・・・
中学3年生のある日の夜、彩花と、唯ちゃんと香苗ちゃんの魔法少女3人で、この日はナイトメア退治を行った。
ナイトメアは人が夜寝るときに見る夢、悪夢に取り付く魔物だ。
唯「今日のナイトメア退治の場所はここよ」
彩花「どこなの?」
香苗「どうやら孤児院だね」
唯「もともと病院とか、施設のような弱った人がいるところにナイトメアが出やすいのよ。」
唯「あたしはナイトメアの専門じゃないから、あやちゃん頑張って。」
彩花「はい。」
私は武器の弓矢を放った。
今日も無事ナイトメア退治のミッションを終えた。
私はそれから1年間、この孤児院周辺で何度もナイトメア退治を行った。
あるときは同じナイトメア専門の魔法少女の由紀ちゃんと
由紀「ここはどこ?」
彩花「孤児院。ナイトメアが発生しやすい施設の1つ。」
彩花「じゃあ行くよ。」
この場所では色んな人のナイトメアが発生していたけど、たいてい2~3人のナイトメアが複数回にわたって発生していたのだ。
何度も退治していると誰のものかもわかってしまう。
彩花「はあ、終わった。」
由紀「お疲れ様。」
こうして何日かに1度、1日15分ほどの戦闘を行っている。
・・・
高校1年生の4月
唯「ねえ、あやちゃん、荒川君がいなくなっちゃったけど寂しくない?」
彩花「大丈夫だよ。お別れの時は泣いちゃったけど、いつまでも落ち込んではいられない。」
彩花「だけど大輔君に告白してフラれたときはやっぱり1ヶ月くらい落ち込んでたな。10年以上も片思いしてた幼馴染にフラれたのはショックだった。」
彩花「あれ以来、恋をするのが怖くなっちゃった。もう傷つきたくないと思って。」
彩花「わたし、もう人を好きになることないことないかもしれない。」
唯「そう思うのね。」
彩花「だから今は人の恋を見守るのが好き。2人が幸せなのを見ると私も幸せって感じで。主に男の子同士の。」
彩花「わたしみたいなのを腐女子っていうみたいだけど。」
唯「それは昔からそうだったんじゃない。」
彩花「失恋から立ち直れたのもBL漫画を見てなんだよね。」
彩花「わたしは一生独身だったとしても、二次元だけで生きていけると思ってるから、寂しくはないんだ。」
唯「そこまで思えるならある意味すごいわね。」
とはいえわたしは病弱だからそう長く生きれる気がしない。
小学校4年生のときに白血病になった。ほとんど絶望的だったのが、奇跡的に
・・・
4月中旬、この日は雨だったのと、いつもより遅い出発だったので早歩きで登校していたときのこと。
曲がり角から女子生徒が食パンをくわえながら走ってくるのが見えた。
俺は寸前のところで衝突を回避した。
彩花「おっとっと」
コケッ
ぶつからなかったのに、その子は転んだ。しかもスカートがめくれあがって。
祐樹「もう、せっかく衝突回避したのに・・・」
彩花「パンツ見たんでしょ?」
祐樹「・・・見てない」
彩花「絶対見た。不幸だ・・・」
祐樹「どこの世界に、雨の日に食パンをくわえながら走ってくるヒロインがいる。」
それは普通晴れの日の出会いだろ。雨の日じゃ危なっかしい。
彩花「まあベタじゃつまんないから、ときには新鮮さも必要なんだよ。」
しばらく歩いていると
彩花「うわっ」
車だろうか、水しぶきがかかったらしい。
彩花「また濡れちゃった。しかもまたブラ透けてるし。」
ピンク色のブラがうっすら、いやはっきり見えてる。
彩花「見ないで!」
祐樹「見ねえよ」
彩花「不幸だ。わたし、雨の日は毎回ブラ透けてる。」
祐樹「そりゃ自分の不注意じゃないか。」
今朝はこういうことがあったが、それは登校中だけ。今日も1日が平凡に過ぎていく。
・・・
彩花「ねえ、唯ちゃん。」
彩花「ここ数日、三丁目の孤児院から多発してるナイトメア、全部中沢君のなんじゃないかと思うんだけど。」
唯「確かにそれっぽいわね」
彩花「新学期に入ってからほぼ毎日のように多発してる。しかも中沢君からは妖怪も探知してる。」
唯「それだとこのまま放ってはおけないね」
彩花「それと暗いし、毎日泣いてるし、なんか心配なんだよね、あの子。」
彩花「やっぱりわたしと同じで、好きな人にフラれちゃったからなのかな。中2のとき大輔君との恋をかけて決闘までしたくらいだったし。」
彩花「ねえ、唯ちゃんは中沢君について何か知ってる?」
唯「何かって言われてもわからないけど、中沢君のことならあやちゃんもよく知ってるでしょ?」
唯「だって小学校、中学校と同じ学校だったんだし。」
彩花「幼稚園も同じだった。ついでに小1、小2、中2で3回隣の席になってる。でもバトルしたこと、不良が盗んだ唯ちゃんとわたしの下着を返したこと、それ以外、あまり印象に残ってないんだよね。」
唯「そこまで近くにいたのに中沢君のこと知らないんだ。」
彩花「わたし、あの人の力になってあげられないかな。」
・・・
その日の帰り。
祐樹「あっ・・・」
また誰かと接触、今度はぶつかってしまった。
しかもよりにもよってまたあいつだった。
祐樹「ごめんなさい」
彩花「こっちこそごめん。」
祐樹「なんだこれ・・・、ヘタレ男子?」
祐樹「なにこの気持ち悪い表紙・・・、男同士で抱き合って・・・」
彩花「ちょっと気持ち悪いって酷いよ。まあ男子から見たらそう思うのも仕方ないか。」
彩花「この本ちょっと汚れちゃった・・・。このくらいで済んでよかったけど、不幸だな。」
まあ俺も荒川君のこと好きだったし、今まで好きになったのは男ばかりだった。
つまりホモなのだろう。この漫画のキャラみたいに。
俺も男子に気持ち悪いと思われてるのだろうな。
それからしばらくして、高梨さんが同じ方向に向かっている。
祐樹「何の用だ?君の家こっちじゃなかったよな?」
彩花「最近あっちの方によく仕事があるんだ。」
祐樹「仕事?」
彩花「まあ、アルバイトみたいなの?」
祐樹「アルバイト?確かにうちの学校、バイトは禁止してないけどな。」
でもあっちの方に高校生のアルバイトを募集してる企業あったのか? 俺が知らないだけか。
彩花「ねえ、なんで誰とも仲良くしないの?」
彩花「毎日1人で寂しそうに泣いてるし、わたしでよければ友達になってあげられるけど。」
祐樹「いいんだよ。だいたい、なんで高梨さんなんだ。」
祐樹「君のせいで、俺は荒川と愛し合えなかったっていうのに。」
彩花「いや、大輔君は由紀ちゃんと付き合ってるでしょ。」
祐樹「君のせいだ。君がいなきゃ、福原なんていう女に横取りされることはなかったんだ。」
祐樹「ずっと恨んでたんだから。高梨さんのせいで、俺は荒川と一緒になれない。」
祐樹「俺の恋がうまくいかなかったのは、高梨さんのせいだ。俺だったら、福原なんていう女には負けなかった。」
祐樹「結局俺たちは、本当のライバルに気づかなかったんだ・・・。」
祐樹「そして、せっかく俺が君の恋を応援してやろうと思ったのに、フイにしやがって。」
何言ってるんだ俺は。もう高梨さんを恨むのはやめると決めたじゃないか。
大体荒川は、福原由紀を選んだんだ。だから高梨さんがいてもいなくても変わらなかっただろう。
なのに何を言ってるんだ。とんでもない八つ当たりじゃないか。
彩花「そうだよね。わたしが邪魔しちゃったんだよね。中沢君の恋も、葛西君の恋も。」
彩花「大輔君と中沢君が仲良くしてるの見てるとわたしも満たされてたのに、わたしがそれを壊しちゃった。」
彩花「大輔君モテモテだったし、わたしは選ばれないことわかってたのに・・・。」
祐樹「わかってるんなら近づかないでくれ。俺の恋を邪魔した責任感じてるんなら、二度と俺に関わるな。」
祐樹「これ以上俺の邪魔すんな。」
彩花「・・・」
酷いことを言ってしまった。本心ではそんなこと思ってないのに。
彩花「ねえ、最近悪い夢ばっかり見てるでしょ?」
祐樹「・・・そんなこと、君には関係ないだろ。」
彩花「でもどんな夢見てたか、なんとなくわかるんだよね。わたしの能力だと。」
彩花「わたしの下着姿を見て、大事な本の表紙まで見ておいて、何事もなかったかのようにいられると思ってるの?」
祐樹「・・・弱みを握って脅そうとしてるのか?」
彩花「そうだね。今日のこととか、中沢君が見てる夢とか、誰かに言っちゃうかも。」
祐樹「別に構わない。どうせ俺は一人ぼっちだから。」
彩花「でもむしろわたしのほうが弱み握られてるんだよね。さっきの本のこと、わたしがどういう本読んでるか、あまり知られたくないな。」
祐樹「誰にも言わねえよ。」
彩花「よかった。」
そう言うと高梨さんは帰っていった
それにしても幼稚園のころから一緒なのに、高梨さんとはあまり話したことがなかった。
だから今日はやけに気になった。
・・・
そして翌日
なんか自分でもわからなかたのだが、俺は高梨さんのところへ。
祐樹「あの、高梨さん」
祐樹「何でも言うこと聞くから、昨日のこと黙っててくれるか?」
すると高梨さんは微笑んだ表情でこう言った
彩花「わかった。」
彩花「でもその言い方じゃわたしが中沢君を脅してるみたいじゃない。」
彩花「わたしはあなたの助けになってあげたいと思ったんだよ。」
祐樹「助けに?」
彩花「あなたにはずいぶん前から妖怪が取り付いてるみたいなの。毎日悪い夢ばかり見てるのはそれが原因。もちろんナイトメアが原因でもあるんだけど。」
彩花「わたしの友達に妖怪が専門の魔法少女がいるから、紹介してあげようと思って。」
祐樹「妖怪か。よくわかんない。」
彩花「信じられないなら、とりあえずわたしに悩みを打ち明けてくれないかな。わたしが相談に乗る。」
こうして高梨さんは俺を連れて小原さんの家に
彩花「わたしの幼馴染の小原唯、多分中沢君も知ってると思うけど。」
祐樹「まあクラスメートだからな。中2のとき、高梨さんと葛西と俺のバトルの審判をやった人でもあるし。」
彩花「幼稚園のころから同じクラスだった割には、こうして中沢君と2人でどこかに行くのって初めてだよね。」
祐樹「大した仲じゃなかったからな。俺は小3から中1の夏まで4年半離れてたわけだし」
小原家
彩花「お邪魔します。」
唯「あやちゃん、いらっしゃい。」
唯「あやちゃん、今日はまた別の男の子を連れてきたのね。」
彩花「人をそんな安っぽいキャラ設定にしないで下さい。」
唯「だって初めてではないけど珍しくって。今まで荒川君くらいしか仲の良い男の子いなかったんでしょ?」
彩花「そうでもないよ。親友と呼べるのは大輔君だけだったけど。」
唯「まあ中沢君が一緒ということは妖怪の件ね。」
唯「とりあえずケーキでも食べながら話してくれないかな。」
彩花「今日はかなちゃんも来てたんだ。」
香苗「荒川香苗です。多分中沢君も知ってると思うけど。」
祐樹「ところで小原さんの隣にいる、この子は誰だ?」
彩花「この子は旧名オラフ、魔法少女の使い魔。だけど彼には新しい名前をつけてあげたよ。」
彩花「高梨和也と名付けてみた。高梨はわたしの苗字から取った。和也は弟の達也から。」
唯「和也と達也、例の野球漫画にちなんだのね。」
祐樹「小6くらいのころから、よく悪い夢を見るようになって、中2くらいからはもっとそれが酷くなりました。」
こうして俺はここ3年間、夜に悪夢を見続けていることを話した。というより、起きてる昼間ですら悪夢を見ている。
唯「そう。おそらく夢枕鹿。」
香苗「中沢君の症状はナイトメアの影響もあるけど、それより鹿の妖怪。」
唯「小説家夢枕獏をもじったようなものだけど、そういう妖怪なのよ。」
彩花「それってどうやって退治するの?」
唯「これは悪意を持って取り憑いたのではなく心理的に取り憑く。」
唯「だから中沢君の心理的な面、悩みを解決すればいいの。」
唯「今回はあやちゃんにやってもらいましょう。こちらの部屋で。」
彩花「わたしが解決するの?」
唯「あやちゃんのほうが向いてると思うの。人の悩みを聞くこととか。」
香苗「そうだね。あやちゃんの相応しいと思う。」
別室
彩花「この台本を読んで質問に答えるみたい。まずは中沢君から質問して」
祐樹「名前は?」
彩花「高梨彩花」
祐樹「誕生日は?」
彩花「9月15日」
祐樹「血液型は?」
彩花「A型」
祐樹「一番好きな小説か漫画は?」
彩花「BL学園」
ってあまり口に出して言うのは恥ずかしい本だけどね
祐樹「好きな音楽は」
彩花「マジLOVE1000%」
祐樹「中学校を卒業するときどう思った」
彩花「卒業式のときも泣いたけど、その数日後に隣に住む幼馴染の男の子が引っ越しちゃって、そのときは大泣きしちゃった。」
祐樹「初恋の人はどんな子だった?」
彩花「今言った隣に住む幼馴染の男の子」
祐樹「今までの人生で一番辛かった思い出は?」
彩花「今言った男の子に、バレンタインの日に手作りチョコを渡して告白したけどフラれちゃったときのことかな。」
彩花「幼稚園のころからずっと片思いしてた子だったから。」
彩花「あの日はずっと泣いてたけど、みんながなぐさめてくれたな。姉と弟が泣いてるわたしに真っ先に声をかけてくれて、その夜ずっとそばにいてくれたんだ。」
彩花「あなたの名前は?」
祐樹「中沢祐樹」
彩花「誕生日は?」
祐樹「7月1日」
彩花「血液型は?」
祐樹「A型」
彩花「一番好きな小説か漫画は?」
祐樹「ソードアート・オフライン」
彩花「好きな音楽は」
祐樹「音楽はあまりたしなみません」
彩花「中学校を卒業するときどう思った?」
祐樹「単純に高校に移るだけだと思いました。」
彩花「初恋の人はどんな子だった?」
祐樹「言いたくありません。」
まあ高梨さんなら知ってると思うけど、初恋の相手が男だなんて言えない。
彩花「今までの人生で一番辛かった思い出は?」
祐樹「・・・」
彩花「どうしたの? 一番辛かった思い出、記憶について聞いてるんだけど。」
祐樹「今言った初恋の人にフラれて、しかもその人の恋を応援することすらできなかったこと。」
彩花「そう」
祐樹「いやそれじゃない・・・」
祐樹「お父さんが浮気して、浮気相手と駆け落ちして家を出て行ったこと。」
祐樹「それだけじゃなくて・・・」
祐樹「お母さんが死んだこと」
祐樹「お姉ちゃんが死んだこと」
祐樹「そして孤児院に預けられて、一人ぼっちになったこと。」
彩花「中沢君・・・」
こうして俺は高梨さんと小原さんにこれまでの俺の半生を話した。
不幸だ。俺の人生は不幸としか言えないことばかりだった。
父が浮気をして離婚し、母ががんで死んだ。
唯一の身内だった姉も飛行機事故で亡くし、しかもまだ中学生の俺が1人で遺体安置所に身元確認に行く羽目に。
そして引き取りの親戚もなく、俺は孤児院に預けられ、あれ以来ひとりぼっち。
・・・
俺は涙を流した。涙が止まらなかった。
彩花「大変だったんだね。辛かったんだね・・・。」
そのときだった、
彩花「あれは、ナイトメア?」
唯「いや、妖怪夢枕鹿ね。大丈夫、すぐには襲ってこないと思うから。」
しかし・・・
祐樹「うえ・・・」
突然俺の体に重圧が・・・
彩花「どういうこと?」
唯「ねえ中沢君、あなた秘密があるでしょ?」
祐樹「はい。」
香苗「なら何か言うことがあるんじゃないかな。」
祐樹「ごめんなさい。俺には無理でした。」
祐樹「3人分生きるなんて。」
かつて母も中学生のとき両親をなくし、親戚に育てられた。
その後結婚して子供もできて、ようやく幸せになったと思ったら夫に逃げられ、若くしてガンで死んだ母。
父に捨てられ、母もなくし、弟のために必死に頑張ってきながら飛行機事故で死んだ姉。
最後まで幸せになれないまま死んだ2人。
俺は決意した。2人の分まで生きると。でも無理だった。
祐樹「本当はもう生きてたって仕方ない。早くお母さんとお姉ちゃんのところに行きたい。」
彩花「そんなこと言っちゃダメだよ。まだまだ人生楽しいことあるよ。」
祐樹「15年生きてきていろんなことを経験して、もう十分だよ。」
祐樹「好きな人にもフラれ、しかもその人に思いを寄せる人への恋も成就させられず。」
祐樹「俺はこれ以上辛い思いしたくないんだ。早く死んだ家族のところに行きたい。」
祐樹「ぐす・・・」
俺はまた泣き出す
彩花「わたしにも中沢君の気持ちはわかるよ。だけど」
彩花「死にたいなんてダメだよ。わたしは命を大切にしない人は絶対に許さない。」
祐樹「君に何がわかるっていうんだ。」
彩花「わかったつもりになってるだけかもしれないけど、でも命は大切にしなきゃ許さないから。」
彩花「わたしは中沢君に幸せになってほしい。」
彩花「わたし、中沢君の友達になってあげるよ。というより、わたしにとってはもう友達だよ。」
祐樹「嫌だ。君はいいかもしれないけど、俺が傷つくんだ。俺は一人がいいんだ。」
彩花「一人ぼっちは寂しいよ。」
祐樹「いいんだ。友達になったって、みんな俺の元を離れていくんだ。」
祐樹「俺はもう大切な人を失いたくない・・・」
彩花「わたしは絶対に離れたりない。中沢君を寂しい思いさせたりしないよ。」
彩花「わたしはあなたに幸せになってほしいから。」
祐樹「本当?」
彩花「うん」
彩花「だからもう泣かないで。」
彩花「わたしはあなたに寂しい思いさせたりしないから」
彩花「泣くなっていうのは酷だったら、せめてわたしの前だけで泣いてよ。わたしになぐさめさせて。」
祐樹「・・・ありがとう。」
祐樹「うん、泣き止む。」
祐樹「なんで俺にそこまでしてくれるんだ?」
彩花「誰も悲しんでほしくないからかな。悲しんでる人がいるなら、幸せにしてあげたい。」
彩花「自分が傷つきたくないってのは、わたしもわかる。」
彩花「わたしもね、ときどき泣きたくなるんだ。」
彩花「去年のバレンタインに大輔君に告白してフラれてからずっと。」
彩花「本当に大好きな人だったから、本当に悲しかった。」
祐樹「実は見ました。そのあと小原さんの前で泣いてたとこも。」
彩花「見てたの? 恥ずかしいな。」
彩花「それでわたし、今でも大輔君のこと好きなんだよ。彼に好きな人がいても、ずっと。」
彩花「今でも大輔君のこと好きだから、今でも傷ついてる。」
彩花「だからもう、人を好きになることなんてないと思う。大輔君以外の人を好きになることなんてできない。」
祐樹「そのくらいあの失恋が辛かったんだな。」
彩花「というよりもう人を好きになりたくない。恋して、失恋して傷つきたくないの。」
彩花「今は、恋のキューピッドになって、他の人を幸せにしたいなって思うの。」
彩花「だから中沢君も幸せにしてあげたい。」
祐樹「高梨さんは本当にいい人だな。」
荒川君はなぜ高梨さんをフッたのか、本当に理解できない。
彩花「小原さん、今日はもう時間だからこれで失礼します。」
彩花「そう。またね。」
祐樹「あの子、生きてるかな?お母さんがドナーになって助けた白血病の女の子。」
祐樹「あの子が生きててくれたら、お母さんがこの世に生きた意味を残せる」
彩花「どうだろうね。」
祐樹「お母さんみたいに、俺も誰かのために生きて、誰かの身代わりになって死にたい。」
彩花「ねえ、その中沢君のお母さんが助けた白血病の女の子に、会えるんだったら会ってみたい?」
祐樹「そうだな。会えるなら。」
彩花「わたしその人、知ってるかも」
祐樹「本当?」
彩花「うん。会えるかもしれない。」
・・・
その日の夜、私は母と話した。
彩花「お母さん、白血病になった時のわたしのドナーって、覚えてる?」
母「うん」
母「中沢さんのことね」
・・・
小学校4年生のとき 私は白血病になった。
父や母もドナーになれず、なかなか見つからなかったとき、1人の女性と適合した。
その人の骨髄移植によって私は一命を取り止めた
母「ありがとうございました。あなたは娘の命の恩人です。」
・・・
あや「中沢さんのこと、私も覚えてるよ。」
彩花「うん、教えてくれてありがとう。」
中沢君のお母さんがドナーになって助けた女の子が誰かが明らかになった。
そのあと姉・あやと弟・達也と話した。
彩花「ねえ、あやちゃんは今までの人生で一番辛かった思い出ってある?」
私にとっては、あやちゃんとはお姉さんのこと。
あや「やっぱり失恋したときかな。」
あや「サッカー部にいたとてもかっこいい子。一目惚れだった。」
あや「私もバレンタインデーに手作りのチョコを渡して告白したけど、フラれちゃった。」
あや「まあ何人もの女の子からチョコもらってくらい人気あったし、仕方ないんだけど。」
彩花「あやちゃんもそうなんだ。」
彩花「達也君は今までの人生で一番辛かった思い出ってある?」
達也「僕には、まだないな。人生で一度は挫折を味合わなきゃいけないんだろうけど。」
彩花「そうだね。達也君にもそのうちわかる。」
あや「でも彩花ちゃんが失恋した日のほうが辛かったかも。」
あや「私と違って、彩花ちゃんは大輔君と生まれた頃から一緒の幼馴染で、10年以上片思いしてたわけだからね。」
あや「私は彩花ちゃんは大輔君と結婚するものだと思ってた。まだ可能性がなくなったわけじゃないけど。」
彩花「うん、わたしも今でも大輔君のこと好きだし、今でもあきらめてない。でも多分無理だよ。」
彩花「わたし、大輔君以外の人を好きになることはないと思うし、結婚することもない。だから一生独身でこの家に居座ることになるかな。」
あや「彩花ちゃんがそう思うなら、それがいいんだろうな。」
彩花「あやちゃんは、また新しい恋を見つけて、誰かと結婚して幸せになってね。」
あや「うん、私がまた誰かを好きになれたら、私のことを好きになる人が現れたら。」
彩花「達也君も、可愛いお嫁さんもらってきてくれたら嬉しいな。」
達也「そうだね。」
・・・
彩花「昨日言ったお母さんが助けた女の子のことだけど」
彩花「ねえ、中沢くんって血液型ってA型だよね?」
中沢「うん。昨日言った。」
彩花「中沢くんのお母さんは何型なの?」
中沢「A型。うちの一家はみんなA型だ。お母さんも、お姉ちゃんも、俺たちを捨てて別の女のところに行っちゃったお父さんも。」
彩花「わたしもA型なんだよ。」
彩花「実はわたし、小学校4年生の春、白血病になったんだよね」
祐樹「小4って確か・・・」
彩花「中沢さんって女性がドナーになった。」
彩花「わたしが中沢くんのお母さんに命を救ってもらった女の子なの。」
祐樹「そうか。君だったんだ。」
彩花「わたしは前からなんとなく気づいてたんだ。病院で中沢くんのお母さんだと思う人を見かけたから。」
彩花「その人はもういないけど、代わりに中沢くんに言うね。」
彩花「ありがとう。わたしに命をくれて。」
祐樹「俺の方こそ、生きててくれてありがとう。」
祐樹「君が生きててくれたから、お母さんの人生は決して無駄じゃなかったってわかった。」
祐樹「俺と母の願いが1つ叶った。母が助けた女の子が今でも無事生きてることがわかったからね。」
祐樹「といっても今までも近くにいた人だったんだけど。」
祐樹「今まで自分の恋敵だと思って憎んでたこと、酷いこと言ったことは謝ります。ごめんなさい。」
祐樹「それから・・・」
祐樹「ありがとう。俺は高梨さんにとても感謝しているよ。」
祐樹「俺、もう泣かないから。これからも一人ぼっちだけど、母の願いが叶ったから。」
彩花「一人ぼっちじゃないよ。あなたには大切な友達が1人できたんだから。」
祐樹「え?」
彩花「わたしとこれからも仲良くしてくれたら、わたしとっても嬉しいな。」
彩花「無理かな?」
祐樹「わかった。」
祐樹「俺と友達になって下さい。」
彩花「うん。今までもわたしにとってはずっと友達だったけどね。」
こうして俺は、笑顔と青春を取り戻した。
翌日
彩花「おはよう、中沢君。」
祐樹「おはよう、高梨さん。」
彩未「ねえ彩花ちゃん、中沢君って最近どうしちゃったの?」
圭一「あんな楽しそうな中沢君初めて見た。人が変わったみたい。」
彩花「さて、何があったんだろうね。」
彩未「彩花ちゃんとだけ話すようになったから聞いてるんだよ」
圭一「さてはあいつと何かあったな」
唯「あたしはなんとなく知ってるけど、ここまでとは。さすがあやちゃんね。」
彩未「何があったの?」
彩花「ちょっと中沢君の相談にのってあげたの」
圭一「それだけ?」