉ちゃんだった。

 

何がなんだかわからなかった。

 

祐樹(たかが喧嘩したことくらいで家族を呼び出されるのか?呼び出されるにしてもなんでお母さんじゃないんだ?)

 

そんなことをと考えていると

 

先生「お母さんが倒れたんだって。今日は早退してお母さんのところに行ってあげなさい。」

 

ますます訳がわからなかった。喧嘩の言い訳しか考えてなかったのに。

 

姉「早く荷物取ってきて。詳しくは移動しながら話すから。」

 

病院

 

母「ごめんね心配かけて。全然大丈夫だから。学校早退して大丈夫だった?終わってからで良かったのに。 」

 

その後病名が発覚した。ガンだった。

発見が遅かったらしく、この状態になると助かる可能性は100人に1人だと言われた。

 

祐樹「どうしてお母さんがこんな目に。」

 

祐樹「白血病の女の子を助けたのに、なんでお母さんがガンにならなきゃいけないの?」

 

母「あの女の子生きてるかな。」

 

母「私、生きてるとき何もできなかったけど、あの女の子を救えたことがただ1つの自慢なんだ。」

 

母「だからあの子が生きててくれたら、少しでも私がこの世に生きた意味を残せる。」

 

春休みは、毎日のように病院に行った。

 

そして

 

今夜が山だと言われた日

 

姉「お母さん、大丈夫?」

 

祐樹「早く退院してまた楽しく暮らそう」

 

ピコーン ピコーン ピコーン ピーーーー

 

祐樹「お母さーーーん」

 

医師「ご臨終です。18時54分です。」

 

姉「嘘でしょ? お母さん、嘘って言って。」

 

お母さんは死んだ。

 

母の葬儀の後

 

親戚「2人を引き取ることはできない。」

 

親戚「2人とも孤児院に預けようと思うんだが。」

 

姉「私、祐樹と離れたくありません。祐樹は私が育てます。」

 

姉「バイトでもなんでもして。大学まで行かせます。」

 

姉「だって私と祐樹は、2人きりの家族だから、一緒にいなきゃダメなんです。」(グス)

 

祐樹「お姉ちゃん・・・」

 

 

中学のとき、俺はいじめにあった。誰も助けてはくれなかった。両親を失い、友達もなくひとりぼっち。

そして3度目の不幸は俺が中学2年生、姉が高校2年生の夏のことだった、

 

夏休み、姉が旅行に行っていたときのことだった。

 

姉「修学旅行に行ってる間、1人で大丈夫?」

 

祐樹「大丈夫だよ。俺ももう中学生なんだから。」

 

 

祐樹「今頃みんなで盛り上がってるんじゃないかな」

 

祐樹「行けてよかったね。」

 

ところがその日、事故は起きた。

 

夕方、テレビを見ていたとき。

 

テレビの画面上

ニュース速報

 

『桜ヶ丘航空334便がレーダーから消える。』

 

祐樹「桜ヶ丘航空334便って、お姉ちゃんが乗ってるの。まさか・・・」

 

何も信じたくなかった。でも現実だった。

 

『番組の途中ですが、ここでニュースをお伝えします。』

 

『今日18時30分ごろ、桜ヶ丘航空334便がレーダーから消え、墜落した可能性が強まっております。』

 

祐樹「嘘だろ・・・」

 

祐樹「お姉ちゃーん」

 

『それでは乗員乗客608人の名簿を読み上げさせていただきます。』

 

その名簿の中に、姉の名前はあった。

 

桜ヶ丘航空334便が、富山県城山市の蛍山に墜落。

乗員乗客608人全員死亡。かつての日本航空123便の520人死亡を抜いて、単独機での世界最悪の航空機事故となった。

 

 

姉のただ1人の親族である俺は、遠く離れた富山まで遺体の身元確認に行かなければならなかった。

学校を休んで、悲しみにくれる乗客の親族の中で、子供は俺1人だった。

 

そして

 

祐樹「ウッ・・・」

 

祐樹「姉のもので間違いありません。」

 

祐樹「お姉ちゃん・・・。」(グス)

 

 

葬儀

 

「可哀想。まだ12歳なのにひとりぼっちなんて。」

 

引き取り手はなく、祐樹は孤児院に預けられることになった。学校も再び転校した。

12歳にして独り身の存在になった。だがまだ希望があった。

 

転校した中学校

 

大輔「斎藤、だったよな。」

 

祐樹「荒川・・・」

 

俺のたった1人の親友、荒川君との再会。

荒川君といると、少しは家族を失った心が癒えた。

 

いつしか荒川君に好意を抱いていた。彼を好きになっていた。男同士なのに・・・。

しかし荒川君には仲の良い女の子がいた。

 

高梨彩花。荒川君とは幼稚園から一緒、俺も幼稚園のころから名前だけは知ってる。

荒川君とは家が隣同士の幼馴染。高梨さんは荒川君に想いを寄せていて、おそらく荒川君も・・・

 

無理だ。自分は絶対その中には入れない。絶対に高梨さんには勝てない。

俺は荒川君と一緒にいたい。だけど荒川君の隣にいるのはいつも高梨さんだった。

 

・・・

大輔「久々に会えてよかった。元気そうで。」

 

祐樹「うん。」

 

祐樹「ねえ、荒川は好きな子いるの?」

 

大輔「好きな子、というか気になる子はいる。」

 

祐樹「高梨さんか」

 

大輔「いや、あいつとは別になんとも思ってないし・・・」

 

祐樹「毎日一緒に登校してるのに? 気になる子がいるとしたらその子以外いるの?」

 

大輔「まあ、好きか嫌いかで言ったら、好きだ。」

 

祐樹「そうか。正直でよかった。」

 

祐樹「実は俺にも好きな子がいるんだ。相手は言えないけど。」

 

大輔「へえ、もしかして俺に恋愛相談。悪いけど俺恋愛には詳しくないんだ。」

 

祐樹「だよな。荒川君に恋愛相談するわけにはいかないしな・・・。」

 

・・・

彼はそう言っていたけど、絶対に高梨さんのことが好きに決まってる。

 

なんで俺じゃダメなんだ。荒川君には恋人はいるのに、男友達はいらないのか。異性の幼馴染はいるのに、同性のはいらないのか。

いつしか俺は高梨さんに嫉妬していた。

そういえば同じく荒川君のことが好きだった葛西圭一君も高梨さんにに嫉妬していたらしい。

 

自分は生まれて初めて、人を憎んだ。

お母さんとお姉ちゃんと俺を捨てたお父さんも、父親を奪っていった浮気相手の女も憎んだことはなかった。

お母さんを直せなかった医師も、事故を起こしてお姉ちゃんの命を奪った桜ヶ丘航空も、もっと憎んでいない。仕方ないことだと思ってた。

しかし俺は高梨彩花という人に嫉妬し、憎んでしまった。この人のせいで、俺は荒川君と一緒に入れない。憎い恋敵だと。

決して人を憎んではいけないと思っていたのに。

 

こうして俺の初めての友達、唯一の親友までも失った。

 

 

「おーい、未亡人が来た。」

 

「中学生で既に独り身だってー、最悪の疫病人だ。」

 

「こっちに来た、こいつと関わると死ぬぞ。逃げろ。」

 

「性格悪いよな。だから家族が死ぬんだよ。」

 

 

人生わずか12年で家族を失った中沢祐樹。

新しい学校でも友達はできず、家族もなく、友達もなく、一人ぼっち。

 

いつしか1人で泣いてることばかりになった。

 

祐樹「お母さん、お姉ちゃん・・・」(グス)

 

祐樹「早く僕をそっちに連れてって・・・」(グスグス)

 

もはや生きてたって何の意味もない。自分の人生は15年で十分だ。早く天国に行った家族に会いたい。

 

・・・

4月、高校生になった俺は毎日普通に、何の事件もなく学校に通っている。

 

本当は学校に行く気もない。なぜかここ数日、廊下とか教室の隅っこで座り込んで、1人で泣いていた。

そんなのみっともないことだと思っていながらも。

 

長く、辛い1日がまた過ぎていく。誰と仲良くすることもなく。

別に友達なんかいらない。どうせまた離れていってしまう。自分が傷つくだけなんだ。

 

今日も、廊下で一人寂しく座っていたときのこと。

 

彩花「どうしたの?なんで泣いてるの?」

 

彩花「わたしでよかったら相談に乗るよ。困ってること、悲しいことがあるなら私が力になってあげるよ。」

 

祐樹「ほっといてくれよ。君に乗ってもらう相談はない。」

 

彩花「わたし、泣いてる子を見ると放っておけないんだ。」

 

祐樹「うるさい。ほっといてくれ。」

 

祐樹「毎日美味いもん食って、幸せ家族に囲まれて、そんな何不自由ない暮らしをしてる奴に俺の気持ちがわかるか。」

 

仕方なく立ち去る。すると俺はまた1人で泣き出し始めた。

 

そういえばこの女子、同じ中学だった生徒の1人なんだよな。

というより、中学だけじゃない。確か幼稚園、小学校も一緒だった。そして俺の親友だった荒川君のいつも隣にいた人。

 

高梨彩花。俺にとって憎むべき恋敵だった相手。

俺は小2から小3にあがるとき母の転勤で転校して、中1の秋、両親も姉もいなくなってしまったことでこの町に戻ってきた。

 

荒川君とは幼稚園から小2までの5年間と、中1の2学期から中3までの2年半、合わせて7年半同じ学校に通っていた。

つまりこの女子ともまた7年半一緒にいるってことか。

最初に同級生になってからは、12年、今年で13年目。

 

そう考えると結構長い時間いるわけだ。幼稚園から小2で転校するまでの5年間同じクラスだったし、最近でも中2のとき同じクラスだった。

だが俺はこの人のことはあまり知らない。小1で1回、中2で1回隣の席になったこともあったのだが、あまりこの人とはいい思い出がない。

 

・・・

とはいえ高梨さんをそこまで恨んでたわけでもない。もちろん荒川君も。

彼女のことは憧れでもあった。いつしか思い直したときがあった。

 

高梨さんのことを見てることに荒川君に気づかれた。

 

大輔「中沢、ちょっと顔貸せ。」

 

祐樹「う・・・」

 

体育倉庫

 

大輔「最近俺のことをよく見てるみたいだし、さらに彩花のこともよく見てるみたいだな。」

 

大輔「お前が誰が好きなのか、なんとなくわかった。」

 

大輔「お前、彩花のことが好きなんだな。」

 

祐樹「え?」

 

大輔「それで彩花と仲がいい俺のことを憎んでいるんだろう。」

 

大輔「まあ、確かに俺もあいつのことが気になる存在だ。妹とか、ただの幼馴染だと思ってたけど、最近異性として気になるようになってきた。」

 

大輔「だけど彩花に近づくなとは言わないさ。彩花もお前のこと好きかもしれないしな。」

 

大輔「だったら俺たちは良きライバルでいようぜ。」

 

大輔「お前が俺に嫉妬して憎んでいるなら仕方ないし、それをやめろという権利は俺にはない。」

 

大輔「でも図々しいかもしれないけど、俺と彩花が付き合うようになったら、お前に応援してほしいな、って思ったり。」

 

どうやら俺が高梨さんのことが好きなんだと誤解してるようだけど、荒川君はなんていい人だ。

自分が恨まれてると思っても相手を気遣う。

そうだ、俺が間違っていた。人を恨んじゃいけないんだ。

 

祐樹「・・・」

 

祐樹「荒川君、本当にいい奴だな。俺が荒川君を憎むわけないよ。」

 

大輔「それはよかった。じゃあ俺たちはどっちが選ばれても憎み合いなし、良きライバルでいよう。」

 

俺はついに言ってしまった。

 

祐樹「俺が好きなのは高梨さんじゃない。」

 

大輔「え?彩花じゃないんなら誰なんだ?」

 

大輔「・・・まさか俺が他に片思いしてる女子がいることを知っているのか?それでお前もそいつが好きと。」

 

大輔「なんてことだ。クラスの誰にも気づかれてないと思ってたのに・・・」

 

祐樹「俺が好きなのは・・・荒川君なんだ。」

 

大輔「え?」

 

祐樹「俺は荒川君が好きだ。」

 

大輔「冗談だろ。俺たち男同士だぞ。」

 

祐樹「男でもいい。俺、ずっと荒川君のことが好きだった。」

 

祐樹「幼稚園から小学校2年生のころ、一番の友達といえる存在だったし。」

 

祐樹「転校してきて再会して、そしたら荒川君がこんなにかっこよくなってて。」

 

祐樹「俺、昔から男子を好きになっちゃう性質だったんだよね。」

 

祐樹「それで荒川君と仲がいい高梨さんに嫉妬して、憎んでたって言っても嘘ではない。」

 

大輔「そうだったのか。正直、男同士だから無理ってことはないけど。」

 

大輔「少し考えたい」

 

・・・

でも高梨さんは素敵な人だ。可愛くて、優しくて、クラスで男子にも女子にも人気があった。

荒川君にはもったいないくらいの子だ。高梨さんに負けるんなら仕方ない。

 

高梨さんはこう持ちかけてきた。

 

・・・

彩花「ねえ、中沢君。大輔君のことが好きって本当?」

 

祐樹「本当」

 

彩花「そうか。つまり私たちはライバルってことだね。私だけじゃなく、葛西君とも。」

 

祐樹「葛西?」

 

彩花「そう。だからあなたにこれを渡す。」

 

祐樹「これは、果たし状?」

 

彩花「そう、中沢君に決闘を申し込む。3人で決闘ってことにしようと思って。」

 

祐樹「わかった。俺も高梨さんが荒川君のことが好きなのをわかってたんだから、そのくらいの覚悟はできてた。」

 

祐樹「その決闘を受けよう。」

 

・・・

彩花「わたしは大輔君のことが好きなの。幼稚園のころは大輔君のお嫁さんになるって約束したくらいだし。大輔君はそのこともう忘れてそうだけど。」

 

彩花「相手が男の子だろうと、大輔君だけは誰にも渡さない。」

 

圭一「そうだったのか。幼いころの可愛い婚約だな。」

 

圭一「高梨さんは荒川君の幼馴染だからね。本来先に荒川君に告白する権利は高梨さんにあるだろう。」

 

圭一「でも僕も荒川君が好きだ。たとえ荒川君の幼馴染でも、絶対に渡したくない。」

 

祐樹「幼馴染って1人忘れてないか。俺も荒川君とは幼稚園からの仲で、たった1人の大切な親友。」

 

祐樹「負けたくはない。」

 

 

彩花「大輔君はわたしの物!」

 

祐樹「僕のだ!」

 

圭一「いや、僕のだ!」

 

決闘は葛西君が勝利したが、恋愛では葛西君も、俺も、負けた。

 

大輔「こないだの答えなんだけど、俺は他に好きな人がいる。だからごめん。」

 

祐樹「そうか。」

 

大輔「でもありがとう。俺のこと好きでいてくれて。俺もお前のこと、友達として好きだ。」

 

大輔「友達以上恋人未満の関係でいたいと思う。」

 

祐樹「それでいい。」

 

祐樹「高梨さんのこと、幸せにするんだぞ。」

 

・・・

結局、この恋に俺は負けた。でもこれでいいんだ。そりゃ悔しいけど、高梨さんじゃ仕方ない。

 

高梨さんは俺にとっても憧れの存在だったから。

高梨さんのことは誰よりも憎んだし、この人がいなければ自分が荒川君と一緒になれるのに、って思った。

でも荒川君に相応しいのは、彼女しかいない。

 

きっと高梨さんと仲がいい荒川君が、自分の好きな、憧れの相手だったんだ。

俺はこれからは、荒川君と高梨さんの恋を応援していこうと思った。

 

中2の3学期、2月14日、バレンタインデーの日。

この日、高梨さんは荒川君に告白する。

 

俺は荒川君のような男しか好きになったことがない。だからバレンタインデーは、俺にとっては関係ない日。

でも今日は違う。

 

祐樹「今日、荒川に告白するんだってな。」

 

彩花「うん。でもフラれるのが怖い。」

 

祐樹「大丈夫だよ。高梨さんは誰が見てもとても可愛い、必ず上手くいく。」

 

祐樹「俺は高梨さんだから荒川のことをあきらめたんだ。だからたかなしさんと荒川君が幸せになってもらわなきゃ俺も困る。」

 

彩花「ありがとう。」

 

 

その日の放課後、俺は体育倉庫の近くの影にいた。高梨さんの告白を見届けようと。

もちろんそのことに気づかれてはいけない。今は高梨さんと荒川君の2人きり。

 

大輔「彩花、お待たせ」

 

大輔「何の用だ? ってなんとなく想像つくけど」

 

彩花「あの、これわたしの本命チョコ・・・」

 

大輔「本命チョコ?」

 

彩花「わたし、大輔君のことが好き。」

 

彩花「幼馴染とか、兄弟ではなく、もっと別の意味で・・・」

 

彩花「男の子として、あなたのことが好きです。」

 

そのあとの荒川君の発言は聞き取れなかったが・・・

口の動きと雰囲気から察するに、多分・・・

 

高梨さんは走って行ってしまった。そして離れたところで。

 

唯「あやちゃん」

 

彩花「唯ちゃん」

 

高梨さんの眼に涙があった。そしてそっと眼を閉じると、大粒の涙が溢れてきた。

 

彩花「う・・・うえーん」

 

あんなに強かった高梨さんが声を上げて泣いているところを、俺は初めてみた。

 

唯「よしよし。大丈夫だよ。あやちゃんをフったなんて荒川君もったいないことしたね。」

 

唯「大丈夫だよ。私がいる。」

 

・・・

俺は荒川君に歩み寄った

 

祐樹「なあ、荒川」

 

大輔「なんだ、中沢か」

 

祐樹「なんで高梨さんのことフッたんだ?」

 

大輔「俺は福原さんのことが好きだ」

 

祐樹「何でだよ。高梨さん、あんなに素敵な人なのに。」

 

大輔「だよな。俺にとってもあいつは可愛いし、優しいし、パーフェクトな存在だった。」

 

大輔「幼馴染じゃなかったら、彩花のこと好きになってた。」

 

大輔「でも幼馴染だから。恋人としては見れない。ただそれだけ。」

 

祐樹「・・・」

 

祐樹「なんだよその理由。もっと納得いく理由言えよ。」

 

大輔「それ以外に、なんとなくかな。」

 

祐樹「じゃあ俺も幼馴染だからダメってことかよ。」

 

大輔「否定するほど間違ってはいないね。まあそれ以上に、男同士は無理だ。」

 

祐樹「なんてこと・・・」

 

ウェスターマーク効果という言葉がある。

幼少期から同一の生活環境で育った相手に対しては、長じてから性的興味を持つ事は少なくなる、とする仮説的な心理現象である。(wikipedia抜粋)

つまり、幼馴染は好きになれない、ってこと。

 

全員が全員とは言わないが、荒川君は間違いなくそうだ。ウェスターマーク効果で、高梨さんのことは恋人としては見れない。

 

 

こうして父を失い、母を失い、姉を失い、家族を失い、友達を失い、恋を失い、

そして最後の希望だった、荒川君と高梨さんが幸せになるという願いも果たせなかった。

 

今度こそ全てを失った。俺は、憧れの人の恋を応援することすらできなかった。

 

中3の夏

 

不良「待て中沢」

 

祐樹「やだー」

 

俺、中沢祐樹は不幸に愛されいるとしか思えない人生を送っている。

今、俺は不良に追われている。

いじめにあっている高梨彩花さんをちょっと助けてやろうかな、と思ったが運の尽き

 

祐樹「ちょっと、高梨さん困ってるじゃないですか」

 

不良「俺たちに歯向かいとはいい度胸だ。やっちまえ!」

 

それ以来、俺も不良集団に絡まれるようになった。

 

中3の夏、この日水泳の授業があった。

魔術師を自称する不良がしでかしたことは、あまりにも恐ろしいことだった。

 

不良「お前にある任務を頼む」

 

不良「これだ。」

 

そいつの手にはピンクのりボン付きの可愛らしいデザインのブラジャーと、それぞれ同じ柄のパンティーだった。

 

不良「ちなみに高梨彩花さんのだ。」

 

不良「水泳の授業中、うっかり持ってきてしまったのだ。」

 

祐樹「うっかりって、お前ら魔術師だから絶対遠隔操作でも使ったんだろ。」

 

不良「これを返してきてほしい」

 

祐樹「なんで俺なんですか」

 

不良「お前ならできる。」

 

不良「高梨さんは今、ノーパンノーブラだ。」

 

祐樹「うわー」

 

祐樹「無理やり押し付けられて受け取ってしまった。なんでこんなことしなきゃいけないんだよ・・・」

 

・・・

唯「あやちゃん下着がなくなったって本当?」

 

彩花「うん。ブラとパンツ両方。」

 

唯「じゃあ、あやちゃんは今上下ともに下着をつけていないってこと?。」

 

彩花「下は、さっきから体操着を履いてる。」

 

唯「ああ、マリー&パンツァー様の名言にもあるからね。」

 

唯「パンツがないならブルマを履けばいいじゃない。」

 

唯「まあ今の時代ブルマもないんだけどね。」

 

彩花「何その名言」

 

唯「今日のあやちゃんはツッコミ弱いな。」

 

彩花「そういうことなんだけど、上は今のところつけてない。」

 

彩花「だから今、乳首に絆創膏貼ってるんだけど。」

 

唯「へえ・・・」

 

唯、彩花の胸を触る。柔らかかった。

 

唯「あやちゃん、本当にノーブラだ。」

 

彩花「うわ、さわらないでよ。」

 

唯「いいじゃない、女の子同士なんだし。」

 

唯「まああやちゃんならノーブラでも胸揺れないんじゃ・・・」

 

彩花「それわたしにはブラは必要ないって言いたそうだね」

 

彩花「わたしだって胸揺れるんだから。絆創膏貼ったくらいじゃ・・・」

 

彩花(いや本当にノーブラでも揺れない・・・)

 

唯「そういえば盗まれた下着ってあのピンク色のかわいい奴かな?」

 

彩花「うん」

 

彩花「あれお気に入りだったのに。初めてワイヤーのブラ買ってもらって嬉しかったのにな・・・」

 

彩花「わたし、ワイヤーのホック付きのブラはあれしか持ってないのにな。」

 

すまん。この下着をそんなに大切にしてたなんて。

なんとしても返さないと。

 

 

さらに翌日、今度は隣のクラスで水泳の授業があり、そのときもまた不良魔術師は女子の誰かの下着を盗んだらしい。

 

不良「今日はこれだ」

 

黄色と白のブラジャーと、同じ柄のパンティー。

 

不良「昨日とは違ってずいぶん大きいサイズだろ?ちなみに小原さんのだ」

 

どうやらEカップのようだ。昨日の高梨さんはAAカップだったから、かなり差がある。

 

不良「昨日のまだ返してないのか?ならばまとめて返してこい」

 

祐樹「・・・」

 

祐樹「うわー、今日も受け取っちゃった・・・」

 

祐樹「俺の人生終わった・・・」

 

 

・・・

唯「今日はあたしの下着がなくなってたの。ブラとパンツ両方。」

 

唯「あやちゃんと同様に下は体操着を履いてるけど、上はなし・・・」

 

彩花「え?じゃあ唯ちゃんノーブラなの?」

 

唯「うん」

 

彩花、唯の胸を触る。

 

彩花「唯ちゃん、本当にノーブラだ。」

 

唯ちゃんの大きなおっぱいが揺れていた。

 

彩花「う・・・、鼻血出そう・・・」

 

唯「興奮してる場合じゃないでしょ」

 

唯「あやちゃんはまだいいわよ。あたしはノーブラだと胸が揺れて落ち着かない。」

 

唯「支えるものがなくなったから乳は垂れるし。」

 

唯「あやちゃんはいいよね・・・。小さいから可愛いブラもいっぱいもってるだろうし。」

 

唯「そもそもブラ要らなそうだし。」

 

彩花「要らないって何よ!胸が小さくて悪かったわね!」

 

唯「胸が大きいと可愛いブラがないのよ。値段も高いし。」

 

唯「だからあれ可愛いから、お気に入りだったのに。」

 

彩花「わたしだって、Aカップより小さいサイズはほとんど売ってないから、可愛いブラはそんなに持ってないよ。」

 

彩花「別にいいよ。わたし、おっぱい小さいし、ブラ着けてるの女の子の見栄だから。」

 

彩花「せっかく女の子に生まれたから可愛いブラ着けたいだけだから・・・。本当は要らなくても・・・。」

 

2人ともすまん。なんとしても返さないと。

手元には美少女2人のブラとパンツがセットである。これは気が狂いそうだ・・・。

 

結局放課後、みんなが帰った後に小原さん、高梨さんの机にそれぞれ置いた。

 

翌日の教室

 

女子「ねえ、彩花ちゃんの下着が机の上に置いてあって、男子が大騒ぎよ。」

 

彩花「・・・え?」

 

彩花「よかった。ちゃんと戻ってきた・・・」

 

彩花「でも大勢の男子にわたしの下着見られた・・・。不幸だ・・・。」

 

隣のクラス

 

彩花「よかった。唯ちゃんのも無事戻ってる。」

 

彩花「こんな大きいブラジャー初めて見た。いつも唯ちゃんのおっぱいを包んでいるブラ・・・」

 

彩花「うわ、わたしなんか興奮してきた。ダメだな、これじゃ変態じゃない。」

 

 

どうやら置いたのは俺であることは気づかれてないようだが、2人を悲しませてしまった罪悪感が拭えず、2人に本当のことを伝えることに。

 

祐樹「高梨さんと小原さんの下着、俺が置いたんだ。」

 

祐樹「でも俺が盗んだんじゃない。あの不良集団が盗んだのを、俺に押し付けられただけなんだ。それだけは信じてくれ。」

 

祐樹「本当にごめんなさい。」

 

彩花「そうだったんだ。」

 

彩花「いいよ。中沢君はあんなことする人じゃないことは知ってるから、信じる。」

 

祐樹「本当に?」

 

彩花「うん。といってもわたしは中沢君のことよく知らないけど、大輔君からいろいろ聞いてるからね。中沢君は女の子の下着を盗むような人じゃないよ。」

 

唯「あたしも信じる。」

 

祐樹「・・・ありがとう。」

 

彩花「でも盗んだ犯人は絶対に許さない。」

 

彩花「あれお気に入りだったんだから・・・。なくなったときすごく悲しかったんだから・・・。」

 

高梨さんが少し涙目になっていた。俺が泣かしたのかもしれない。

もちろん悪いのは不良集団だが、俺も共犯者だ。俺は女の子を泣かした。

 

・・・

中3の別の日にはこんな日もあった。

 

放課後、俺が忘れ物をとりに教室に戻っていると。ドアを開けると・・・

高梨さんが着替えていた。水色のスポブラとパンツの、下着姿をばっちり見てしまった。

 

祐樹「うわっ、ごめん」

 

彩花「あなた、逃げる気?」

 

祐樹「だって、これ以上女子の着替えを見る訳にはいかないし。」

 

彩花「わたしの下着姿を見ちゃったんだから、責任はとってもらうよ。」

 

祐樹「責任?」

 

彩花「中沢君も脱いで。それでおあいこってことにしよう。このことは誰にも言わないでね。」

 

祐樹「・・・わかった。」

 

高梨さんが変に穏便な人でよかった。俺がパンツ姿になったことで、高梨さんはこのことを許してくれた

 

こういうことがあったこともあり、俺は高梨さんには頭が上がらなくなった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。