・・・
南野君が帰っていった直後・・・
彩花「あ、達也君の部屋から何か不穏な空気が・・・」
彩花「達也君、起きて!大変」
達也「あ、彩花お姉ちゃん」
彩花「達也君大丈夫?」
達也「体だるい。熱っぽい。」
彩花「熱もあるんだ。」
間違いない。これは怪異。
唯ちゃんに相談するしかない。
彩花「もしもし、唯ちゃん。夜遅く申し訳ないけど、弟が妖怪におかされてるみたいなの。」
唯『わかった。一刻を争う事態だからすぐ来て。』
達也「不覚だった。まさかこの僕が敵が2人いることを見落としていたなんて。」
彩花「そりゃあんたがまだまだだからでしょ。」
達也「まだまだでも仕方ないだろ。僕に流れる正義の血が、悪を許さないんだよ。」
彩花「私から見たらあんたは正義の味方気取りで暴れたいだけだよ。いわば偽善者。」
達也「そりゃ彩花お姉ちゃんから見ればごっこ遊びなんだろうけどさ。」
達也「斎藤翔平って奴、魔術で何人も被害者を出してるっていうのに、自業自得だと言うんだぞ。悪意を煽って、不安を煽って、そこに付け込んで魔術で人を苦しめる。」
達也「お姉ちゃんならそんなの許せるのか。あんな奴、野放しにしておけるのか。」
彩花「あんたにどうこうできる問題じゃない。わたしに任せてよ。」
彩花「唯ちゃん、夜遅くに悪いね。また怪異のことで相談したいだけど。」
唯「いいよ。あら、あやちゃんはまた別の男の子を連れて来てるのね。あやちゃんは会うたびにいろいろな男の子を連れてきてるのね。しかもこの子年下だよね?」
彩花「この子はわたしの弟です。唯ちゃんも前にも会ったことあるでしょ?」
唯「あやちゃん、弟も恋愛対象にするんだ。」
彩花「そんなわけないでしょ。さすがに近親相姦はしないよ。」
唯「わかってる。冗談よ。」
達也「高梨達也、中2です。」
彩花「達也君は今日2人の魔術師に怪異をかけられたそうなんだ」
唯「そう。」
唯「今達也君がおかされているのは、狼の妖怪、モーニングメアね。」
彩花「モーニングメア? ナイトメアのもじりですか。」
唯「正式名称よ。略してモーメア。」
彩花「それだとNTM48なんて妖怪もいそうですね。」
唯「この妖怪、私たちが戦闘で追い払うしかないの。かなちゃんも呼んで手伝ってもらいましょう。」
彩花「わかった。」
こうして香苗ちゃんも入ってのモーニングメアとの戦闘。
香苗「達也君、大丈夫だよ。ボクが助けてあげる。」
こうして私と唯ちゃんと香苗ちゃんでモーニングメアを退治した。
・・・
翌日
家の近くからすごい音がして目が覚めた。
隣の家、大輔君の実家の前で倒れていたのは達也だった。
彩花「達也君・・・」
達也「さっき斎藤翔平がこの家に入っていくのを見たから、昨日の仕返ししてやろうと思ったら」
彩花「また無茶して・・・」
彩花「さっき、魔術師に関するメモのようなもの見つけたの。これだけの情報でここまでたどりつけるなんて、達也君とあやちゃんは探偵になれるわね。」
達也「僕、悔しいんだよ。このまま負けたまま終わりたくない。今日も誰かが被害に遭う。その前に、僕の手で斎藤翔平と決着をつける。」
彩花「勝てるの? 無能力者のあなたじゃ、また倒されるだけでしょ?」
達也「男なら、負けるとわかってる勝負にも行かなきゃいけないときがある。」
彩花「かっこいいこと言ってても無駄だよ。結局はあなたは、勝つ気がないんだよ。悪者と戦って、ヒーロー気分になりたいだけ。」
達也「勝つ気がないわけないだろ。本気で勝ちに行くって。」
彩花「誰かの言われるまま動いでるだけの一体どこに自分の正義感があるって言うの?」
彩花「わたしはもっと悔しいよ。わたしの大切な弟をいじめた男を、わたしは絶対に許さない。斎藤翔平とは、わたしが戦う。それがわたしの正義。」
彩花「・・・勘違いしないでよね。別にあんたのために戦うわけじゃないんだから。わたしはあいつらを倒したいんだ。」
達也「だったら僕にも戦わせてよ。お姉ちゃんに守られるなんて、情けないよ。男が女の子に守られるなんて、情けなくてできないよ。」
彩花「あなたはわたしの弟でしょ。姉なら弟を守るもんだよ。まあそこまで言うなら、手伝わせてあげないこともないけど。」
彩花「あなたはこれから強くなれる。本物の正義の見方に。だからわたしの姉としての、魔法少女としての勇士を見ておいてね。」
彩花「今回はお姉ちゃんのかっこいいところを見せてあげる。達也君も手伝ってくれるかな?」
孤児院の前
ここで祐樹君に相談した
彩花「昨日、わたしの弟が斎藤翔平の被害に遭った。大輔君を仲間にして。」
祐樹「荒川君がその男とグルだったのか?」
彩花「うん。あの2人に魔術をかけられてモーニングメアって怪異に襲われた。それはわたしと唯ちゃんと香苗ちゃんが退治したけど。」
祐樹「そうなんだ。それは大変だったな。お大事に。」
彩花「ねえ祐樹君、斎藤翔平の居場所知ってる?」
祐樹「知らないけど、連絡先なら知ってる。お母さんが養育費の支払いをうけるために離婚してからも何度か会ってたからな。」
彩花「大輔君の連絡先ならもちろん知ってるんだけど、わからない。」
祐樹「なんで斎藤翔平の居場所を探してるんだ?まさかまどか、あいつらに会いに行く気なのか?」
彩花「うん。わたしは魔法少女なんだから、放っておけないよ。弟が被害にあったんだから。」
祐樹「弟さんが被害にあったのか?」
彩花「うん。モーニングメアって妖怪を押し付けられて。」
祐樹「弟が被害にあっちゃ仕方ないな。」
彩花「それだけじゃない。あなたも絡んでるんだよ。あなたのお母さんも。わたしの友達と、私の命の恩人を見捨てた男に、私は復讐しに行きたい。」
祐樹「気持ちはありがたいけど、そんなこと別に俺は望んでないよ。俺はもうお父さんを恨んでなんかいないって言ったら嘘になるけど。」
彩花「達也君が被害に遭った子供のために頑張って戦いに行って、やられたんだよ。今度は姉の私が戦いに行く番だと思う。」
祐樹「達也君も正義の味方なんだな。」
彩花「本人はそのつもりでいるんだろうけど、あの子はまだ弱い。」
彩花「そしてわたしの幼馴染であり、初恋の相手である大輔君にもこんなことやめさせないといけないと思ってる。フラれた恨みってわけではないけど。」
祐樹「君がそこまで言うなら俺も行くぞ。俺のために彩花ちゃんが1人で斎藤氏と荒川君しようなんて、そんなの俺が許さない。」
祐樹「行くなら一緒に行こう。俺も実の父親と話しあわなければならないことがある。」
彩花「わかった。一緒に行こう。」
祐樹「あの日言った、お互いに今までの人生で一番辛かった思い出の相手だからな。」
祐樹「俺は今回斎藤翔平との対決で、自分の過去と決別するんだ。今までの人生で一番辛かった思い出と決別するんだ。」
彩花「わたしは・・・、ちゃんと決別できるのかな。」
夕方、とある公園
斎藤「久しぶりだな、祐樹。大きくなったものだ。」
斎藤「隣りにいるお前はこないだ道案内してくれた娘か。弟の敵を取りに来たんだな。今時珍しい立派な姉だな。」というよりお前が荒川に中2のバレンタインの日に手作りチョコを贈って告白してフラれたっていう幼馴染の少女か。」
彩花「あなたが斎藤翔平、祐樹君の実の父親ね。よくもわたしの弟に酷いことをしたわね。あんたのことは絶対に許さないんだから。」
祐樹「自分の元妻と実の娘が亡くなったっていうのに葬式にも来なかった上にみじんも悲しい思いをしてないんだな。俺がどんだけ辛い思いをしたかもわかってないんだな」
斎藤「そりゃ俺には新しい妻と子供がいたからな。今はいろいろあって単身赴任中だけど」
「かつて父さんに捨てられ、その後母さんと姉ちゃんも死んで、独りぼっちになって辛い思いをしたけど。俺は今日お前を倒して自分の辛い過去と決別するんだ。」
大輔「中沢、すまんな。お前を捨てた憎き父親と俺が手を組んでしまって。だが今は俺の面倒見てくれてるから、一緒につるんでるんだ。今は一人ぼっちで孤児院にいるんだっけr?可哀想に。」
彩花「大輔君とも、こんな形で会いたくなかったよ。」
大輔「俺も会いたくなかったな。お前ら2人とは」
彩花「わたしはずっと大輔君に恋をしてた。幼いころから。でも大輔君は気づいてはくれなかった。思い切って勇気を出して告白した時には、既に大輔君には別の女の子のことを好きになってた。」
彩花「バレンタインデーに告白してフラれて、その日の夜はずっと泣いて辛い思いをしたけど。わたしも今日あなたを倒して自分の辛い過去と決別するの。」
大輔「そうか」
彩花「魔法少女のわたしが相手になったからにはただではすまないよ。こないだの決闘で祐樹君と圭一君がわたしにやられたのを見たでしょ?」
大輔「俺だって今は魔術師の能力がある。負けるわけがない。」
彩花「覚悟しなさい!」
そうしてわたしは大輔君に襲い掛かる。祐樹君は斎藤にこぶしを振り上げる
ドスン
祐樹君は斎藤に殴られて倒れこむ。
わたしも大輔君の魔術によってやられる。
2人はもう一度襲い掛かるがまたあっさりと跳ね返される。
斎藤「お前、全然強くなってないな。」
大輔「お前は俺に弟をいじめられているのに全然大したことないな。もっと恨みに満ちた攻撃をしないのか?」
彩花「いや、これからだー」
彩花「うわ!」
またしても跳ね返される
斎藤「お前は俺に何の攻撃もできないのか?」
達也「彩花お姉ちゃん、何やってるんだろう?こんな奴お姉ちゃんなら倒せない相手でもないのに。祐樹さんも変。」
彩花「そうだよ。わたしはあんたを攻撃することなんでできないよ。」
大輔「俺のこと、今でも好きなんだもんな。それはこないだの決闘で中沢と葛西に示したことだしな。」
彩花「フラれたって、忘れることはできない。初恋だったんだもん。ずっと片思いしてた幼馴染に攻撃なんてできないよ。もう二度と大輔君以外の男の子を好きになることなんてないと思う。」
そう言ってわたしは泣き出し始める。
タツヤ「お姉ちゃん・・・」
バレンタインデーの日、あんなに泣いたお姉ちゃんを僕は初めて見た。
泣いてる女の子を放っておけない僕は、優しくお姉ちゃんの隣に寄り添った夜。
今のお姉ちゃんはそのときと同じくらい悲しそうだ。
祐樹「俺も一度捨てられたとはいえ、母さんと姉ちゃんを捨てて俺が一人ぼっちになる原因を作った奴だとはいえ、実の父親を殴ることなんてできないのかもな。」
祐樹「そして今は俺と血のつながった唯一の身内だし。できればここは話し合いで解決ってことにしたいって、考えてしまった俺がいた。」
斎藤「そうか。お前ら俺達を攻撃できないのか。」
斎藤「じゃあこっちからお前らを・・・、と思ったが、俺たちにお前らを攻撃する理由はもうないな。」
斎藤「喧嘩はやめだ。祐樹の言った通り話し合いで解決しよう。」
彩花「そう。だったらもう子供に魔術をかけるのはやめなさいよ。」
斎藤「それはどうだろうな。結局お前は俺にそんな命令する資格はないんだぜ。」
彩花「確かにわたしはあんたに勝てなかった以上、そんな権利ないよね。」
斎藤「まあ高梨よ、弟のことは心配することはない。あの程度の魔術なら3~4日くらいで治る。」
祐樹「達也君の怪異はもうわたしと友達の魔法少女で治したよ。」
斎藤「それから祐樹、お前とお母さんとお姉ちゃんを捨てて家を出て行ったことは正式に謝罪しよう。これからは養育費を払ってやってもいい。悪かったな。実にすまない。悔いるばかりだ。」
祐樹「そんな言葉を信じられると思う?俺には父さんが反省してるようには見えない。今更反省してくれたって、もう俺の家族は戻ってこない。お母さんやお姉ちゃんは帰ってこない。養育費だって払わなくっていいよ。」
斎藤「なんだ。そうか。それは助かった。お前に金を払うために新たな魔術を働かなければならないところだった。」
斎藤「だがお前に金を払うなら、代わりに協力してもらいたいことがある。」
斎藤「お母さんがドナーになって命を救ったっていう白血病の少女。彼女の両親から感謝されたそうだが、ならばその少女、あるいはその少女の家族から100億は取れるはずだ。その少女はお前と同い年らしいな。お前もその少女を探してくれないか。俺はそいつに会って絶対金を取る。」
祐樹「その女の子なら知ってるよ。俺の友達だ。」
斎藤「何?知っているのか?誰だ?」
祐樹「今父さんの目の前にいる子だ。この人だよ。お母さんが命を救った女の子は、高梨彩花だ。」
斎藤「何?お前だったのか!だったら・・・」
彩花「わたしの命を救ってくれたのは祐樹君のお母さんであって、あんたではない。あんたに払うお金なんてない!」
斎藤「俺だってボランティア活動してたことあるんだぜ。今はお呼びがかからなくなったけど。」
祐樹「俺は姉ちゃんが死んで一人ぼっちになって、3年近くの間毎日寂しくて泣きながら過ごしてたけど、今の俺はもう寂しくないぞ。」
祐樹「彩花ちゃんに、南野君に、小原さんに、他にも友達がいるからな。」
大輔「なあ、お前、やっぱり彩花のこと好きなのか?」
祐樹「別に。たとえ俺が彩花ちゃんのことを好きだったとしても、彩花ちゃんはずっと荒川君が好きだ。だから俺は友達以上の関係にはなれない。」
祐樹「まあ荒川君にはもったいないくらいのいい人なのに、この人を選ばずに出会って数ヶ月の転校生を選んだ君の判断は今でも理解できないけどね。」
祐樹「俺は今でも荒川君のことが好きだよ。ホモってわけではないけど、ずっと荒川君にあこがれてた。でも高梨さんだから、俺は荒川君のことをあきらめたんだ。」
祐樹「なのに高梨さんを選ばないなんて、そんなの俺の立場がないよ。」
大輔「お前の立場なんかどうでもいい。」
彩花「斎藤さんはともかく、大輔君。あなたは一体なんでこんなことをしてるの?」
彩花「あなた野球はどうしたの?家を出て、県外の学校に野球留学までしたんでしょ? なのになんでこんなことやってるの?」
彩花「大輔君はさっさとこんな乱暴な遊びやめて、野球に専念したらどうなの? これはあなたのためなんだから。大輔君だって怪しい魔術師についていって、こんなことしてて楽しくないでしょ?」
大輔「・・・夏の予選で、厄介な怪我をしちゃったんだ。治らなくはないんだが、もう新チームも始まってるし、このままベンチからも外されそうなんだ。」
彩花「そう。それで野球をやめて不良になったんだ。全く情けない。まだ2年もチャンスあるんだから、あきらめちゃダメでしょ。」
大輔「俺にここから這い上がれる根性があると思う?」
彩花「あなたは野球だけならいつも一生懸命だったじゃない。葛西君っていう自分よりダメな友達ができたときも、2人でみんなを見返すんだって言ってたでしょ。」
彩花「あのときのことを思い出せばできる。」
大輔「わかった。もうこんな真似はやめるよ。そろそろ斎藤さんに捨てられそうになってたし。」
彩花「そうして。そうすれば今回のことは水に流すよ。」
斎藤「祐樹、高梨、俺はこれ以上の魔術は広めない、それでいいんだよな?俺もそろそろ飽きてきたからな。」
祐樹「そうしてくれ。」
斎藤「心配するな、祐樹。お前にもその女と幸せになれるチャンスはあるさ。じゃあ、さらばだ。」
大輔「さらばだ。」
彩花「祐樹君は過去と決別できたけど、わたしはいつまでも大輔君を忘れられないんだな。」
彩花「達也君、ごめんね。情けないお姉ちゃんで。達也君を襲った魔術師だっていうのに、相手が初恋の人だからって何もできなかった。」
達也「かっこよかったよ。お姉ちゃんも、中沢さんも。」
彩花「そう。ありがとう。」
祐樹「俺も情けないよな。1年半前、俺は彩花ちゃんに何もしてあげられなかった。俺は高梨さんと荒川君の恋を応援すると言ったのに、2人を結ばせることができなかった。」
祐樹「俺は高梨さんを幸せにできなかったんだ。」
彩花「そんなの祐樹君のせいじゃないよ。」
祐樹「悪いな。君はそう言ってくれてるのに、俺はずっと自分が荒川君と結ばれないのは高梨さんのせいだと思ってたんだぜ。今となっては高梨さんに八つ当たりをしてただけの自分が恥ずかしくなってくる。」
彩花「わたし、人に恨まれることには慣れてるから。」
彩花「わたしはもう人を好きになることはないかもしれないけど、いつか祐樹君に好きな人ができたら、協力させてね。」
祐樹「わかった。そうさせてもらう。」
彩花「南野君とは仲良くなれた?」
祐樹「毎日一緒に弁当を食べるくらいの友人にはなったな。でも君が思っているような関係じゃないよ。」
彩花「だよね。まあそれでもわたしは幸せだな。祐樹君にいい友達ができてよかった。」
翌日、達也君は
達也「もっと強くなって、今度こそ僕が魔術師を退治する。そのために出動だ。」
彩花「ほどほどにしときなよ」
達也「僕は今日も出動する。僕の戦いはこれからだ!」