地球最後の告白を   作:初代小人

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はい小人です。やっと投稿できますよかった。
というわけで第6幕の開幕です


恋慕

それから、早くも半世紀が経って、君の孫は老衰で天命を全うし、その命の灯火は消えようとしていた。

僕は、君のひ孫の面倒を見る準備をしていた。これも悪戯の一部なのかなんなのか、君の子孫には、男がいない。

息子が生まれたことがないのである。それは今代も例外ではなくて、君の孫は、娘を一人産んでいた。

結婚したのが遅かったために、1人しか生まれなかった。僕は当然ひ孫にも接触をした。

路地裏に迷い込みそうになった時には入っちゃダメだといい、不良に絡まれていた時にはリンチを代わりに受けた。

なぜか君の子孫を守るためならそのくらいの痛みはどうってことないように感じた。

不老不死なので折れた骨は眠っている間に完治した。

だが、包丁で刺されても死なず、いつまで経っても同じ外見の僕のことを不審に思ったようで、中学生になったあたりからはもう僕の前にあまり姿を見せることはなかった。

僕は、転々とすることにも飽きて、君の子孫が代々住んでいる〇〇財閥の屋敷の近くの橋の下に、ダンボールをひいて定住していた。

君とこの世を去ってから〇〇財閥の御曹司は、何者かに殺された。

君の娘はとうとう父までも亡くして嘆き悲しんでいたが、気丈にも生き抜き、そして寿命が来て死んだ。

人が死ぬことは当たり前と思い始めていたが、やはり悲しかった。

その娘が産み落とした娘は、男手一つで育てられたためか、とても気がきく、繊細で強い女の子になった。

よく私のところに遊びに来ては、学校の話、父の話、友達の話、いろんな話を笑顔で話してくれた。

シロツメクサとスミレで作った花飾りを僕にくれたこともあった。

君の子孫の中でも僕と親しくしていた1人だった。

その孫が死ぬだけに僕は、その瞬間を見ることを拒んだ。

屋敷の近くの橋の下では、僕の他にもホームレスが暮らしていて、その中の数人と仲良くなった。

ホームレスたちは、僕の見た目が変わらないことを深くは問わず、親しくしてくれた。

 

僕はいよいよ君の孫が死んでしまうという日に、君のひ孫を養うためのお金を貯めておくために始めたバイトに行っていた。

工事現場でのバイトは、給料も悪く、割に合わない仕事だが、子供の見た目の僕を雇ってくれるところは他にはなかった。

僕はバイトに精を出すことで、よく笑いかけてくれていた君の孫が死んでしまうということを忘れようとしていた。

すると不意に、女の人に、「△△橋の下に住んでいる『不老不死』の少年さんですか?」と声を掛けられた。

振り返るとそこには、いかにも不服そうな顔をした君のひ孫がいた。

「母が言いたいことがあると言っています。できれば来て下さいませんか?屋敷まで。」

そう言って君のひ孫は、僕を置いてスタスタと歩いて行ってしまった。

でも僕は気付いた。その眼が赤くなっていることを。瞼が泣き腫れていることを。夕日を屈折させる涙の筋が頬を伝っていることを。

すぐに現場長に頼んで仕事を早退させてもらい、君の孫が待つ屋敷へと走り出した。

10分ほど走ると屋敷についた。説明している暇もなく、門番を突き飛ばすようにして屋敷に入り、君の孫が伏している死の床を目指した。

寝室に着くと、君の孫は随分とやつれ、丸々としていた顔はもはや骨と皮だけになり、黒くてサラサラだった長い髪は半分ほどが抜けて、残った半分も針金のようにくねった白髪になっていた。

「やっと、来てくれたんだねぇ。あり、がとうねえ。」

君の孫は絞り出すような声で言う。

「そうだよ。あなたの娘に呼ばれてね。」

「急に呼び出してすまなかったねえ。最期に言っておきたかったことがあったから。」

「最期だなんて言わないでよ。もっとお話ししてもいいんだよ?」

僕は、ここまでしている老女を看取らないつもりだったのかと心底自分を責めた。

「あなたは、どうやってもそうやっておばあ様のことばかり見て、私のことを見てくれなかったねえ。いつもいつも私のことをおばあさまに重ねて、私を私としてみてくれなかったね。」

そう言えばそうだ。この老女のことも、「君の孫」としか見ていなかった。老女は苦しそうに、しかしはっきりと最期の言葉を紡いでいく。

「私は、小学校高学年から、中学を卒業するまでずっと虐められていたのさ。今となれば大したことでもなかったが、その時は苦しくて、嫌になって、死んでしまおうかと思った日もあった。でも、そんな時、あなたと他愛もない話をしていると気が紛れた。楽になった。

死にたいという思いは影をひそめた。」

やはり。と今頃思った。話に来た君の孫の体に、不自然な痣があるのを僕は見つけていた。でも僕は聞かれたくないこともあるだろうと何も言わなかったのだ。

「そして影をひそめた死にたいという思いの代わりに違う感情が現れた。

それの名前は、恋心だった。」

え?今、恋心って言ったのか?気のせいだろう。

「私はあなたが好きだった。姿を見るたびに胸が締め付けられ、息苦しくなった。」

え?まるで他人事のような話に、僕の頭の中には困惑と喜びが五分五分で同居していた。

「それなのに、あなたは私の事を見てくれず、お祖母様の事ばかり見ていた。私は妬いた。でも嬉しかった。

この世界で、失いたくないものを見つける事ができた事を。だから私は頑張った。オシャレもしたし、雑誌も買って、お祖母様よりもあなたの中で大きな存在になろうとした。まあ、無理だったのだがね。」

全く気づいてなかった。

「結局あなたの事は諦めて、他の人と結婚した。こんな私を許しておくれ。」

そこで僕はハッと息を飲んだ。

「同じ事をあなたの祖母が、僕に、死後に伝えてきたよ。」

視界がかすむ。熱いものが目尻から流れ出す。

「でも私は幸せだよ。」

「え?」思わず声が出た。

僕はあなたの気持ちに気づけなくて、諦めさせてしまったのに?

「どうして不思議そうな顔をするんだい?私はこの世界で一番の幸せ者だよ。初恋の人と最愛の娘に看取られて逝けるのだから。」

背後で嗚咽が聞こえた。気づかなかったが、そこには、目の前の老女の娘が立っていた。

そして本当の最後に、老女は私の手を取り、ゆっくりと言った。

「最期に、想いを伝えられて良かったよ。わざわざここにきてくれてありがとうね。もう一つお願いしてもいいかい?」

「なーに?」半ば無理やり、絞り出すように明るい声を出す。

「最期は、あなたの、笑顔を見て逝きたいんだ。だからそんな顔しないでおくれ。ほら。笑っておくれ。◽︎◽︎も。」と、娘にも言う。

僕は顔を歪めてクシャクシャの笑顔を作った。

「本当に優しい人だ。私はあなたに最期に会えただけでもう心残りがないよ。

ありがとう。そして、さよ、な…ら。」

僕の手を掴んでいた老女の手が重力でずるりと布団の上に落ちる。もう限界だった。

「わあああああああああ!」

獣のような声を上げて僕は夜通し泣き続けた。

 

 

To be continued …

 

 

 




はい。今回は詰め込みすぎていつもの倍くらいになってしまいました。すみません。
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